帝国の鬼狩り   作:ひがしち

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第十三話 柱稽古 上

「───以上が、上弦の参猗窩座戦の概要です」

 

カナエに死ぬほど怒られた三日後。鬼殺隊本部は上弦の参討伐の概要を共有するために柱たちを招集し、臨時で柱合会議を開催した。

 

その場で煉獄杏寿郎は炎柱の地位を返上し、柱引退を産屋敷耀哉に表明した。惜しまれながらの引退だったが、四肢欠損や眼球損傷など、もはや通常の生活を送るのも難しいほどに激しく負傷し、やむを得ないことであった。

 

「煉獄の引退は悲しいことだが、ようやく彼が休める様になったと思えば、喜ばしいことか……」

 

「俺はそれより、陸軍が増援に来たことが不思議でならねぇ。なんで鬼殺隊じゃねぇんだ」

 

「私がいざという時に送ったんだ。列車が脱線しては鬼殺隊だけではどうにもならんからな。軍が来れば、民間人はただの脱線事故だと思うだろう」

 

「ッケ、そんなに鬼殺隊が信用ならねぇかよ」

 

「そういう問題ではない。世間に出せる要員を集めただけだ」

 

柱合裁判以降、千尋と実弥の間にできた溝は、一向深まるばかりであった。

他の柱たちもそのことを察してどうにかしようとはしているが結局何もできていない。余計なことをすれば、二人の不仲に拍車をかけるだけだと分かっているからだ。

 

しかし会議は二人の不仲に関わらず進み、産屋敷耀哉が口を開き始めたところで二人は口論を止め、姿勢を正した。

 

「まずは、生きて私の元に帰ってきてくれてありがとう。上弦の鬼との遭遇で生き残った事例が、今代で二度も起きている。その上、上弦の参の討伐。これは快挙だ。炭治郎と禰豆子という切り札もある今、私は鬼舞辻を倒せる機会も近いと思っている」

 

ピンと緊張感が部屋を満たす。千尋は無意識のうちにごく小さいため息をついた。

 

「これは百年ぶりの偉業だ。杏寿郎、千尋、よくやってくれた」

 

「もったいなきお言葉です!」

 

「同感です。正直、今回の一件で誰も死者が出なかったことは、同席した新人隊士らの影響が大きいです。特に、禰豆子がよく働いてくれたと思っています。ですが……」

 

千尋は言うべきかどうか一瞬迷い、決断し口を開いた。

 

「この一件で、鬼舞辻の反攻はさらに激化するものだと思います。特に目の上のたんこぶである竈門兄妹には容赦なく刺客が向けられ、上弦とは行かずとも、厄介な鬼が向けられるでしょう」

 

「上弦の参はその前触れと?」

 

「おそらくはな。ここ半世紀、目撃情報も上がらなかった上弦の鬼が竈門兄妹の近くを偶然通りかかったとは思えん」

 

「千尋の言う通り。鬼の攻勢は今までにないものになると予想される。今日はその対策を、みんなでざっくばらんに話し合って欲しい」

 

耀哉の言葉に、千尋をはじめとする柱たちはお互いの顔を見て、口を開いた。

 

「まず隊士の質が信じられない程に落ちている…育手の目が節穴だ」

 

「たしかに、蝶屋敷で大小合わせ治療を受ける隊士は年々増えています……同時に、殉職者も」

 

「地味な奴が増えてきたなぁ」

 

「才能のない者は鬼に食われ、最悪他の者も道連れにする。とっとと辞めさせた方が鬼殺隊のためだ」

 

皆思っていることは同じなのだろう。議題の中心は隊士らの質の低下であった。

それは千尋も思うところがあり、先の無限列車では、千尋は不意打ちとはいえ一般人の殴打に沈んでしまった。あれを思い出すと今でも腑が煮え繰り返る。

 

一通り柱たちから意見が出た頃、千尋が手を挙げ、柱たちの視線を集めた。

 

「その件について、私から提案が」

 

「なんだい?」

 

