咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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いつもありがとうございます。


第13話 5日目 sideサクヤ 説明

「私は一昨日から咲夜に相談を受けていたわ。ざっくり要約すると、毎晩自分そっくりの女性の夢を見て、日を追うごとに夢の中に入り込んでいくというものだったわ」

「夢の中に入り込むですって……?」

「私は夢について調べていたんだけど……」

 

 ここで彼女は一瞬私を見た後、すぐ視線を前に戻す。

 

「どうやら今ここにいる咲夜は、今朝夢の中に出てきたサクヤと入れ替わってしまったみたいなのよ」

「ええっ!? ほ、本当なんですか?」

「何故そんなことが分かる?」

「今朝、彼女が私の元に相談に来たのよ。私が調べた限り、嘘を吐いているようにも思えなかったわ。だからある程度入れ替わり現象について分かるまでは、十六夜咲夜を演じると結論をつけたんだけれど――。こんな事態になるのなら、貴女達にもきちんと説明しておくべきだったわ」

 

 パチュリーは大きく溜息を吐く。

 

「入れ替わりということは、私の知っている咲夜は、彼女の元の身体にいるのね?」

「そう考えるのが自然だわ」

「貴女、名前は?」

「イザヨイサクヤです」

 

 率直に名乗ると、レミリアは驚きと感心が混じった様子で私をジロジロと見つめる。

 

「へえ~さっき言ってたことは嘘じゃなかったのね。苗字と名前も咲夜と一致するなんて驚きね」

「ええ、私も初めて聞いたときは驚いたわ。まさかそんな事が起こるなんて夢にも思わなかったもの。それに咲夜の話だと、夢の中のサクヤは容姿も完全に一致していたらしいわ。そうなんでしょ?」

「ええ、パチュリーさんの仰る通り、私と十六夜咲夜は全く同じ姿です。私も初めて見たときは驚きましたので、きっと今、元の私の体の中に入ってる十六夜咲夜さんも驚いていると思います」

「――ちょっと話がずれていってませんか? ねえ、貴女。居なくなってしまった咲夜さんはどこにいるんですか?」

「【十六夜咲夜】は私の家にいるはずです。それで問題の私の家なのですが……」

 

 私は一呼吸置いて口を開いた。

 

「レクラム大陸のロンガディア国、アルベリオン地方最南端の離れ小島にポツンと建つ家の中で私は暮らしていましたわ」

 

 しんと場が静まり返るが、この沈黙を破るようにレミリアが立ちあがった。

 

「……それは本当なのかしら?」

 

 凄みを出しながら問いかけてくるレミリアに、私は気圧されながらも「ほ、本当ですよ! こんな状況で嘘なんかつきません!」

 

「ふむ……」

 

 レミリアは座り込み、難しい顔で黙り込んでしまう。再び沈黙が訪れたこの場で、パチュリーがぽつりと呟く。

 

「……外の世界にレクラム大陸なんて無いし、国家が樹立するほどこの幻想郷は広くないわ。彼女の言葉を信じるならば、ここでも外の世界でもない世界――即ち異世界から来たのかもしれないわね」

「異世界……ですかあ」

「……」

 

 美鈴はあきれたように呟き、レミリアもまた疑念の表情を浮かべている。

 まあ、確かに普通は『異世界から来た』と話しても、戯言だと一蹴されてしまって信じてもらえないわね。

 

「仮に、仮によ? 彼女の言うことを信じたとして、なんで精神が入れ替わっちゃうのよ? まさかあの憑依異変が再発したのかしら?」

「その可能性は無いわね。現状では、精神の入れ替わり、もしくは憑依が起きているのは咲夜だけですもの。ただ、興味深い文献を見つけたわ」

 

 パチュリーの言葉に皆の注目が集まる。彼女は机に置かれた一冊の古ぼけた本を開いて見せる。

 

「まだ詳しいことは分かっていないのだけれどね、精神の入れ替わり現象が生じる前に起きる兆候の1つに、【対象となる人物の生活を夢で観る】というのがあるらしいのよ」

「! 確かに、私も咲夜が紅魔館で働く夢を見てました。パチュリーさん、精神の入れ替わりが起きる原因については分かりませんか?」

「何とも言えないわね。その部分の情報が曖昧だったから、確かなことは分からないわ」

「そう……ですか」

 

(一筋縄では行かなそうね……)

 

