帝国の鬼狩り   作:ひがしち

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第一話 橘千尋

大阪市、今里。

この辺りは、かつての北の大火にも、何万戸にも被害を被った淀川大洪水にも見舞われたいわゆる不幸の街だ。

 

夜中の二時である。

中年の酔客がひとり、縄のれんから追い出されるように出てくると、千鳥足で帰路に向かって歩き出す。

 

僅かな月光の灯りを除けば、明かりはほとんど存在していない。都市開発だなんだと創られた街灯はチカチカと点滅している。

遠くで、野良犬の遠吠えが聞こえた。

 

酔客は犬の糞やら電柱やらを避けながら歩いている。彼にとってはいつもの日常なのだ。

気分がいいのか、鼻歌も歌っている。

 

(いい月やなぁ……)

 

本当にいい月だった。満月は少し欠けたほどの塩梅で、うっすらと雲がかかっている。

何もかも、本当にいつも通りの夜だった。あとは家に帰って布団を被って寝るだけだ。

 

見慣れた景色。

たった一つの違うのは、向こうからくる男だった。

 

奇妙なほどキチッとしたトレンチコートと革靴を履いて、西洋人のような杖を突いている。

それが、ふたり。

 

(なんや、あれ)

 

ヤクザ者とも見えなかった。ヤクザというのはもうちょっと風景に溶け込もうとしてくるものだ。だからといって、外国からお越しなさった外人さんのようなハイカラな連中がこんな時間にこんな場所にいるとは思えなかった。

 

(なんやっけ……は、はろうえん?西洋の祭りでそんなもんあった気が……)

 

酔客は、男たちの顔を見てぎょっとした。

その顔があまりにも白いのだ。西洋人のような白さではない。もはや病的なまで白く、瞳孔は爬虫類のように縦に開いている。

 

「すんません、通りまっせ」

 

一声かけて、酔客は横を通り過ぎようとした。

もう酔いは半ば醒めている。

もめ事と面倒ごとはごめんだ。

 

下町の路地は、三人並べば窮屈なほどである。

仁王立ちになっているトレンチコートの白人ふたりをすり抜けようとすると、すぐそばを通るしかなかった。

その時である。

酔客は、白人男の手に、剣呑なものが握られていることに気がついた。

 

刀だ。

 

廃刀令が出た時代、酔客がまだ子供だった頃に見かけた記憶があるような、刃渡り120程度か、もっとはあろうかという刀だ。杖に見せかけた刀。

 

何でそんなものを、とか、逃げよう、とか。

そんな思考が交ぜになった。

が、次に感じたのは、熱い、ということである。

 

「あ」

 

酔客は、泣きそうな顔で、腹を抑えた。

鮮血がしぶく。

その視界が、静かに横にかしいだ。

 

臍を横一文字に斬られたと同時に、頸も斬られたのだ。

何が起きたかわからぬままに、酔客の首が、あっけないほどにころん、と転がった。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

「いい月だなぁ……兄貴」

 

白人男は、ニヤリ、と嗤った。

すると徐々に白い肌がパリパリと落ちていく。白い肌に見えたものはいわば仮面。

それはつまり、男たちは面が割れてはまずい、不都合と言うことを意味している。

 

もちろん、火傷した顔を安っぽい仮面もどきで覆っている、などということでもない。その爬虫類のような目は、いかにも哺乳類のものではない。

 

ふたりは鬼である。

 

兄弟といっているが、別に血の繋がりはない。

数年日本各地で人間狩りをやっていた時に意気投合して、義理兄弟の契りを結んだ。鬼は本来群れを成すものではないと言われているが、例外として義理兄弟の関係である。鬼が義兄弟、というのは妙なものだが、人間の言葉に無理矢理当てはめれば……ということである。

 

兄は戒、弟は元寇という。

 

「まったくいい月だ」

 

戒もニヤリ、と微笑んだ。

左手に持った愛刀に付着した血液を、下品にベロで舐め取った。

 

一瞬で死んだ酔客の肉体は逆に血が垂れないように綺麗に食べた。あとは土に染み込んだ鮮血と、少々の脳漿の破片と酔客の服だけが残されていた。

 

「死にたての血ってのはやっぱこたえられねえな……」

 

兄の言葉には陶然の気配があった。

二人の趣味は他の鬼とは多少違い、人が苦しむ様に興奮するわけではなかった。

新鮮さだ。人間は死にたてが一番美味いと思っていた。だからわざわざ痛めつけるなど面倒なことはせず、一瞬で殺し、後は一滴残さず骨までしゃぶり尽くす。

 

「ああ、兄貴。ここらのヤツらはキクな。弱っちくて、丸々太ってるくせに、商売人だけにいいもん食って血がうめえんだ」

 

「こんなのが何万といるんだから、そりゃあ……な」

 

「たまらんぜ」

 

「たまらんなあ」

 

ふたりは呵呵大笑した。

目について面倒になりたいまでは思っていないが、通行人か、警察でも来てくれれば、そいつも刀の錆にしてやろう、とくらいには思っていた。この街の警察なんてたいした脅威にはならない。