「隊士らの質の低下は見過ごしていいものではありません。かといって、それだけの人数を切り捨てる訳にもいけない……そこでどうでしょう。我々柱が、直接下の階級の隊士らに稽古をつけるというのは」

 

千尋の発言に、多くに柱たちの目が大きく開かれた。

 

「その発言、正気のものとは思えんな。お前とて柱の多忙さは身に染みて分かっているはずだ。その上で言っているのであれば今すぐに撤回を勧める」

 

そして、伊黒の発言に多くの柱が頷いた。

 

柱の任務はただ強い鬼を倒すだけではなく、広大な担当区域の警備、鬼の情報収集や剣技向上に為の鍛錬、他にも遠方への任務も多く割り当てられ、移動だけでも一日二日を費やすことも珍しくない。

 

つまり、柱は普段から多忙を極め、継子以外の者鍛錬に付き合ってやれるほどの時間がないのだ。

 

「そのための軍部との協力体制だ。数百の鬼殺隊から陸海鬼殺隊一万の兵力に増えたのだ。ならばその一万で任務を分配し、それによってできた時間を稽古につけることができるではないか」

 

「理屈は通っているけど……それって……」

 

「軍人共に鬼殺の任務をさせるつもりか?」

 

「ああ、ちょうど今各所在地の兵士たちに呼吸を教えているし、陽光山での猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石の発掘をしてくれる会社とも繋がりそうだ」

 

「それでは刀の製造が追いつきません。鍛冶の里の生産力では一万振りも生産できませんよ」

 

「兵士たちに呼吸を教えるついでに、軍需工場の一部を刀製造に切り替える約束もしてある。全体には行き渡るには数年必要だろうが、一個小隊に一振りは配布できれば、その人数分任務の負担が減る。稽古という負担は増えるが、今までの任務と比べれば、格段に負担は減るはずだ」

 

千尋の提案に多くの柱が納得の表情を見せた。確かに提案として筋は通っているし、稽古をつけることで質の向上にもつながる。

もうひと押しだなと、千尋は周りを見て、さらに語気を強めた。

 

「それに我々柱もより一層組織形成に力を費やさなければならない。今の隊士たちには心理的余裕を高める必要があり、階級という立場でそれを実行する」

 

今までは下級隊士に雑務や雑用を力で強制させていた隊士が多く、下級隊士たちは上級隊士たちに恐怖という感情を抱く者も多かった。

 

だがこれからは逆、下級隊士の雑務雑用を上級隊士に振り分け、下級隊士は鍛錬や勉強に打ち込んでもらう。そうすれば、下級隊士たちは上級隊士たちに憧れを抱き、目標の的にする。

 

「我々は隊士を指揮するだけではなく、効率よく隊士を成長させなくてはならない。訓練される側もつける側も、その力を養う。そのための合同稽古、柱稽古の開催を提案させてもらう」

 

千尋の力説に多くの柱が、不仲な実弥としのぶも、納得の表情を見せた。すると悲鳴嶼も手を上げて口を開いた。

 

「橘の案に、私も賛成だ。短期間に絞り、鬼殺隊全体の底上げに全力を注ぐ機会とする。これは重要な急務である。重要、そう考える故、私は橘の案に賛成する」

 

「……ほお」

 

悲鳴嶼からの予想外の賛成票に、思わず発案者でありながら千尋は驚きの声を出した。

何気に千尋と悲鳴嶼の考えが一致したのは初めてである。

 

「では柱を引退した方々にも稽古をつけてもらえるように要請しよう。水の鱗滝左近次殿、雷の桑島慈悟郎殿、花は胡蝶カナエ殿、炎は煉獄、それぞれの呼吸を専門に、適した戦い方などを教えてもらいたい。産屋敷殿、どうでしょう?」

 

「いいね。私も千尋の案に概ね賛成だよ。他の子どもたちはどうだい?」

 

「私は賛成です」

 

「俺も派手に賛成だ」

 

「僕も」

 

そうして取られた決議は、満場一致で議決。

準備期間も含め、一週間後に合同訓練──柱稽古が始められることになった。

 

 

 

☆★☆

 

 

