作者はガンダムseed好きです。(隙自語)
あれからすぐに、奈央さんは搬送された。
…奇跡的に、攻撃が内臓から外れていたため、一命を取り留めたが、本当に辛いのはここからだった。
貫かれたときのショックで、いつ目を覚ますかわからないらしい。
それに、目を覚ます確率が低い、とも言われた。
…目の前が真っ暗になった。
目から流れてくるモノが床を濡らす。
なんて傲慢なんだろう。
一番悲しいのは、一番辛いのは早坂の筈なのに。
なんで俺が泣いているのだろう。
そんな資格もないくせに。
慈愛に満ちた笑顔、時折り見せる悪戯心ある表情、…愛娘である早坂への、愛。
全てを奪っておいて、なんで俺は生きているのだろう。
早坂はすぐに帰され、別邸で療養しているらしい
…俺も、大した怪我はなく、すぐに家に帰された。
変身解除に至らなかった理由は不明で、現在調査中ということだった。
恐らく、次の活動からドライバーは使えなくなるだろう。
でも、今の俺には今後、どう戦っていくか、なんて考える余裕はなかった。
学校までの二日間、絶望が常に付き纏っていた。
「早坂に、会いたくない…」
合わせる顔がない。
何をしても、何があっても、許されることはないだろう。
『嘘つき!』
『ママを守るって!!』
『鋼太がいったんじゃない!!』
憎悪に満ちた、憤怒の表情が思い出される。
ひどい顔をしていた。
戦い始めたばかりの頃の俺も、あんな顔をしていたんだろうか。
肉親を奪われたことに対する怒りは、一番理解できる…それなのに…。
理解できるからこそ、自分に対する怒りが、募っていく。
行き場のない、どうしようもない怒りと、悲しみが。
俺は今世で初めて、仮病で学校を休んだ。
早坂に会うのが気まずかったからだ。
その代わり、空いた時間を利用して、病院を訪れた。
「隊長、鋼塚です」
返ってくるはずのない返事を期待しながら、病室に入る。
隊長の傷は、だんだんと治ってきているが、肝心の意識の方はまだ戻っていない。
今までの連戦で、隊長の心が疲れているのだろうと医者は言っていた。
…心なしか、隊長の顔が前より優しくなったように感じる。
いい夢でも見ているのだろうか。
願うことなら、その夢が醒めないでほしいと思う。
きっと、こんな現実よりも優しくて、暖かい場所なんだと思うから。
隊長がこのことを知ったら、なんて言うんだろうか。
怒るのだろうか、悲しむのだろうか、慰めるのだろうか。
どんなことだっていい。はやく目をさましてほしい。
病室でぼーっとしていると、誰かが入ってきた。
A.I.M.S.の誰かだろうと思い、振り返る。
「…」
扉の前には、早坂が立っていた。
「どう、して、ここに…」
「学校は休みました」
そう言って、無表情のまま俺に近づいてくる。
…何をされても抵抗しないでいよう、と思い、全身の力を抜く。
罵声を浴びせられるかもしれない、殴られるのかもしれない。
けれど、その何倍も辛いことを、俺は早坂にした…してしまった。
少しでも気が晴れるというのなら、いくらでも好きにしてくれていい。
そう思った次の瞬間、俺は柔らかい感触に包まれていた。
「ごめんなさい、あんな、辛いことを言って」
俺は、早坂に抱きしめられていた。
早坂が謝る必要なんてない。
辛いのは早坂の方なのだから。
「ずっと、戦って、戦って、守ってくれていたのに」
「でも、俺は…!俺は…!」
奈央さんのことを思い出し、涙が滲んでくる。
「…守るから」
「私があなたを、守るから」
そう言い終わると、唇に柔らかいものが当たった。
呆気に取られる間もなく、座っていた椅子からずり落ちる。
「な─!?」
再び唇を当ててくる。
抵抗しようとするが、位置の関係上、早坂を強く押すと壁にぶつかってしまうため、押すことはできない。
