寝てからしばらく期間が空いた。
具体的に言えば3日くらい。
A.I.M.S.の人達がたまにくるくらいで、早坂はめっきり来なくなってしまった。
学校が忙しいのだろうか。
もう6月になり、じわりとした熱さが病室にも伝わってくる
宿題や課題、授業ノートの類いもようやくできた友人から送られてくる。本当にありがたいかぎりだ。
課題をこなし、眠る。そんな退屈な病院生活を送っていると、スマホに一つのメッセージが届いた。
それは、病院生活に慣れてきていた俺を現実に引き戻す衝撃的な内容だった。
『早坂愛は預かった。返して欲しくば、今日の18時までにベルトを持ってこい』
簡潔にそう書かれた文章には、位置データが添付されていた。
それを見た瞬間に、俺はすぐに病室を飛び出した。
何をやってたんだ、俺は─!
何もできなかった、してあげられなかった自分に腹が立つ。
だが、そんなことを言っていても、何も始まらないのはわかっている。
今俺ができるのは、1秒でも速くゼロワンドライバーを渡し、早坂を取り返すこと。
「!??」
そんなことを考えながら病院を飛び出したところで、前から来た車に回収される。
「おいおい、寂しいじゃないの。こんなことを手伝わせてくれないなんて。」
そこには、頼りになる仲間達の姿があった。
A.I.M.S.の皆に、送られてきた内容を説明した。
そして、俺の問題に早坂を巻き込みたくないとも。
「なるほど、事情は把握した。…だからこそ言わせてもらう。」
「バカが、一人で突っ走ってんじゃねぇ!」
「んなッ─!」
何を─!と言おうとしたところで、追撃が入る。
「お前一人で行こうとしてんじゃねぇよ!!隊長から学んだんじゃなかったのか!??」
─お前は、一人じゃないって─
そんなこと、理解している。俺には─
「その感じ、頭じゃ理解してたって感じか?甘いな、体どころか、骨の随まで染み込んでんのに。」
「鋼太。お前は今までで、一人で生きてきたことがあったか?」
一人で?あぁ、家族を喪った日から、ずっと一人だ。
「そう思ってんならそれで結構。だが、お前がそう思ってる裏で、お前はいろんな人からのバックアップを受けて生活してる。」
「病院の手配も、学生証の偽造も、何から何までお前の日常には誰かがいたはずだ。」
「そんだけ受けといて、いざとなったら必要ない?甘ったれんな!」
そう言われ、今までの日々が頭を駆け巡る。
四宮という財閥に、俺はおんぶにだっこの状態だった。
到底、一人で生きている、とは言い難い。
「お前は早坂を助けたい、俺は、俺達はお前を助けたい。」
先程とは別の隊員が口を開く。
「利害は一致しているはずだ。」
「…今更、図々しいかもしれないけど。」
「俺は、もう失いたくない。何一つ、取りこぼしたくない、隊長みたいなことは、二度とゴメンだ。だから─」
「長い!!!『好きな人ために力貸せ!』くらいでいんだよ!!」
「ちょっ、好きって─!」
「あぁ!?『愛してる』の間違いだったっけかぁ!?」
車内に笑い声が響く。
あぁ、そうだ。この雰囲気が、ここが─。
「俺、…いや!俺の大好きな人のために!!力を!貸してください!!」
そういい、頭を下げる。
「あったりまえだ!早坂愛救出作戦、始めるぞ!」
「ふざけるなァァァァァ!!!」
禅之助の絶叫がこだまする。
発端は鋼塚の末裔がアークに敗れたこと。
その日のうちに、早坂の娘に連絡をいれた。
ただ一言、「これ以上、その男を傷つけたくなければ、その力を奪え」と
だが、こいつが持ってきたのはあろうことかキーの方だった。
プラグライズキーなど、アークがいればいくらでも作り出せる。
アークを裏切ることなき駒にするために、あれが必要だというのに─!
