優秀な駒   作:匿名B

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衝動書き。アニメは7年前なんですって。おぼろげな記憶とにわか知識なのでお手柔らかに高評価が嬉しいです。
(誤字は鼻で笑っておいて下さい)


よろしくお願いします。


実力主義の教室

 

 

 特別になりたい。

 

 

 昔からそう思った。両親は普通の会社員に専業主婦。五体満足、健康体で俺は育った。平凡な脳味噌に平均的な身体。自身の身体能力に自信を持った事は一度もない。記憶力が良いだとか、芸術的感性が鋭い訳でもない。スポーツを始めても最初はつまづいてしまう。ぎこちない身体使いにはいつもため息があった。しかしそれでも俺は俺だった。

 

 

 朝、目が覚めて自分以外の者になってる訳じゃないし、努力する以外変われることはない。人並みの努力は最低限。平凡な俺はそれをするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 スマホからアラームが鳴る。時刻は午前6時。毎朝、自分が起きる時間だった。

 

 怠い身体をベットから引き起こす。身体の節々が痛く今日のコンディションは余り良くなさそうだった。前日の疲労が溜まったのだろう。俺は重い足取りで洗面所に向かう。鏡にはいつもと変わらない自分が映った。はぁーとため息混じりに朝の支度を始める。

 

 

 

 俺こと矢野瑶(やのよう)は特別になりたい。

 

 

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「昨日の野球みた?」

「見てねー。つかゲームしてたわ」

 

 

 ガヤガヤと喋り声や喧騒が聞こえる。此処は高度育成高等学校の1つの教室。その中に30人程の人物がいる。この学園に在籍している生徒の1人。それが俺。今は授業も終わり下校準備をしていた。

 

 自分の近くの席の生徒、所謂クラスメイトと適当に雑談を交わしていく。テレビでやってたスポーツの話だとかドラマ、ゲーム。適当に合わせる話としては楽だった。偶に出るのは課題の提出、将来への不安などばかり。とても有意義な会合とはまでは言えなかった。

 

 

 

「一応勝ったらしいぞ。田中選手が凄かった」

「お、まじ?さすが二刀流」

 

 

 

 

 適当に話を合わせておく。野球の試合観たしスポーツは嫌いではない。話す内容としても悪くはなかった。鞄に教科書を詰めながら俺は会話に混ざった。

 

 

「意外と矢野も野球見るんだな。意外」

「意外二回言ったぞ。別に普通だろ普通」

「お前も2回言ってんじゃん」

 

 

 少し野次られたところで身支度が済んだ。俺は少し膨れ上がった鞄を持ち椅子から立ち上がった。

 

 

 

「優しいからお前らに合わせてる。ま、帰るわ」

「誰が馬鹿だ!‥‥それは言ってないか」

「おーじゃあなー。てかお前も置き勉しろよ」

 

 

 

 クラスメイトが訝しげな目で鞄を見てきた。確かに教科書が重なれば重くなる。俺は若干の面倒を抱えつつ鞄を持っていた。

 

 

 

「うっせー。帰って勉強するんだよ。じゃあな」

 

 

自分がそう言うと

 

 

「おーまたな〜」

 

 

 

 気が抜けた様な返事が返ってきた。俺はそれを聞き席を後にした。

彼等の勉学の面は大丈夫だろうか。試験が近いと言うのに2人が勉強している所を見た事がなかった。出された課題や教科類に手をつける素振りもないな。と他人事に感じていた。

 

 

 

 

 

 

 扉付近に近づいた時、忘れ物がないか教室の中をチラリ見た。教卓の前でたむろする女子グループに変わりはない。入学してメンツも固まってきたかと思えるメンバー。その集団を除けば後はなんら変わりもなかった。身支度をする者、駄弁る者。教室の一幕がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 ‥‥人間観察じみた事をして我に帰る。扉を背に一瞬目が合ったクラスメイトに会釈しておく。確か名前は綾小路清隆(あやのこうじきよたか)だったか。

 

 

 

 

俺はそれを最後に教室を後にした。

 

 

 

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 夜、寝付けないまま時間が進んだ。

 

 ベットに横たわりスマホでネットサーフィンをする。目にするのは、やれ政治家の不祥事や芸能人の不倫、ゴシップ等の記事ばかり。自分が10代の高校生だとすると健全な情報ばかりだった。俺はそれを10分ほどして目を瞑った。

