魔法科高校のドッペルゲンガー   作:西の家

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焦りは禁物、焦りは禁物、焦りは禁物。繰り返し唱えている西の家です。
ストレス発散で思いっ切り筆が進んだので投稿しました。
重ね重ね誤字及び脱字報告ありがとうございます!


入学編 15話「(勝手に)スニーキングミッションスタート」

入学9日目の放課後。

 

襲撃犯の写真をメッセージと一緒に添付して生徒会に送ったものの、特に音沙汰なし。

我ら少女探偵団(+a)は進展がないことに不満を募らせる。

匿名で送ったから、信用されなかった節がある。おまけに魔法は写真に映らない。

送った写真は剣道部の部長の走り去る後ろ姿。あれだけでは決定的瞬間とは言えない。

少女探偵団から再び現場を押さえようと提案されるが、

 

「ごめん。今日もウチの親が早く帰ってこいて」

 

親からの門限を理由に下校したように装う。

校内でうまく少女探偵団をやり過ごしてから、改めて彼女達の後を追う。

どうしてこんな事をしているか?それは・・・、理由を考えている途中で、

 

「あっ美月ちゃんだ。ヤッホー」

 

「えっ、あ、権三郎君」

 

校舎の2階を降りた所で美月ちゃんと遭遇した。

一瞬だけ彼女の言葉が詰まったように聞こえたのは気のせいかな?まぁ、別にいいか。

気を取り直して、美月ちゃんに話し掛ける。

 

「もしかして、これから部活に行くの?」

 

「はい。昨日は美術部の方にお邪魔しましたので、今日は演劇部の方に」

 

「あれ?美術部に入部したんじゃないの?」

 

ワタシの記憶が正しければ、彼女は美術部に顔を出していたはずだ。

 

「体験入部という形で複数の部活を兼任しているんです。せっかくの機会なので色々巡ってから、本格的に入部する部活を決めようかと」

 

疑問の答えは彼女の口から直接説明された。

複数の部活を兼任するのはありなんだ。

 

「へぇー、そうなんだ。器用だね、ちなみに今日はどうして演劇部に行くの?」

 

「普段の自分とは違う自分になれる新鮮な体験をしてみたくて。実際に衣装を着てお芝居の練習もできるみたいですよ。そういう権三郎君はもう部活は決めたんですか?」

 

「うーん、ワタシは未所属で通すつもり。特に入りたい部活もないし」

 

嘘である。正直、演劇部は気になる。

演劇、演技、役者。これらは変装者に通じるものがあるから、蔑ろにできない。

魔法科の演劇部の技量がどれ程のものか見てみたいが、今は少女探偵団に所属していて部活をしている暇はない。今度暇な時間を作ってお邪魔させて貰おう。

逆に体育会系の部活は苦手だ。

長時間の激しい運動は皮の中で汗が溜まって素肌にべたつく。夏場は特に。

体育の授業程度なら平気だけど、本格的に身体を動かす部活は遠慮したい。

美月ちゃんと部活について語っていると大事な事を思い出す。

 

「あっごめん。長く引き止めてしまったね。それじゃ、美月ちゃん部活頑張ってね!」

 

「はい、権三郎君」

 

美月ちゃんと別れると少女探偵団を探す。

学内を歩き回っていると、昇降口を出てすぐ一本道を歩いて下校する彼女たちを発見。

思いの外に早く見つかったな。

3人に気づかれないよう尾行する。これはストーカーではない。探偵を名乗るつもりなら、自分達が尾行させる側に回ることもあると教える為だ。

頃合いを見て彼女達の前に姿を現そう。

そんな意気込みを決めた時だった。

彼女達が校門まで差し掛かった瞬間、剣道部の部長が少女探偵団の横を通り過ぎた。

彼女らは声を潜めて、部長から目を離さずヒソヒソと相談し合う。

変装者として鍛えた聴力ならこの距離でもギリギリ聞き取れる。

 

「(あそこアレ剣道部の部長だ)」

 

「(写真と同じだがら間違いないよ)」

 

「(今日は剣道部は休みじゃないはずだけど、・・・から教室で聞いたけど)」

 

「(そうなの?)」

 

ほのかちゃんが誰から聞いたのか、うまく聞き取れなかったが、些事の範疇だ。気にすることはない。

休みじゃないのに、部活のトップが何処に行こうとしているのやら。

その怪しい行動にエイミィが閃いたようで、

 

「(怪しい。ちょっとつけてみようか)」

 

「(そうだね。気になるし)」

 

「(私も異論はない。一応、ゴンちゃんにも連絡入れておくね)」

 

マズイ。

ワタシはポケットの携帯端末をマナーモードに切り替える。この距離から着信音が聞こえるとは思えないが、念のためだ。

ちなみに着信メロディは◯パン三世のテーマソング。この世界にも◯パン三世はちゃんとあったので、簡単にダウンロードできた。

 

