魔法科高校のドッペルゲンガー   作:西の家

8 / 24
10月の終わりに投稿したかったですが、できませんでした。

調べたら真由美嬢の身長は155㎝でしたので、修正しました。真由美嬢ファンの方々本当にすみません。

色々矛盾点もあるかもしれませんが、最新話をどうぞ!


入学編 第7話「変装者はお前は誰だと問われたいパート2」

「これはどういうことなの・・・!」

 

「七草会長がふたり・・・⁈」

 

女子生徒その1と男子生徒その2は仰天し、驚きを隠せない。

素晴らしい反応を示してくれて感謝するよ。名も知らぬ級友たち。本当に嬉しい。

 

「もう一度聞きます。私の姿でいるアナタは誰なのかしら?場を収めてくれた事には感謝します。しかし、他人に成りすます行為は褒められた事ではありません」

 

「同じ言葉を返します。アナタこそ誰なのかしら?」

 

「キサマ巫山戯るのもいい加減にしろ。その姿は魔法によるものか?早く魔法を解いて正体を表せ。当校の生徒かハッキリさせたいからな」

 

強気な姿勢を崩さず、ワタシに正体を明かすよう通告。

この程度で剥がせるほど、ワタシの、ボクの化けの皮は安くはないぞ。

毅然とした態度で詰問に応じる。

 

「摩利。隣にいるのが本物だという保証はどこにあるの?貴女の口から直接説明してくれるかしら」

 

「私と真由美は一緒に連絡を受けて、ここに急行した。どうだ、これでもまだ真由美を騙るか?偽物め。それに私が友人を間違えるわけないだろう」

 

「貴女と合流する前に私と入れ替わっていたかもしれないじゃない。私は生徒会室に向かう途中で、一年生から直接連絡を受けて急行したのよ」

 

「ひとりでか?普通は風紀員に応援を要請するべきじゃないのか」

 

「私ひとりで納められる、貴女の手を煩わせるまでもないと判断したのよ」

 

このまま水掛け論に持ち込みながら、逃亡の隙を伺う中で「七草会長」と口を挟む男がーー達也君だ。

 

真由美先輩に同調して、「「何かしら司波くん」」と呼び掛けに応じて振り返る。

タイミングと声もバッチリだぜ。

 

「紛らわしいので、貴女の方に問います。何故、膝を曲げた状態でいるのですか?」

 

「何かと思えば、トイレが近いからよ。これで満足かしら。できれば、早く行かせてほしいけど」

 

自分の顔と声でトイレのワードを口に出された真由美先輩の眉は八の字で、少し恥ずかしそう。

そんな彼女を他所に達也君は続ける。

 

「それなら今度は膝を伸ばした状態で立ってもらえますか?俺の記憶が正しければ、そこにいる七草会長とアナタでは背丈が僅かに違うはずです。目算で5センチほど」

 

彼の指摘で全員の視線が私の膝に注がれる。

 

「それに先程まで俺を名前で呼んでいたのに、あちらの七草会長が現れた途端、彼女に合わせるように名字に呼び変えたのも不自然ですよね」

 

「それはみんなの前だから・・・」

 

「校門前では平気で呼んでいたのに?まだとぼけるか。なら・・・‼︎」

 

「えっ⁈きゃっ突然何するの司波君・・・!」

 

言い切る前に彼が急接近。ワタシに向かって足払いをかける。

咄嗟に後方に飛び乗って回避。

地面に着地するが、ここで致命的なミスを犯す。

足を伸ばした状態で着地したので、本物の真由美先輩との身長差は瞭然。

 

「これでもまだ本物だと言い張るか?七草会長の影を纏った誰かさん」

 

「・・・あぁー、バレちゃったか。てへっ♪」

 

真由美先輩の顔で可愛いらしく舌を出す仕草に「あっ!」と美月ちゃんが声を上げた。

 

「達也さん この人ですよ!今日私が遭遇した深雪さんに成り済ましていった人です‼︎」

 

「なんだと」

 

美月ちゃんが指差して、達也君の目の色が変わる。

彼に限らず、その後ろに控える深雪ちゃんや二科生の面子の顔付きを変えてワタシを注視する。

事情を知らない他の面子は状況が飲み込めない。

 

