魔法科高校のドッペルゲンガー   作:西の家

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注1 権三郎が調子に乗ります。

注2 陰実の七陰に似た人物が出てきますが、『中身』は別人です。


入学編 18話「調子に乗ると魔王がやって来る」

放送室ジャックの翌日。

放課後迎えた教室でワタシは雫ちゃんとほのかちゃん、深雪ちゃんの4人で翌日の討論会を話題に上げていた。

深雪ちゃんに話し掛ける際、雫ちゃんとほのかちゃんの態度が半分気を使うような印象を受けた。

入学時の初対面に少し戻った感じだ。

ワタシの知らぬ所で何かあったのかな?

 

「ねぇ、聞いた?全校集会で生徒会長が放送の奴らと対決するって。えーっと、深雪も出席するの?」

 

「あまり乗り気じゃないけど・・・」

 

「あまり?興味がないの?」

 

「ええ。主義主張の為なら何をやってもいいと考えてる人たちなんて」

 

「同盟側の主義主張についてどう思われますか?現場の深雪さん」

 

ワタシは左手をマイクに見立てて深雪ちゃんの顔に近づける。すると、突然、背中に悪寒が。

寒っ⁉︎

深雪ちゃんを観察するが、彼女が魔法を使用、暴走させた様子はない。血管を直接氷刃で刺されたような寒気は一体・・・。

色々と疑問に感じるが、今は深雪ちゃんの意見に集中する。

 

「甘いと思うわ」

 

冒頭でそう言うと語り出す。

評価してほしいなら、実績を示すこと。

魔法以外で評価されたいなら、魔法以外で実績を示すべき。

平等に評価しろというのは高い評価を受けている人に纏わりついているだけ。

自分の感じた同盟側の印象を上げた。

深雪ちゃん以外、終始黙って聴き終える頃には揃って、何とも言えない顔を浮かべる。

 

「深雪の言ってることはその通りだけど・・・」

 

「深雪、意外と容赦ない」

 

「深雪ちゃん辛辣ぅ〜♪」

 

綺麗な顔で言うことはトゲトゲしい。流石、四葉の姫君。いや、女王様。

 

「そう言う権三郎君はどうなの?もしかして、行くの?」

 

話題を投げかけられた。

どうして、雫ちゃんやほのかちゃんではなく、ワタシに話題を振るの?2人と違って部活未所属のワタシの動向が気になるかな?

うーん、と口元に指を添えて思考するふりをした後、

 

「つまらなそうだから、バツ✖️」

 

顔の前、指でバッテンを作って拒否を示す。

 

「そもそも同盟側は前提から間違ってるし」

 

「と言うと?」

 

「魔法に限らず、学校で勉強する学ぶ目的は、自分を高め、立派な人間になること。人に自慢したり、人から褒められたりするためのものじゃない。評価されないからといって、評価される人間を恨むのは、学びの本質からはずれちゃってるよ」

 

ワタシは3人の周囲を歩くながら、如何にも本質を見抜いてます感を滲ませながら語る。

 

「本質を見失ってる以上、元から真由美会長に分のある討論。数を揃えただけの同盟側が十師族の人間を言い負かすことなんてできるわけがない。結果は目に見えてる」

 

最後に深雪ちゃんの傍に立ち止まると、つまらなそうに吐き捨てる。

日頃から演技は欠かさないけど、殆ど本音だ。

原作知識の影響で、出席してもタネの割れたマジックを延々と見せられるようなものだ。展開は読めてる。

 

「貴方も人のことは言えないわ」

 

「入学時から思ってたけど、権三郎くんも言う時はズバズバと遠慮なく言うよね」

 

「言う時は決まって男口調になるし」

 

雫ちゃんの指摘にハッと、気付く。

いかん。本音で喋ったから男口調になってたか。声色が地声にならなかっただけセーフ。

今更女口調に戻すのも野暮なので、男口調で喋る。

 

「兎に角、つまらない討論会より、コンサート、遊園地、気になる子とデートに行った方が楽しいよ」

 

「誰か気になる子がいるの?」

 

雫ちゃんが深雪ちゃんを軽く押しのけて、グィと顔を近づけてきた。

近い近い!鼻が触れるくらいに近いから。

顔に触れられると変装がバレるので、肩に手を置いて少しだけ身体を離す。

 

「あくまで例えだよー。今のところ誰とも付き合う予定はないし」

 

ワタシの受け答えに雫ちゃんは「そう」とシュンとした様子で身を引いてくれた。

何で残念そうにしてるのさ?

 

「(ほのか。もしかして、雫は権三郎君のことを)」

 

「(・・・うん。前から気にしてるみたい。権三郎くんは気づいてるかは知らないけど)」

 

深雪ちゃんとほのかちゃんが互いにヒソヒソと内緒話を始まるが、雫ちゃんの対応でよく聞き取れない。

ワタシを除け者にしてズルい。これでも食らえ。

 

「明日は適当な理由を付けて学校を休んだ方がいいよ」

 

「どうして?」

 

雫ちゃんが食い付く。

 

「いつの時代、国、組織にもある程度いるんだよねー。口では勝てないから、実力行使という名の暴力に訴えかける奴が」

 

ワタシの言葉に内緒話をしていた深雪ちゃんとほのかちゃんがこちらに視線を向けた。

 

「・・・当日、暴動が起きると?」

 

「バッチリ起きる。今日の森崎君を見た限り、何かピリピリしてたし。昨日、摩利先輩から暴動が予想される各員要警戒に当たれって、言われたんじゃない?」

 

朝から森崎君は緊張した面持ちで出席していた。授業も何処か上の空。

最後に深雪ちゃんの目の奥を覗き込むように、下から見上げる。

いい演技ができた。

 

「深雪ちゃんも、生徒会で似たような議題が上がったと思うんだけど、そこのところはどう?」

 

「・・・その質問には答えられないわ」

 

深雪ちゃんの態度ですぐに察した。

箝口令が敷かれている。

雫ちゃんとほのかちゃんも聡い。追求するような野暮な真似はしなかった。

 

それ以上は特に進展もなく、今日はお開きになった。

 

雫ちゃんとほのかちゃんは部活動で先に「またね」と別れる。

さーて、放課後残っても何もないし、ワタシは帰るか。

教室から廊下に出ると、意外な人物と遭遇した。

 

「権三郎」

 

「あっ達也君」

 

A組の出入口のすぐ傍に達也君が立っていた。

どうしてここに?

