極寒の冬であった。容赦なく吹雪が横殴りに吹き、体に打ち付けられる雪が溶けて水となり、体の体温を奪っていった。だというのに、鬼殺陸海軍対上弦特選隊『八咫烏』とその隊長である橘千尋は白い外套一枚で、吹雪の中をずんずんと進んでいった。
万世極楽教。信者約250名を抱えた小規模の宗教団体である。『穏やかな気持ちで楽しく過ごす』ことを教えとするこの宗教はカリスマ的な教祖が中心となって成り立っている。情報によれば、ここらあたりの貧しく辛い境遇の人達が逃げ込む場所になっている。
男たちはいま、その万世極楽教に攻め入ろうとしているのだ。
理由は単純、万世極楽教の教祖である童磨こそ、十二鬼月の上弦の弐なのだ。
つまり千尋率いる八咫烏はその鬼を斬り殺さんと、極寒の中任務についている。全ては皇国の未来のため。
「信者に対する裏工作はもうできている。口封じが面倒なだけだ。全て撃ち殺せ」
この作戦において重要なのは隠密性と即効。少数精鋭のため、奇襲攻撃時の錯乱を狙い可能な限り敵陣に浸透する。一切の容赦は不要。武士道だとか騎士道精神とやらは一度捨てろ。それが作戦実行前夜の千尋の言葉だ。
「全員消音器はつけたな」
千尋の手には短機関銃が握られており、その銃口には消音器と呼ばれるものが付いていた。
これは発砲時の音や煙硝を抑えることができる。つまりこの任務においては必需品。実際、イギリスではその有能性を認められ、英国軍で正式採用されていると聞く。
千尋たちが使用しているものとはまた別物ではあるが、性能で言えばこちらの方が圧倒的に優れている。ただ一つ当たりのコストが異常に高いため、鬼殺隊ひいては皇軍の正式採用はまだ遠い未来の話だ。
「‥‥あれか」
森を10分ほど進んだところに、目標である万世極楽教の総本山が見えてきた。
‥‥あまり趣味がいいとは言えない建築だ。
「これまで怪しまれなかったのが奇跡だ」
そこは寺というには少し歪で、教会というには和風すぎた。巷では和洋折衷という言葉があるらしいが、これは‥‥合成失敗といったところだろう。おそらく和洋折衷を取り入れるのが早すぎて、微妙な出来になってしまったのだ。
施設の前には、見張りが一人。
「やれ。時間がない」
「‥‥」
千尋の指示を聞き、対上の一人が消音器付の小銃を構え、狙撃する。
脳漿が飛び出て、見張の男は一瞬で死したにも関わらず、信者の中でそれに気がついた者は誰一人としていない。
「よくやった。全員侵入準備……よし」
短機関銃と日輪刀を構える。全員の準備が決まったところで、千尋は扉を少し開く‥‥
「──」
建物内に侵入してからは時間との勝負だ。可能な限り早く、静かに信者を建物から消す。それが今回の第一任務。ひとり、またひとりと信者を始末する。
そしてここから信者が一人残らずいなくなったのは、侵入から僅か三分足らずのことだった。
「屋敷の制圧完了」
「よし、ここからは私一人で行く。貴様らは下がれ」
上弦の弐‥‥かつて一戦交えた相手、いや、あの戦いで一戦交えたというのは烏滸がましい。
『遊ばれた』という表現の方が適切だ。しかしあの時とは何もかも違う。自分の階級は上がったし、今は昼、それに信頼できる部下もいる。
「準備を進めてくれ。頼んだぞ」
この作戦の指揮を取るのは千尋だ。もちろん、作戦が失敗した際の責任の所在も千尋にある。隊を率いる者として、すべての責任を背負うつもりなのだ。
ゆえに、一番大事な仕事は千尋の仕事だ。
「‥‥ここか」
屋敷の最奥。
日の光が差さないように設計されたこの先に上弦の鬼がいる。その鬼と対峙するのは、他でもない千尋の役目だ。
「入りますッ!」