「あっ美月ちゃん、いいえ「この場合は美月さんと呼ぶのが正しいのかしら」」

 

「えっ私の声・・・!」

 

「ウソ 深雪にそっくりじゃない⁉︎」

 

声色を真由美先輩から深雪ちゃんに変えてみせると面白い。

深雪ちゃんは信じ難いと口に手を添えて動転。

エリカちゃんも反対に口を開けて絶叫。

その他は驚愕で声が出ない。

 

「お兄様ったら、女性に対してトイレだなんて、よく女の子への配慮が足りないって言われないのかしら?ストレートに尋ね過ぎです」

 

「黙れ。会長の姿に加えて、深雪の声を真似るな。そもそも本当に女かも怪しい。オマエは誰だ?なぜ深雪や会長を騙った」

 

厳つい眼光で動機を問い詰める。

妹の姿を騙った事実が、彼には大変ご立腹な様子。

達也君の口から直接オマエは誰だを聞けるのは嬉しい!

今朝登校時、深雪ちゃんに化けたのは気分次第だ。変装しておいて正直返答に困るな。

下唇に指を当てて、深雪ちゃんと真由美先輩を交互に見る。

 

「私が誰かって?○ットマンだ」

 

「ふざけるなよ」

 

たったの一言。

ガワの中で身体が震え上がるほどの殺気を達也君が浴びせてくる。

深雪ちゃんボイスで巫山戯すぎたか。でも、ガワの中で素肌がゾクゾクするこの感じがサイッコウにいい‼︎

 

「ごめんごめん。ふざけすぎたね。だから許してくださいお兄様じゃなくて、ゴホン、「これでいいかしら、達也君」」

 

「また会長になった・・・⁉︎」

 

声色を深雪ちゃんから再び真由美先輩に戻すと、今度は森崎君が驚いた反応を返す。

流石我らのモブ崎。期待を裏切らない。

 

「呼び名に関してだけど、そうね・・・適当に捻りっけなしに偽物でもいいし、好きに呼んでいいわよ。それと動機についてだけど、そりゃ・・・綺麗で可愛いから」

 

俯き気味で最後の言葉だけを強調気味に呟く。動機は適当。

こういった何気ない演技がいい味出すからね!

現に真剣な形相で聞きに徹して、達也君は正体を探ろうを試みる。

 

「綺麗で可愛い?それだけか」

 

「だって、同級生や後輩に囲まれて、みんなから好かれて、キラキラして、私も味わってみたいだもん」

 

「要はオマエは誰かに好意を持たれたい。好かれたいと?それがオマエの行動原理か」

 

更なる情報を得るために彼はワタシとの対話を続けようとするが、ここで真由美先輩と摩利先輩が「待った」を掛かる。

 

「そこまで一年生。後の詳しい事情は私たちの方で聞かせてもらう」

 

「あなたには風紀委員室に同行してもらいます。話の続きはそこで」

 

ふたりとも起動式は展開を終了。

真由美先輩は右手のCADに空いた手を添えて、不動でこちらの出方を伺う。

摩利先輩は警戒しながらジリジリと距離を詰めてくる。

前方に先輩達が、後方には達也君一同が陣取っている。正直に言って逃げ場がない。

しかぁし!ここで捕まるわけにはない。だって、まだまだ変装のスキル磨きたい。あと、もっと悪戯したいもん!いずれW深雪ちゃんやりたいもん!

 

「はいはい。心配しなくても、ちゃんと出頭しますよーだ・・・」

 

と言って、だらんと力なく腕を下に垂らして「捕まえられたらね‼︎」の掛け声と同時、袖口から大量のビー玉程度の球体を地面にばら撒く。

落ちた球体に亀裂が走ると、シューと音を立てて煙が一気に吹き出す。

煙玉だ。

一瞬にして、辺りがモクモクと濃い白煙に包まれる。

変装道具だけでなく、逃走用具も準備してあるのだ!