だから、こっちに迫ってくる足音を聞けば、踊り出さんばかりの気持ちになるのだ。

 

「兄貴」

 

「応よ」

 

刀を構える。

やってくるのが誰であれ、大体は一瞬で死ぬ、と思っていた。

 

「……人を悪戯に痛めつけるのではなく、その味を求めて人を一瞬で殺める」

 

路地の向こうから声がした。

女の声だ。

血臭にも、動じたふうがない。

 

「貴方方なら……ひょっとしたら」

 

が、現れた女は、大阪の女と言うにはあまりにも異様な風体だった。

月光に照らされたその姿は、背丈こそそこらの女と大差ないが、帝国陸軍を思わせる黒い襟。無骨な衣装とは裏腹に羽織は白を基調とした鮮やかな彩色。

やや大きめの垂れ目は格好に見合わず可愛らしく、艶やかな唇はもはや官能的だった。更には思わず手を伸ばしたくなるような、腰まで伸びた翠の黒髪。一対の蝶の髪飾りが女の魅力を駆り立てる。

 

その女の美貌は戒と元寇がみても魅力的に見えた。

だが、それ止まりだ。結局人間は新鮮さ。味が売りだ。

 

女は男に比べて脂肪が多い傾向にあり、締りがないが、筋肉の繊維が美しい。

特に瞳だ。女は、特に未成年の女は汚れなき眼を持っていることが多い。その目を見ながら肉を喰らうのが兄弟特有の女の楽しみ方だ。

 

(ああ、鬼殺隊か)

 

なるほど。なら女の身なりも納得だ。

だが、

 

「おい元寇」

 

「わかってるよ」

 

鬼殺隊の女が只者ではないことは、すぐにわかった。

どの国、どの土地でも、歩き方を見れば戦士や鬼の強さというものはわかる。

 

単に筋肉に頼っているだけの人間や鬼は、足の裏の使い方がぞんざいだ。

大股でどしどし歩いて、重心のバランスなど気にしない。そういう力自慢の素人が、ちょっと動作の起こりを押さえられて急所を切り裂かれ、ひいひいと泣きわめくのは、この兄弟お気に入りの見世物だった。

 

だが、目の前の女鬼殺隊員は摺り足で油断なく歩いてきた。体幹にも一切のブレがない。ただ鍛え込んでいるのではなく、己の肉体を指先一本まで理解して、自分の意思で動かしている本物の戦士の挙動だ。

 

(こいつは……)

 

先程の酔客を斬った時とはまるで別種の高揚感が、戒の脳髄を突き上げてきた。

 

この女は強い。

 

強いのならば、斬ってみたい。

斬られてのたうち回って、絶望する時の血を新鮮なうちに啜りたい。それは女であろうが男であろうが満足させてくれる。

一歩、踏み出す。

 

「テメェの位は」

 

「貴方方は他のものを……具体的に言えば、鬼になってから穀物などを口にしたことはありますか?」

 

女は遮るように質問してきた。

ますますいい。

 

この土地のヤツらは、見せかけの連中が大体だが、持っている者はとことん強い。中でも、ここ天下の台所と呼ばれた場所は『裏』の勝負が日常茶飯事だと聞く。だが、そういった『裏』の人間はそうそう表には出てこない。殺しをしない裏の生き物など戒と元寇からすれば退屈この上ないのだが、それが故に豊潤な血が吸えると考えれば、まあ文句はない。

 

が、久々に強者と戦える、となれば話は別である。

いつだったか、丁と交えた一戦を思い出して興奮する。

 

「俺にやらせてくれ」

 

元寇が、先に出た。

同じ気持ちと見える。

赤い目が、燃え盛る本能寺のように、メラメラと輝いている。

こうなったらもう止められない。

 

(まぁ、やつの断末魔を肴にするのも粋かもな)

 

戒はそれで十分だった。

 

「私としては戦う気はないのですが……仕方はありません」

 

蝶のような女が、すらり、と腰の刀を抜いた。

斜め45度ほどに刀を傾け、体重を落として上段の構えを取る。

 

(バカめ)

 

戒たちの使う武器は、刀よりも硬く、大木だって一刀両断できる質量を持つ。引いて切るのではなく、そのまま重さで、物体物質そのものを粉砕して“斬る”。それ故に、受けることは出来ない。刀の形状をしているのは、ただ単に人間を驚かせるだけである。

 

どれほど強靭な金属でできていても、受け太刀など叶うものでは無い。事実、これまでに何人のも剣豪や鬼狩りを討ち果たしてきたのだ。

 

「行くぜ」

 

嗜虐の欲求を抑えられず、元寇が先に動いた。

体を奇妙にくねらせ踊りかかる、特有の技法だ。その特有の歩法は、相手に間合いを悟らせず、常に自分の切っ先の範囲に敵を捉えるところに、理合がある。

単にあの刀が強いというだけでは、戒のことを兄貴とは呼ばない。隙あらば切ってやるつもりではいたが、少なくとも

 