 

 

 

 

 

 そして脳裏によぎったのは自分が此処の生徒だと言う事。此処、高度育成高等学校は完全な寮生活。学園の私有地に日用品や商業施設があり3年間を此処で過ごす。今、横たわるベットも支給品であり、防音安全な学生寮も完備。高校生活を過ごすには十分な環境が此処にはあった。しかし、入学して間もなく経ったころ。俺達はある知らせを受ける。

 

 

  ─────この学園はポイントと言う制度を設けて生徒、クラスの優劣を決めるとの事。

 

 

 

 初めの頃は10万ポイントと言うプライベートが確率された気分だった。それが1ヶ月後、2ヶ月後も続くと思っていた。けれどその実態は優劣をつける為の数値。A〜Dとクラス評価を別け、1番上のクラスの将来だけを保証すると言う。最高評価はAクラス。そして最低がDクラスと、なんとも分かりやすい評価順だ。俺が配属されたのはDクラス。文句の付けようがない最底辺だった。

 

 

 

 

 現金、此処で言う個人ポイントはまだ手元にあった。これだけ有れば1ヶ月はしのげそうだった。そんな考えを他所に俺はベットから起き上がった。現状クラスの事やポイントの事を考えても、どうする事も出来ない。と言うのが自分の考えだった。自身に最低評価が下された事に取り乱すプライドはなかった。昔から優劣の劣には慣れていて、だから今更「お前達は不良品だ」と言われて湧き上がるものも余りない。

 

 

 

 喉の渇きを感じ、冷蔵庫に目をやる。日課の筋トレはしたし課題も片付けた。けれど空いた時間を埋める様なそんな空虚感を感じる。冷蔵庫の中に飲料水はなかった。買いに行く事を決め、薄めのパーカー羽織った。これからの事を考えつつ、そして俺は常習する考えが浮かんだ。【自分は普通なんだと】

 

 

 

 

 

 

 

 

 寮に程近い自販機で物色する。100円硬貨の代わりにスマホを近づけて会計が終了する。買ったのは炭酸飲料2本。パッケージにはデカデカと新商品と記されていた。俺はそれを適当に抱えて寮のエントランスに戻ろうとしていた。エレベーターを降りた時に掲示板を見たり、廊下を見たがいつもと変わらはなかった。

 

 

 

 午後を過ぎた空は暗かったが街灯が夜道を照らしてくれる。夜道と言える場所は人通りが少なかった。こんな時間に出歩くなんて用事がある者か密会かと思える時間。1人でジュースを抱える絵面としては酷過ぎる。自嘲する。帰ろう。と決めた時、ある光景が見えた。2人の人影に男女の喋り声。場所は建物の死角で2人の姿は見えなかったが、時間的に察するに夜の密会か、何か怪しい取引なのだろう。しかし、それら全て自分に関係はなかった。自室まで戻れば忘れる筈なのに、耳を注視して聞いてしまった。2人の会話を。痴話喧嘩ではない雰囲気を保っていた。立地的に彼等とはすれ違ってしまう。余計なお世話かも知れないが、事が事なら一声掛けておくかと変な正義感に駆られてしまった。

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「すみません。道迷ったみたいで」

「あんた今本気で打ち込もうとしただろう」

 

 

 

 喧嘩を止めるには第三者の意見も必要なわけで、俺は仲裁すべく2人の前に出た。少し暗いがまだ光があり互いの姿が現れた

 

 

 

 そこにはクラスメイトの堀北さんもいた。彼女は兄さんと呼ばれる人物に暴行を受ける寸前だった。いや、ギリギリか。腕を押さえつけらている。これを暴力行為と判断されても可笑しくない。俺は平然を装いつつ余計な気持ちで仲裁に入ったのだったがそこにもう1人いた。

 

 

 

 

 

「綾小路?」

「えっと誰だ?」

 

 

 

 ……。少し続いた沈黙が気まずかった。クラスメイトとして認識されなかった事に気恥ずかしさを感じる。なんとも言えない感情を綾小路に会釈して伝えた。

 

 