ドアの前で一礼してから脱帽し、礼儀作法を整えてから入室する。
部屋の中は少し肌寒かった。室内だというのに蓮の花が咲き乱れ、尾瀬の公園のような様になっている。外装が悪趣味なくせして内装はこだわっている。
「あれ‥‥千尋君じゃないか!!」
「お久しぶりです童磨殿。階級が変わりました故、また名乗らせていただきます。鬼殺陸海軍対上弦特選隊『八咫烏』の司令官、花柱・橘千尋大佐です」
「そこまで丁寧にやってくれるなら‥‥俺は童磨、十二鬼月の上弦の弐。一応万世極楽教の教祖さ。あ、そこのイス、座っていいよ」
「ありがとうございます。では、失礼致します」
千尋は自分でイスを寄せると、一礼して椅子に座った。今の千尋には、不思議と座るだけの余裕があった。
「君たちだよね?僕のところの信者たちを外に連れ出しちゃったのは」
「ええ。誠に不躾な行動でした。ここでお詫び申し上げます」
「あーあーいいよいいよ。うん、別に稀血もいなかったし」
やはり童磨は友好的な態度であった。それは千尋が何よりも望んだ態度である。仮にこれが有効的でなくとも、千尋は話をするつもりだったが、ひとまずは安心だ。
「で、なになに、鬼殺陸海対上弦特選部隊の隊長?前会った時はまだまだ新米だったのに、偉くなったね〜」
「ええ。童磨殿が私を見逃してくれたのを産屋敷殿は手柄と考えたようです。おかげで懐が潤っております」
「ははっ!いいねぇ、この状況で冗談を言えるなんて、流石は千尋くんだ」
童磨は笑った。扇で笑った口元を隠している。鬼の割には上品な笑い方だった。
「しかし、君も強いねぇ。普通少数で鬼の拠点に攻め入るなんてしないよ」
「我々は勝利を確信しております故、犠牲を少なくするためです」
この言葉に嘘はないが、また真実はごく僅かだった。鬼殺隊隊員の教育はもとより、陸海軍の人間を短期間で上弦戦に耐えられるようにするには、この人数が限界だったのだ。
「それは君の丸腰に何か関係があるのかい?」
「……ええ、私は童磨殿と話に来たのですから」
驚くことに千尋は丸腰であった。いや、丸腰というと少し違う。短機関銃は持っているが、その腰には日輪刀が刺さっていなかった。
日輪刀がなければ鬼は殺せない。胡蝶しのぶの存在でそれは絶対的ではなくなったが、基本的にはそうだ。
「本当に鬼狩りとこんなに喋ったのは初めてだよ。俺の周りにはおしゃべりが嫌いなのしかいないからね。こんなにおしゃべりしたのは久しぶりだよ」
おしゃべりができて楽しいと告げる童磨に千尋は薄笑いを浮かべた。確かに千尋は童磨と喋っているが、それはお喋りが楽しいからではなく、時間稼ぎのためであった。それは四年間と今も変わらない。
「信者とはあまり喋らないのですか?」
「うーん、あれはお喋りというより神託を求めてきてるって感じだね。友達とこんなに喋れるのは久しぶりで、本当に楽しいよ」
信者との会話は対等な立場ではないので少し違うのだという。
求めるのは同じ立場で話せる相手。つまりは仲間だ。
「君とおしゃべりするのは楽しいよ……そうだ、君もあの方の支配下にならないかい?」
千尋を鬼舞辻の支配下に誘う童磨。しかし千尋の答えはいつも一緒。
「遠慮させていただきます。というか、不可能でしょう」
「まぁそうだね」
互いに笑みを浮かべ合う両者。しかしそれは決して友好の証にはなりえない。
戦いはすでに始まっているのだから。
童磨は教祖としての日々を送るあまり、戦いの最中でも相手の話しかけては動揺を誘い戦略的なミスを出させる戦い方を好む。