深雪ちゃんを迎えに来た様子じゃない。

深雪ちゃんは生徒会役員の立場上、明日の討論会の準備があるし、達也君は風紀委員で討論会が開催される講堂警備の打ち合わせ。

放課後から兄妹別行動だ。わざわざここに来る理由がない。

よく見れば達也君の後ろに見慣れた顔が。

達也君を筆頭にレオ君、エリカちゃんも連れ添っての登場だ。

 

「この後少しいいか?話したいことがある」

 

「もしかして、デートのお誘い?どうしよう〜」

 

「違う。ただ話しがあるだけだ。時間は取らせないすぐに済む」

 

いつもならここでエリカちゃんのツッコミがくる筈だが、達也君の後ろで無言のまま佇むだけツッコミがくる様子はない。

気のせいか・・・いつでも得物が抜ける剣士の臨戦態勢に感じ取れる。

うまく言葉にできないけど、嫌な予感がするな・・・。

 

「ごめーん。この後外せない用事があるんだよね。友達と待ち合わせしていてさ」

 

可愛らしく両手を合わせて、断りを入れる。

 

「雫とほのかの事を言ってるのか?2人はクラブ活動の筈だが」

 

交友関係まで把握しているのか。

さては、愛しい妹の交友関係を調べ尽くしたな。ブラコンめ。

 

「ううん、違うよ。ふたりとは別の友達。エ・・・」

 

「明智英美も今日はクラブ活動だ」

 

言い切る前に達也君にエイミィの名を出された。

だから何で知ってるのよ。

 

「違う違う。A組の子だよ。学校の外で待ち合わせしてるんだ」

 

勿論、嘘である。

達也君は目付きが鋭いので、疑いの目で睨まれた。

 

「どうしても無理か?」

 

今度はレオ君が尋ねる。

いつも陽気で気軽に話し掛けやすいレオ君の口調には珍しく後ろめたさが滲み出ている。

エリカちゃんに加えて、彼までどうしたんだ?

 

「本当にごめんね。またの機会に誘ってよ。それじゃ、またねー」

 

「ちょっと待ちなさいよ。話しはまだ・・・」

 

左手を大きく振りながら去る。

話しを強引に切り上げると、エリカちゃんが留めようするが、無視して先を急ぐ。

なーんか、嫌な予感が皮越しにピリピリと伝わってくるんだよね。

藪から蛇を覚悟で付き合ってもいいが、今日は遠慮しておこう。帰ってから準備があるからね♪

 

A組の教室がある2階から階段で昇降口のある1階まで降りる途中、踊り場まで降った所で、

 

「きゃっ・・・‼︎」

 

「うわ!って、美月ちゃん?」

 

美月ちゃんとぶつかってしまった。

ぶつかった勢いでお互い体勢を崩して、美月ちゃんがワタシの上に伸し掛かるような体勢になる。

踊り場の役目、危険防止がなってない。

 

「ごめんなさい!大丈夫ですか?」

 

「ううん別に。そっちこそ大丈夫?」

 

美月ちゃんが心配した形相でワタシを気遣う。

対してワタシも彼女を軽く見るが、怪我はしていない。

あー、良かった良かった。この前、ほのかちゃんを思わず突き飛ばして以来、女の子が倒れる姿は気が引ける。

 

「今退きますから」

 

そう言って美月ちゃんが立ち上がろうとした時、彼女の手が仰向けで床に広がるワタシの髪(ウィッグ)に触れた。

その瞬間、美月ちゃんの表情が固まる。

 

「・・・ぱり」

 

「うん?どうしたの何か言った?」

 

心中ほのかちゃんの一件を振り返っていた為か、美月ちゃんが何を口走ったのか上手く聞き取れなかった。

さっぱり、って言ったのかな?

 

「もしかして・・・どこか悪いの?」

 

「いいえ!ぶつかって本当にごめんなさい。先を急いでいるので、これで!」

 

慌てた様子で足音を立てながら、2階まで上がると廊下に入って行く。

あそこは一科の教室があるだけで、二科生の彼女が用事があるとは・・・達也君たちと待ち合わせ?でも、わざわざ一科生の教室がある区域で待ち合わせする必要があるのかな?