 

「うわっ⁉︎なんだ・・・!」

 

「キャッ⁈何も見えない・・・!」

 

白煙で視界を奪われて、級友たちの大半がパニックに陥る。

 

「落ち着け!ただの煙幕だ。下手に動くなよ。逃亡の隙を与えるだけだ」

 

突然の煙幕にも摩利先輩は毅然とした態度を崩さず、冷静に状況を判断。混乱による二次被害を防ぐためか、強い口調でこの場の全員に待機を指示。

煙を払うため気流操作を発動しようとするが、そうはさせない。

摩利先輩も煙で視界を奪われているので、その隙にワタシは真由美先輩の背後に回り込む。

彼女の肩越しにこの場の全員に号令をかける。真由美先輩ボイスで。

 

「偽物はここよ!みんな声のする方を撃ちなさい‼︎」

 

立場的に風紀委員長よりも生徒会長の方が上。

他ならぬ真由美先輩からの命令に級友たちは従う。

 

「あそこだ!撃て、撃ちまくれ!」

 

「消えて!」

 

「吹っ飛べ!」

 

他人がやると自分も追随してやりだす。

優秀な一科生の級友たちは忠実に攻撃魔法を発動。

第一声は森崎君だね。さすがモブ崎。期待を裏切らない。

 

「違う!今のは私じゃないわ!みんな騙されないで落ち着いて・・・⁈キャッ・・・⁉︎」

 

「真由美⁉︎バカやめろ!魔法をキャンセルするんだ!」

 

再びパニックに陥る。

真由美先輩と摩利先輩は止めるが届かない。

無秩序に魔法を発動すれば相剋を起こして、まともな効果が出ない。結果、煙を払うことができなくなる。

よし、この隙に。

ワタシは煙に紛れて、真由美先輩のガワを脱ぐ。

逃走変装の為、制服に仕込んだ別の皮を取り出すが、そこに煙による視界不良を物ともせず、達也君が真っ直ぐ駆け出し接近してくる。

 

「逃がすか‼︎」

 

捕縛しようとワタシに踊り掛かる。

今のワタシは皮を脱いだ素顔の状態。

幸いなことに煙でまだ顔を見られていないが、間近に詰められると流石にバレる。

雫ちゃんだけでなく、達也君にまで素顔を見られる。それだけは変装者のプライドが許さない。

とっておきの一手をくり出す。

 

「キャアアァ‼︎助けて‼︎お兄様ぁぁぁ」

 

深雪ちゃんの声色で精一杯の悲鳴を上げる。

しかも、ただ一方向に向けて叫ぶのでなく。

音飛ばしならぬ声飛ばし。

達也君の後方ーー深雪ちゃんが控える方角から声が響き渡るように。まるで彼女が兄に助けを求めるかの状況を作り上げる。

 

「深雪ッ⁉︎」

 

効果は的面。彼はワタシの捕縛行為を諦め、深雪ちゃんの方へ疾走し急行。

シスコン魔王の君ならその行動を選択すると信じていたよ♪

 

煙から抜け出すころには皮を纏って変装を完了。

ワタシが逃亡に選んだガワはエリカちゃん。

逃亡だけなら声色を似せる必要はない。

このまま校舎まで走り抜けるぜ。

 

「ぷぷぷ。クケケケケ」

 

何もともあれ、大いに場を引っ掻き回す悪戯が成功してか、不意に地声の笑い声を漏らす。

ヤッベ。エリカちゃんはこんな笑い方はしない。修正修正と。

 

 

***

 

 

別side

 

 

「・・・あぁー、バレちゃったか。てへ♪」

 

達也に正体を見抜かれた権三郎ーーここではまだ偽物と名義。は真由美の顔で悪戯が発覚した子供のように可愛らしく舌を出して戯けてみせる。

それに反転するように、

 

(これはどういう事だ・・・生体情報は七草会長と同じだと。あり得ない)

 

達也は内心動揺していた。

眼前の存在ーー七草真由美の偽物に意識を集中して何度も視るが、肉体の構造情報は身長を除いて、寸分違わず七草真由美と同じ。

つまり、同一の存在が同時に存在している。

これは変装や成りすましではなく、『変身』といっても過言ではない。

もっと観察に徹し、正体を見抜くことに神経を尖らせる。

その時、達也の後ろに控える美月が思い出したように「あっ!」と声を上げる。

 