「一応同じクラス。ごめんこっちが一方的に認知してた」

「あー別に良いぞ。いや、すまん。自己紹介の時に見覚えがある」

「…あれ忘れてくれていいぞ。けっこう黒歴史」

 

 

 

 思いのほか続いた会話に安堵する。現在、交流中の生徒を俺は知っていた。名前は綾小路清隆。同じ1-D所属の男子生徒。関係性は所謂クラスメイト。教室で挨拶をすれば返ってくるし、何らかの反応を示してくれる人物だった。綾小路への印象としては物静か、一歩引いてるイケメン…と言うのが外的印象。体格はしっかりしており顔も悪くない。が彼自身の性格か事情かで目立つ存在ではないと認知していた。

 

 

 

 趣味と言うか、癖というかなんとも言えない人間評価で俺は綾小路を評していた。評価としては惜しい生徒。そんなところ。もう少し活発に動けば誰からも注目される存在と思っていた。

 

 

 

「綾小路……?聞き覚えがある」

 

 

 

と、生徒会長も反応している。意外と綾小路は有名人なのかも知れない。眼鏡をかけたお堅そう生徒会長となにやら談笑している様子。

 

 曰く入試で全て50点を揃えた生徒がいる。それが綾小路だとの事。俺はその2人の会話を聞きつつ堀北さんの顔を横目で確認した。

 

 

 

 生徒会長お兄様に壁に押し付けられていた。目が合ったがポツリと下を向かれてしまった。まぁそりゃそうか。兄弟間のいざこざを無碍に聞かれて兄弟喧嘩……を目撃された最中なのだから。それが対して仲良くない自分なのだから納得がいく。気難しい性格の兄を持った堀北さんには同情と言うか内心敬礼しておく。

 

 

 

 俺はどう対処すべきか考えていると綾小路と堀北兄さんが格闘していた。……なんで?という疑問と共に喧嘩を仲裁すべく2人の間に割って入る。なにやら意味深しげな事を話していたが構わなかった。その途中、物凄い2人の蹴りや拳があった。暴力反対。俺は平和主義者だと主張しながら彼等の前に出た。

 

 

 

「ほう。俺達を躱しつつ前に出るか。お前も何かやってたのか?」

「スポーツをお遊び程度に。根が軟弱者なんで格闘技はすぐやめました」

「面白い。自分を軟弱者と評したが、その行動力は評価に値する。名前をなんと言う?」

「1年Dクラス矢野です。お兄さん飲んだからって暴力は駄目だよ」

「……飲酒はしてないが」

 

 

 素のテンションでこれか。俺は堀北兄さんに若干の恐怖心を抱えたので距離を取る。品行端正な生徒会長が妹には高圧的?で喧嘩早いだなんてこの学校の模範に疑問を持った。結論、この人怖い。横にいる綾小路に耳打ちする。

 

 

「怪我ないか綾小路? 自分どこか打ったみたい。だから保健室行きたい」

「俺はないが。て言うかもうやってないだろ」

「じゃあ通報しよう。110と119番」

「完全に不審者への対応だな」

「え、違うの?」

「……………」

 

 

 お前に言ってるんやぞ。生徒会長。

 

 沈黙を続けたお兄様はこう切り出し「面白い生徒がいたものだ。綾小路と……矢野記憶しておく。お前達がいればDクラスも明るい」

 

 

「鈴音、死に物狂いで足掻け」

 

 

 有難い言葉残し帰っていた。なんだこの空気。変な空気感と共に堀北さん、綾小路、俺が残された。

 

 

「お腹痛い」

 

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「矢野治ったか?」

 

 

 

 

 学生寮の前に設置されたベンチに身を預けていると綾小路に声をかけられた。手に持った飲料水を片手に答える。

 

 

 

「まして言うたらまし。て言うかもう治った」

「そうか。でも凄いな。あれだけ動けるなんて」

「あ?馬鹿にしてんのか。一発殴られただけだよ。酔っ払いや子供同士の喧嘩に巻き込まれた気分」

「そ、そうか。悪かった。巻き込んで」

「いや綾小路は悪くないだろ。ましてや首突っ込んだ部外者の俺が悪い。それがこの代償」

 

 

 

 自分の腹を撫でて答える。負傷した腹部には出血もないし打撲痕もなかった。言わば軽傷。腹部を殴打された圧迫感もないし気持ち悪さもなかった。好奇心から出た罰とも言える負傷。

