本日最後の授業を教室で終えて、生徒たちは各々帰り支度を始まる。
(食堂の一件以降、森崎君は執拗にワタシを避けるようになった)
雫ちゃんとワタシは校舎入り口横の柱に背中を預けて、お花を摘み中のほのかちゃんを待つ。
ワタシでも女の子に対して言葉選びくらいはする。
学校の外はすでに日が暮れて、空は茜色に染まり遠くからはカラスの鳴き声まで聞こえてくる。
ほのかちゃんまだかなー。
暫く黄昏に老けていると、普段無表情で無口の雫ちゃんが珍しく自分から話を切り出す。
「ゴンちゃんはいつから女の子の格好をしているの?きっかけとかあるの?」
「いつからかー。うーんとね、中学の頃からだったかな。魔法師適正検査の時に、この姿でこそ真の魔法力を発揮できると気付いたのよ」
身の上話をあれやこれと語り出す。内容は勿論嘘である。
まさかここでアレができるとは‼︎胸中で思わず歓喜した。
変装者としてやりたい事の一つ。
嘘の経歴を語る。
こんなにも早く実行できるとは思わなかった。きっかけを設けてくれた雫ちゃんには感謝しかない。
雫ちゃんは適当に相槌を打ちながら、ワタシの嘘の身の上話を聞き終える。
「別に女の子になりたい訳じゃなくて、要は女の子の格好がしたいだけなんだね」
「そうだよー。この格好で大抵の人間、特に男子の驚いた顔を見るのが面白くて」
「でも、ホームルームの終わりにゴンちゃん心は女の子と言ってたよね。食堂でもそうだけど、やっぱりあれも冗談?」
「勿論♪見た目は女の子、心は男の子。それがワタシ佐々木権三郎だよ♪」
可愛くポーズ取ってみるが、雫ちゃんは無視する。少しは反応をしてよ。
「ゴンちゃんはどこの中学校出身なの?ちなみに私とほのかは●●●中」
続く雫ちゃんの質問に対し、ワタシは答えに詰まった。
妙に根掘り葉掘り尋ねるな。とりあえず、無言のままにはいくまい。
「ワタシは○+○中だよ。そこでも女子制服で登校してたよ。OK?」
「それはいつ頃から?入学から卒業までずっと同じ学校で?」
ワタシはふるふると首を横に振るう。
ここは念に入りに盛っておくか。
「ううん。夏、いや、秋頃に前の学校から諸事情で転校したんだ。勿論、その学校も女子制服で・・・」
「それは何年生の時」
言い切る前に雫ちゃんがさらに尋ねる。
なに?このやり取り。
あまり長引くとボロが出かねない。嘘は重ねれば重なるほど脆くなるのだ。話題を変えないと。
「どうしてそこまでワタシの事を聞きたくなったのかな?ちょっとだけ気になるなー。なんちゃって♪」
ワタシの問い掛けに、雫ちゃんは遠くの方に視線を移す。
「私とほのかの地元の中学校にもゴンちゃんと同じ女の子の格好で登校する男の子がいたんだ。最初は変わった子だなって、思ってたけどすぐに打ち解けて、私とほのかも友達になった」
唐突な話題変更。
うん、がっつりワタシですね。
なぜ、今になってそんな話を持ち出す?まさか・・・ワタシの正体に気付いてる?いや、そんな筈はない偶然に決まってる。偶然だ偶然。そう偶然偶然・・・。
今纏っているガワは中学時代のガワとは似ても似つかない。声も人柄も変えているし、雫ちゃんが気付くわけがない。
それに、中学時代のガワは自宅のクローゼットの奥に仕舞い込んでる。
ワタシは出来るだけ動揺を悟られず、落ち着いた口調で返す。
「・・・へぇー、珍しいね。ワタシと同じかー友達になれそう。その子は今どうしてるの?一緒に魔法科高校に進学しなかったの?魔法適正がなかったとか」
「中学2年の夏頃に急に転校しちゃった。それきり一度も会えてない。ほのかも寂しがってたよ。一言くらいお別れを言いたいくらいに」
ほのかちゃんの気持ちを代弁するように憂い顔で語る。
ふーん、ほのかちゃんがねー。
雫ちゃんの口振りからして、ほのかちゃんにはワタシの素顔の件は漏れていない。しかし、油断はできない。
「そっかー。彼はきっと何かあって転校しちゃったんだね。中学生は色々ある時期だから・・・」
「どうして、何かあると思うの?私はまだ転校の原因を喋ってないよ」
「雫ちゃんの口振からして、その子の転校について心当たりがあるように聞こえるけど」
「・・・ごめん。まだ言えない。理由は聞かないで。心の整理がついたら言うから」
悔やみに満ちた表情で顔を伏せる。
できることなら一生言わないでください。寧ろ忘れてください。お願いします!