そんな疑問を暫く抱えながら昇降口を目指す。

 

***

 

学校から帰宅したボクは自室である準備に取り掛かった。

 

「道具と顔はこれくらいでいいかな」

 

ベルトポーチに道具いわゆる暗器と変装用のガワを可能な限り詰め込む。

仕込み具合は暗記78のガワ22。

明日は入学してから一番のイベントが起こるのだ。護身の準備は欠かさない。

 

「当日誰に変装して動こうかな〜」

 

数多の皮が仕舞ってあるクローゼットをガサゴソと漁る。

 

「深雪ちゃんは綺麗でお気に入りだけど」

 

深雪ちゃんに変装して姿見の前でターン。その後、変装を解く。

 

「美月ちゃんもいい感じ」

 

今度は美月ちゃんに変装。

顔に掛けた現代では珍しいメガネ(度は入ってない)と豊満な胸(パット)が目立つ。

姿見の前でポーズを決めてみるが。

 

「どれも釈然としないなー、見知った顔でだだ動くのも面白味がない。どうするか・・・そうだ!」

 

頭の中の閃きに任せて、クローゼットの奥から中学時代の皮を数種類取り出した。

 

「在学していない人間になればいいんだ。当日混乱が予想されるし、まず気付かれない。仮に見つかっても、あれは誰だ⁉︎キサマは一体?といった展開になって、それそれで面白い」

 

謎の存在。それだけでもカッコいい。

ボクは早速取り出した数種類の皮を順に着ていく。

先ずは、イプちゃんの皮を纏う。

今日は朝から興奮が冷めないので、この前みたいに寝起きでふらつく真似はしない。

背中の隠れたファスナーを開けて、皮の中に片足ずつ順に足を通す。

足、腰、胴と順調に着込むとマスクを被って、ファスナーを閉める。

それが終わると姿見で変装具合を確認。

とりあえず達也君悩殺ポーズを決めておく。

 

「イプちゃんは・・・流石に無理か。雫ちゃんとほのかちゃんに顔が割れているし、最悪ふたりと鉢合わせになったら面倒くさいし、今回はパスで」

 

ファスナーを下げて脱ぐと、そのまま床に置く。

次に纏った皮は、銀髪を肩ぐらいの長さで切りそられ、青色の猫みたいな瞳に泣きぼくろが特徴的なメガネ似合う文学系女子通称ベタちゃん。

美月ちゃん並の豊満な胸を強調するように、姿見の前で前屈みになる。

 

「ベタちゃんは情報戦が似合うけど、美月ちゃんと何となくキャラが被るし、パス」

 

脱いだベタちゃんの皮をイプちゃんの上に重ねるように置いた。

 

「やっぱりこれかな」

 

最後に手に取った皮はネコ科を彷彿させるアイスパープルの瞳と白髪のショートヘアのスレンダーな身体つきの女子通称ゼタちゃん。

皮を脱いでは着るを繰り返すなど朝飯前だ。

ゼタちゃんの皮を纏う際、少しだけ骨格をイジる。

骨が軋むが我慢だ。ゼタちゃんはスレンダーな体格を意識して作製したので、この皮を纏う際は可能な限り女性らしい体格になりたいのだ。

骨格をイジって纏い終わると姿見へ移動。

 

「ゼタちゃんは諜報戦がメチャ似合うね。えーっと確か声色と口調は・・・ゴホンッ、あーあーあー、達也君、今日から主って呼んでもいいかい?なんちゃって♪」

 

飄々した猫のような態度を意識して喋りながら過去を回想してみる。

ゼタちゃんは金沢に引っ越した際、地元の中学校で1年生の3学期まで纏っていた皮だ。

体育会系もとい武闘派の生徒が何故か多かったのが印象深い。

 

「そういえば、やけにボ、わたしに噛み付く勢いで絡んできた女子がいたな。えーっと、名前は確か・・・そう!一色なんたらエクレア。そんな名前だった気がする」

 

中学の時点でお決まりと化した学校側に性別は男子で届出。しかし、外見は完全女子、制服も女子用で登校したから男女問わずメチャ驚かれた。

体育会系の男子達はそわそわと落ち着かず、女子達はどう扱っていいか困惑していた。

そんな生徒達の中でやたらとボクを目の仇にしていた女子がいた。それが一色なんたらだった(名前忘れた)。

 

「高飛車でまさにザ・お嬢様って感じだったな。やれ男らしくしろだの、スカートじゃなくズボンを履けだの色々ガミガミ言ってきたっけ」

 

余りにしつこいので、1年生最後の3学期に彼女と決闘した。

決闘内容はリーブル・エペー。魔法併用のフェンシングだ。

学校側にも正式に認められた健全な決闘だ。

相手は小学時代から数々の大会で優勝を納め、その武勇は中学に上がってからも磨きが増すばかり。

周囲から無謀だと言われ、彼女からも私と貴方では勝負にならない。結果は目に見えていると言われた。

彼女と勝負する為、君は罵ってるオ●マ野郎に負けるのが怖いんですか〜って、これでもかと言わんくらいに挑発しまくった。

結果、キレって冷静さを欠いた彼女の剣捌きは読み易く、ボクが勝利した。

 

「その後も隙あらば、勝負しろだのうるさかったなー。アレを最後に金沢から引越したっけ」

 

引っ越しの理由は素顔見られた(嘘)と両親に言って、早々に別の場所に移った。

いやー、懐かしいね。

 

「いけない。過去を振り返るのに夢中で脱線した」

 

プルプルと頭を横に振るって当初の目的を思い出す。

 

「よし!翌日のイベントはこれでいこう。待ってろよ、ブラジャーいや、ブランシュだったかな。奴らを相手にどう動き回るかなー♪」

 

纏う皮が決まると明日の計画を立てる。

できれば、達也君以外の原作メンバーを揶揄ってみたい。

そうと決まれば頑張るぞ!

ボクは部屋の中で淡々と計画を立て始めた。

すべては変装の達人への一歩の為に!