「達也さん この人ですよ!今日私が遭遇した深雪さんに成り済ましていった人です‼︎」

 

「なんだと(そうか、コイツが深雪に・・・)」

 

美月の告発で達也は昼間のやり取りを思い出す。

 

「あっ美月ちゃん、いいえ「この場合は美月さんと呼ぶのが正しいのかしら」」

 

「えっ私の声・・・!」

 

「ウソ 深雪にそっくりじゃない⁉︎」

 

途中で相手の声色が真由美から深雪に変わる。

その行為に深雪とエリカは驚愕を隠せてない。

振り返らなくても、達也には後ろのふたりが驚愕しているのが伝わってくる。

ふたりが驚きを隠せないのも無理はない。

達也の耳からしても、相手の声は聴き慣れた妹そのもの。内心、彼も十分驚愕していた。

 

「お兄様ったら、女性に対してトイレだなんて、よく女の子への配慮が足りないって言われないのかしら?ストレートに尋ねる過ぎです」

 

「黙れ。会長の姿に加えて、深雪の声を真似るな。そもそも本当に女かも怪しい。オマエは誰だ?なぜ深雪や会長を騙った」

 

声だけとはいえ、今すぐ飛び掛かって深雪の猿真似を辞めさせたいが、相手の正体が不明の為、ここは慎重な行動を選ぶ。

達也としては相手の動機ーー深雪に化けたことが何よりも気掛かりで仕方がない。

 

「私が誰かって?○ットマンだ」

 

「ふざけるなよ」

 

相手の口から出た名は某アメコミヒーロー。

達也の気持ちを逆撫でるような返答。

思わず『分解』を発動しかけたが、軍事機密の魔法を衆目で晒すわけにもいかず。おまけに同一の存在と認知している本物の真由美にも影響が及び可能性があるため、ここは何とか堪える。

 

「ごめんごめん。ふざけすぎたね。だから許してくださいお兄様じゃなくて、ゴホン、「これでいいかしら、達也君」」

 

「また会長になった・・・⁉︎」

 

達也の心情を知って知らずか、再び声色を深雪から真由美へ。

右後方で森崎が驚愕するが、達也は特に気に留め無い。

 

「呼び名に関してだけど、そうね・・・適当に捻りっけなしに偽物でもいいし、好きに呼んでいいわよ。それと動機についてだけど、そりゃ・・・綺麗で可愛いから」

 

呼び名は兎も角、達也は最後の動機の部分だけが妙に気になった。

 

綺麗で可愛いから。

 

俯き気味に口にするその言葉には妬み、羨望が同時に混ざったかのような複雑な心境。

相手の心持ちを達也だけでなく、この場にいる全員も汲み取れた。

代弁するように達也が尋ねる。

 

「綺麗で可愛い?それだけか」

 

「だって、同級生や後輩に囲まれて、みんなから好かれて、キラキラして、私も味わってみたいだもん」

 

「要はオマエは誰かに好意を持たれたい。好かれたいと?それがオマエの行動原理か(美月の推測は正しいかもしれないな)」

 

『自分の容姿にコンプレックスを抱いているとか。それなら深雪さんに成り済ましたくなる気持ちもあるかも』

 

昼間美月が中庭で語った推測。

偽物の証言が本当ならば、的を射抜いてる。

 

(動機の部分に関しては、演技とは思えない。奴の本音といっても過言ではないな・・・ないものねだり。だから他人に、それも容姿の優れた人間を選んで化けるのか。どうやって?どんな術式だ?)

 

達也は更なる情報を得るため会話を続けようとしたが、ここで真由美と摩利から「待った」が掛かる。

 

「そこまで一年生。後の詳しい事情は私たちの方で聞かせてもらう」

 

「あなたには風紀委員室に同行してもらいます。話の続きはそこで」

 

野外よりも逃げ場のない部屋に連行し、そこで改めて尋問することにしたのだろう。正しい選択だ。

 

「はいはい。心配しなくても、ちゃんと出頭しますよーだ・・・」

 

と言って、偽物はだらんと力なく腕を下に垂らして「捕まえられたらね‼︎」の掛け声と同時だった。

 