(ただではすまぬ……)

 

故に、元寇は戒のことを兄貴分と考えているのである。

突き出した片手の超合金刀を、蝶の女目掛けて振り下ろす。

下がれば必殺の突きが飛び、横によければそのまま横薙ぎに斬り捨てる。何十何百もの鬼や鬼狩りを屠ってきた必殺の型だ。

 

「んっ」

 

女は少し悶えた。

上段の構えを滑らせるように受け太刀に移動させる。

一分の隙もない、惚れ惚れするような動きだった。

 

(相手がオレたちでなきゃ通じただろうな)

 

元寇は蝶の女が両断され、その美しい羽織がさらに返り血で色染めされ、真っ赤に染まる様子を想像し、欲情した。

キン。

 

短い金属音がした。

元寇はそれを、女の刀が折れる音だ、と想像した。

が、続くはずの血しぶきは、上がらなかった。

 

「あ」

 

元寇の間の抜けた声を漏らした。

からん……と、小さな音を立てて土の上に転がったのは、超合金刀の刀身だった。

 

「は、花の呼吸……」

 

ゆっくりと、元寇の身体が崩れていく。

超合金刀の斬撃を受け流しながら刀身を両断し、その勢いのままに元寇の頸部を一刀両断したその太刀には、白を基調とした羽織を着た蝶の女が手にするその刀身は、桜にきらめく美しい刀身だった。

 

「花の呼吸、だって……!?じゃあ、まさか……柱か!?」

 

いかにも。

超合金刀を一刀両断し、元寇の頸を気付かぬ間に落とした蝶女が手にするその刀身には、『悪鬼滅殺』の文字が掘られている。これは柱だけに掘られる特別な文字。

 

目の前にたってい蝶の女はただの人間でも鬼でもない。

見よ。

あの桜色に煌めく日輪刀の刀身を。

悪鬼を滅ぼし、全てを包み込む太陽の力を受け継いだその刀。

それがただの刀であるはずがない。

ただの兵士であるわけがない。

 

夜闇の中に立つその姿、自分たちが鬼になった時、鬼の始祖である鬼舞辻無惨から聞かされた危険な存在。劣等種である人間に攻め入った下弦の鬼達が敗れ去った……。

 

「クッソ!もう補充されやがったか!」

 

「う〜ん……人を物のように言うのはどうかと思いますよ?」

 

桜の日輪刀を手にした女が、一歩踏み出て、街灯の光の下で桜色に輝いた。

死神のようだった。

 

「鬼も人間も仲良くできたならいいのに……」

 

「ハッ!鬼と人間が仲良くぅ?バカ言うじゃねぇ!食物連鎖の関係である以上、仲良しこよしなんざ出来るかよ!」

 

戒は虚勢を張った。本当は怖くて怖くて仕方がない。

だがここで背を向けて逃げれば、唐竹割りに斬り殺されて、それで終わりだ。

ざ、と女が摺り足で距離を縮めた。

 

(背に腹は替えられねぇ)

 

左手をサッと傷つけ、血飛沫をあげる。

 

「!」

 

油断なく女が下がった。距離を縮めた餌食にするつもりだったが、やはり素人の足運びではなかった。宙に解き放たれた深紅の血が変化する。夜空がまるでガラスでも砕け散るかのようにパリン、と割れる。

そこから現れたのは、橙色の姿に九つの尾を持つ狐、九尾だ。体長は六尺程もある。もっと大きい九尾を出すことも可能だったが、今、この女を殺すつもりはない。あくまで女から逃げるための囮だ。

 

瞳の部分が紅く、鬼と同じように縦に割れていることから鬼の生物だということがわかる。

事実、戒の血鬼術は、そこらの動物を鬼に変えることだった。

鬼舞辻無惨は面白い血鬼術だと気に入っている。もう少し、ほんのもう少し血を多く吸えば下弦の壱にしてやると言われているくらいだ。

 

「やれっ」

 

命令一下、九尾の瞳が蒼から紅に変わり、女に牙を剥く。

一撃で鉄鋼でも噛みちぎることが出来る威力の噛みつき攻撃だ。

だが、女はそれほど動じない。

 

腰の鞘から抜いた小刀を慌てず九尾の腹に当て、九尾を後ろに吹き飛ばす。

無論、ただの小刀ではない。特別に発注した日輪の小刀だ。

同時に、斜め前方に走っている。

 

手には横に構えた日輪刀。

 

「九尾!」

 

女の後ろから九尾が飛びかかった。鬼にも通用する最強の噛みつきである。いかに噂の柱とはいえ……

そう考えたのは、つかの間だった。

 

「!!」

 

戒は息を呑んだ。

九尾の口がドンドン迫ってくる。

蝶の女は後ろに目でも着いているのか、九尾が噛みつこうとした時に身体を捻り、まるで当然かのように避けて見せた。

 

「ギャアアアッ!」

 