 

 

***

 

討論会当日。

 

ゼタちゃんの上からゴンちゃんマスクを被って、登校し、放課後を迎えたワタシは校門が見渡せる校舎の屋根の上に立っていた。

 

「ふふふ、今日はついてる。ワタシ以外の少女探偵団は討論会に興味なし。全員部活動に専念している。邪魔する者はいない。これも全部日頃の行いかな♪」

 

そう言って、ワタシはゴンちゃんマスクの首の付け根から指を潜り込ませて、空いた方の手は制服の襟首を掴むと、両方を一気に脱ぐ。

 

「ここからはゼタちゃんである、わたしで行かせてもらうよ」

 

ゴンちゃんからゼタちゃんに化ける。顔だけでなく、服装も、制服の下に着込んでおいた黒のキャットスーツに変えた。制服は一旦背中のバックパックに仕舞っておく。

まだ涼しい季節なので着心地は快適だ。夏場は最悪だけど。

変装者としてやりたい事のひとつ。

高台から決め台詞を呟きながらの顔と服装を変える。

やりたい事がこんなにもできるとは本当に今日はついている。

今日の幸運に感謝していると、

 

「おっ!もしかして・・・アレかな」

 

校門前に一台の大台配送トラックが止まった。サイドパネルには見慣れた配送業者のロゴ。

配達なら学校裏手の搬入口に回るはずだが、あのトラックは日本の黒いネコではない。

トラックの助手席から作業着姿の男が降りてきたが、配達員じゃない。その証拠にロケット弾と発射筒、俗にいうロケットランチャーを所持している。

男は手慣れた様子で発射筒にロケット弾をセットし、それを肩に担いで門扉に照準、躊躇なく発射した。

 

「・・・来る」

 

何となく呟いてみた。その時。

門扉が轟音と共に吹き飛ぶ。

破壊された門扉は敷地内に無造作に転がり、門扉のあった場所からは高い黒煙が上がる。

邪魔な門扉を排除し、そこから大型配送トラックが乗り込んできた。

トラックの荷台が開き、続々と作業着姿の集団が降りてくる。

全員手には黒光の銃火器を携えて物々しい。

奴らがブランシュだ。

原作で知っていたけど、やりやがった・・・こいつらマジでやりやがったよ!世界中の少年が夢見たアレを、ワタシ、ボクらの青春妄想の1ページを飾ったアレを・・・学園がテロリストに襲撃されるというアレを!ホンットウにやりやがった‼︎

ボクの目の前には無限の可能性が広がってる!どうする?どう動く?やはり、ここは王道の学園側で動くべきか。

 

ボクが歓喜に震えていると、異常事態を察知した学校側の魔法師ーー教職員及び警備員らが現場に到着して応戦するが、相手の方が数が多い。

おまけに敵は全員銃火器で武装している。

学校側の人間を視界に捉えた武装集団ブランシュは手持ちの銃火器を容赦なく発砲。

日本の銃刀法も真っ青だね。父さんと母さんが知ったら激怒だぞ。

教職員と警備員は咄嗟に木陰や物陰に隠れて銃撃から逃れる。

遮蔽物から魔法で対抗するが、手数で圧倒される始末。

サブマシンガンを相手にスイングショットで戦うに等しい。

そうこうしている間に別のトラックが到着。

数は4台。増援の別動体のようだ。

先鋒隊が弾幕で魔法師らを牽制しつつ、手の空いた別動体が敷地内に侵入し出す。

 

「これはピンチだね」

 

屋根から大量の煙玉を投下し、濃い煙幕を拡散。敵の視界を奪う。

視界不良に陥った敵集団の足が止まった。

チャンスだ。

タイミングを見計らって屋根から降りると、煙幕に乗じて敵集団のど真ん中に移動した。

 

「「何だおま、グワッ⁉︎「どうした?ギャッ⁉︎」」

 

秘技声真似。

様々な呻き声と効果音(声で再現)を煙幕の中で披露した。

ついでに適当な奴を恐ろしく速い手刀で気絶させ、銃を奪うとブランシュらに向けて発砲。

すると、どうなるか?

 

「誰だっ⁉︎誰が発砲しやがった‼︎」

 

「オマエおれを撃っただろうが‼︎」

 

「おいっ!おまえが俺に向けて撃っただろ!」

 

「何だ⁉︎何がおきている!」

 

襲撃を受けたと勘違いしたブランシュたちは忽ち、パニックに陥る。

ついでにこれも食らえ。

ワタシはこういった状況下でのお決まりセリフを大声で叫んだ。

 

「「この中に裏切り者がいるぞッ‼︎‼︎」」

 

「ひっひぃッ」

 

「ぎゃあああああ‼︎‼︎」

 

煙幕の中でナイフを闇雲に振り回す者や四方八方に銃を乱射する大馬鹿者まで現れる始末。

俗に言う同士討ちに発展。

おお、恐ろしや恐ろしや。

ワタシは巻き添えを食いたくないので、銃を捨ててそそくさと煙幕から抜け出す。

煙幕の中で銃声と悲鳴が鳴り響くが、暫くすると静かになった。

 

「おおー、派手にやったねー」

 

煙幕が晴れるとそこには血塗れのブランシュらが地面に倒れて動かなくなっていた。

傍に近づいて、足先でチョンチョンと突いて回ると、全員僅かに息がある。返事がない屍のようだならぬ、ただの重症者のようだ。

これは行幸♪敵から持ち物を剥ぎ取るのは戦場の習いだからね。お金とか持ってないかな〜。

敵の装備を漁ってみる。

 

「チッ!金はないか。代わりに持ってるのは銃器はイマイチ・・・長物は嵩張るからヤダ。ナイフもありふれているし、おっ!これは」

 

漁っている内にいい物を見つけた。

攻撃型の手榴弾を5個発見。

本来なら未成年がこんな物騒な物を所持してはいけないが、今は非常事態。ウチの両親も大目に見てくれる・・・多分。

ありがとうブランシュ諸君。この装備はワタシが有効活用させてもらうよ。

彼らの装備を拝借し終えると、そのままワイヤーガジェットで校舎の屋根に移動。

屋根から現在の状況を整理する。

敷地内の至る所で爆発や爆煙が上がっている。

正面から派手に侵入されているので、裏手の搬入口からも侵入されている筈だ。おまけに洗脳された生徒による破壊工作も行われている。

 

「何処いってもテロリストで溢れているし、狩り放題。変装者として鍛えてきた技量を惜しみなく使うのにもってこいじゃないか!」

 

行動方針は決まった。

屋根伝いに移動を開始する。

テロリストに襲撃された学園内で、生徒たちを陰ながらサポートする変装者でいこう!

