魔法科高校のドッペルゲンガー   作:西の家

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焦りは禁物。と言い聞かせている西の家です。
早くリーナを揶揄いたい(泣き)ネタはあるのに。


入学編 20話「達也VS権三郎」

権三郎side

 

突然の達也君の登場にも動じず、真由美先輩のふりを続ける。

 

「あら、達也君。こんな所でどうしたの?てっきり避難誘導に従事してると思ったのに」

 

「無駄な演技はしなくていい。お前もわかっているはずだ。ドッペルゲンガー」

 

「ちぇ、少しは乗っかってよ。ノリ悪いな」

 

真由美先輩を模したマスクを顔から剥がすと、ゼタちゃんに戻る。

ゼタちゃんは初顔の筈だが、この顔を見ても達也君は殺風景な表情を浮かべて、感情が読み取れない。だだ、ジッと視線を外さず、暗がりの館内でも輝く白銀の拳銃型CADの銃口をこちらに向けて佇む。

放送室ジャックの際に見せた驚愕に染まった顔を見せてよ。

 

「この顔では初めましてだね。お気に入りのひとつなんだけど、どうかな?きみの感想が聞きたいなー。なんてね♪」

 

「他人から奪った顔の感想を訊ねるな。今まで何人の人間に成り変わってきたのやら。そうやっていずれは深雪に成り変わるつもりだったか」

 

僅かに怒気を含んだ言葉を浴びせられた。

深雪ちゃんに変装したことを根に持ってる。幻視なのか、達也君の身体からメラメラと激しく炎が上がってるよ。

 

「その気がなかったと言えば嘘になるかな。最初は深雪ちゃんになってみたいなー、きみから深雪って呼ばれてみたいとは思ったよ。けどね・・・君たち兄妹を観察する内にわたしの技能を持ってしても、きみだけは騙さないと直感したよ」

 

「だろうな。お前が仮にどれだけ精巧に深雪に化けたとしても所詮モノマネいや、それ以下の猿真似だ。俺が深雪を見間違えることは決してない。昔も今もこれからも」

 

深雪ちゃんへの愛を語る達也君に思わずドン引き。

シ、シスコン過ぎる。

 

「うわー、大した兄妹愛だことで。ほんと・・・深雪ちゃんが羨ましい。やっぱり、人間容姿がいいと愛されるだね」

 

シスコン過ぎる達也君のせいで、憂鬱気味に喋ってしまった。シスコンな兄がいる深雪ちゃんは大変だね。いや、彼女なら兄が自分を気に掛けてくれると大喜びするか。

 

「そうじゃない。外見も中身もそれら全体を引っ括めて、俺は深雪を兄として愛している。お前にも外見だけでなく、中身や別の面で愛情を向けてくる人間がいるはずだ」

 

達也君の紡ぐ言葉は意外なものだった。

妹の容姿を勝手に使用したワタシ、ボクは彼の中では敵認定されているはず。こちらを気に掛けてるような言葉を発するとは・・・心理戦に持ち込む気か?

 

「・・・外見は関係ないと言いたいのかい?そういうのを世間では嫌味だよ。一度でいいから、別な顔で生まれ変わってごらんよ。兄妹そろって」

 

挑発気味に首の付け根、マスクの境目を軽く捲り上げて、真っ白な素肌を覗かせる。

この呪われた顔を見てみろ!なんちゃってね♪

ボクはマスクを元の位置に戻すと、語り合いを続行する。

 

「まあそれはそうと、ブランシュもあらかた片付いて、これでお開きめでたしめでたしで終わるのに。わざわざ待っててくれたの?図書館に、それも一人で」

 

「深雪を危険に巻き込むわけにはいかないからな。俺だけで片付ける」

 

絶対に嘘だな。

超絶シスコン魔王が最愛の妹の傍を離れるなど考えられない。おまけに一高は現在ブランシュの襲撃による緊急事態。尚更、ありえない。

大方、深雪ちゃんに不測の事態が起きてもすぐに対応できるよう手元に、例えば館内に身を潜ませているとかね。

達也との会話の中で感覚を頼りに館内を索敵するが、深雪ちゃんらしき人影、気配は感じられない。

ロビーの物陰から気配を殺して現れた兄にして妹あり。隠形の心得はあるか。

 

「まあ、そういうことにしてあげるよ。だがなぜ、わたしがここに来ると分かったの?一高に重要な施設は沢山あるのに」

 