大阪の夜に戒の断末魔が響いた。自分が呼び出した血鬼術の九尾に喉元を噛み付かれたのだ。鬼の喉から鮮血が吹き出て、女の羽織に付着するが、蝶の女はまるで気にしていない。

 

全集中 花の呼吸 伍ノ型 徒の芍薬

 

中段に構えた日輪の刀が、戒の喉元から腹にかけて両断する。

静かに裂ける戒の身体。頬まで裂けた口を開けた顔は絶望一色。そのまま戒の身体は自重で二つに裂け、静かに灰となった。

 

しかし戒は必死に逃げているつもりだった。あのバカ狐を処分し、新たな鬼物を用意する。

そして自分が殺されたことに気がついたのは、完全に身体が灰となり、全てが空に還った時だった。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

「またダメだった……」

 

女は刀を収めると、緊張の糸が切れた。その端正な顔を悲しみに歪ませると、月を仰ぐ。

 

「花柱様、お疲れ様です」

 

路地後方から、流麗な少女の声がした。彼女の付き人である鬼殺隊隠匿部隊『隠』である。情報漏洩防止のため、女も隠の名は知らないが、隠は女の名を知っている。

鬼殺隊花柱・胡蝶カナエ。それが女の名前だった。

 

「ありがとう。二人とも斬ったわ……またダメだったけどね」

 

「花柱様……」

 

「大丈夫よ!だってまだまだ鬼はいるもの!」

 

悲しいかな。

鬼殺隊の柱である胡蝶カナエが、鬼がまだ多く潜伏していることを楽しそうに語るとは。見るものが見れば彼女が狂ったように見えるかもしれないが、これがいつもの彼女だ。

 

(でも──被害は少なくなって欲しいわ)

 

カナエは足下の血痕を見た。

殺されたこの男にも家族があり、未来があり、夢があっただろう。

遺族はついぞ真相を知ることになるだろう。

だが、ここには確かに人生があったのだ。

そして、そんな人生を悪戯に消し去る怪物共が、夜の闇に紛れて蠢いている。

 

(許せるものじゃないけど……鬼は悲しい生き物だもの)

 

今回の鬼は“お話”が出来ると思った。

知性的で、人を食べるという行為を娯楽ではなく食事の一部と感じていた。人間を悪戯に傷つけるのではなく、敬意を払って食す。

だから……だから最初に喋りかけたのに。

 

「そういえば花柱様、例の少年、どうですか?」

 

隠の女が、そんなことを言い出した。

 

「千尋くんのこと?」

 

話は、最近新しく蝶屋敷にやってきた橘千尋(たちばなちひろ)という男だった。

彼の生い立ちは話せば長くなるので省略するが、京都出身の日本男児である。

 

「強いわ。きっと、柱になるのもそう遠くない」

 

彼は強い。

適性がある呼吸を見つけるのに二年半も費やしたようだが、その分経験豊富であり、威力は乏しいが花の呼吸以外も使えるという器用さ。学習能力も高く、刀以外の武器も扱える。

鬼殺隊の第一線で活躍する、花柱の第一継子だ。

 

(でも‥‥ね、)

 

カナエには、どうしてもそれは納得できることではなかった。

 

(こんな血に塗れた戦場に、子供を立たせるなんて‥‥)

 

 

 

☆★☆

 

 

 

埼玉県の離れにある廃村。

かつてはどの家でも蚕を飼って養蚕業を村全体の収益とし、村周辺に桑畑が広がっていた。それはそれは美しい絹を紡ぐので、人々はそれを讃え、いつしかこの村を『絹美』と呼んだ。

 

日露戦争において軍艦をはじめとする近代兵器は絹糸の輸出による外貨によって購入されたといっても過言では‥‥いや、だいぶ誇張表現はあった。

ただ、この村が潤っていたのは事実だった。絹美村は栄えていたはずなのだ。少なくとも、日露戦争が終結するまでは。

 

人里から少し離れてはいるものの、道路などは整っているし、熊が出るという情報もない。廃村になる理由はひとつ‥‥鬼の仕業だろう。鬼が、この村を滅ぼしてしまったのだろう。

 

「信濃、おいで」

 

「カァ‥‥」

 

今回、千尋は先遣での単独任務だった。

 

「‥‥はぁ、なんで私一人なんだ……」

 

千尋は自分のことを神に愛された子供だなんて思い上がっているわけではもちろんなかったが、さりとて十六歳の子供である。よく世間を知らぬからこそ、不満は出てくるし、不安だってある。

それでも命じられた通りに任務地に向かい、戦いの準備を進める。

 

「はぁ‥‥」

 

──そこに広がっていたのは、これから行こうとする任務のやる気を削いでくる光景であった。

積み上げられたいたのは、肉の塊だった。

 

いくつも、いくつも、いくつも、いくつも、白い、黒い、褐色の、肉の塊が服を剥がれて積み上げられている。ねっとりした、血の匂いと腐敗臭。

人間の死の匂い。

 