どうにか抜け出そうと思案するより前に、上に覆い被さられ、余計に抜け出せなくなった。
早坂は唇の感触を味わおうと、何度もついばむようなキスをしてくる。
どうにか酸素を吸おうとするたびにねじ込まれる舌によって、体の自由が奪われる。
諦めて抵抗をやめると、口内を蹂躙する舌が、更に荒々しくなった。
稚拙な、快楽を貪るようなキス。
舌と舌を絡み合わせた後、名残惜しそうに顔を離した。
「…私があなたを守ります」
「…なら、俺も君を守るよ」
もう一度、深く唇を重ねた。
キスが終わった後、早坂のスマホがなり、早坂は別邸へと帰っていってしまった。
俺は一人、隊長の病室に取り残される。
情熱的なキス。着信がなかったら、あのまま─
そこまで想像したところで、思考を中断する。
いくらなんでも、都合がよすぎる妄想だ。
そう思い、俺も病室を後にした。
私は、何をしているんだろう。
自分が自分でないような、そんな感覚に襲われながら。
ふらつく足取りで屋敷まで戻る。
鋼太を、ゼロワンの性能を目の当たりにしたあの日から、四宮家は不安に駆られていた。
あれ程の力を持つ者に反旗を翻されては、こちらに勝ち目がない、と。
その日のうちに、四宮家から出された命令に、絶句した。
『鋼塚鋼太を裏切ることのない駒にせよ』
四宮家は、万が一にも裏切ることのないよう、鋼塚鋼太の籠絡を早坂家に命じた。
早坂の娘には、女としての武器があるだろう、と。
だけどママは、私がそれをすることを、よしとしなかった。
だから…鋼太の心を壊すことにした。
彼の日常に溶け込み、彼と深く関わる。
私達が彼の「当たり前」になったときに、その「当たり前」を壊す。
人は「当たり前の日常」を壊された時に、深い絶望を感じることを、知っていたから。
結果として、ママが半死亡状態になったかわりに、鋼太を籠絡できた。
…キスなんて、一回もしたことがなかった。
好きな人とするものだと、信じ続けてたから。
動画で見たことを、真似るようにしただけ。
そんな稚拙なものでも、簡単に堕ちてしまうくらい、彼の心は壊れきってた。
ゼロワンドライバーに電気の耐性を獲得する機能なんてない。
ただ、流れる電流を、変身解除ギリギリの出力に落としただけ。
マギアが現れれば、鋼太は変身するしかない。
一度変身すれば、鋼太は目に映るもの全てを破壊する怪物になる。
変身解除ができなければ、メタルクラスタが襲うのは近くにいる人物。
私が「近くにいる人物」になり、ママが娘を庇った良妻になることで、誰からも怪しまれないようにする。
…都合の良いくらい、作戦はうまくいった。
鋼太は、ママをあんな風にしたことに罪悪感を覚え、それに押し潰されるギリギリの状態になっていた。
そんな鋼太を、甘い言葉で誘惑して、籠絡した。
頬を、一粒の雫が伝う。
涙、な、んて、仕事、中に、流しちゃ、いけ、ないのに。
視界が涙で埋め尽くされる。
次第に立てなくなり、道端に膝をつく。
これ以上涙を流すまいと堪えていると、後ろから温かい感触が伝わってきた。
「守るから、俺が愛を、守るから」
優しい、朝の日差しがあたるような感覚。
やめて。
私に、そんな優しい愛を向けないで。
そんなものを向けられる資格なんて、愛される資格なんて持っていない私に、それをしないで。
けれど、体は鋼太に向き直り、胸板に顔を押し付けて、声を殺して泣いていた。
そんな私を、鋼太は何も言わずに、抱きしめていた…。
早坂がフレイみたいになっちゃってる…。
最推しを死なせる予定はないんです、信じてください…。
皆様からの感想、お待ちしております。
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