対して千尋は防戦一方であった。すでに千尋と童磨は一度対峙ている上に、猗窩座との戦いも向こうには知れ渡っている。戦略的優位性が高いのは、圧倒的に童磨であった。
だが童磨には、分からないことがあった。
確かにこの舌戦では童磨の攻めばかりだ。だが逆を言えば、千尋が全く攻めてこないのだ。
防戦一方とはその通りだが、これはどちらかと言えば、防衛に徹している……いや、攻めを放棄していると表現した方が正確だ。
何もしてこない。ただ童磨の言葉にのらりくらりと反応するだけ。文言は以前のままだが、何か腹の中に隠している。そんな雰囲気を童磨は感じ取っていた。
「童磨殿、私はきっと地獄に堕ちます」
「うん?」
「信者の懺悔を聞くつもりで、少しお話しさせていただけませんか?」
「ああそういうこと。うん、いいよ」
千尋は少し微笑み、制帽をとって膝に置いた。童磨も童磨で、友人の悩みを聞けるということで少し上機嫌だった。
「私は鬼殺隊が軍との協力を得られるよう、欧州戦争に参加し、多くの敵兵を殺しました。それが戦争というものですので、悪いことをしたという意識はありません……ですが、私の罪はここからです。私は下弦の壱との戦いで、人間を殺しました。鬼に与し私たちを殺そうとする人間でした……子供でした。私は少女をその場で斬り殺しました」
「その時の手応えが、未だ残ってると?」
「いえ、まぁ残っていると言えば残っているのですが、問題はそこではありません。今までは鬼を斬ってきたことに罪悪感なんて感じません。だって、そうしなければ死ぬのは自分です。敵兵を殺したときも同じです。ですが、日本人の子供は違いました。具体的にどう違うのかと聞かれれば困りますが、とにかく違ったんです」
「何があったんだい?」
「……子供を殺してから、時折、自分が斬っているのは人間か鬼か、分からなくなるのです。そして人を殺す鬼と、人と鬼を殺す私、いったいなんの違いがあるのか分からなくなるのです。だって同じ人殺しじゃないですか」
千尋は己の腹を探る童磨に、あえて全てを曝け出すように悩みを話した。まるで自分は無害で敵対心はないと言っているようだった。
「それで私の戦績を調べて比べてみたのです。人の殺害数と鬼の討伐数を。するとどうでしょう。子供を斬ったとき、人間を殺した数と鬼の討伐数が並んだんです。今は鬼の討伐数の方が多いくらいですが、私は三百余の人を殺しました……私は必ず地獄に堕ちます」
童磨は地獄というものを信じていなかった。むしろ、無いものと信じている。それは彼が鬼だからではなく、人間だった時からの思想で、信徒の話を聞くときは方便を使っていたが、童磨は強く地獄極楽というものを否定していた。
「童磨殿、もしよろしければ、ご一緒にどうですか?」
だがこのときは、地獄はあってもいいと思った。他でもない、友人の頼みなのだ。
「うん!行くよ、君となら、どこまでも行ける気がする!」
「ええ、私もそう思います」
童磨は床から立ち上がり、千尋に抱きつき、千尋もまたそれを抱き返した。
二人の間には、確かに友情が芽生えていた。
「ですがその前に、お互いすべきことがあります」
「うん、それは分かってるよ……嬉しいよ。こんなに熱くなれたのは君が初めてだ。でもいいの?こんなところ見られたら、君も産屋敷に目をつけられちゃうんじゃない?」
「大丈夫ですよ。私は産屋敷の鬼狩りではないので」
「うん?」
「私は帝国の鬼狩りですので」
「……ははっ、意味が分からないよ」
童磨は抱擁を解いて千尋の肩を掴んだまま、彼の目をじっと見た。呑み込まれてしまいそうなほどに黒く、向こうもまた自分の虹色の目を見つめ返している。
……なんだ、何を企んでいる。