「鋼塚の末裔はどうなっている!」
部下を呼びつけ、確認する。
「既に病院を離れた様です。こちらにつくのは時間の問題かと。」
苛立ちを隠しきれない面立ちになりながらも、冷静であろうと努める禅之助。
「ならば、もう配置は出来ているのだろうな?」
「えぇ、この最上階の50階までの間に、三人の刺客をもうけました」
「フッ、ならばいい。…ようやくだ、ようやくこの因縁も終わる。」
「薄汚い鋼塚の末裔を、滅ぼすときだ…!!」
「『オペレーション飛電』?」
「あぁ、隊長が発案した、対飛電用の作戦だ。」
眼鏡をかけた隊員─浅山薫が概要を説明するようだ。
もっとも、当の本人がいないがな、と付け加えた。
「無い物ねだりしても仕方がない。そんで?詳しい内容は?」
顔に傷がある、始先程まで俺に激を飛ばしていた隊員─雷堂始が説明を促す。
「突っ込む!!殴る!!だそうだ。」
「プッ」と誰からともなく笑いだす。
「んなもん作戦でもなんでもねーだろ!」
筋骨隆々の荒っぽい隊員─窓谷聡一がそう叫ぶ。
「冗談だ。」
浅山がさも当たり前かのようにそう返す。
「「「「わかるか!!」」」」
一番冗談を言いそうにないやつがそう言い始めたせいで、車内の全員がそうツッコミを入れる。
「隊長なら言いそう、っていうのが一番酷いわよねそれ。」
困り顔の女性隊員─桐下奏がそう返す。
先程の発言のせいで、車内の空気は絶妙に緩くなってしまっていた。
「ま、基本的には詳しい飛電の内部構造が載ってる。で、だ。」
浅山が表情を引き締める。
自然と車内の空気も引き締まり、耳を傾ける。
「1階、25階、45階…この階には色がついてる。おそらく、この階には俺達の進行を邪魔する何かがあるってことだ。」
「その何かが何なのかはわからないのか?」
サングラスをかけた隊員─管原望が質問する。
「備考の欄には1階が雑兵とリーダー、25階が中ボス、45階が大ボスって書いてあるな。」
「ざっくりとしすぎてんだろ…」
「だが、この膨大な量のマップデータだけでもお釣りがくる。全員に共有しておく。」
全員の端末にデータが送信される。
「方針としては…命大事に、だそうだ。死にそうになったら撤退しろ。」
「死ぬ限界までは撤退すんな、ってことじゃないすか?それ」
この中では比較的若い隊員─黒川渡が苦笑する。
「笑えない…が、それくらい無鉄砲な方が、俺たちにはあってる」
髪をかく隊員─秋津裕生がそう返す。
「さ、そろそろ到着だ。目標は早坂愛の救出、全員が生存した状態での脱出だ!!」
『『『『『ショットライザー!!』』』』』
全員がショットライザーを持ち、車から出る。
「待っててくれ、愛…!」
自動ドアが開き、静まりかえった社内に辿り着く。
「…随分と静かだな」
臆することなく入っていく雷堂さん。
「こちらの動きはあちらも把握しているでしょう。…警戒を。」
慎重な姿勢を崩さない浅山さんが周囲を警戒する。
がらんとした一階には、人一人見つからない。
若干拍子抜けのように思いつつも、警戒を続ける。
視界の端を、何かが横切ったように感じ、辺りを見回す。
「どうした、何かあったか?」
「今、視界の端を何かが…ッ!」
全く警戒していなかった場所─真下からの刺客からの攻撃をかわす。
「なんだ、こいつ─!」
全員がショットライザーを構える。
すると、先ほどまで何もいなかったところから、生身の人間達が出てくる。
「なるほど、一階の刺客はこいつらってことか!!」
「なら、話は早い。こいつらを片付けて次に向かう!」
こちらは俺を含めて8人、あっちはざっと見ただけで30人近くいる。
持久戦ではこちらが不利…!