ワタシは素顔を誰にも知られたくないのだ(何度も言うが家族はノーカウントね)。
無表情の雫ちゃんがここまで感情を表に出すのは珍しい。そこでワタシは、ボクはある可能性を見出す。
中学時代に雫ちゃんはボクの素顔にショックを受けたんだ。死んだ珊瑚のように真白なボクの素顔を目撃した雫ちゃんは「見なければよかった」と後悔したに違いない‼︎
雫ちゃんに再び素顔を見られないようにしないと。
「しずくー、権三郎くーん。ごめんお待たせー」
昇降口の方からほのかちゃんが戻ってきた。
お花摘みは無事に終わったようだね。
「何か話し中だった?まだ終わってないなら、待つよ」
「ううん。今ちょうど話し終えたところ」
「そうそう。気にしなくていいから、帰ろう」
ほのかちゃんを伴って歩き出す。
あのまま会話が長引けば本当に危なかった。
ナイスタイミングで戻ってきたほのかちゃんに感謝だ。
ふっ、会話で動揺しかけるとは。ワタシ、ボクもまだまだ修行が足りないな。
***
校舎から校門までの一本道を3人で雑談しながら、目的地の校門を目指す。
ワタシは雑談の傍ら横目でふたりを眺める。左隣を雫ちゃん、その横をほのかちゃんの横並び。
中学時代も同じ立ち位置でよく登下校したなー。
課題が尽きるころに校門に到着する。
しかし、校門前の人混みが邪魔で通ることができない。
「いい加減にしてください!深雪さんはお兄さんと帰るって言ってるでしょう!!ご一緒に盛りたかったらくっついてくればいいんです!!!」
「僕たちは彼女に相談することがあるんだ!」
「そうよ!司波さんには悪いけど、少し時間を貸してもらうだけなんだから!」
見慣れた新入生の一団が一科生と二科生の二手に別れて激しい言い争いをしている。
食堂での一件を連想させる光景だが、異なる点がひとつ。
美月ちゃんが珍しく声を荒あげて、一科生を相手に一歩も引かずに雄弁をふるっている。
しかし、その啖呵に一科生たち(仕切り役は我らが森崎君)は引く様子はない。
メガネの取外しで人格が変わらないかな?
「呆れた・・・また森下君が2科生に絡んでる。今度は司波さんとの下校で揉めてるみたい」
「森下じゃなくて森崎君だよ。名字くらい覚えてあげなよ。ほのかちゃん」
「止めたほうがいいかな?」
「逆効果だろうね。下手に刺激すると、ね」
チラッと、達也君たちを観察する。
渦中の深雪ちゃんは達也君の後ろで級友たちの成り行きを不安な眼差しで眺めている。
すると、何か喋ろうとした深雪ちゃんの耳元で達也君が囁く。
試しに読唇してみる。
(謝るなよ深雪)
自分が譲歩する形で場を鎮めようしたのを達也君が静止した。
折り合いを付けないと、また同じことの繰り返しが起こるのを恐れたようだね。
「お、同じ新入生なのにっ今の時点でアナタたちがどれだけ優れているって言うんですかっ」
「ウィードとブルームを同列に語るな。その差思い知らせてやろうか?」
「ハッ、おもしれぇ!是非とも教えてもらおうじゃねぇか」
あらら、まずいね。
一科生の威嚇とも最後通牒とも取れるセリフに、レオ君が挑戦的な大声で応じた。
それが開始の合図となった。
「だったら教えてやる!」
モブ崎君が小型拳銃形態の特化型CADの銃口をレオ君に突きつけるが、
「ヒッ!」
「この間合いなら、二科生の私の方が早いみたいよ?一科生さん?」
彼の悲鳴が上がると同時に、その手からCADは弾き飛ばされていた。
伸縮警棒を振り抜いたエリカちゃんに弾かれたのだ。
エリカちゃんはああやって動くのか。彼女の動きは覚えた。今後の変装に使わせてもらおう♪
「あの子、すごい・・・」
「恐ろしく早い警棒捌き。ワタシでなきゃ、見逃しちゃうね」
「でもこれで丸く収まって・・・」
誰もが呆気にとられていたが、いち早く我を取り戻した一科生たちがCADへ指を走らせた。
「ブールムがウィードに劣るなどありえるかぁぁぁぁ‼︎」
「なめないでっ‼︎」
「やめなよ!」
「うるさい!」
咄嗟にほのかちゃんが側の男子生徒1の肩を掴んで止めに入るが、乱暴に突き飛ばされて「きゃっ」と短い悲鳴を上げてよろめいた。
あの名前も知らんモブヤロウなんてことを・・・!