少女探偵団が尾行を開始した。そんな彼女たちの後をワタシは追う。

俗に言う二重尾行ってやつだ。

 

尾行を開始してから、そろそろ学校の監視システムの外へ出る。

尾行する少女探偵団の会話から部長は朝はキャンビネットで登校していたのを目撃しているので、家は歩いている方とは別にあるはず。

 

「あちゃー、これ完全に釣られてるね」

 

少女探偵団と名乗っているが、所詮は素人の尾行。

ワタシの読みが正しければ、あの部長はとっくに彼女たちの尾行に気付いている。

おまけに彼女たちは容姿端麗、街中で凄く目立つ。その証拠に周りから、街中の通行人から視線を浴びてるし。本人達は尾行に夢中で気付いてない。

 

どんどん人気のない場所へ、路地裏に入っていた。

自分達が誘い込まれていることに気付かず、少女探偵団はそのまま後を追ってしまう。

そして、ある程度路地裏に入った所で、部長は立ち止まると、ポケットから端末を取り出して誰かに電話を掛けた。

1言、2言だけ短く喋るとそのまま走って逃げた。

 

「あっ逃げた!」

 

「もしかして気づかれた⁉︎」

 

「わからないけど、追うよ」

 

少女探偵団は急いで後を追う。

それは悪手だよ。

案の定、路地裏の奥に誘い込まれ、部長の姿を見失う。

 

「あれ?いない」

 

ほのかちゃんが辺りを見渡すが、当然部長の姿はどこにもない。

尾行失敗と思いきや。

突然激しいエンジン音を吹かせて現れたフルフェイスのバイク集団に取り囲まれる。

絶体絶命だぞ。どうする少女探偵団諸君?

敵の数は4人で全員男だ。立ち振舞いからして魔法師じゃない。魔法師なら初撃は魔法を打ち込んでいる。

 

「こそこそと嗅ぎまわりやがって。我々の計画を邪魔するようなら・・・」

 

バイク集団の男のひとりがバイクから降りて、傍にいたエイミィに手を伸ばす。

エイミィは顔を俯いて一見怯えているようだが、そうじゃない。雫ちゃんとほのかちゃんも同じだ。

3人とも手首のCADに手を添えている。

 

「今だよ‼︎」

 

雫ちゃんの掛け声と共に彼女たちはバイク集団の間を一気に走り抜けた。

集団の背後を取った瞬間、

 

「ただの女子高生だと思って、なめないでよね!」

 

エイミィが加重魔法で相手の動き封じ、

 

「私も!」

 

ほのかちゃんが動けない相手の目に閃光魔法を炸裂。視界を奪う。

 

「しまった、目が・・・!」

 

バイク集団は視界を奪われて軽く混乱している。

この隙に彼女たちは人通りの多い表通りに向かって走り出す。

このままだと鉢合わせになるな。何処か隠れないと・・・うん?

 

「くそッ!これでもくらえ!」

 

いち早く視界が戻ったバイク集団のひとりが手袋を外す。キラッと光る物が指にはめられているのが見えた。

いかん!アレはもしや・・・⁉︎

悪い予感は的中。

光る物ーーアンティ・ナイトをはめた手を逃げる彼女たちに向けて翳した瞬間、金切り音に似た頭が割れるような不快な音が響く。

 

「きゃあっ!」

 

彼女たちは悲鳴を上げ、堪らえず頭を抱えて地面に蹲る。ワタシ、ボクも少しだけ頭が痛む。

3人とも苦しそうだが、特にほのかちゃんが酷い。

 

「ほのか、しっかりして・・・!」

 

苦しむ親友を見兼ねた雫ちゃんが痛みを堪えて、反撃しようとするが、相手はアンティ・ナイトのジャミング出力を上げたのか、すぐに頭を抱えて蹲る。

 

「我々の計画を邪魔するものは消えてもらう。この世界に魔法は必要ない!」

 

バイク集団が懐からサバイバルナイフを取り出し、彼女たちに近づく。

いかん!少女探偵団最大のピンチじゃないか⁉︎

 

ボクは頭痛を堪えて、変装する。この状況、颯爽と彼女たちを助けても不自然ではない人物は彼女しかいない!