メチャカッコいい。

取り敢えず実技棟方面に向かう。

 

***

 

「おお〜やってる、やってる。みんな立派に戦ってるじゃん」

 

校舎の屋根から見渡すと実技棟周辺は乱闘騒ぎ。

建物の至る所から火の手が上がり、それらを背景に生徒らとブランシュが激しく戦闘を行っている。

この状況下では一科も二科も関係ない。ある意味では一致団結しているとも言える。

 

「しかし、幾ら魔法が使えるからって、生徒が、魔法師の卵が張り切りすぎでしょう。まあ、そう言うわたしも魔法師の卵の一員だから人のことは言えないけど」

 

暫く実技棟周辺を見渡していると、ある存在に気づく。

 

「あそこで戦ってるのは、もしかして・・・」

 

乱闘の中、大立ち回り演じる見知った顔を発見した。

レオ君だ。

ひとりでテロリスト3人を相手取っている。

CADは携帯していない。持ち前の身体能力だけで戦っているではないか。

 

「ゴリラいや、ライオン対アリだね。解ってはいたけど、レオ君は魔法抜きでも十分強い。学生だと思って侮りす・・・おいおい」

 

大立ち回りを演じる現場から離れた位置。ロケットランチャーを構える敵を発見。目線と射線からして狙いはレオ君だ。

味方の犠牲もお構いなしか。

肝心のレオ君は戦闘に必死で自分が狙われている事に気づいていない。このままでは狙い撃ち。流石のレオ君でも良くて重症、最悪死亡してしまう。

レオ君には知り合った当初、色々と参考にさせてもらったし、助けてあげますか。

 

「よし、これを使うか。黒ヤギさんからお手紙だよ、そりゃ!」

 

ワタシは拝借したばかりの手榴弾を野球の投球ホームでロケットランチャーを構える敵の背後目掛けて投げつけた。

手榴弾は敵の真後ろで炸裂し、完全無力化に成功。ロケットランチャーの発射は阻止した。

攻めるって楽しいね♪

発射を阻止しても誰も褒めてはくれない。

ふっ別にいいさ。これこそ陰ながらサポートする変装者の醍醐味だ。

ワタシは乱闘が続く実技棟を後にする。

 

***

 

次に向かったのは野外の部活で使用される演習林。

演習林の出入口が見渡せる校舎の屋根に移動。

演習林の出入口付近でお揃いのクラブユニフォームを纏う集団を発見した。おまけに全員ライフル型のCADを所持している。

 

「おや、あそこにいるのはバイアスラン部か。おまけに雫ちゃんとほのかちゃんもいるし。そういえば、ふたりが加入したのはバイアスラン部だったけ」

 

この騒動の前日、ふたりに部活の話題を上げた時、部活の正式名称を間違ってると指摘されたような気がするが、今は頭の隅に置いておく。

 

「こんな日でも部活とは真面目なのか呑気なのか分からないな」

 

ワタシが感心していると、部長の五十嵐先輩があたふたと必死に部員たちに何かを伝えている。

様子から察するにブランシュの銃撃だろう。

自分たちの置かれた状況を理解した部員たちの顔付きが緊張で引き締まる。

所持しているライフル型の部活用CADを持つ手にも力が籠るのが見て取れる。

学園がテロリストに襲撃されるなんて、こんなイベン・・・ゴホンッ、滅多にないからしょうがないか。おや、あれは・・・。

屋根の上から見下ろしていると、部員たちから少し離れた草陰に隠れている不審な人物を発見。

ここまでブランシュが侵入していたか。

隠れていたブランシュが草陰から飛び出すと、部員たち目掛けて走り出す。その手には大振りのナイフが。

 

「キャアアアア‼︎」

 

ブランシュの接近に気付いた女子部員たちが悲鳴を上げた。

敵は女子の悲鳴などお構いなしに近づいてくる。

敵は近くにいる女子部員、ほのかちゃんに狙いをつけた。

ほのかちゃんは足がすくんで動けない。このままでは刺される。

まったく仕方がないな。

腰に巻いたベルトポーチから鉛の礫を取り出す。

礫一つを左手の親指に添えると、加速魔法で威力を加えて弾く。

弾かれた礫は不審者のナイフを握る手に目掛けて一直線に飛んで行く。

 

「ガァッ⁉︎」

 

手の甲に命中。ナイフが地面に落ちる。

不審者は苦悶の表情を浮かべ、地面に膝をつく。

秘技スナイプ。

部員たちのライフル型CADを見てピンときたんだよね。狙撃する変装者も悪くないな。

 

「ウチの部員に何するのよ‼︎」

 

五十嵐部長がその隙を逃さない。

魔法で敵を宙に舞い上げると、そのまま一気に地面へ叩きつけた。

地面には落下の衝撃で大きなクレーターが、ブランシュはその真ん中でぐったりと動かない。

◯ムチャか。

うわっ痛そー。ブランシュが可哀想に思えてきた。

敵が無力化され、一安心の空気に包まれるが、ほのかちゃんだけはどこかしゅんとして晴れない表情。

咄嗟に動けなかった自分自身を責めているのかな。

 

「ほのか」

 

そんな彼女の肩に雫ちゃんか軽く手を乗せる。

 

「雫」

 

「ほのかだけじゃないよ。私も怖かった。だから、そんなに自分を責めないで」

 

「うん。ありがとう!雫」

 

雫ちゃんに慰められて、ほのかちゃんの顔に笑顔が戻る。

うんうん。やっぱり、ほのかちゃんには笑顔が似合うよ。親友の気持ちを察するとは流石雫ちゃん。

ここはもう大丈夫そうだね。

ワタシが別の場所に移動しようとした時だった。

雫ちゃんが突然地面にしゃがんだ。

うん?体調でも悪いのかな?