「ほのか!」
「ほのかちゃん!」
倒れそうになる彼女の背中を、雫ちゃんが後ろから抱き留める。ワタシも続くように後ろに控える。
よかった・・・ほのかちゃんの顔に傷でも付いたら、彼女に変装した時に支障がでるからね!
ほのかちゃんの顔に傷がついたと思うとゾッとする。
自分でも皮越しに顔から血の気が引いているのが分かる。
「みんなおかしいよ。考えを押し付けて、司波さんを困らせて・・・権三郎君?」
「ゴンちゃん?顔が真っ青だよ・・・」
ふたりの呼び掛けでボクはハッと自分の顔に触れる。
取り乱すな!ガワが崩れる。今のボクはゴンちゃんだ。冷静沈着な権三郎。そう、権三郎だ。権三郎、権三郎・・・
「う、うん。大丈夫だよ。それよりも、ほのかちゃんの方こそ大丈夫?」
ほのかちゃんを慰る傍ら、ボク、ワタシは顔に触れながら、頭を切り替える。
この状況を止められるのは、あの人しかいない!
ワタシは校舎の方に踵を返して、急いで走り出す。
「ワタシ生徒会長を呼んでくる‼︎」
「それなら私も・・・!」
雫ちゃんが後を追おうとする。
「大丈夫!雫ちゃんはほのかちゃんについてあげて」
ほのかちゃんを出しに使って、雫ちゃんを引き止める。
そう言われては、親友を残していくわけには行かず、雫ちゃんはその場に止まる。
効果的だった。許せ友よ。
***
別side
男子生徒に突き飛ばされたほのかを雫は受け止めた。
大事には至っていない。
安心する傍ら、不意に後ろに控える級友の権三郎に視線を移す。
思わずギョッとする。
素人目の雫から見ても尋常ではないと判るほど、彼の顔は血の気が引いて真っ青だった。
(まさか、ほのかが突き飛ばされたのを見て?)
まるで、過去に同じ状況の当事者として遭遇し、それがトラウマとなって、パニックに陥っているかのように。
その様子にほのかも雫も心配になる。
「ゴンちゃん?顔が真っ青だよ・・・」
「う、うん。大丈夫だよ。それよりも、ほのかちゃんの方こそ大丈夫?」.
弱々しく口を開くと癖なのか、自分の顔に触れる彼の仕草ーー顔面の皮の具合を確認する様子に雫は見覚えがあった。
(やっぱり似てるあの子に・・・)
その仕草が中学時代の親友と同じことに気付く。
同時に雫の頭の中で中学時代のある出来事が鮮明に蘇る。
ーー見ないでよ!見るな見るな見るなぁぁあぁぁ‼︎
ーーきゃっ!待って・・・!○○ちゃん・・・!
信じられない様子で取り乱して、自分を突き飛ばして教室から一目散に駆け出す親友。
親友の捲れた顔の下にあるもうひとつの顔を目にして動揺し、彼から突き飛ばされ転倒。その場から動けずにいる自分。
「ワタシ生徒会長を呼んでくる‼︎」
「それなら私も・・・!」
雫も彼の後を追おうとする。
これを機に確かめたい事があった。しかし、
「大丈夫!雫ちゃんはほのかちゃんについてあげて」
そう言われては親友のほのかを置き去りにできず、その場に止まるしかない。
(ゴンちゃんはもしかして・・・)
校舎に走り去っていく彼の後ろ姿を眺めながら、ある可能性を考察する。
***
校舎に再び戻ってきた。
大丈夫とは思うが、念の為にみんなからは死角になる位置ーー監視カメラもない昇降口の柱の裏に身を隠す。
真由美先輩を呼んで止めてもらう?そんな事する訳ないだろう。こんな面白い状況を原作通りに終わられるのは勿体無い。
場を大いに乱してやるぜ。燃えてきた!
制服に仕込んだ変装用の皮を取り出して被る。
手鏡で変装具合を確認。そこに映るのはウェーブの掛かった長い黒髪をリボンで纏めた真由美先輩。
うん、我ながら小悪魔的な可愛らしい顔だ。
「ゴホッあっあっあーあー、うん、私は七草真由美です。よろしくねクソ狸親父。なんてね♪」
ワタシは声帯模写で真由美先輩の声に変えると、最後に可愛らしくウィンクを添える。
しかし、ここで重大な差違が。
ガワは完璧だが、真由美先輩とワタシでは身長差があるのだ。その差は5センチ。真由美先輩が僅かに小柄。
スカートの中で膝を曲げて、屈み腰になる。某月下の奇術師になるのだ!