 

 

 生徒会長が去った後、俺達3人はこのベンチに鎮座していた。持っていた2本の飲料水は1本綾小路にあげた。少し驚いた反応と共に礼を言わた。もう1本は堀北さんに差し出したが「いらない」と冷たくあしらわれた。

 

 

 

「いや、でもこっちが驚いた。綾小路が喧嘩強いなんて」

 

 

 沈黙を続ける堀北さんが肩が少し揺れた。どうやら彼女も興味がありそうな様子。

 

 

 

「そんな事ないぞ。俺は武道なんて習った事ないし矢野みたいにスポーツが達者じゃない」

「あぁ、それ自己紹介の時やつ? 趣味スポーツ全般なんて言ったけどどれもからきしだよ。半端者。どれも中途半端」

「けどいい身体してると思うぞ」

「言い方。綾小路も習ってたんだろ?ピアノと書道」

 

 

 

 飲み物を口に付け回答を濁す綾小路。その目にはなにが映っているのか。わからなかった。ただ

 

「綾小路も冗談言うんだな。意外」だった。

 

 

 

 

 

 

「今、発言良いかしら」

 

 

 

 沈黙を続けていた堀北さんが口を開いた。下向いてた彼女が顔を上げた。俺達はそれに「いいぞ」「いいよ」と答える。

 

 

 

「……悪かったわ。2人共巻き込んで」

 

 

 

 目を伏せて詫びる彼女に返す。

 

「さっきも言ったけど首突っ込んだ俺の責任。ごめんね。兄弟同士の問題に。ケチ付ける気もないし権利もないよ」

「そう言ってくれると助かるわ。綾小路君にも迷惑かけたわね」

「気にしなくて良いと思うぞ。俺の意見は矢野と概ね一緒だ」

「らしいよ堀北さん」

 

 

 そう言うと堀北さんは「そう」短い返事を返してきた。

 

 

「ま、厳しそうなお兄さんだね。え、いやごめんなさい」

 

 これは意見に反するらしい。睨まれた。難しいなこの子。

 

 

 

 教室で見かけた事はあるが自己紹介の時いなかったし、誰とも接する事ない生徒だと記憶している。確か声をかけた生徒が冷たく返されたのも聞いた話だ。学業や体育行事には優秀だがプライドが高く気難しい子、だと評する。雰囲気はやはり兄弟か。さっき会合したお兄さんと少し似ている。堀北さんとはこれが初めての会話だった。

 

 

「兄さんを悪く言わないで。不甲斐ない私を指導してくださっただけ」

 

 

 重症だった。ただ口を出すのは不粋なのでやめとく。

 

 

「でもこれでわかったんじゃないか。少しは人と関わるべきだって」

「否定も肯定もないわね。今日の事は私自身の問題だもの」

 

 

 

 

 

 入学してから交流があった綾小路と堀北さんはなにやら答弁の最中。俺は蚊帳の外なので適当に相槌を打った。聞こえてきた内容としては堀北はもっと人と関わり見解を広げろとの事。それはさっきの生徒会長にも言われてたし彼女自身も悩んでいる様子。確かに彼女の能力は高いと言わざるを得ない。ただ圧倒的に欠如しているのが協調性、社交的な部分。お兄さん大好き主義がある感じ他の人に興味はないのだろう。喋りかけられても攻撃的な応答で周囲から反感を買いやすい。孤高と孤立は紙一重だが彼女は後者な気がする。勿体ないな。

 

 

 

 

 彼女への評価はこんな感じだ。これから彼女が一皮剥けて成長していく気配や期待はある。だが俺と彼女は他人な訳で堀北さんの成長を願いつつそれを他人事の様に思う。言わばクラスメイト同士がんばろー程度に。茶を啜る様にペットボトルの中身を飲んだ。

 

 

 

「…堀北さんの性格上他人に頼らないならそれで良いと思うよ。実際能力は高いし。けど少し勿体ない気がする。何事も社会もそうだけど1人では限界がある。多数決や数の暴力、少数の意見、孤独は色々不便な事も多いよ。昔から人間も群れで生活してきたから。コミュニティで言えばこの学園もそうだから。堀北さん勿体ない。超優秀だから」