 

「どうしたの雫?」

 

「これは・・・」

 

雫ちゃんが地面に転がった鉛の礫を拾うと、不意に屋根の上を、此方を向いた。

うおっ⁉︎

ボクは咄嗟にその場に伏せて、彼女の視界から外れる。

狙撃方向からこちらに気付くとは、君はスナイパー・◯ルフか⁉︎

屋根の陰に身を潜めながら、聞き耳を立てる。

 

「それって何?石に見えるけど」

 

「違う。これは鉛の塊。これでテロリストのナイフを弾いたんだよ」

 

「てっきり部長が助けてくれたと思ったんだけど、何処から飛んできたんだろう?」

 

「部長が魔法を発動する直前、あそこからピンポイントでコレを弾いたんだよ」

 

直接雫ちゃんの様子を確認しなくてもわかる。絶対にこちらを指差している。

 

「でも、一体誰が?もしかして、風紀委員かな?」

 

「こんな回りくどい方法で助けに入らないよ。姿を見られなくない誰かさん以外はね」

 

当たっていらっしゃる。

やばい。ここにいたら見つかる。雫ちゃんに見つかったら、別の事に、例えば避難に付き合わされて、陰で活躍する変装者ができなくなるぞ!それだけは絶対に避けなくては。

ワタシ、ボクはそーっと気付かれないように屋根の上を這うように移動した。

 

 

***

 

小体育館隣接する区域では主に部活生たちがブランシュに対して奮闘している。

 

「雫ちゃん達を見かけた時に思ったけど、襲撃のタイミングをもう少し考えなかったのか?放課後、帰宅生部活生関係なくCADを携帯しているのに・・・」

 

襲撃を画索した人間の心境が理解できない。

その証拠に部活用CADを携帯した体育会系の生徒らに武装したブランシュも苦戦を強いられる。

 

「教職員がいなくても時期に制圧されるかな。おや?」

 

見所はないと判断し、その場を去ろうとした時だった。

多くの部活生たちの中で袴姿の男子生徒たちーー剣術部らが、一際抜きん出て活躍をしている現場に遭遇。

魔法ありとはいえ、竹刀で武装テロリストを相手に立ち向かうのはロマンだ。

ボクは剣術部の姿に思わず見とれてしまう。

そんな剣術部の中で唯一制服姿の男子が異彩を放つ。

桐原先輩だ。

謹慎中で部活着ではないのでひとりだけ浮いている。

桐原先輩といえば・・・。

 

「そうだ。ちょっとだけ、遊んでいこう♪」

 

キャットスーツから制服に着替えて、最後に壬生先輩を模したマスクを被る。

放送室での一件の続きをしよう♪

ワイヤーガチェットを使って、体育会の屋根から地面に着地。ヒーロー着地はしない。

体育会の物陰からタイミングを見計らう。

 

望んでいたタイミングはすぐにきた。

地面にうつ伏せで倒れているブランシュのひとりが立ち上がった。やられたふりだ。そして、懐からナイフを取り出すと、そのまま桐原先輩の背後に迫った。

ボクは物陰から素早く出ると、地面に転がっているスタンバトンを拾った。

少しリーチが短いが、壬生先輩の剣道を再現するのには十分だ。

「桐原!」とブランシュに気付いた部員の声に反応して、桐原先輩が振り返った。

ここだ!

 

「やあ!」

 

「ガァッ・・・!」

 

ブランシュに小手。手に持ったナイフを叩き落とすと、とどめに面を放つ。

今度こそブランシュは地面に倒れて気を失った。

 

「桐原君!」

 

「壬生⁉︎お前どうしてここに?講堂にいた筈だろうが。何でここに来た‼︎今学校がどうなってるのか分からないわけじゃないだろう!」

 

学校がテロリストの襲撃に見舞われる中、危険を顧みず、わざわざ小体育会まで来たのを咎める。

 

「ごめんなさい!大変な状況なのは分かってるわ。でも・・・それでも、桐原君に謝りたくて」

 

「俺に謝る?まさか、部活勧誘の事を言ってるのか?あれは寧ろ俺の方が・・・」

 

「ううん。そうじゃない。この騒動の一端は私の責任でもあるの。私が馬鹿だった・・・平等という甘い言葉に釣られてテロリストを手引きするなんてね。本当に私ってバカ」

 

目尻に僅な涙を浮かべておく。

 

「詳しい話しは後だ。ここは俺たちが何とかするから、お前は取り敢えず体育館に避難してろ」

 

桐原先輩はそう言ってボクの肩にそっと、手を置く。

危機的状況を脱することを優先。

壬生先輩の身の安全を考えての行動だね。ふふふ、桐原先輩に守られるのも悪くない。さーて、どこでネタバラししようかな♪

 

桐原先輩ら剣術部に付き添われて体育館の中に避難しようと、体育館の出入口に差し掛かった時だった。

 

「そうだ。一つだけ聞いてもいいか?」

 

「何、桐原君?」

 

「お前、誰だよ?」

 

その一言でボクの背中に電流が走る。

今・・・何って言った?