柱合会議で柱稽古の開催が決まって、すでに三ヶ月ほど経過した。

 

まず隊士らは一斉に稽古を始めるのではなく、三十から五十の班で分けられ、一班ずつ順次音・花・恋・蟲・岩・霞・水・蛇・風の稽古を突破し、そしてそれぞれの呼吸の専門分野へと進んでいく。

 

炭治郎は我妻や嘴平とは別れてしまい、一番最後の班、主に負傷などで最初から稽古に参加できなかった者たちで構成された班に組み込まれた。

 

「よく来たな。荷物はこの部屋に。どれが誰のか分かるようにしておけ」

 

柱稽古二つ目、花柱による精神教育。場所は千代田にある花柱の自宅ではなく東京と山梨との県境の山で、曰くこのためだけに三座ほど山を買ったそうで、さらに言えば隊士六十人ほどが寝泊まりできる施設も作ったそうな。

 

ここでは隊士たちに組織人たる心構え、またその精神を心身に叩き込み、それを半ば反射で行えるようにすることが目的で、故にここでの稽古は打ち合いのような実戦ではなく、座学やそれを活かす軽い運動が主となる。

 

炭治郎たちは玄関先に整列し、千尋による稽古の訓示を聞いていた

 

「私が当稽古主任である花柱・橘千尋中佐だ。諸君らには三日後からの八週間、ここで心身教育を受けてもらう。おそらく他の柱たちの稽古に比べ非常に長い期間稽古を受けてもらうことになるが、それだけ重要な教育ということだ。ここでは君たちに鬼殺隊としての心構えを学んでもらうことと共に、仲間の尊さについて学んでもらう。難しく考えることはない。仲間を思う気持ち、それを一番に考えれば簡単だ。当稽古では一人の失敗は全員の責任ということになるが、そんなことが起こらぬよう、お互いを補い合うんだ。いいな!」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

「ではこれから明日からの流れを説明する。説明時間は今日明日と短いが、しっかりと頭に叩き込んでおけ。細かい規則は、私の部下の入山曹長に聞くといい。まずは起床時間だが──」

 

 

 

☆★☆

 

 

 

花柱の稽古開始から三日目、つまり本格的に稽古が始まる日の朝。風邪を引いた一名を除いた三十名は点呼を取るため、一日目と同じように玄関先で整列しようと並んでいた。

 

「この分なら、音柱より楽そうだな」

 

「ああ、座学中心って言うし、八週間もあっという間だ」

 

整列前に、そんな話をしていた隊士がいて、そのことについては概ね炭治郎も同意であった。

 

なんというか、拍子抜けであった。炭治郎の知る花柱としての千尋はもっと厳しく、熱血漢とまではいかなくとも、こういった教育には力を入れる人物だと思っていたが、どうやら違ったようだ。

 

とはいえ整列する隊士の前に並ぶ千尋は、いつものように鋭く人を射抜くような目をしていて、どこか怒っているようにも見える。

 

「十六の欠!現在員三十一名!」

 

稽古をつけるにあたって、隊士たちのまとめ役である入山曹長の人員報告の声が響く。

 

「……数が合わんな」

 

千尋は右に左に視線を動かし、とある隊士に目をとめた。

 

「貴様、右隣に並んでいる者が昨日と違うが、並び方を変えたのか?」

 

「いえ、アイツは昨日風邪をひいたんで、昨日の夜に蝶屋敷に──」

 

その瞬間、炭治郎は千尋から激しい怒気の匂いを感じ取った。嗅いだことのない、激しく荒れ狂う海のような怒りだ。

 

 

 

「入山ァッ!!!」

 

 

 

千尋の怒号に、炭治郎たちは身をすくめた。炭治郎たちがこれまで聞いた怒鳴り声の中で一番大きく、腹に鉛を入れられたような重みがあった。

 

「貴様なぜ病欠者が出たことを報告せんッ!私は貴様に人員数の報告を命じたはずだッ!」

 

「病欠者が出ていることを今知りましたッ!」

 

「言い訳をするなッ!欠員が出ているかどうか、確認するのが貴様の仕事だろうがッ!」

 