「簡単だ。可能性のある全ての場所を調べ、その中から絞りこんだ。目立ちたがりで愉快犯のお前なら、重要な文献が保管されてる図書館を選ぶ。混乱に紛れて盗み出そうと動く」

 

やべー、冗談を聞かれていたか。

今更否定してもしょうがないし、ここは少し乗り掛かっておくか。

 

「ふーん・・・よくわかってるじゃん。でも、ひとつだけ訂正させて。別に盗み出そうとまで思ってないよ。ただ、少しだけ閲覧しようと思っただけさ」

 

「自分の素顔を治す為のヒントを得る為か。ドッペルゲンガーいや、権三郎」

 

達也の口から出た名前に仰天し、目が飛び出る錯覚に襲われた。

マスク越しとはいえど、相手に動揺を悟られないように余裕の表情を崩さない。

落ち着け。こうなることは以前から予想していた筈だろう。

達也君は『精霊の眼』という名のチート持ちだ。おそらく、彼はここ一番の舞台で名を告げるつもりだったのだ!学園がテロリストに襲撃される。文句なしのシュチュエーションじゃないか。

達也君にしてはサプライズが利く。大いに付き合ってあげよう。

秘技七変化四バージョン!

 

「ぶっぶー。「ワタシ」「ボク」「アタイ」「ワタクシ」は権三郎じゃありません。残念だったね」

 

「一人称が乱れているぞ。あくまでもシラを切るか。そうしたいならそうすればいい。俺のやり方で正体を暴く」

 

そう言って鋭利な眼差しを細める。完全に臨戦態勢だと見て取れる。

お喋りはここまでのようだ。やっぱり見逃してはくれないか。

ボクも見習って、臨戦態勢に移る。

 

***

 

暗い館内。天窓からロビーに差し込む陽光を挟むように両者向かい合う。

達也は利き手に愛用のCADを、対して権三郎は無手のまま軽く佇む。

視線と視線が交差する無言が続く中、先手を取ったのは権三郎。

床を一気に踏み込んで、達也へ突貫。そのまま無策に突っ込むのではなく、距離を詰める中で腰のポーチに両手を伸ばす。

ポーチから取り出したのは中心に穴の空いた金属製の円盤の外側に刃がついた投擲武器。チャクラム。

それらを人差し指と中指で挟んで投擲でなく、白兵戦使用。達也に素早く斬りかかった。

流れる動作を達也は冷静に観察し、刃を潰しておらず、殺傷力を有した立派な武器だとすぐに判った。

 

「ちょっとは、さっ!当たっても、ふっ!いいんじゃないの!」

 

無駄のない足捌きで悪態を叩く相手の斬り込みを右、左と交互に後退しながら、無言で攻撃を回避していく。

壁際に追い詰まらないよう注意を払いながら、後退の歩幅を調節する。

 

「チッ!」

 

思うように達也を壁際を追い込めないことに舌打ち。剛を煮やした権三郎は、一旦後退。と同時に両手のチャクラムを達也へ投擲。

2輪は円を描き空を切り裂きながら、達也の胴、頭に迫りくる。

自身に迫ってくるチャクラムに対し、達也はCADのグリップエンドで器用に全て弾く。

しかし、弾き終えた瞬間、今度は右眼球目掛けて迫りくる物体が。鉛玉だ。

権三郎は投擲したチャクラムの内、2輪目が捌かれる間際に指で鉛玉を弾いたのだ。

チャクラムはあくまで囮。

そのまま眼中に命中するかと思いきや、達也は首だけを傾けて、鉛玉を回避した。

外れた鉛玉は虚しく壁に命中して床に転がる。

同時に権三郎の姿が一瞬だが消えた。

手品師が使うミスディレクション。この場合は鉛玉に注意を惹きつけ、自身は消えたように錯覚させた。

達也は手品の種を瞬時に見抜くと、消えた権三郎の姿を探す。

目当ての相手は暗がりからすぐに姿を現した。

床をスケートリング上を滑るように移動するが、移動速度は並みの魔法師の自己加速よりも速い。

牽制するように達也の周囲を旋回し始めた。

魔法を使用している様子はない。靴に何か仕込んでいるか。

達也は想定内だと、冷静に対処に移る。

相手よりも素早く、自己加速を使用したと見間違う移動速度で一瞬のうちに権三郎の背後を取る。そして、CADを構えると、

 

「終わりだ」

 

死角の背後から意識を刈り取るサイオンの波動。

以前服部との私闘で使用した『波』の合成を浴びせようした。

しかし、それを読んでいた権三郎はお返しとばかりに達也の背後に回り込んだ。

お互いに的確に相手の死角を取り合っては、急所を突く隙を伺う。それらを繰り返す。

 