思わず足が止まる。

 

「何を言ってるの?桐原くん。私が私じゃないって?」

 

平常を装って喋る。

どうしてバレたの?壬生先輩の動作を完璧にマスターした筈だ。

 

「おうよ。声も顔も壬生そのものだ。だが、お前は違う。壬生じゃねぇ」

 

「本当に何を言ってるのか分からないわ。理屈にあわ・・・」

 

ボクが言い切り前に桐原先輩が高周波を纏わせた竹刀ーー高周波ブレードをボクの首筋寸前で止めた。

見事な早技だが、不快な超音波を撒き散らすので勘弁してほしい。

この魔法は術者にも影響が及ぶので、耳栓とセットで使用するのが一般的だが、桐原先輩を初め剣術部の人間は慣れているのか、誰も耳栓をしていない。

 

「あのよォ・・・あんまり、俺を舐めんなよ?あいつとはランドセル背負ったガキの頃からの付き合いだ。理屈なんているかよ」

 

彼が手先ひとつ捻るだけで、ボクの首は胴から泣き別れ。

 

「本当に何を言ってるのか分からないわ。具体的に言ってくれないと・・・」

 

「そんなに理屈がお望みなら聞かせてやるよ。さっきコイツに振るった剣が全然違うんだよ」

 

桐原先輩は途中でボクの言葉を遮ると、つい先程ボクが倒したブランシュを一瞥し、語り始めた。

 

「何が違うと言うの?」

 

「高校に上がってからのアイツの剣はガラリと変わった。倒す剣じゃなく、殺す剣。つまり悪い方向にな」

 

「・・・それで?」

 

「最近の壬生の剣は殺す剣で、お前が振るったのは倒す剣。昔の壬生の剣道だ。俺も剣士の端くれ。だから、分かるんだよ。昨日今日でそいつの剣が急に変わるわけねぇ。だから、断言する。お前は・・・壬生じゃねぇ‼︎」

 

突き放すような言葉をハッキリと口にした。そこに一切の迷いはない。

剣を生業とする人間ならではの感受性か。

少女探偵団に付き合わされて剣道部にお邪魔する機会がなかった。

確かに高校からの剣道の腕前は知らなかったな。

これ以上の誤魔化しは無理だね。

 

「ぷぷぷ、クケケケ。あー、バレっちゃたか♪」

 

壬生先輩らしからぬ、軽く舌を出してみせる。

 

「てめぇ・・・最近噂になってるドッペルゲンガーか。この前の放課室でも壬生に化けてやがったそうだな。ふざけたマネしやがって」

 

放送室の件は桐原先輩の耳に入っていた様子。

声の端々から怒気がピリピリと伝わってくるぜ。

 

「おい!お前ら」

 

桐原先輩の掛け声で剣術部の部員たちがボクを取り囲む。

各々手にはしっかりと竹刀を構えている。

すげぇ、時代劇みたい!

 

「ぷぷぷ、クケケケ。おー、怖い怖い」

 

「てめぇ・・・壬生を騙ってただで済むと思うなよ?本物の壬生をどうした?」

 

返答次第では斬る。

言葉にしなくても、そんな気配が彼から伝わってくる。

返答の代わりに声には出さず、唇だけ動かして「(も・う・ど・こ・に・も・い・な・い)」と伝えた。すると、桐原先輩はそれを壬生先輩に危害を加えたと解釈したのか、

 

「この屑がぁぁぁぁッッ‼︎‼︎」

 

空気が震えるほどの激しい咆哮と共に、ボクの首筋を高周波ブレードで躊躇なく、攻撃した。

容赦なっ⁉︎

そして、ボクの首は胴体と泣き別れ、しなかった。

 

「なっ・・・⁉︎」

 

桐原先輩の口から驚きの声が漏れる。

驚くのも無理はない。高周波ブレードの斬撃をまともに食らって、かすり傷ひとつないのだから。

危ねぇぇぇぇ‼︎レオ君の硬化魔法を見ておいてよかった。斬撃が直撃する瞬間、硬化魔法を発動したのだ。

部活勧誘のどんちゃん騒ぎの後、色々理由をつけてレオ君にお願いして得意な硬化魔法を披露してもらった。レオ君は自分の特技を披露、褒められて嬉しそうにしてたな。

その時の硬化魔法を参考にし、纏っている皮に彼と同等の硬化魔法を施したのだ。

今の皮の強度は鋼並。高周波ブレードは勿論、エリカちゃんの剣撃だって怖くない。

 

斬撃を防いだ様子に桐原先輩だけでなく、周りを包囲する剣術部も驚きを露わにする。

これはチャンス。

この隙に袖口を体育館の屋根に向けるとそこからワイヤーガチェットを射出。フックを屋根の軒先に引っ掛けるとガチェット効果で屋根の上に移動。

 

「てめぇ!逃げんのか⁉︎」

 

桐原先輩が下から見上げるように叫ぶ。

 

「そんなに怒らないでよ。本物の壬生先輩には何もしてないわ。講堂を出て何処に行ったか知らないけど、敷地内から出てないから探せば見つかるんじゃない?それじゃあ、がんばって見つけてね桐原君♪」

 

軽く手を振って屋根から逃げる。

去り際に下の方から桐原先輩がまだ叫んでいるのが分かる。

桐原先輩に真っ直ぐな好意を持たれて、壬生先輩は幸せ者だな。人間本当の幸福ほど気づかないとはよく言う。早く壬生先輩には気づいてほしい。

ここに愛と絆は証明された。どこかの熱愛先輩カップルも桐原先輩を見習ってほしいな。

 

 

***

 

壬生先輩からキャットスーツのゼタちゃんに変装し直すと、ボクが最後に向かったのは図書館。

 

「襲撃事件と言ったら、ここは外せないね」

 