(まずい・・・‼︎)

 

嫌な予感がしたが、行動が遅かった。

相手の下ろした袖口から大量の球体が地面に落ちると、一気に白煙が吹き出す。

 

(これは煙玉か)

 

すぐに解析し、人体に無害な煙と判断。

しかし、物の正体を知らない生徒たちはパニックに陥る。

 

「うわっ⁉︎なんだ・・・!」

 

「キャッ⁈何も見えない・・・!」

 

「落ち着け!ただの煙幕だ。下手に動くなよ。逃亡の隙を与えるだけだ」

 

摩利が冷静に指示を出す中で、煙を払う為に気流操作を発動しようとした時だった。

 

(なにをするつもりだ?)

 

白煙に包まれながらも、達也の眼は煙の中を動き回る偽物の真由美を捉えていた。

煙に紛れて逃げるかと思いきや、突然本物の真由美の背後に回り込む。そして、

 

「偽物はここよ!みんな声のする方を撃ちなさい!」

 

この場にいる全員に真由美の声で指示する。

その結果、殆どの一科生が生徒会長からの命令と捉えてしまう。

 

「あそこだ!撃て、撃ちまくれ!」

 

「消えて!」

 

「吹っ飛べ!」

 

騙された一科生たちは各々が無秩序に攻撃魔法を発動。複数の魔法が相剋を起こす。

 

「違う!今のは私じゃないわ!みんな騙されないで落ち着いて・・・⁈キャッ・・・⁉︎」

 

「真由美⁉︎バカやめろ!魔法をキャンセルするんだ!」

 

本物の真由美がやめるように訴えるが、煙と相剋による混乱状態で誰にも届かない。

摩利も相剋で煙を払うことすらできずにいる。

その煙に紛れて逃亡しようとする偽物を達也は見逃さなかった。

 

「(これを狙っていたか)逃がすか‼︎」

 

果敢に飛び掛かるが、ここである違和感に気付く。

真由美の情報体を纏っていない。

まるで皮を剥ぐように情報体を脱ぎ捨てる。

今まで認識したことのない異様な光景に、達也は一瞬目を奪われるが、構わず脱ぎ捨てた本体ーーその下にある正体の情報を捉えようする。

しかし、その一瞬のやり取りが仇になった。

歩幅にして、あと3歩のところで、

 

「キャアアァ‼︎助けて‼︎お兄様ぁぁぁ」

 

後ろから助けを求める深雪の悲鳴。

これにより、達也の中で瞬時に優先順位が切り替わる。

捕縛よりも深雪の救出、安全を選んだ。

 

「深雪ッ⁈」

 

煙を開き分けて、深雪の元に急いで戻る。

 

「深雪 大丈夫か・・・‼︎」

 

「お兄様・・・?はい、私は無事です。それより、どうしたのですか?」

 

深雪は兄が何を慌てて戻ってきたのか把握できていない。

その様子に達也は欺かれたかとすぐに察する。

 

(やられた・・・魔法の兆候はなかった。純粋な技能によるものか。ヤツは俺の弱点をよく知っている)

 

いいように手玉に取られたことに内心、悔しさが芽生えるが、すぐに沈静。

妹が無事であったことに安堵する。

しかし、その傍らでは未だに相剋でまともに発動できない魔法の嵐の奔流が続く。

 

「すまない深雪頼めるか」

 

「はい、お兄様」

 

見かねた達也は深雪に場の沈静化を頼む。

深雪が選択したのは領域干渉。

一定のエリアを事象改変内容を定義せず、干渉力のみを持たせた魔法式で覆うことにより、他者からの魔法による事象改変を防止する対抗魔法である。

魔法阻止に成功する。続けて気流操作により煙を払い除ける。

視界が戻ったことにより、ようやく全員落ち着きを取り戻す。

 

「みんな大丈夫?今のは司波さんね。素晴らしい魔法だったわ」

 

「光栄です会長。しかし、今はそれよりも」

 

「そうね。摩利、お願い」

 

「わかっている。全員聞こえているな。こちら渡辺だ・・・」

 

ブレザーの襟に仕込まれた無線機で連絡を入れる。

校内に待機している風紀員に偽物の捜索を指示。

 