最後に通学カバンからあるモノを取り出す。
それはCAD。
ワタシは変装対象に合わせてCADも変える。
今回は真由美先輩と同じ腕輪型。
通学カバン及び制服の下には変装の皮だけでなく、無申告のCADも沢山仕込んである(風紀委員に摘発されるな)。
変装に労力、時間、お金を惜しまない。惜しむような奴は変装の達人にはなれないのだ。
右手に装着して、柱の陰からじっとしてその時を待つ。
この距離からでも彼等のやり取りが鮮明に聞き取れる。
派手な乱闘に突入してるなー。
遠目から様子を伺っていると、
「何する気⁉︎」
「私の魔法でみんなを止めるの!」
「ダメだよほのか!」
雫ちゃんの静止を振り切って、ほのかちゃんが起動式の展開を始まる。
今しかない!
実技棟で観察した真由美先輩の技能を模倣して、展開中だった機動式をサイオンの弾丸によって砕く。
魔法は未発のまま霧散した。
そして、声高らかに警告を発する。
「全員そこを動かないで!」
「七草生徒会長!」
真由美先輩のガワを纏ったワタシは颯爽した足取りで登場する。
こんな時であっても、それほど厳しさを感じさせない顔つきを意識して。
だが活性化したサイオン光で体を後光のように包み、一種の冒しがたい威厳に誰もが釘付けになる。
コレだよ。コレ。誰もがワタシの変装に騙されるこの快感サイ・コウ。
おっと、悦は皮の下に止めないとね。
「あなたたち、1ーAと1ーEの生徒ね。事情を聞きます。全員その場から動かないこと」
牽制を込めて起動式の展開を完了する。
ワタシの変装に騙されて、エリカちゃんたちを攻撃しようとしていた一科生たちは、抵抗の素ぶりを見せる様子もなく、顔面が蒼白になった。
意地悪したくなってきたじゃないか。
「そこのアナタ、1ーAの光井ほのかさんね」
「はっはいっっ!」
名前を呼ばれるとは思わなかったのだろう、ほのかちゃんは姿勢を正すも声が上擦る。
「最後に攻撃魔法を発動しようとしていたわね。魔法による対人攻撃は校則以前に犯罪よ。アナタには特に詳しく話を聞かせてもらうから、風紀委員室に出頭してもらいます」
「え?そんな・・・私は・・・私はただ・・・」
犯罪、出頭という重い言葉に、ほのかちゃんはへなへなとその場に崩れ落ちる。
「私はみんなを止めようとしただけなのに。結局、場を掻き乱しただけで終わっちゃった・・・生徒会にまで迷惑かけちゃったし、なんでもっと冷静に動けなかったんだろう。こんなんじゃ、司波さんに顔向けできないよ・・・絶対に嫌われちゃった・・・」
今度はぽろぽろと目から大粒の雫を垂らしながら、泣き出してしまった。
ごめんね。今のワタシは後輩を揶揄うのが大好きな小悪魔生徒会長なの!
「待ってください。生徒会長」
上級生それも生徒会長に臆する様子もなく、泰然とした足取りで、背後に付き従う深雪ちゃんと共に前に歩み出た。
「あれはただの閃光魔法でした。攻撃の意思はなかったと思います」
「あら?達也君は展開中の起動式が読み取れるのかしら?」
「実技は苦手ですが、分析は得意ですので」
真由美先輩の姿のワタシに名前で呼ばれても表情を変えることはない。
自分を庇ってくれた達也君にほのかちゃんは完全に見惚れている。
惚れちゃダメだよー。この男は魔王なのだ。ドが付くほどに超絶シスコン魔王なのだよ‼︎
「会長おかしなことを考えてませんか?」
「妙に兄を貶している気がするのは気のせいでしょうか?」
この兄弟本当に勘が鋭い⁉︎特に深雪ちゃんは睨みを利かせる。
勘のいいシスコンとブラコンは嫌いだよ。
ワタシは仕切り直しを兼ねて、咳払いを一つ。
「そんなことないわ。ゴホンッ!それなら、彼女とそこに転がっているデバイスについてはどう説明してくれるのかしら?」
エリカちゃんが手にする警棒と、地面に転がった拳銃形態のCADを一瞥し、視線を巡らせ森崎君とエリカちゃんを震え上がらせてから、達也君に微笑みを浮かべた。
「すみません、悪ふざけが過ぎました」
「悪ふざけ?どういうこと」
「森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学の為に見せてもらうだけのつもりだったんですが、あまりに真に迫っていたもので、思わず手が出てしまいました」