図書館正面入り口から堂々とお邪魔する。

館内は電気系統がやられたのか、薄暗く天窓から差し込む光だけで視界が悪い。おまけに静まり返っていた。

闇に紛れて刺客が潜むには丁度いい環境だ。

変装者として鍛えた技能で意識を集中し、館内に人の存在を探った。

 

「ぷぷぷ、クケケケ。やっぱり、既に館内の人間は無力化されたようだね」

 

時間をおいて最後に図書館に来たのには訳がある。

原作では達也君と深雪ちゃん、エリカちゃんによって館内のブランシュ及び洗脳された生徒達は制圧され、二階の特別閲覧室から非公開文献を盗み出す企みも阻止される。そして、壬生先輩はエリカちゃんとの一騎打ちで敗れ、洗脳による憑き物が落ちて取り敢えず、解決だったはずだ。

ここに来たのは別に達也たちの活躍を間近で見る為じゃない。

事件は解決かと思いきや、裏で動いていた変装者によって既に非公開文献は奪取されていた。という設定のごっこ遊びをする為だ。

だから、こうして達也君たちが去ったであろう時間帯を見計らって、図書館に来たのだ。

 

「表のブランシュはいい具合に動いてくれてるし、この隙に非公開文献を拝ませてもらおうかな」

 

非公開文献に興味はないし、本当に盗むつもりもない。

ただ、如何にも漁夫の利を狙ってる変装者もしくはスパイの感じで、喋ってみただけだ。

やっぱり、ゼタちゃんにはスパイの方が似合うな。

 

「ただ盗む(ふり)のも面白みが欠けるし、何か一工夫してみようかな・・・」

 

思考に耽りながら薄暗い館内を歩いていると、何を踏んだ。

目を凝らして足元を確認すると床に倒れたブランシュだった。

「うぅ・・・」と苦しそうに呻く。

よく見れば10人ほど倒れている。その中には洗脳された学生恐らく剣道部員も混じっている。どうやら1人を誤って踏んだらしい。

ここにいる全員、達也君かエリカちゃんにやられたみたいだ。完全に相手が悪かったな。

 

「何だ、ただのテロリストか」

 

テロリストを跨いで先を急ごうとした時、あることを思い付く。

少しだけ遊んでいこう。

ボクはポーチから変装マスクを取り出し被る。変装したのは真由美先輩。

キャットスーツの真由美先輩も新鮮でいい感じ。

変装し終えると、倒れているブランシュの頬をぺしぺしと引っ叩いて、無理あり意識を覚醒させる。

 

「ガハッ・・・⁈」

 

「よく眠れたかしら?随分長くノびていたけど」

 

名も知らぬブランシュの顔を覗き込むように見下ろす。すると、相手は警戒した様子で、上体だけ起こして後ずさる。

 

「ねぇ、一つ聞かせて。どうして、こんな騒動を引き起こしたの?」

 

「知れたこと!お前たち、魔法師が優遇されている現代の行政に反対し、魔法能力による社会差別を撤廃する為だ‼︎」

 

「ふふふ、ふっははははははは‼︎」

 

天を仰いで、高笑いする。

 

「何がおかしい⁈」

 

「いやー、アナタがあまりにおかしい事を言うものだから、思わず笑っちゃった。アナタのパパやママ、学校の先生、人気取りに必死な政治家共が言わないなら、私が言ってあげる。人は平等ではない。生まれつき足の速い者、美しい者、親が貧しい者、病弱な身体を持つ者、生まれも育ちも才能も、人間は皆違っているの。そう、人は差別されるためにある。だからこそ人は争い、競い合い、そこに進歩が生まれる。不平等は悪じゃない。平等こそが悪なのよ!!権力を平等にしたらどうなる?人気取りの衆愚政治に堕ちる。富を平等にしたら怠け者ばかりが蔓延る。魔法師社会はそうではない。争い、競い、常に進化を続けている。魔法師だけが前へ、未来へと進んでいる。平等な社会?そんなもの願い下げよ‼︎それと最後に・・・革命戦士ごっこは楽しかったかしら?」

 

人の悪い笑み。暗黒微笑みを浮かべる。

真由美先輩が絶対に言わないセリフ変装者じゃないけど、某皇帝陛下の演説を少し弄って熱弁してみた。

 

これを講堂で全校生徒の前で喋ったら、最高に気持ちいいだろうな。まあ、その後で暴動が起きて、真由美先輩の信用はガタ落ちだろうけど。

 

ボクの演説を黙って聞いていたブランシュは暫くすると突然、

 

「うあ、ああああああああッッ‼︎‼︎」

 

立ち上がるとやけにくそ気味に叫び散らし、ボクに掴み掛かろうと突進を咬ましたが、

 

「残像よ」

 

ボクは突進される瞬間、相手の横を素早く通り抜けた。

ブランシュが突っ込んだのは、ボクの残像でしかなかった。

突進したと勘違いしたブランシュの首筋に恐らく速い手刀を叩き込んで意識を奪う。

意識を失ったブランシュは再び床に倒れる。

 

「本家には及ばないけど、カッコよく決まったかな。ふふふ、あっいけない!寄り道し過ぎた」

 

ここに来た目的を思い出す。

すっかり遊び過ぎちゃったな。早く二階に閲覧室に行って秘匿情報は頂いた。怪人二十面相三十三世という落ち手紙を残して本日の締めにしよう。

二階の特別閲覧室に向かおうと歩き出した時だった。

 

「動くな」

 

たったの一言。

鋭利な刃物を思わせる警告が背後から響く。

ゆっくりと振り向くと、

 

「達也君」

 

気配を消して潜んでいたのか、物陰から出てきた達也君がこちらに拳銃型CADの銃口を向けてきた。

えぇー、まだ帰ってなかったの。勘弁してよ。




次回、お仕置きタイム(予定)
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