咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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いつもありがとうございます。
今回は戦闘描写があります。


第12話 5日目 sideサクヤ  逃走

(まさか……私の正体がばれてしまっている?) 

 

「――私は咲夜ですよ。それ以外の何者でもありません」

 

 内心の動揺を取り繕うように務めて冷静に答えたが、レミリアは私の目を見たまま問い詰めるように言葉を重ねる。

 

「嘘ね。今朝廊下で会った時、私に一瞬殺気を飛ばしてきたじゃない。貴女の今日の行動をしばらく陰で監視していたけれど、まるでここに初めて来たかのような反応だったわ」

 

(なるべく【咲夜】と同じように接してきたつもりだったけれど、それが見破られていたなんて……。失敗だわ)

 

 元の世界では、吸血鬼は決して油断のならない強敵だったので、その時の癖で殺気が出てしまったのがいけなかった。

 

「――そして何よりも、私の能力で〝視た"からね」

 

(能力? 彼女はどんな能力を持っているのかしら?)

 

 私は慎重に訊ねる。

 

「……もし、私が咲夜ではないと答えたらどうするおつもりですか?」

「そうねえ。とりあえず貴女を締め上げて、私の咲夜をどこにやったか聞き出そうかしら」

 

 高飛車な態度で答えると同時に、レミリアは羽根を広げて座席から飛び上がり、右手に紅い槍を出現させて振り下ろす。

 

「!」

 

 私は後ろに大きく飛びのいて距離を取る。直後、轟音と共に床に大穴が開き、紅い槍が突き刺さった。

 

「へえ、今の攻撃を防ぐなんて中々やるわね」

 

 余裕綽々の彼女に対し、言葉を返す余裕はなく、私はメイド服に仕込んでいたナイフを抜き、構えながら睨みつける。

 

(あ、危なかった。危うく死ぬところだったわ……! これからどうしようかしら……)

 

「お、お嬢様!? なんで咲夜さんを攻撃してるんですか!?」

 

 私達の一瞬の攻防を唖然とした様子で見ていた門番少女が、レミリアに駆け寄っていた。

 

「美鈴、今のやりとりを聞いてたでしょ? 彼女は咲夜ではなくて、咲夜に似た偽物なのよ」

「そんな……でも……!」

 

 この状況から察するに、美鈴と呼ばれた門番少女は私の事を庇ってくれているらしい。

 

(ここは美鈴を味方につけて、レミリアと戦ったほうがいいのかしら?)そんな考えが思い浮かんだが、すぐにそれを心の中で却下する。

 

(いえ、今の私と咲夜は入れ替わってるだけ。これ以上レミリアとの関係が悪化してしまったら、咲夜の帰る場所が無くなってしまうわ。だとすると……)

 

 私がこの状況を打破する方法を考えている間にも、2人の会話は続く。

 

「咲夜さんが偽物だなんて……」

 

 レミリアは私に紅い槍の穂先を向けながら「美鈴。今日のお昼はそこの偽物と共にしていたでしょ? その時に幾つか違和感は無かった?」

 美鈴は少し間を置いてから「それは……、確かに違和感がありましたけど」と認めるような発言をし、レミリアは「そうでしょう? 貴女の抱いた違和感こそが証拠になるのではないかしら?」

 

 しかしそれでも美鈴は悲観した表情で「それでも……それでも! 咲夜さんが偽物なんてありえません!」と必死に食い下がっている。

 

(……ここまで私を庇ってくれている彼女を利用しようだなんて、私は本当に酷い女ね)

 

 心のなかで自嘲するように呟くと、覚悟を決めて私は口を開く。

 

「――もういいのよ、美鈴さん。レミリアが言うように、私は貴女達の知る【十六夜咲夜】ではありません」

「そんな、咲夜さん……!」

 

 美鈴は失意に満ちた表情でガックリとうなだれてしまった。

 しかしその一方で、レミリアは先程よりも殺気を放ちながら「ほう? ついに認めるのか。私の大切なメイドはどうしたんだ? しかもご丁寧に咲夜そっくりの風貌に化けるとは、よっぽど私を怒らせたいようだな……!」と怒気を強く含んだ声で私を睨む。

 

 私もまたレミリアの殺気に飲み込まれないように、彼女に強い眼差しを向けながら答える。

 

「【十六夜咲夜】は恐らく無事よ。私がこの風貌なのは、彼女の体を私が乗っ取っているから――」

 

 瞬間、目前に迫る拳。今までうなだれていた美鈴が、一瞬で距離を詰めて私に殴りかかって来たのだと理解し、反射的にナイフの腹で拳を受け止める。

 奇跡的に反応できたにも関わらず、拳の威力を相殺できず後ずさっていく。

 

(なんて馬鹿力なの――!)