「果たして、見つかるでしょうか?」

 

「逃げられるだろうな。もう別の人間に成りすましている可能性が高い」

 

達也は学校敷地内に意識を向けて視るが、幾人かの教員生徒が残っているだけ。

情報体を模倣し、それを纏うことができるなら紛れてもおかしくはないが。

今は達也でも判別の仕様がなかった。

 

それから、渡辺摩利の指揮の元、風紀委員による偽物の捜索が行われた。

しかし、七草真由美に化けた偽物の行方はつかめなかった。

 

その後、一年生はある程度の注意と後日個別で聴取することを告られ、各自解散となった。

 

 

***

 

 

「借りだなんて思わないからな」

 

達也に庇われた森崎が、別れ際に棘のある口調で達也に向けてそう言った。

 

「借りだなんて思わないから、安心しろ」

 

「僕の名前は森崎駿。お前が見抜いたとおり、森崎のほんけ「うっわぁ〜〜〜森崎君だー‼︎」ぎゃああああああ‼︎‼︎」

 

森崎の名乗りは突然、彼の背後から腰に抱きつく人物ーー権三郎によって妨害された。

自身にぴとっと引っ付く権三郎に森崎は絶叫を上げる。

 

「ねぇねぇ、どうしたの?校門前に集まってさ!もしかして、ワタシと一緒に帰りたくて待ってくれたの?」

 

「違うッ⁉︎断じて違うぞ‼︎デタラメなことをぬかすな離れろヘンタイ野郎!」

 

必死な形相で悶えて、権三郎を何とか振り解く。

 

「もう!お昼過ぎからワタシのことを避けてない?寂しくて、泣いてしまいそう。シクシク」

 

「うるさいっ!お前が執拗に絡んでくるからだろうが。寧ろ泣きたいのは僕の方だ。コラッ!また、引っ付こうすな。離れ・・・ハッ⁉︎」

 

森崎は自分に哀れみの視線を浴びせてくる達也一同に言葉を失う。

 

「お前ら、やめろ!そんな惨めな目で僕を見るな!司波さんまで・・・⁉︎コイツとは何でもないんだ。本当だぞ・・・‼︎」

 

「安心しろ。大体の見当はつく。お前も・・・色々大変だな」

 

達也の後ろでうんうんと揃えて首を縦に振るう一同。

しかし、その中でレオだけが「どういう意味だ?」と理解できていない。

 

「と、とにかく。僕はもうこれで失礼する!」

 

「あっ待ってよー森崎くーん♪」

 

「だぁぁぁあぁぁから、お前は着いてくるな‼︎」

 

森崎は叫びながら、権三郎から逃げたい一心で校門から飛び出して走り去っていく。

達也たちは、そんな彼の後ろ姿を何とも言えない表情で見送る。

 

「ちぇ、もっと森崎君であそびたかったのに〜」

 

「さっきの森崎の様子からして、お前はクラスメイトにも同じようなことをしているのか?」

 

達也がナニとは言わなくても十分伝わったようで、権三郎はニィッと人の悪い笑みを浮かべる。

 

「そうだよー。森崎君って意外と面白いところがあってね。遊んでるんだ。好きに抱きつかせてくれないのが、たまにキズだけど」

 

「森崎が本当に哀れに思えてきた。程々にしてやれ」

 

「ゴンちゃん今までどこにいたの?」

 

「あっそうそう、聞いてよ雫ちゃん。ワタシ、校門前での諍いを知らせに校舎まで走ったら丁度真由美先輩と遭遇してね。あらましを伝えたんだ」

 

「その後はどうしたんだ?詳しく話せ」

 

「貴方にも詳しく事情を聞くから、待機してなさいと言われて校舎で待ってたんだけど、いつまで待っても真由美先輩は来ないし、代わりに風紀員がやって来て、変な聴取をされちゃったよ。様子が変だから戻ってきたら、いつの間にか終わってるし、ねぇ、ワタシがいない間に何があったの?」

 

「実はだな・・・」

 

達也の口から事の顛末が語られる。

最後まで聴き終えた権三郎は顎に手を添える。

 