「腐敗が随分進んでいる‥‥しかもなんだ?糸か?」

 

腐敗の進行度合いを見る限り、この死体の山は随分前に積み重ねられたもののようだ。

それに死体の山には糸のようなものが巻きつけられていて、死体の状況確認を邪魔している。おそらく、鬼は異形か異能の鬼だ。

 

「面倒だ。ここら一体吹っ飛ばすか」

 

『ダメデスゥ‥‥ソンナコトシタラ、政府ガ調査ニヤッテキマスゥ‥‥モウスコシ穏便ニィ…』

 

「それもそうか‥‥なら、一軒一軒崩壊させるってのはどうだ?人里から離れているし、廃村だ。崩壊してたって不思議じゃないだろう」

 

『ソレ‥‥一人デデキマスカァ?』

 

「崩壊寸前の家屋だらけだ。柱一本壊せば勝手に崩れる」

 

言うより早く、千尋は適当な支柱を壊し、家屋は一つ一つ丁寧に崩壊させていった。

雨風で風化老朽化が酷く進んでおり、子供の腕力でも簡単に倒壊させられた。村の荒廃具合がよくわかる。

 

「信濃、村の周辺に他の建造物がないか見てきくれ」

 

『カァ‥‥』

 

信濃を周辺の散策に向かわせ、引き続き千尋は家屋を倒壊させていく。

そうして5個崩壊させたところで、信濃が有益な情報を持って帰ってきた。

 

『北東ノ方ニ大キナ神社ガアリマシタァ‥‥糸ノヨウナモノデ覆ワレテイテェ‥‥ソコニ鬼ガイルト思ワレマスゥ‥‥』

 

「でかした、信濃」

 

北東に糸まみれの寺院‥‥先の死体にも糸が巻き付けられていた。

寺院には鬼が住み着いていると考えても間違いないだろう。しかし神社はまずい。何が不味いと、千尋の精神的負担が大きい。

 

「神社かぁ‥‥やりずれぇとこに住みやがって‥‥」

 

千尋は根っからの軍人気質であり、国家神道を信仰している。

勤皇精神あふれる日本男児である千尋にとって、非常に戦いずらい場所であった。

願わくば鬼には神社から出てきて欲しいのだが‥‥そうも言ってられんだろう。

 

「はぁ‥‥」

 

死体を見つけた時と同じように、深いため息をつく。

行きたくない。行きたくないのだが、行かねばならない。

素直な少年なのだ。

半ば壊れた門を蹴って、神社に突入する。

 

不思議と、腐敗臭はしなかった。

鬼の本格的なねぐらなので、そこら辺に死体が転がってるものだと想像していたが、どうやらそうではないらしい。そればかりか、絹のような糸があちらこちらにかけられ、少し幻想的だった。

 

その絹の山の中に、()()がいた。蹲っているようだ。

最初、千尋はそれを狸か何かが、ねぐらで過ごしているのか、と思った。

 

くちゃ。

くちゃ。

くちゃ、くちゃ、ぐぢゃ、ぐぢゃ。

 

なにか柔らかいものを食べようとしているような、それにしてはやけに噛む、そんな音。

聞いてて非常に気分が悪い。

 

(‥‥アイツか)

 

ソイツが、振り返った。

噛み口だ。

主に蜂や蜘蛛などの肉食系の昆虫の口を用い、ソイツは、死体の肉を齧りとっていた。

口元の汚れから、何人、何体もの死体を貪ったのか、よくわかる。

 

そして、今も。

ソイツはまるで蚕だった。決して比喩ではない、白くでっぷりとした身体に3対の副脚。蚕のような風貌。しかし『まるで』と言ったのは、その蚕が巨大すぎたからだ。

 

花の呼吸

 

気がつくと、走っていた。呼吸を整え、斬り込んだ。

口の中がアドレナリンの鉄の味で一杯になり、目の前が鮮明になる。

 

肆ノ型 紅花衣

 

一文字に流す日輪の刃が、巨大な蚕の首を両断する。

それだけだった。

あまりにもあっけなく、まるで作業のように、千尋は蚕鬼を絶命させた。

 

『‥‥終ワッタンデスカァ‥‥?』

 

「いや、まだだ。コイツは糸を吐けないはずだ」

 

千尋が討伐した鬼は蚕の幼虫だった。

通常の蚕であれば、幼虫では糸を吐かない。正確には、餌を必要とする段階では糸は吐かない。鬼になったことで生態が変わった可能性もあるが、状況を考えれば、この鬼以外に、親玉となる鬼がいると。

 

『増援ハァ‥‥?』

 

「必要ない」

 

千尋は来るべく室内戦の準備として、懐から()()を取り出す。

 

『ソレ、使ウンデスカァ‥‥?』

 

「ああ、いざとなれば、これで頸を吹っ飛ばすさ」

 

この拳銃は通常の拳銃だ。日輪刀のような猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石を用いた拳銃ではなく、普通の金属で作られた、米国製のコルト拳銃だ。