「(コイツは俺の戦い方を熟知している・・・)」

 

急所を正確に狙う。四葉の暗殺者としての達也の戦法を出会ってから日が浅いにも関わらず、よく理解している。

達也は内心、素直に賞賛する。

 

「君のやり口は知っているよ」

 

「(この口ぶりからして服部先輩との私闘を盗み見されていたか。一体、誰に化けていたのか)」

 

達也は知る由もないが、服部との私闘時、権三郎は雫に邪魔される形で変装はおろか、盗み見もできていない。

 

流石に入学以前、実家や国防軍の特尉としての仕事までは盗み見されていないと思いたい。

達也は口には出さず、胸の内だけで愚痴る。

戦法を少しだけ変える。

真っ向からの軍人らしい白兵戦に切り替える。

互いにの長掌筋が刃のように打ち合う。

そこから始まる激しく複雑な拳打の応酬。

その中で達也はあることに気付く。

 

「(理由は不明だが、右手を痛めているな)」

 

攻撃の最中、相手の観察を欠かさない。

何らかの理由で右手を庇うような動きが目立つ。上手く誤魔化しているつもりだろうが、達也の観察眼は誤魔化せない。

これを利用しない手はない。

右手を集中的に攻める。すると、権三郎は苦悶の表情を浮かべて、後退し始めた。

このまま壁際まで追い込み、一気に仕留める。

達也は距離を詰めた。

 

「なに・・・⁉︎」

 

ここで形勢が変わる。

達也が床の瓦礫に足を取られた。バランスを崩す。

偶然ではない。激しい死角の取り合いから拳打の応酬、右手の負傷まで利用し、権三郎が上手く達也を誘導したのだ。

その隙を権三郎は見逃さない。

達也の懐に急接近腹に掌底打ちを見舞う。

 

「ぐっ⁉︎」

 

衝撃により身体が浮きそうになるが、その場で踏ん張り、3メートルほど後退するだけに留めた。

 

「大陸武術の発勁か」

 

「正解。カッコいいでしょう。ホワチャー!」

 

カンフー映画などでよく見かける叫び声とポーズ。

ダメージの残る腹に手を添えながら、権三郎を見据える。一瞬『再成』を使用するか迷ったが、相手の模倣魔法が不明な為、『分解』同様に控えた。

下手すれば、自身の固有魔法すら模倣されるのを警戒して。

技の起こり、クセ、魔法の発動などの戦闘スタイルは個々で異なる。魔法師の戦闘において、それらを見極めることが勝敗の分かれ目。

しかし、今戦闘を繰り広げる相手は個人にも関わらず、使用してくる魔法の発動タイミングや速度、戦闘スタイルが全く異なる。

見極めたと思えば、別のスタイルに切り替わる。

先程の暗殺者から一転、拳法家のように。

 

「過去に盗み見た人間の動きを模倣しているか。エリカの時もそうだが、器用な奴だ」

 

「あれ?やっぱり、君も観戦してたんだ。少し照れるなー」

 

わざとらしく頭の後ろに手をやって照れてみせる。

そんな権三郎とは対照的に達也は冷静に思慮する。

 

「(『分解』と『再成』が使えないのは正直痛い。おまけに技の起こりを見極めるのも困難だが、まったく対処できないわけではない)」

 

その都度、素早く対応すればいいだけのこと。

僅かに痛む腹から手を離し、身を低く構えた。

ここで達也は模倣されるのを覚悟で切り札を切る。

 

「その化けの皮剥がしてやろう」

 

その言葉を皮切りに加速する。

正真正銘の自己加速術式による高速移動。

しかし、CADを介した魔法ではない。

 

『フラッシュ・キャスト』

四葉の秘技。記憶領域に起動式をイメージ記憶として刻み付け、記憶領域から起動式を読み出し、起動式の展開、読み込み時間を省略する技術である。

達也の場合は、脳内の仮想魔法演算領域という特異性から、記憶領域に魔法式をイメージ記憶として蓄えることで魔法式構築の時間すら省略する。

 

「なっ・・・⁉︎」

 

CADを介した魔法の発動兆候がない為か、権三郎は反応が遅れた。

その場で動かない権三郎の周囲を、今後は達也が旋回し始まる。

移動速度が権三郎はおろか、並の魔法師の比ではない。

 

「ちょっとちょっと!コレは目で追えないですけど‼︎」

 