「ふ〜ん、ワタシがいない間にそんな事が。それにしても、真由美先輩の偽物ね。ワタシが遭遇したのは偽物かな」

 

「その可能性が高いだろうな」

 

権三郎から偽物の詳細をさらに尋ねようとした時、

 

「なぁ、暗い話題は一旦やめて帰らないか?いつまでもここにいてもしょうがないだろう」

 

レオが意見を述べてきた。

確かに一理ある。騒動に加えて、妹を長い立話に付き合わせるのも酷。どこか落ち着いた場所にでも。

考えを巡らせる達也の横で権三郎はレオの登場に特に驚いた様子もない。

 

「そっちの彼は知らない顔だね」

 

「オレは西条レオンハルト。気軽にレオと呼んでくれていいぜ。達也達と同じE組だ」

 

「ワタシは佐々木。クラスはA組だけど仲良くしてくれると嬉しい」

 

可愛らしい笑顔を振りまき、敢えて苗字だけ名乗る。

性別を暴露した後のレオの反応を期待しているのだ。

権三郎の意図を読み取ったエリカが「またこのパターン・・・今度はコイツか」と呆れる。

 

「おう、そうさせてもらうぜ。よろしくな」

 

そんな事は梅雨知らず。

レオが手を差し伸べると、権三郎も快く握手を返した。

体育会系の立派な手をしているのが判る。

 

「ゴンって佐々木のあだ名か?」

 

「そうだよー変わってるでしょう」

 

「騙されちゃダメよ。コイツはね、見た目はこんなだけど・・・」

 

エリカが権三郎の性別を伝えようとするが、その彼?がアイコンタクトで「まだダメだよ」と訴えかける。

しかし、ここで予想外の事態が起こる。

 

「ところで佐々木はどうして女の格好をしているんだ?」

 

レオの突然の一言に場の雰囲気が一変。今なんて言った、と。

これには、意表を突かれた権三郎も珍しく目を見開き狼狽する。

 

「ちょっとアンタ。権三郎君が男だって知ってたの⁉︎」

 

「権三郎それでゴンか・・・名前からしてマジで男なんだな。いや、さっきまで女子だと思ったぜ。ただ、握手した時の手の形というか骨格が男のソレだったから、もしかしたらなと思ってよ」

 

手のひらを見せる。

権三郎の纏う皮は外見は変えられても骨格までは変えられないので、服で誤魔化している。

別に骨格は無理すれば自力でイジれなくもないが、関節炎になるリスクがある。

 

「もしかして、言っちゃマズい話題だったか?」

 

そう言って、レオは眼前で俯きプルプルと肩を震わせる権三郎を見下ろす。

性別を言及されて傷ついたと解釈したのだろう。

その面様には心配の色が伺える。

しかし、彼の心配とは裏腹に権三郎は顔を上げてニパァと明るい笑顔を振りまく。

 

「ピンポンピンポン!せ〜か〜い。お見事だよ金田一くん明智くん西条く〜ん。骨格という僅かな情報からワタシの性別を言い当てるとは、君が初めてだよ」

 

そう言って、褒め称える一方権三郎の内心では、

 

(しかし、実に惜しい。性別だけでなく、ワタシの素顔を見破れたら大正解並びにホームズの称号を与えたのに)

 

と惜しむ声があった。

 

「その様子だと別に性別を隠してるってワケじゃないんだな」

 

「うん。女の子の格好が好きなんだ・・・男のくせにって軽蔑する?」

 

「いいや、別に。ソイツが他人に迷惑かけない限り好きなようにしていい、オレはそう思うぜ」

 

レオは言葉の締めくくりに、サイズアップと打算も屈託のない明るい笑顔をみせる。

何この心づかいイケメンか⁉︎と一同は現代では使われない死語の交えた同調をみせる。

 

「・・・うれしい。レオ君って呼んでもいい?」

 

「おう!勿論いいぜ。オレもゴンって呼んでもいいか?」

 

「もちろんだよ!レオ君改めてよろしくね!」

 

レオの鍛えられた二の腕に権三郎は嬉しそうに抱き付く。そんな彼にレオは嫌がる様子もなく、親交を深める。

 

「レオ君は凄いですね。嫌がる様子も見られません」

 