したがって銃撃で鬼を殺すことは不可能だが、接近戦においては刀よりも強力である。

なお、どうやって手に入れたのかは秘密だ。

 

「信濃、私の後ろを見ててくれ」

 

『カァ‥‥』

 

信濃を肩に止まらせ、行動を開始する。

 

「残弾は16発‥‥また買いに行くか」

 

千尋は己の射撃の腕にかなりの自信がある。鬼に通常の銃を撃っているため必殺とは行かないが、人間相手であれば一撃必殺を誇る。

20メートル圏内であれば、対象に外したことはないほどにだ。

 

「行くぞ、信濃。音を立てないよう気をつけろ」

 

拳銃に8発弾丸を込め、セーフティーレバーを外す。

そんな時、

 

「こんな場所に入り込むとは、ご奇特な方だ」

 

扉の向こう側から、男が現れた。

紫色の袴と謎に綺麗な狩衣を着用している。格好からして宮司だろうが、その気配は宮司ではない。

 

「貴様ここで何をしている。よもや住んでいるわけではあるまい」

 

「あぁ武器をおしまいください。ここは御神体とお蚕様が住まう場所です」

 

「答えろ。さもなくば撃つ」

 

「血気盛んな子だ。私はどこから見ても宮司でしょう。ご考察の通り、私はここに住み産土神様に尽くしております。さぁ、答えました。武器をお下げください」

 

宮司が言うとおり、ここは拝殿で、御神体を安置する場所である。血で汚してはならぬ場所なのだ。

ここで戦うことは、千尋とて本心ではない。

刀を鞘に戻し、拳銃を懐のホルダーにしまう。

 

「さぁどうぞこちらへ。お茶でも出しましょう」

 

「‥‥鬼が茶を出すのか?」

 

「ええ。私は鬼ですが神に仕える身。食べ物は粗末に致しませんとも」

 

「絹美村の中心には大量の腐乱死体があった。貴様らにとって人間は食い物ではないのか?」

 

「‥‥あんな外道たち、私の子供には食べさせません。あの死体の傷は私がつけたものです。死しても報いを受けるための傷、ご理解ください。さぁ、どうぞ。絹のみで作られた座布団です」

 

「‥‥失礼する」

 

絹のみで作られたという座布団に尻を下ろす。

‥‥蝶屋敷にあるその座布団より座り心地が良いのが腹立つ。この村が健在であれば、今すぐにでも四つほど買っていたところだ。

 

「それで、くどいようだが、貴様は鬼ということで間違いないんだな」

 

「ええ。あの御仁に血を分けてもらってから、この素晴らしい身になれました。これで一層、修行に励めます」

 

「鬼になったんだぞ。昼間の祭祀ができないんだぞ、思うところはないのか?」

 

「もはやこの村に祭事をするだけの者はおりません。私が鬼になったところで変わりませぬ」

 

「‥‥そうか」

 

この男は、鬼という外道に落ちた身でありながら、本気で神に仕えている。

千尋が思うに、最も戦いづらい相手だ。

 

「先ほど、絹美村の村民を『外道』と評したな。なぜだ。調べた限りでは不義理があったようには思えんが?」

 

「この村の者たちは、何も知らないお蚕様を利用し、私腹を肥やしていたのです。こんなに可愛らしいお蚕様を‥‥残酷とは思いませんか?」

 

「まぁ、蚕が──」

 

()()()ですッ!!」

 

「‥‥失敬。確かに『お蚕様』は可愛らしい姿をなされている‥‥だが、それは村民が生きるためには仕方のないことなのではないだろうか。誰しも生きるために他の生命を奪う。それが生物というものだろう?」

 

「ええ、そのことは私も理解しております」

 

「‥‥ではなぜ?」

 

そこまでいって、千尋は再び拳銃のセーフティーレバーを外した。

宮司の感情が、激しい怒りに染まりつつあったからだ。いつでも早抜きできるよう、準備を整える。

 

「絹美の者たちは、養蚕業から手を引こうとした‥‥純粋なお蚕様を利用すルだけ利用シて!用が済んだラ捨てるなんテあってイイことではない!!ソれニッ!!養蚕業ガ!衰退スルワケガナイイッ!!ココココンナニモオ蚕様ハ愛クルシイノノニニニ!!絹ハ!!コンナナナニモォ!!ウツクシシイノニニニニッ!!」

 

その瞬間、千尋は拳銃を引き抜き、宮司の頭に3発撃ち込んだ。

鬼とはいえ、脳がなければ動くことはできない。脳が再生する前に、この鬼の頸を斬る。

そのつもりだったのだが、

 

「オオオオ蚕様ハァッ!!ワワ私ガガガ守ルルルルルルゥッッ!!」

 

そのまま、前蹴りが来た。

吶喊する千尋に対し、宮司らしからぬ動きで千尋を派手に吹き飛ばしたのだ。

そのまま、倒れた千尋を踏みつけるようにして宮司が着地する。

 

(なんだこの動き‥‥!?)

