咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第2話 1日目 魔法使いイザヨイサクヤの日常 

 ――― side サクヤ ―――

 

 

 

「……」

 

 窓から差し込む陽射しで目が覚めた私は、今日見た夢の内容を思い返していた。

 朧げに覚えているのは、真紅に染まる大きな館で、私と同じ顔をした少女が可愛いメイド服を着て働いていた。

 普通に考えたら、ただの夢なのでしょうね。私はかつて世界各地を旅したことがあるけれど、あんなに特徴的な紅色の館には見覚えは無いし、イザヨイ家の長女という幸運も重なり、メイドの経験は無いのだから。

 それでも私はこの不思議な夢が気になっていた。ただの夢にしては現実味があって、まるで本当にあの館で働いていたような感覚があるのよね。

 

「これは何かの予兆なのかしら……」

 

 聖女様や大司教様が夢を経由して、創造神アルカディアからの神託を得る事があるって聞いたことはあるけれど、私はそこまで敬虔な信徒では無いし、意味が分からないわ。

 考え込む私を現実に引き戻すように、自室のドアがノックされ、同居人のユウの声が聞こえた。

 

「サクヤー。朝ご飯が出来たよ~」

「今行くわ」

 

 とりあえず今日見た夢のことは頭の片隅に入れることにしましょう。私は手早く身だしなみを整えて、ダイニングルームへと向かっていった。

 

 

 

「手が止まっているみたいだけど、どうかしたの?」

 

 向かいに座るユウに声を掛けられて、私は初めてスプーンを握ったまま豆と穀物のスープをじっと見ている事に気付いた。今朝の夢を考えているうちに手が止まっていたみたいね。

 

「実は今朝ちょっと気になる夢を見たのよ」

「へえ、どんな夢だったの?」

 

 髪色と同じ金色の瞳は興味を示しているみたいだけど、『自分とそっくりの少女がメイドをしている夢でした』って言っても笑われそうな気がするわね。

 一瞬だけ考えて「……まあ。大したことじゃないわ」と誤魔化すことにした。

 

「そう?」

 

 私の言葉に彼女は関心をなくしたのか、すぐに自分の食事に戻る。

 

「サクヤ。今日は助っ人を頼まれているから、帰りは遅くなるね」

「前に話していたA級のダンジョンに行くの?」

「そうそう。前回の攻略失敗で前衛が不足しているみたいでね。是非助っ人に来てくれー! って団長に頼まれちゃった」

「貴女の実力なら大丈夫だと思うけど、万が一の時はすぐに呼びなさいよ?」

「ふふ、ありがとう。サクヤ」

 

 やがて食事が終わり、私は「ごちそうさま。今日も美味しかったわよ」とユウに伝え、食器を片付けた後に図書室へと向かっていった。

 私の屋敷の3階奥にある図書室には、四段の書架が二本あって、海が見える窓の傍には小さな机と研究中の魔法について書いた紙が積んである。ここには実家から持ち出した魔導書の他に、旅をしていたときに集めた本や自分で書いた本――まだまだ少数だけれど――が集まっている。

 ……そういえば最近は旅に出ていないわね。研究が一段落したら、また世界各地を回って本を集めてこようかしら。

 そんなことを思いつつ、私は席につく。

 

(今日は何をしようかしら? 異世界の存在に関する研究の続きか、それとも風属性魔法の有効活用法か……) 

 

 100年前の魔王軍侵攻、10年前の暗黒龍の襲来事件。勇者一行とロンガディア国軍・冒険者の連合部隊が撃退した奴らは、いずれもここではない別の世界からの襲来だったこともあり、暇な時にちょくちょくと異世界に関する研究を進めている。

 異世界とは何なのか。何処にあって、どうやって世界を渡るのか。調べれば調べるほど興味が尽きない題材ね。

 でもまるで進捗は芳しくないし、研究というより趣味と言った方が正確かもしれないわね。

 少し悩んだ私は、異世界の研究を再開することにした。

 

 

 

 研究に没頭していたらいつの間にか夜になっていたので、私はキッチンへ向かい、あり合わせの食材で食事を作る。

 さっきユウから、ダンジョンの攻略成功祝いのパーティーに参するって魔法通信が入ったし、先に寝ちゃいましょう。

 黙々と食事をして、寝る準備も済ませた私は自室のベッドに横になり、目を瞑る。さて、明日は何をしようかしらね。

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