「レオの純粋な人柄によるものだな」

 

「あっという間に権三郎君と馴染むなんてねー。アイツの評価を改めようかしら」

 

「権三郎君とレオ君の新たな組み合わせ。これはこれで・・・ふふふ」

 

「仲良くできそうでよかったね権三郎くん。あれ?どうしたの雫」

 

「・・・別になんでもない」

 

達也たちが賞賛に似た言葉を送る中、雫だけがどこかムクれた様子で2人のやり取りを眺める。

 

 

***

 

 

権三郎side

 

帰宅後いつものように自室の作業台で皮の制作に勤しむ。

その後夕食前に入浴する。

 

「はぁ〜〜、やっぱり変装を解いた後はこれに限るね♪」

 

皮を脱いで湯船に浸かりながら、今日一日を振り返る。

 

「いやー、まさかレオ君にボクの性別を初見で看破されるとは思わなかったなー。彼こそがボクの◯ッドキラー或いは◯ルバーブレッドだったり、なんちゃってね♪」

 

湯面に口を付けてぷくぷくしていると不意にもうひとつ思い出した。

 

「そういえば、下校中ずっと雫ちゃんがボクに引っ付いて離れなかったな。あれは何でだろう?おかげで、ほのかちゃんは大胆とか言ってくるし、エリカちゃんと美月ちゃんは茶化してくるし・・・」

 

雫ちゃんらしくない行動に正直ボクも戸惑った。

このまま思考しても埒が開かないので、湯船から上がる。

気分転換に明日の皮は一体型にしようと♪

 

入浴を終えて、洗面所の鏡に写る自分の真白な素顔を眺めながら、濡れた白髪をドライヤーで乾かしている時だった。

 

「あーーーーー!!!」

 

叫びながら眼前の鏡を右拳で叩き割る。

重大なことを思い出した。

達也君には公式チート『精霊の眼』があるじゃないか!

うろ覚えだけど、要は何でも見通す凄い魔眼。

どこまで逃亡しても、変装しても正体を看破されてしまう。まさにチート。

絶対に使用していたに間違いない。クソッ!どうする。もうボクの正体が露見したか。ならば、どうして下校途中で問い詰めてこなかった?もしかして、あえて泳がしているのか?現行犯で抑えるためにか。

後悔と考察に浸っていると、拳から鈍い痛みがこみ上げてくる。

 

「ってか、メチャ痛い!破片で手が切れた!傷口に入ってないかな⁉︎」

 

鏡に八つ当たりして後悔した。破片で切れた手から流れた血が床に滴り落ちる。

痛みで悶絶していると、洗面所の外からバタバタと足音を響かせて近づいてくる気配ーー母さんだ。

息子のみっともない姿を見せるわけにはいかない!

ひとまず割れた鏡に拳を添えて、そこから目を逸らすように俯きで立ち尽くす。

 

「権三郎どうしたの⁉︎さっき凄い音が聞こえたけど・・・!その手は・・・」

 

「ごめん母さん。鏡を割っちゃった」

 

正直に告白する。

謝罪は大事である。桜の木を切ったアメリカの偉人も言っていた。

 

「鏡のことはいいから、まずは手当をしましょう」

 

手当の為、母さんに連れ添われてリビングへ向かう途中で、背中越しで啜り泣きが聞こえることに気付く。

 

「うっ・・・うぅ・・・ううう・・・ごめんね権三郎。ちゃんと産んであげられなくて本当にごめんね・・・」

 

母さんが泣いているのだ。まるで遺憾な気持ちで今にも、張り裂けそうな悲痛な赴きで目には涙を浮かべる。

どうして、母さんの方が泣いている?泣きたいのは寧ろこっちだよ。正直に言って、手がメチャ痛い‼︎

 




オリ主くんの皮および変装は無自覚なBS魔法です。
達也の『精霊の眼』ガチチートだと思います。今更ながら、オリ主くん欺き続けられるかな(不安泣)
それに加えて、あのまったく忍ばない坊さんも加わると尚更・・・

次回、誰に変装して誰を揶揄うかな。やっぱり、もう一度彼女に変装して彼を、はっ・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。