 

「オ前‥‥オ蚕様ヲ殺シタナァ」

 

「ぐううっっ!」

 

拳銃に残った5発を一斉に撃ち出すことで宮司を怯ませ、強引に身体を起こすことで、千尋は鬼を振り解いた。

 

「はぁ‥‥はぁ‥‥」

 

立ち上がった視界に、先ほどの鬼が喰らっていたであろう死体が入ってくる。間近で見ると、やはり蚕のような食い方だ。人間のようだが、人型というほど美しくはない。湯気を立てる内臓、糞便の匂い、見開かれた目、こぼれ落ちる血。

 

(なるほど、繭の中に死体を隠すことで匂いを抑えていたわけか。下等生物らしからぬ知恵だ)

 

気がつくと、宮司の顔が蚕の成虫のものに変わって行った。

黒目が複眼のものに変わり、額から触覚のようなものが伸びはじめている。

顔の形が蚕になりはじめたのなら、脳みその場所が変わっていても不思議ではないだろう。

 

「蚕に取り憑かれた哀れな鬼がッ」

 

所詮蚕は産業動物に過ぎない。その産業動物如きに過剰に情を沸かせ、人間の生命を踏み躙った。宮司という神職の身でありながら、信仰を捨て、生命を弄んだ。

大義名分は揃った。心置きなくこの宮司を神社ごと吹っ飛ばせる。

 

「‥‥ご飯」

 

「あ?」

 

千尋は、その言葉の意味を理解できなかった。

同時に、宮司を覆っていた申し訳ばかりの袈裟が弾け飛び、翼を思わせる巨大な翼が開かれた。

 

「人間ハハハハ!オイシイイイイイゴハンダァァァ!!」

 

それは、給餌を邪魔された野良犬が、安易に手を伸ばした子供に吠えかかるのに似ていた。

翼がはためきはじめ、宮司は宙に浮き、超スピードで千尋に襲いかかる。

 

「なッ!!」

 

間一髪で回避したが、内壁が派手に吹き飛んだ。

 

「蚕の癖に飛んでんじゃねぇよッ!!」

 

走る。

超高速のダッシュだ。

だが居合のためか、極めて単調な突撃だった。戦い慣れしているのであろう鬼には予測しやすいものであったようで、闘牛士が牛をいなすように、ステップで回避される。

 

「おらぁよ!」

 

急いで拳銃に弾倉を込め、宮司に向けて発砲。音速を超える銃弾が、宮司に襲い掛かる。

が、これも当たらず。

絹がそこらじゅうにかかっている影響で視界が悪い状況で、その上縦横無尽に飛ぶ鬼。狙いが定まりにくいこの上ない。

 

「ゴゴゴ、ゴハン!」

 

コイツにとっては、自分も餌に過ぎないのか。

 

「ヒャァ!」

 

(まず──)

 

蚕鬼が自分の方に高速で飛行すると思うや否や、気がついたときには隊服を掴まれていた。

鬼がさらに飛行を続けると、ものすごい力で引き寄せられ、身体が地面から浮き上がる。

 

「ハハハハハ!滑稽!滑稽ッ!」

 

蚕と呼ぶには相応しくない飛行速度で壁のギリギリを飛ぶ蚕鬼。その動きに合わせ、掴まれている千尋は壁にズドンズドンと激しく激突する。

 

「死ネェ!!」

 

(受け身を──)

 

鬼が一層飛行速度を上げ、壁にあった神棚に千尋を投げつけた。バキッと千尋のどこかの骨が折れた音が部屋に響く。

 

「ヅッ──」

 

ドシャ、と鬼の拘束から解放された千尋の身体が床に投げられた。鬼はピクリとも動かない千尋を見てニタリと笑うと、家の中へと視線を向けた。

 

「コレデマタ新鮮ナ肉ガ手ニ入ッタ。オ蚕様ニゴ報告シナクテハ」

 

鬼が蚕室に向けて歩き始めた瞬間、ザクリ、と鬼の背後で何かを地面に突き立てるな音がした。そして、それに続く嵐の前に家を撫でるような、静かに、それでいて不安を煽る風のような音。

 

「フゥゥゥゥ……」

 

それが千尋の呼吸であると気づいた鬼は、死んだはずだと千尋を見た。だが、確かに千尋の胸は上下している。それは千尋が生きている証であった。

 

「──」

 

千尋は身体を起こし、日輪刀の鞘を杖に立ち上がる。

 

「──ヒ」

 

蚕鬼は千尋の目を見て、怯えたような声を漏らした。

その目色はまるで炭を力任せに紙に擦り付け、その受けから墨を塗りたくったような、光を全く反射しない黒、そんな目。

千尋の目に、鬼は半歩後退りをした。

 

「ナ、ナンデ生キテ‥‥」

 

「人がそう簡単に死ぬかよ」

 

身体の骨が折れた事等感じさせぬほどの足取りで歩き始めた千尋を見て、鬼は蚕室に向けて走り出した。

 

(お蚕様を!あんなやつにお蚕様を会わせてはなら──)