「ま、待ってください!お、俺が入山さんに報告し忘れてたんです!なので俺が悪──」

 

「もちろん貴様の報告不備が原因だ!だがそれは入山が事前に欠員の確認をしていれば防げた事故だ!」

 

千尋は報告を怠った隊士ではなく、まとめ役の入山を怒鳴り散らした。そのため報告を怠った隊士は自分が悪いと入山を庇うが、千尋はそれを聞き入れず、入山を怒鳴り続けている。

 

「全員その場腕立ての構え用意ッ!」

 

「えっ、あの……」

 

「腕立て用意だと言ったのが聞こえないかッ!!!」

 

千尋の怒号に炭治郎たちは手に食い込む砂利を我慢しながら、急いで腕立ての姿勢をとった。一昨日とは打って変わって修羅のような雰囲気である。

 

「連帯責任──入山の失敗は、私を含め全員で責任を取る……壱ッ!」

 

「い、いち!」

 

「声が小さいッ!全員で腹から声を出せッ!壱ッ!」

 

「「「「「「壱ッ!」」」」」」

 

「顎が地面につくまで下げろッ!弐ッ!」

 

「「「「「「弐ッ!」」」」」」

 

腕立ては二十回ほどやったところで直立姿勢に戻され、息絶え絶えに、先ほどの隊士は入山に病欠者がいることを報告した。

 

「点呼!」

 

「壱!」

 

「弐!」

 

「さ、参!」

 

先ほどの報告不備を直したが、未だ息を整えきれていない隊士で点呼が詰まってしまう。それを聞いた千尋からは、また激しい怒りの匂いが放たれ、再び腕立ての号令がかけられた。

 

「一人の失敗は全員の責任だということを忘れるな!指摘事項に改善が見られなければこの倍は腕立てをしてもらう!返事は!」

 

「「「「「「は、はい!」」」」」」

 

「隊士に簡単な規則も教えられない入山曹長は追加で腕立て二十回だッ!」

 

「はいッ!」

 

理不尽に腕立ての数増やされた入山は千尋に反抗することなく腕立て追加を承諾し、計四十回の腕立てをやってみせた。

その間、他の隊士たちは入山に科せられた理不尽を、震えながら見ることしかできず、特に報告を怠った隊士は涙を浮かべていた。

 

「いいか!貴様らが細かい規則を守れないのは全て入山曹長の責任だ!対象の隊士以上に罰が課されることになる!!可哀想だと思うなら失敗のないようにしろ!」

 

連帯責任──つまり、全員がきちっと物事を完遂できない限り、何も進まない。日がな一日中腕立てをすることになる。

 

「腕立て終わり!さっさと立て!これより朝食をとってもらう!訓練開始時は〇八一五(八時十五分)だ!一秒でも遅れてみろ!その時は全員でこの山の木全てを伐採してもらう!」

 

「「「「「「は、はい!」」」」」」

 

「声が小さいッ!!!」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

「各自かかれッ!」

 

千尋の号令に、全員が一斉に食堂に走り出す。

ようやく解放されたと思う隊士たちだったが、さらなる地獄はこれから。

 

結局千尋の粗探しに多くの隊士が引っかかったことで合計百を超える腕立てをすることになり、蝉や蛙の鳴き声に、隊士たちの筋肉痛の呻き声が混じる夜となった。

本当の花柱稽古は、こうして一日目を終える。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

花柱稽古二日目。朝の点呼はなんとか不備なくやったものの、千尋は集合が遅いと怒鳴りつけ、また腕立てを課した。

 

「ちょ、朝食だ!走れ!」

 

この稽古が始まってからというもの、寝ている時以外はずっと走っている気がした。

朝食だからと言って気は抜けず、訓練の準備などもあるので結局十五分以内に食べ切る必要があり、味噌汁を白飯にかけて掻き込んでなんとか食べ切った。

 

「は、早くしろ!」

 

いまだ口の中に飯が入っている隊士が大半だが、それでも次の作業に移るために走る。だがいつもは綺麗なはずの廊下に布団が散らばっているのを見て、全員足を止めた。

記憶が正しければ、布団はきっちりと畳まれていたはずだ。

 