この説明を側で黙って聞いた森崎君が目を丸くして驚いている。ワタシも思わず絶句する。
うわー、口が達者だわ。達也君だけに。
「・・・会長、ほんとうは余計なことを考えてませんか?」
「ただの気のせいよ。それはいいとして、達也君は誤魔化すのが得意なのかしら?」
「誤魔化すなんてとんでもない。自分はただの二科生です」
その後も主張を続ける達也君の背中に熱い眼差しを向けるほのかちゃん。
そんな彼女の肩に優しく「光井さん」と触れる人物がーー深雪ちゃんだ。
意外な人物からの接触に、ほのかちゃんだけでなく雫ちゃんまで驚いている。
「司波さん!あ、あのわた、わたし・・・」
「分かってるわ。光井さんのあの魔法・・・攻撃しようとしていたわけでなくて、みんなを止めようとしていたのよね?」
自分の気持ちを察してくれた深雪ちゃんにほのかちゃんは顔は充実感で満ちた。
「深雪 話はついたよ」
ワタシと話を終えた達也君が彼女らと合流する。
「えっと、あの・・・」
「ほのかを庇ってくれて、ありがとうございました。大事に至らなかったのは、お兄さんのおかげです」
肝心なときに緊張してお礼の言葉が出ないほのかちゃんに代わって、雫ちゃんが代弁する。
「さっきはすみませんでした!お兄さん!」
「大したことじゃないよ。それに同じ一年だ。お兄さんはやめてくれ」
「そうだわ。ふたりとも駅まで一緒にいかがしら」
深雪ちゃんからの提案にほのかちゃんは「はいっ!」と明るい笑顔で返す。
ワタシもほのかちゃんの顔でこの笑顔を浮かべたい。
鑑賞に浸っていると、大事なことを思い出す。
あっいけない!それそれ本物の真由美先輩が来る。
ある程度満足したから、お邪魔虫は早々に退散しますか。
「生徒同士で教え合うことが禁止されているわけでは有りませんが、魔法の行使には、起動するだけでも細かな制限があります。今回は不問にしますが、以後このようなことの無いように」
慌てて姿勢を正し、一斉に頭を下げる一同を見渡すと、ゴンちゃんに変装し直す為、校舎の方に踵を返す。しかし、不意に後ろから「会長」と達也君から呼び止められた。
「何かしら、達也君」
「もしかして、トイレ我慢してますか?さっきから、ずっと膝を閉じて屈み気味ですが」
「お兄様!女性に対して失礼ですよ・・・!」
達也君の直球な物言いに深雪ちゃんが窘める。
「そ、そうなのよ。連絡を受けて、そのまま来ちゃったから・・・」
失礼な物言いに愛想笑いを返す。
女性に対して言葉選びはしてもらいたい。
雫ちゃんとほのかちゃんも何か言ってやってよ。
2人にさり気無く視線を移すと、妙なことに気付く。
何だよ。その幽霊と遭遇したような顔は?写真に納めたくなるじゃないか。
おまけに他の一同も目を疑う様子でワタシを凝視する。
「・・・会長、最後にひとつだけ尋ねてもいいですか?」
「手短にね。あっ、もしかして私の連絡先が知りたいのかしら?」
「違います。アレについて説明してもらえますか」
ワタシの背後に視線を移す。
なんだよ一体・・・って、ちょいちょい⁉︎
彼の視線を追った先、振り向いたところに本物の真由美先輩が立っていた。
その隣には立つのは風紀委員長、3年生の渡辺摩利。
ふたりともCADは既に起動式の展開を完了している。いつでも撃てる状態だ。
「風紀委員長の渡辺摩利だ。事情を聞くから、全員その場から動かないように。特に君はな」
冷たい硬質な声で命じる摩利先輩。
メチャカッコいい。でも、彼氏の前では甘々なんだよなー。
「お話を聞かせてもらいます。私の姿でいるあなたは誰なのかしら?」
こんな時であっても、ニコニコ微笑みでいる。
だがその眼差しには、一切の油断を含まない感嘆があった。
これが本物の七草真由美。
ヤベッ。遊び過ぎたー。
変装者としてワタシ、ボクが特にやりたい事のひとつ。
お前は誰だと問われたい。それが実現できたことに心中歓喜する自分がいた。
公式チート『精霊の眼』をどうやって攻略するか。
右ストで核を打ち返す並の超議題だな(涙)
シド君だったら、やはり力技で・・・
最後に飲んだら翼が生える◯ッド・ブルがほしい。