彼が丸腰でここまで来るとは考えられない。さっきの抱擁で服の下に隠している暗器もないことも確認した。だが彼の腹の中は、果てしないまでの自分への殺意で溢れかえっているはずだ。
しかし彼は本当に何も装備していない。刀はもちろん、拳銃や隠し武器すらも。
「では童磨殿」
「うん、千尋くん」
「三途の川の渡り方、教えてくださいね」
☆★☆
巨大な煙が上がり、火の粉があちらこちらの木に飛び移る。未だに上がる火柱の熱がここまで届くが、猛吹雪で緩和されている。
「大佐、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
巨大な煙をバックに、千尋は外で待機していた対上部隊に合流する。焼け焦げてなくなってしまった軍服の代わりを部下から受け取り、状況を話す。
「上弦の弐は死んだ。信者は」
「全て射殺致しました」
「よし、撤収するぞ。私たちが関与したことの一切の証拠を残すな」
「はっ!」
軍服を着た千尋は部隊に一斉命令。八咫烏はまたきた道を戻る。
その様子を数百羽の鴉が見張っているとは知らずに。
☆★☆
「そうか、上弦の弍を。それはめでたい。流石橘君だ」
「いえ、これも八咫烏とその指揮権を私にくださった閣下のご英断があってこそです」
同じ日の夜。千尋は麻布にある小料理屋で会食をしていた。相手は陸軍大臣大島健一中将だ。千尋が陸海軍の協力交渉に出た相手はまた違うのだが、千尋は陸海軍省の閣僚の中では非常に有名な存在で、注目度が高く、政治利用の相手にもされつつあった。
「しかし鬼が信者を……そうなると、一般財閥にも鬼が入り込んでいる可能性も出てきたな」
「いま八咫烏の特務情報隊に鬼と思わしき人物のリストアップを命じていますが、最終決戦にまでは間に合いそうには……」
千尋は最終決戦の日は近いと睨んでいた。
今十二鬼月は壊滅的な被害を受けている。先月には上弦の参と陸、今日弍と肆に伍の討伐報告が知らされた。今残っている上弦の鬼は壱のみ。
鬼舞辻が新たに戦力を増強しているにしても、討伐された上弦に匹敵するような鬼がそう簡単に見つかるとは思えない。鬼舞辻に攫われた士官の中で新たに十二鬼月がいると思ってもおかしくはないが、それでもなりたての鬼だ。
そのことを考え、鬼舞辻は近いうちに産屋敷邸を特定。鬼の全兵力を持って襲撃し、最後の戦いが始まると千尋は思っている。
その戦いに備えての陸海軍の対上弦特選隊の『八咫烏』であり、呼吸の軍事転用であった。
「そうそう、橘くんが言っていたアレ、来週には日本に届くそうだ。それに川崎や三菱からも良い報告が上がっている。きっと最終決戦までには完成するだろう」
「そうですか!あれがついに… 」
「それもこれも、君が西部戦線で活躍した成果だ。今やアメリカ合衆国とフランス共和国などの欧米列強が日本との同盟を結びたがり、大英帝国はさらなる同盟の更新を望んでいる。今や帝国はアジア一の大国だよ!」
大島は酒を煽り、大声だ出した。いつのまにか出来上がっていたらしい。大臣補佐官が水を勧めている。その時だった。
『──カァ……』
小料理屋の小窓から信濃が室内に入って千尋の肩に止まった。その様子に補佐官が驚いていたが、大島が鬼殺隊の鴉だと言うと、納得したかのような態度を見せた。
千尋は信濃の普段とは違う、明らかな疲弊したような様子を見て、信濃の嘴に耳を近づけ、話を耳打ちさせる。
すると千尋の目は少し大きく開いたかと思うとすぐに元に戻り、いきなり立ち上がり、言った。
「大臣、申し訳ありませんが、緊急の用ができましたので、私はこれで」
「おおそうか。それは……まぁ残念だが、仕方ない」