「な、なんだよこれ……」

 

「おい、なんか聞こえるぞ……」

 

すると隊士たち用の寝室から、ドゴドゴという何か柔らかいものを蹴るような音が聞こえてきた。恐る恐る寝室を覗いてみると、千尋が般若のような表情で畳まれた布団を蹴り飛ばしているではないか。

 

「ちょ、た、橘さん!?何してるんですかやめてください!」

 

「そうですよ!俺たちがせっかく畳んだのに!」

 

たまらず炭治郎たちは千尋に反抗するが、千尋は一切手足を止めず、掴んだ毛布を廊下まで投げ飛ばす。

 

「毛布の畳み方が甘い!もう一度しっかり畳直せ!整頓不良だ整頓不良!見ててやるから訓練開始時刻までには畳直せ!」

 

結局、しっかり畳んであった布団ごとひっくり返され、炭治郎たちは全てまた一から畳む羽目になり、息も絶え絶えに稽古が開始された。

 

稽古は基本的な戦略・作戦の立て方を学ぶ。さほど難しくはないし、千尋の教え方は丁寧で分かりやすくはあったが、昨日今日の腕立てで疲労困憊の隊士たちは、座学で気を抜いてしまい、何名か居眠りをしてしまった。

 

「全員表へ出ろッ!」

 

それでまた怒鳴り声が響き全員外へと出され、整列の後に千尋の怒号を聞かされた。もちろん、腕立ての姿勢で、である。

 

「どうも貴様らは屋内で座っていると眠りこいてしまうようだな!ならちょうどいい!ここでこのまま授業をつけてやる!」

 

授業ということもあり千尋は隊士たちに腕立てを命じなかったが、それでも腕立ての姿勢を長時間続けるのは困難で、少しでも腰を浮かせたり体勢が崩れたりすると、千尋が鬼のような表情を浮かべて無理矢理隊士に正しい姿勢を取らせ、そのまま全員に腕立てを命じた。

 

結局、罰の腕立てだけで授業は潰れ、座学が進むことはなかった。

 

それから日を追うごとに千尋の指導は厳しくなり、次第に隊士たちの余裕もなくなっていった。

 

「おい!早く飯食えよ!お前のせいで俺たちも罰則喰らう羽目になるんだぞ!」

 

「ご、ごめん……」

 

「ったく、ちゃんとしろよ」

 

このように、出来ていない隊士を強い言葉で注意するくらいならまだいい方で、酷い時にはトロい隊士を孤立させようと動き出す者もいた。

 

更には自分が原因で何度も全員に罰則が加わることに罪悪感を覚えた隊士が稽古を断念し、山を降りようとしている隊士もいるくらいだ。

率直に言って、稽古を受ける隊士たちの雰囲気が悪くなってきている。

 

「竈門、ちょっと悪いけど、制服の裁縫頼んでもいいか?俺、これから花柱に呼び出されてさ……」

 

「あ、うん。やっておくよ」

 

だからこうして助け合いもする。制服の裁縫は自分でやらなければいけないのだが、こうして手の空いた者で補い合う。そうしないと、また全員に罰が課されてしまうのだ。

 

だがその結果全員慢性的な時間不足になり、消灯一時間前にして風呂にも入れていない。このままでは疲労が取れず、失敗を犯しまた罰が与えられ、また疲労が溜まっていく悪循環になりかねない。

 

そんな悪循環をどうにかしようとするも、激務を前になすすべなく悪循環は繰り返す。

 

また朝が来るのだ。




大正コソコソ噂話 日の呼吸の伝授

炭治郎は千尋に命じられ、まずは近衛師団に新設された抜刀部隊に日の呼吸を教えるも、絶望的に教え方が下手クソで、擬音ばかりで何も分からないと苦情が殺到して中止になった。
その後は千尋が時間を見つけては日の呼吸を独自に研究してどうにかしようとしている。しかし日の呼吸復活は、海が割れるほどの確率だと千尋は言った。
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