必死で達也の動きを、食い付く勢いで目で追うが、捉えることができない。自身の動体視力を持ってしても、残像を追うので精一杯だ。

これは計算外だ。

権三郎は変装者であって、戦士ではない。故に逃走に恥じらいを覚えない。

逃走に移行しようとするが、達也はソレを許さない。

 

「びぃ!げぇ!ぐぅ!やめ・・・がぁッ‼︎」

 

無言で無慈悲に自己加速を利用した鋭い手刀で、キャットスーツごと権三郎の外皮を削り取っていく。

それに合わせて権三郎が短い悲鳴を上げるが、達也は攻撃の手を一切緩めない。

側から見れば如何しい光景だが、正体を暴くには合理的な戦法。

纏う皮がなくなれば、嫌でも正体を晒すしかない。

足、腰、背中、胸(パット)と順にじわじわと剥がされていく。おまけに変装道具と暗器を仕込んだ腰のポーチまで金具を切られ、床に落ちた。

完全に翻弄されていき、遂に、

 

「ぎゃあ・・・‼︎⁉︎」

 

右頬の外皮が削られ、真っ白な素肌が外気に晒された。権三郎は思わず、顔の前で両手を十字に、その場で蹲る。完全に悪手だ。

 

「もう終わりか?まさか、ネタ切れじゃないだろうな」

 

達也は一度攻撃の手を止めて、正面に立ち様子を伺う。

素顔を見られるのを嫌悪してか、冷静さを失ってのことか、権三郎は肩で息を切らし、黙って蹲る。

達也の方からは上手く顔を隠すことができている。

そんな権三郎に達也は間髪容れず、言葉を続けた。

 

「お前は他人を模倣するばかりで、独創性に乏しい。確固たる独自の能力オリジナリティがあれば、結果は別だったかもな」

 

所詮は他人のモノマネ。

元ネタが判明していれば、対処はできる。

 

「今度こそ終わりだ」

 

フラッシュキャストによるノーモーションの魔法で意識を刈り取ろうとした瞬間だった。

 

「・・・⁉︎」

 

金属音を立てながら床に転がる丸い物体に目を奪われた。手榴弾だ。それも4個も。

咄嗟に達也は権三郎から離れる。

それと同時に手榴弾が纏めて爆発。図書館内に轟音が響き渡った。爆風で天窓は割れ、ガラスの破片が激しい音と共に床に叩きつけられて、粉々に割れた。

風通しの良くなった天井から明るい陽光が差し込む。

 

素顔を晒すくらいなら自爆を選んだか。と達也は一瞬思ったが、すぐにその可能性を否定する。

爆発はあくまでフェイク。逃走の為の目眩し。

その証拠にそれまで被っていたボロボロの外皮(達也は知らないがゼタちゃん)が床に遺棄されていた。

正面出入口は自分が陣取っていたので、そこからは逃げられない。

割れた天窓から逃げた様子もない。

となれば可能性は一つ。

奴はまだ図書館内に潜んでいる。

『精霊の眼』で索敵を開始しようとした時、

 

「お兄様‼︎」

 

「達也君、大丈夫⁉︎」

 

二階に待機させていた深雪とエリカが降りてきた。

『精霊の眼』で確認してみるが、やはり眼に写る2人の個別情報体は本人そのものだ。

しかし、権三郎は容姿と声色、仕草や個別情報体までも模倣する。

 

「チッ!そうきたか・・・」

 

悪趣味なやり口に達也は悪態を付く。

どちらかに化けたか。

 

 

***

 

 

(ヒィ〜危ない危ない。マジもんの爆弾脱出マジックはやるもんじゃないね)

 

ある人物に変装した権三郎は内心ヒヤヒヤしていた。

あと少し爆発から逃れるが遅れていたら、お空の上まで飛んでいく寸前だった。

 

(ってか、主人公兼ラスボスとマジバトルとかないわ〜。容赦無さ過ぎて、メチャしんどい。目眩しの爆発の際、手持ちの中で無傷なこの顔に変装したけど、達也君のチートの前には無力かな。でも、時間稼ぎくらいはできかも)

 

今すぐ図書館から脱出して家のお風呂に浸かり傷を癒したいが、その為には達也の魔の手から逃れる必要がある。

 

(この顔で見逃して♡萌え萌えキュンって可愛く決めても無理だろうな〜。どうしよう)

 

そんなことすれば、変装対象者の名誉が死ぬ。

本人から問答無用で半殺し、最悪ブチ殺される。

脱出プランを練る権三郎だった。

 

 




次回、権三郎死す。デュエルスタンバイ。
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