「申し訳ありません」
「いやいや、いいんだ。元々急に誘ったのは私の方だしな。ここの会計は私に任せて行きなさい」
「っは、ありがとうございます」
それだけ言うと、千尋は靴を持って信濃が入ってきた窓を開け、屋根を伝って出て行った。
玄関ではなく靴を持って窓から出て行くなど、よっぽどの緊急事態だったのだろう。若いのに負けていられんなと、大島と補佐官が酒をもう一杯と煽った。
「──な、なんなんですか貴方たち!?」
突如として、下の階から女将のものと思われる悲鳴が聞こえてきた。それから少し遅れてドスドスと、上等な小料理屋には似つかない足音もなる。
足音から察するに相手は複数人。それを二人三人の人数ではない。十かそれ以上。
補佐官と大島中将は拳銃を抜いて装填した。テロか、押入り強盗か。大きな足音が自分たちの部屋の前で止まり、二人はいよいよ拳銃を構えた。
そして襖が開かれ、男たちが個室に押し入る。
「失礼する!」
黒の襟詰──鬼殺隊であった。
「な、なんだ君たち!ここは大臣のお席だぞ!」
補佐官が拳銃を納め押し入ってきた鬼殺隊に詰め寄るが、隊士の一人に抑えられ、無力化された。いくら大の大人でも、呼吸を身につけている子どもには力では勝てなかった。
「──アンタが大島って大臣かいィ?」
押し入った隊士の最後尾からドスの効いた声がする。白い髪に傷だらけの身体。風柱の不死川実弥だ。
「そうだが、君は一体?」
「風柱、不死川だ。橘はどこだ」
如何やら押し入った鬼殺隊は千尋を探しているようで、大島は窓を指差して言った。
「急用ができたと言って、そこの窓から出て行ったぞ。彼に用があるなら──」
「──窓から逃げたぞォッ!!」
ぎくりとした。その声はまるで榴弾砲のような爆破音で、とても人間の喉から出た音だとは思えなかった。
──ブロロロロ!
ハッと実弥が小料理屋の窓から顔を覗かせると、黒く塗装し直されていた車に黒い外套を頭まで被った者が乗っていた。
ほんの一瞬、暗い中一瞬だけ見えた顔だが、運転手は間違いなく千尋だった。
「追えェッ!!」
その声を皮切りに、鬼殺隊士たちが窓を蹴破って飛び降り、車に向かって走り出した。だが当然シルバーゴーストの方が速度が高く、多くの隊士が早々に振り切られていた。
大島と補佐官はいきなりのことに放っていたが、ハッと気がついて実弥に問うた。
「君、橘大佐がどうかしたのかね?」
「……大臣さんは何も知らねぇんだなぁ?」
「ああ知らん。彼とは私が初めて会ったのは寺内総理に指名された時以来だ」
実弥は大島と補佐官を一瞥すると、近くに待機していた隊士に説明するように顎で指示した。
「橘千尋は今現在逃亡兵として調査されています」
「逃亡兵だと!?そんなバカな!」
大島は声を荒げた。千尋が逃亡兵?そんなバカなことがあるか。彼は西部戦線とアルプス戦線の英雄だぞ。
「風柱。申し訳ありません、全隊士、振り切られました」
「鴉に追わせろ。黒く偽装しているとはいえ車は目立つ。俺たちは引き上げるぞ」
「っは!」
「待て!何をするつもりだ!」
仮にも大臣がいる小料理屋に刀を持って大人数で攻め込み、あまつさえ補佐官を抑え付け帰るなど許されることではない。
もしそれが正当な理由ならただ帰してやってもいいが、訳もわからず荒らされて帰らせるなど、陸軍大臣の名誉にかけてさせてはならない。大切な部下が疑われているのならなおのこと。
「まだわかんねぇのか。橘千尋は鬼殺隊に追われてんだよ」
「なぜだ!彼ほどに鬼殺隊に貢献した者はいないぞ!」
「……数百羽の鴉が目撃して証言してんだよ
橘千尋は鬼だってな」