隊員達が交戦し始める。見たところ、質ではこちらが勝っているようだ。
「フッ、ハァッ!!」
突進をかわし、背中を蹴り付ける。後ろからくるもう一人も、殴って弾き飛ばす。
一人一人は大したことはないが、矢継ぎ早にくる攻撃がキツい!
『一階は雑兵とリーダー』
その言葉を思い出し、辺りを見渡そうとする。
ブオンッ
直感的に、その場にしゃがんだ。
頭上を見やると、刀が掠めていた。
ほんの数瞬でも、この場に立っていたら切られていただろう。
「リーダーのお出ましか…!」
チッ、と舌打ちしてリーダー格のやつは雑兵の間に消えた。
「どいつもこいつも!格好が殆ど同じなせいで、誰がリーダーかわかんねぇぞ!!」
雑兵を蹴散らしながら、窓谷さんが言う。
(「見つけだす方法があれば─」)
集中しろ、見つけろ、違いを、どこにいるかを。
「俺は愛を─」
救うんだ。
「あいつ、何を─」
突然、棒立ちになった鋼を見やる雷堂。
その後ろ姿を晒す鋼に、例のリーダーが襲いかかる。
「バカ!鋼太、後ろだ!!」
その背中に後ろ姿から赤い鮮血が飛び散る─ことはなく。
縦に振り下ろされた剣を、白羽どりでとる、鋼太の姿があった。
ハイライトが消え、青い瞳となった─
(「遅い」)
まるで、超人になったかのようだ。
体のレスポンスが異常にいい。
空気、脈拍、相手の状態。全てが手に取るようにわかる。
相手の行動が全て読める。相手の動きが酷く緩慢なように見える。
ガキィン、キン!
先ほど雑兵から拝借した刀で打ち合う。
相手の全てを悉く打ち破っていく。
白羽どりで取られた上に、追撃まで喰らったことが予想外だったのか、相手の動きに乱れが生じている。
ガキィン、ガン!
数度の打ち合いの後、リーダー格の刀が弾かれる。
その隙を見逃す程、俺は甘くない。
胴体を斬りつけ、反撃を喰らわないよう、即座に距離をとる。
リーダー格の男が倒れると、その場にいた雑兵達はリーダーを抱えて一目散に逃げ出した。
「ふぅ…」
かなり集中力を使ったからか、どっと疲れが押し寄せる。
だが、まだ倒れるわけにはいかない。
まだ、愛を助けたわけじゃない。それに、これはまだ前哨戦にすぎない。
「無理すんな、ちょっと休憩だ。」
雷堂さんにそう言われ、床に座る。
「ほら、水だ。ゆっくり飲め。」
そう言われ、水筒を手渡される。
飲むと、冷たい感覚が体中に広がっていき、喉が潤った。
「しかし、今のはなんだ?急に動きが別人になってたぞ」
「俺にもわかりません、でも、愛を助けるんだって強く思ったら、ああなってて…」
「なんにせよ、手札が増えるのはいいことだ。やれることが増えるってことだからな」
浅山さんがそう分析する。
「エレベーター、使えそうです。ただ、25階より上に行くには、一度別のエレベーターに乗り換える必要があります」
「25階に配置されてんのはそのためか…」
「…行きましょう、今は1秒でも、時間が惜しい」
そろそろ飛電編も大詰め、ゆっくりとお待ちいただければ幸いです。
追記
この作品でオリジナルフォームを出してよいかどうかのアンケートを取りたいと思います。
具体的には、ベースをメタルクラスタにして、メタルクラスタの派生フォームような形にしたいと考えています。
次々回までに一番多かったものを採用しますので、回答お願いします!
オリジナルフォームをだしても良いかどうか
-
出してよし
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出さないで欲しい
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作者に任せる