変装を終えたボクは、彼女たちの前に姿を現す。

 

「当校の生徒から離れなさい」

 

タブレット型CADを操作、男が握るナイフを冷やして粉々に砕く。

身体に冷気纏いながら男の背後から歩み寄る。

 

「ナ、ナイフが・・・」

 

男の身体がガタガタと震える。。ヘルメットに隠れて見えないが、顎もカチカチと震えているだろう。

自分が握るナイフがひとりでに砕けたことに、理解が及ばす恐怖しているのがわかる。

 

「ひっ・・・⁉︎」

 

ようやく視線を砕けたナイフから此方に移した。

それに釣られて、他の仲間もボクを見る。

ボクが変装したのは深雪ちゃん。それも普段の淑女らしい彼女じゃない。

 

「バカな⁉︎このアンティ・ナイトは高純度の特注品なんだぞ」

 

「その影響下で魔法が使えるわけが・・・!」

 

「無駄です。非魔法師のキャストジャミングなど通用しません」

 

イメージするのは氷の女王。

バイク集団の男達を冷えきった目で見下す。

深雪ちゃんに変装して気分が高揚しているせいか、キャストジャミングの不快なサイオン波の影響が全くない。

 

「どうせハッタリの痩せ我慢だろう!」

 

懲りずにキャストジャミングを浴びせてくるが、我ながら変装前と違って、本当に効かない。

自分でも驚いているくらいだ。

ボクは大丈夫だが、雫ちゃんたちは辛そうだ。この連中にこれ以上付き合ってはいられない。

基礎単一系の移動魔法で男達を路地裏の壁に叩きつける。

それだけで男達は簡単に気を失う。

これぞ妹無双なんちゃってね♪

おっと、ふざけてる場合じゃなかった。

 

「もう大丈夫よ」

 

地面に座り込んでいるほのかちゃんに手を差し伸べる。勿論、右手はまだ痛めているので、左手の方を。

 

「深雪が助けてくれた。これは夢?」

 

現実が受け入れられないのか、何処か夢見心地な眼差し。

残念。ボクは深雪ちゃんじゃないけど、もう少しだけ夢を見せてあげよう。

 

「夢じゃないわ。みんなが無事で本当によかった」

 

「ありがとう深雪。本当に助かったよ」

 

「私からも言わせて。ありがとう深雪」

 

ほのかちゃんを立たせた後に雫ちゃん、エイミィから感謝の言葉を頂く。

人助けはいいものだね。

 

「この人たちどうしちゃったの?もしかして、殺しちゃったんじゃないよね」

 

ぐったりして全然動かない男達を心配して雫ちゃんが容体を尋ねる。

自分や友達を襲った相手に対してお優しいことで。

 

「この人たちは気絶させただけで命に別条はないわ。いずれ監視システムに発見されると思うけど」

 

「警察に通報したほうがいいかな?」

 

ほのかちゃんが通報を提案する。

できれば警察はやめてほしい。ふざけているわけではない。

父さんに知られたら、マジでやばい。

息子が学校の同級生に化けて、騒ぎを起こしたと聞いたら何て言われるか。深雪ちゃんに化けても、父さんなら一発でボクだと見抜かれる。

おまけに深雪ちゃんのまま調書を受けたら、達也君から冗談抜きで半殺しにされるし。

ここで選択するべき道は・・・。

 

「・・・ちょっと大事にしたくない事情があるのだけど、でもみんなが訴えたいのなら止めないわ」

 

できれば公にしないでください。お願いします!

心の内で強く懇願する。

 

「ううん。必要ない。監視カメラにも撮られてないし」

 

雫ちゃんがそんな事を言う。

ボクはさり気なく、路地裏を見渡す。

流石にこんな路地裏にカメラはないか。

 

「そう・・・ありがとう」

 

ボクは雫ちゃんに一言感謝を述べると手を振りながら、その場から退散しようとした時だった。

 

「えっ?」

 

「・・・」

 

「ウソッ⁈」

 

突然2人が驚いた顔するものだから、思わず立ち止まってしまう。

彼女たちの中で唯一、雫ちゃんだけが驚いた様子がない。

 

「みんなどうしたの?そんな驚いた顔をして」

 

「う、う、うし、後ろ・・・!」

 

エイミィは上手く呂律が回らず、ボクの背後を必死に指差す。

本当にどうしたのさ?まるで幽霊とそうぐ・・・これと似た状況にボクは見覚えがある。

真由美先輩に初めて変装した時も同じことが。

 

「当校の生徒から離れなさい」

 

ついさっきまで自分が口した台詞が背後から聞こえてきた。空耳ではない。

ちょいちょい⁉︎マジかー。

意を決して、後ろを振り返るとそこには。

本物の氷の女王こと司波深雪が通りを塞ぐように立っていた。

大変ご立腹な様子で目に陰りを落とし、ボクを睨み付ける。

あまりの迫力に彼女の背後でゴゴゴと効果音、幻聴まで聞こえてきそうだぜ。

迫力に押されて、皮を着込んでいるのに寒くて身震いまでする。

流石、本物は違うぜ。惚れ惚れしちゃう♪いや、それよりも何故ここにいるのさ?

 

 




ここからどうするか・・・リーナの前のボクシングで言うところの軽いジャブ感覚で、いや、深雪を相手にする以上、ジャブでは絶対に済まないなこりゃ(苦笑)
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