「だからもっと周りを見ろってこと?」

「そうゆうこと」

 

 

 

 

 

 

 

 開いてしまった口に後悔する。思いのほか長くなった言葉を口に出してしまった。そう、俺は彼女を高く買っていた。少しの欠点があっても超優秀な人材には変わりない。品行端正、成績優秀でいてそれに社会性まで加わればどうなるか。誰もが、どの団体も欲しがる人材になるのだろう。そうか。それが彼女の兄である堀北学か。今更ながらこの学園の生徒会長に敬意を払う。そしてなぜ自分が彼女とその兄を高く買っているのか結論が付く。───これは嫉妬だ。

 

 

「ごめん急に話に入って。痛みも引いたしもう行くよ。綾小路、連絡交換しよう」

「え、いいのか? いや、いいぞ」

「なにか2人の関係性が気色悪いわね…」

 

 

 

 げげ、と堀北さんが頭を抱える。うるせぇ男の友情だぞ。それに今日話してわかった。コイツは──やべー奴だと。さっきの生徒会長に見せた動き胆力、精神力はまともじゃなかった。何事にも動じない姿勢も窺える。生徒会長が言っていた全科目50点の男と身体能力。

 

 ───コイツ、実力を隠しているな。

 

 

 

 

 

 

 が、それが事実だったとしてもスタンスは変わらない。1クラスメイト。詳細がどうであれ本人のしている事にはどうでも良かった。今は波長の合う友人の様に感じる。ただ何故実力を隠すのか疑問感が残る。不気味や奇妙と少し思う。疑問、疑念、興味。俺はこの夜の出来事で綾小路にそう感じた。

 

 

 

 

 

 

 席を立って、帰路に着こうとする俺を堀北さんが呼び止めた。

 

 

 

「余計なお世話を口にしながら先に帰ろうとするのね。私への評価を散々口にしておきながら勝手だわ」

「悪かった堀北さん。連絡先交換する?」

「そうゆう事じゃない。今日初めて喋った相手としては気持ち悪いわね」

「この子怖い。ナイフだ。尖ってる鋭い」

「それは陰口と取ってもいい? 生憎今はボイスレコーダーもコンパスもないのだけれども」

「助けて清隆」

「……………」

 

 

 

 呼び止められた挙句これか。なんとも言えない口撃を受けている。耐え難い。清隆に助けを求めても沈黙。無視とはやはりコイツ、冷たい感情がない冷酷人間なのではと疑いたくなる。

 

 

 

 

「素直に矢野に協力を仰げばいいじゃないのか? コイツは腕も立つし勉強も出来る。クラスメイトとも顔がきく」

「ま、お二人みたいな隠した実力も天才的な側面もありませんが」

 

 

 

 これじゃ誰にでも遜る八方美人みたいだな。唯一の長所、並の社交性。これでこの教室を生き残るには懸念感が残る。1-Dにも天才的な生徒が複数人いる。苗字が平田に櫛田、堀北、綾小路、須藤。この4人が能力としても優秀か。最低なクラスでも腐らず光り輝く天才はいるんだとこの生徒達で学んだ。天才や優秀な者は数少ないが平均的な生徒、平均以下の生徒は巨万といる。いつも俺への評価は中の上、やや優秀、器用貧乏でいつも打ち止めが常だ。変わりたい、特別になりたい、格上へ天才達の領域に達してみたいそんな気持ちがいつも頭の中を過る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度の試験に向けて勉強会を開きたいの。……協力してくれるわよね? 矢野君」

「悪い矢野。堀北は口下手で人付き合いも下手だ。協力を求む」

「クラスメイトからの誘いに断るわけないだろ。よろしく2人とも」

 

 

 

 天才達からの誘いに俺は答える。凡人な俺は特別になりたい。それが天才達からの駒使いだとしても受け入れよう。それがこの実力が評価される学園での生き方だとしても。

 

 

 ようこそ実力至上主義の教室へ。刺激的な出会いがこうして始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






矢野 瑶(やの よう)

学力 C
知性 B
判断力 A
身体能力 C+
協調性 B


最高評価とまでは行かないが伸び代がある生徒。対人関係も良好であり受け答えも十分である。ただ小学生、中学生の記録が乏しく欠席も続いた事からDクラスに配属する。
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