咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第10話 5日目 side サクヤ レミリアとの邂逅

 急いで図書館を出て、1階へ通じる階段を駆け上がった私が左右を見渡すと、声の主の後ろ姿が見つかった。

 私は急いで彼女の傍に駆け寄った後「私にご用件はございますでしょうか? お嬢様」と息を整えながら佇まいを正す。

 振り返った吸血鬼お嬢様――レミリアは「――いつもみたいに一瞬で来ないなんて珍しいわね? どうしたの?」と私を睨みつけ、その姿に、私は背筋が寒くなる。

 

(――っ、これは凄いわね……!)

 

 咲夜越しの視点では分からなかったけれど、実際に十六夜咲夜になり、完全に周囲の空気や雰囲気を肌で感じられるようになった事で、人外特有の強烈なプレッシャーに圧倒されてしまう。

 恐らく彼女は数百年を生きる吸血鬼の女王。元の世界のヴァンパイアロードに匹敵する魔族。反射的に私も臨戦態勢を取りかけたが、今の私には何も武器を無く、魔法も一切使えない事を思い出し、踏みとどまる。

 一応、咲夜の部屋に多くのナイフが常備されている事は確認していたが、どちらにしろ私はナイフが本職の武器ではないので、付け焼刃にしかならないでしょう。おまけに今日の朝は急いでパチュリーの部屋に向かったので、装備するのを忘れている。今の私には何も出来ることは無いわね。

 幸いにもレミリアと十六夜咲夜は主従関係に有るし、ここで自分の立ち回りをよく考える事にする。

 

(これは返事を間違えると、大変なことになるかもしれないわね……どう言い訳したらいいかしら)

 

 黙り込んでしまったのがまずかったようで、レミリアはまるで全てを見透かしてるかのような視線で「あら、どうして黙っているのかしら? まさかこの私の質問に答えられないのかしら?」と言葉を重ねてきた。

 

(これ以上は訝しがられてしまうわね、えーと、えーと……これで行きましょう!)

 

 土壇場で言い訳が思いついた私は、相も変わらず強いプレッシャーを放ってくるレミリアから逃げ出したくなる心を必死で抑えつつ答える。

 

「申し訳ございません、お嬢様。実は今朝から私の能力が使えなくなってしまいまして、お嬢様のお呼びかけにお応えするのが遅れてしまいました」

 

 きわめて冷静になるように努めながら、頭を下げてレミリアの出方を伺っていると。

 

「咲夜、頭を上げていいわよ」

 

 レミリアの許しが出たので私は頭を上げる。先程までの強烈な威圧感は風船のようにしぼんで消えて、心配そうな表情でこう言った。

 

「そんな事情があったのね……、何が原因なのか分かってるの?」

「はい、そのことで実は先ほどまでパチュリー様に相談していたのです。それでお嬢様の呼びつけに遅れてしまいました」

「あら、そうだったの? そのことについてパチェは何て?」

「パチュリー様におかれましても、原因が分からないとのことで、現在調査を行っていただいております」

 

 これはもちろん嘘だ。何故ならば私の能力が使えないことなんて彼女に対して一言も話していない。

 

(あれ、よく考えたら私のこと全然パチュリーに話してないじゃない……)

 

 次に会った時はちゃんと私の事を話さないといけないわね。

 

「そう、分かったわ。そういうことなら仕方がないわね」

 

 何はともあれ、上手く誤魔化す事ができたのでよしとしましょう。

 

「――それで、私に何かご用でしょうか?」

「ああ、そうそう。そろそろ食事の時間でしょ? だから呼びに来たのよ」

 

(もうそんな時間だったのね)

 

「畏まりました、急いで仕度をして参ります」

 

 私はお辞儀をした後、レミリアに背を向けて、厨房に向かって走り出した。




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