 

蚕鬼が自分とは別の蚕鬼に頼ろうと走り出した瞬間、薄暗い暗がりから転がった、火のついた球体のものに気がついた。

 

「ア──」

 

ドォン!と業火の火柱があがり、鬼の四肢を吹き飛ばす。

 

「ギャッ!!」

 

ドシャリ、ともんどり打って転んだ鬼は、立ち上がろうと腕に力を込める。しかし、四肢が吹き飛ばされいるため、腕に力を込めるどころか、今の蚕鬼は芋虫のように蠢くことしかできなかった。

 

「ふぅ‥‥蚕らしくなったじゃねぇか」

 

「ク、来ルナァッ!」

 

這いずる背中を思い切り踏み付ける。

この鬼は碌に人も食べてこなかったのだろう。四肢の再生が異様に遅い。

 

「ヤ、ヤメ──」

 

「じゃあな」

 

全集中 花の呼吸 伍ノ型 徒の芍薬

 

桃色の刀身が、鬼の頭と胴体で両断する。

静かに裂ける蚕鬼の身体。頬まで裂けた口を開けた顔は絶望一色。そのまま蚕鬼の身体は自重で二つに裂け、静かに灰となった。

 

「はぁ‥‥クッソ、まだ残ってんだよな」

 

千尋はプッと血を少し吐き、中の方に目を向けた。

まだ仕事は残っている。

 

「信濃、隠を呼んでおいてくれ。あと、付近の隊士も頼む」

『カァ‥‥』

 

千尋は神社の中を練り歩く。

これだけの糸を吐き出す、大量の蚕がいるはずだ。宮司が鬼であることを考えると、その蚕も鬼である確率が高い。

 

「‥‥ここか」

 

三分ほど神社内を練り歩いたところで、蚕室を見つけた。

扉には蚕の文字が彫られているうえ、部屋の前に蚕の幼虫の死体が散らばっている。十中八九、ここに蚕鬼がいるはずだ。

 

「蚕は蚕だろ‥‥なんでこんな風にばら撒かれてるんだ」

 

あの鬼は蚕を何よりも思っていた。それなのに、普通の蚕はそこら辺に捨ててある。

奴は結局、鬼の蚕を盲信していただけなのだ。

 

「‥…ああ、クソったれが」

 

扉を開けてみれば、そこは案の定蚕室であった。

だが案の定と言うべきか、そこは普通の蚕室とは違っていた。何が違うと聞かれれば、まず、蚕の大きさだ。

蚕の一匹一匹が、猪の瓜坊ほどあり、くちゃくちゃと人間の死体を貪っている。

 

そして何より、人間の死体が山積みになっているということだ。

死臭、腐敗臭、糞尿の匂いが立ち込め、千尋は思わず吐いた。

 

不意に、死体の一つに目を向け、ぎょっとした。

 

「なっ!?」

 

なんと、蚕が死体の中に入り込み、指先を動かしているではないか。

千尋は急いで死体の首を刎ね、蚕が入っているであろう場所に刃を突き立てた。

 

蚕鬼はキィーっと君の悪い悲鳴をあげ、灰と化した。

 

千尋は心底恐怖というものを感じた。

思うと、宮司鬼も、蚕に体を乗っ取られたに違いない。

 

そう思って、さらにゾッとした。

もし宮司鬼の討伐が失敗していたら。もし千尋がここに来るのがもっと遅かったら。もし蚕鬼の体を乗っ取る血鬼術がもっと強力なものだったら。

 

それからどうしたのだろう、気がつけば蚕鬼は全て灰と化していた。あれだけ恐怖心を抱いていた相手も、灰となればどうということもない。

 

もういっそ、燃やしてしまおうか。

 

そうして千尋は、隠に後処理を託し、焦げ臭さが立ち込める街を歩いた。

 

 




橘千尋
京都府京都市出身の鬼狩り。現在の階級は乙。
奇襲突撃による攻撃を得意とし、昼でも鬼を狩ることができる。とある伝手でコルト拳銃を入手して以来、拳銃を用いて戦闘をするようになった。
相棒の鎹鴉は『信濃』。身体が全鴉の中で一番大きいところから名付けられた。引っ込み思案な性格だが、千尋とならどこまでもいけると信じている。

宮司
絹美村の宮司。元々人間だった頃に蚕鬼の存在を知り、養蚕業から手を引こうとする村人を殺した張本人。蚕鬼たちに食べさせる村の外の人間を一定数攫ったところで蚕鬼に寄生された。

蚕鬼
死体を食い破り、脳に寄生することでその体を思い通りに動かすことができ、寄生から時間をかければ喋られるようにもなるし、宮司のように自由もきくようになる。
絹美村崩壊数年前から神社の祠に住み着き、宮司の血を吸い生存、繁殖した。

元寇
元剣豪の鬼殺隊狩り。金属を溶接、合成する血鬼術を持つ。


同じく元剣豪の鬼殺隊狩り。動物を眷属にする決起術を持つ。
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