 

 私は拳の勢いをなんとか受け流して、廊下に飛び出す。

 

「咲夜さんを返せ!! お前は殺す!!」

「くっ……!」

 

 温厚な彼女からは想像も出来ない殺気をまき散らし、目にも止まらぬ速度で襲い掛かる拳の嵐。自身の体に当たらないように受け流すのが精一杯だ。

 

「待って! まだ話が終わってないわ!」

「うるさい!!」

 

 彼女は私の話に聞く耳を持たない。これは非常に良くない事態だわ。だからといって、私からは攻撃できないし……。

 そうこうしてる内に美鈴の拳を裁けなくなっていき、とうとう1発お腹に喰らってしまう。

 

「っ!」

 

 廊下の奥に向かって大きく吹き飛ばされ、その勢いのまま床に叩きつけられて転げ回る。ようやく止まった頃には、彼女に殴られた衝撃と痛みで体中――特にお腹の部分に鈍い痛みが生じて意識が飛びそうになるも、気合でなんとか意識を繋ぎ止め、素早く思考する。

 

(なんて力……! 説得しようと思ったけどこれは無理ね。というかそもそも私は接近戦が苦手なのよ、このままでは死んでしまうわ――こうなったら、最後の手段を取るしかないわね)

 

 一瞬で決断した私はなんとか立ち上がり、私に追撃を与えようと飛び掛かってくる美鈴の足元に向かってナイフを投擲した。

 だが彼女はそれをあっさりかわして尚、素早く私に近づいてくるので、後ろ向きに走りながらメイド服の中に仕込んであるナイフを掴み、再び美鈴の足元に向かって投擲。更に彼女が躱した方向にに向かって追加でナイフを投擲する。

 

「!」

 

 美鈴は躱すのが難しいと判断したのか、少し減速しながらナイフを拳で叩き落とす。その僅かな減速を見逃さず、私は速度を上げて目的地の大図書館に向かって駆けていく。

 一直線に私の方に向かってこれないよう、ナイフを投擲しながら牽制するも、美鈴はどんどん差を詰めてくる。彼女が私の間合いに入る頃には、ナイフのストックが切れてしまい、万事休すかと思われたその時、大図書館の扉が見えた。

 私は勢いそのままに思いっきり体当たりして扉を破ると、身体が上げる悲鳴を無視して大図書館に飛び込み、奥に向かってかけていく。間もなく、奥の本棚で、何か本を探しているパチュリーを見つけた私は彼女に向かって叫んだ。

 

「パチュリーさん、助けてください! このままだと私――!」

「むきゅう」

 

 飛びつく私を受け止めたパチュリーは困惑した様子で、「いったい何があったのよ……?」

 

「それは――」

「見つけたぞ! さあ覚悟!」

「ひっ……!」

 

 美鈴が追い付いてしまったようで、我ながら情けない声を出しながらパチュリーの後ろに隠れる。

 そんな情けない姿の私を見た後、ハアとため息をついてからパチュリーは目の前にいる美鈴に向かって口を開く。

 

「事情はよくわからないけど、とりあえず落ち着きなさい。貴女らしくないわよ」

「これが落ち着いてなどいられるか! そこの偽物は咲夜さんをどこかにやったんだ! パチュリー様、そこをどいてください! 殺してやる!」

「ひぇぇぇ」

 

 キャラが変わったかのように怒号を発する美鈴の気迫に、私は若干泣き声を漏らしてしまっていた。

 しかしその一方でパチュリーは今の言葉で私の状況を察したようで。

 

「……なんとなく状況が理解できたわ。落ち着きなさい美鈴! 彼女を殺したら咲夜は戻ってこないわよ!」

 そんなパチュリーの言葉にも、美鈴は興奮が収まらないようで「でも、彼女は――!」と何かを言おうとしていたが、パチュリーは遮るように「いいから冷静になりなさい! もし彼女にこれ以上危害を加えるのなら、私が代わりに相手になるわよ!」と宣言。魔道書片手に今にも魔法を発動しようとしていた。

 

「……!」

 

 パチュリーの言葉に驚いたのか美鈴は黙り込み、両者共に睨みあう形で相対する。そんな時間が永遠に続くかと思われたその時、頭上からレミリアの声がした。

 

「――はいはい、2人共そこまで。パチェが言う通り少し落ち着きなさい美鈴。そこの偽物からまだ話が全然聞けてないわ。殺るのはその後にしなさい」

「……そうですね、分かりました」

 

 レミリアの仲裁で、美鈴は戦闘態勢を解除。パチュリーは魔導書を閉じる。

 

(戦闘が収まったのは良かったけど、この話の流れだと私がやられてしまうわ……。どうしたらいいのかしら……)

 

 そんな私の気持ちもいざ知らず、レミリアはパチュリーに向かって訊ねる。

 

「ところでパチェ。貴女は今の咲夜について何か知っているのかしら?」

「これから事情を話すわ、二人とも落ち着いて聞いてちょうだいね。――それと、咲夜もいつまでも私に抱き着いてないでいい加減離れなさい」

「畏まりました……」

 

 それから「長話になるでしょうから座って話をしましょう」とのパチュリーの案で、私たちは近くの座席に移動する。

 長方形のテーブルに私、パチュリー、私の正面にレミリア、左前方に美鈴という座席順となっている。

 全員が席に着いた事を確認してから、パチュリーは口を開いた。

 

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