「ねえ、私からもいくつか訊ねてもいいかしら?」

「はい。どのようなご質問でも構いません」

「元の貴女について、詳しく教えてもらえないかしら?」

「そういえば、私のことについてまだ詳しくお話しできていませんでしたね。では、この機会にお話しさせていただきます」

 

 私は立ち上がり、一呼吸置いてから口を開く。

 

「簡単に自己紹介させて頂きます。私の名前はイザヨイサクヤ、魔法使いです。元の世界では、主に魔法の研究をする日々を過ごしていました」

「魔法使いだなんて、まるでパチェみたいね?」

 

 面白そうにレミリアはパチュリーに視線を送るけれど、 パチュリーは私をじっくりと観察している。

 

「魔法使い……ねえ? 魔力が一切感じられないし、とてもそうは見えないわ」

「信じられないかもしれませんが、これは事実なのです。咲夜になってから、なぜか魔法が一切使えなくなってしまいまして……。もし魔法が使えるのであれば、いくつか試してみたいことがありますね」

「試したいこと?」

「まずはテレパシーですね、私の家には、ユウって名前の女性が住んでいるのですが、彼女と連絡がつけば、元の私の状況がわかるのですけれど……」

「それはまた凄い魔法ねえ。でも、ここは異世界よ? 流石に異世界までテレパシーが届くとは思えないわ」

「う~ん……」

 

 実際どうなのかしらね? 試したことがないので、さっぱり分からないわ。

 

「それと、空間収納魔法が使えないのも痛いですね」

「何それ?」

「簡単に言うと、異空間に物をしまうことができる魔法です。中に色々な研究成果がしまってありまして、最近の私の研究テーマがちょうど異世界転移だったので、資料があれば少しでも何かのお役に立てたかもしれませんが……」

「異世界転移の研究? まさかその研究の余波で、咲夜と入れ替わったのではなくて?」

「私もその可能性については真っ先に考えました。ですがこの研究は、暇な時にのんびり進めていたので、殆ど白紙のようなものでした」

「ふーん?」

「それに、異世界研究については、私よりパチュリーさんの方が詳しいと思いますよ? ここの図書館の資料はとても膨大ですから、私よりも知識があると思います。恐らく数百年は生きている魔法使いなのではないでしょうか」

「そういうの分かるの?」

「ええ、魔力を失っていてもなんとなく感覚で分かります。恐らく、この世界で1、2を争う魔法使いだと私は思っています」

「ふぅん……」

 

 パチュリーは私の事を興味深そうに見つめてくる。思った事を話しただけなのに、何が気になったのかしら。

 

「え~っと、ちょっといいですか?」

 今まで黙って私たちの話を聞いていた美鈴が口を開いた。

 

「話の内容がいまいち理解しきれなかったんですが、つまりどういうことなんですか?」

「纏めると、私達の知る咲夜と、異世界の住人のサクヤが夢を介して精神が入れ替わってしまって、その原因は不明。そして異世界のサクヤは魔法使いで、色々な魔法を使って戻る手段を考えたけれど失敗した……といったところね」

「なるほど~」

「これからどうするのかしら?」

「その事ですが、お願いがございます」

 

 私は立ち上がり一呼吸おいて発言をした。

 

「私が元の場所に戻るまで、どうかこの館に置かせていただけないでしょうか。確かに私は十六夜咲夜ではございませんが、それでも彼女の代わりに仕事に精一杯取り組みますので、どうかお願いいたします」

 

 私は頭を下げてここにいる皆に懇願する。右も左も分からない異世界で生き抜くのは難しいですし、十六夜咲夜の為にも、出来るだけ綺麗な体で返したいわ。

 

「そんなの当たり前じゃない。最初は驚いたけど、こんな事態になった以上、私はあなたを受け入れるわ。話を聞く限り、貴女は悪い人ではなさそうだしね。貴女を追い出して、咲夜が帰ってくる場所が無くなってしまったら困るわ」

「私も構いませんよ。貴女が悪意を持って咲夜さんと入れ替わったのでは無さそうですからね」

「私は研究を手伝ってくれるのなら、何でもいいわ」

「良かった……」

 

 レミリア、美鈴、パチュリーから同意をもらえて、ひとまず安堵する。もし私が【咲夜】の居場所を奪ってしまったら、彼女に申し訳が立たないわ。

 更に言葉を続けようとした時、突然眩暈がして私の意識が遠くなる。

 

(あぁ、駄目……)

 

 そして私は、まるで睡眠魔法でも掛けられてしまったかのように、意識を手放してしまった。

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