咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第21話 6日目 side サクヤ 魔理沙との邂逅

「何か用?」

「おいおいつれないな? パチュリーから咲夜が倒れたと聞いて、せっかくお見舞いに来てやったというのに」

 

 そう言いながら彼女は扉を閉めて、私が眠るベッドの前の椅子に座る。なんだか図々しいわね。

 だけどこの気安い感じだと、咲夜とはそれなりに仲が良いのかしら? あまり邪険にするのも良くなさそうだわ。

 

「あら、そうなの? 倒れたと言っても2、3日もすれば治るわ」

「ふ~んそうなのか。けどそんな怪我どこでしたんだ?」

「昨日美鈴と戦闘になってね……。彼女はかなり強かったわ」

 

 すると魔理沙は驚きながら、「おいおい、穏やかじゃないな。いったい何があったんだ?」

 

 薄ら笑みを浮かべる表情とは裏腹に、その声には気遣いの色が含まれている。やっぱり咲夜とは知り合いか、友達みたいな関係なのかもしれないわね。

 また美鈴みたいな誤解を防ぐ為にも、ここは正直に話した方がいいでしょう。

 

「実は――」

 

 昨日私に起こった出来事と、その顛末を簡単に彼女に話すと、呆れたようにこう話した。

 

「あの門番がそこまで強いなんて知らなかったぜ。それで、お前も別人になっていると……」

 

 私が頷くと、魔理沙は好奇心の眼差しで私の身体を見ている。なんだか落ち着かないわね。

 

「とてもそうは見えないけどなあ? どう変わったんだ?」

「そんなこと聞かれても分からないわよ。元々の【十六夜咲夜】がどんな人か良く知らないからね。貴女から見て、十六夜咲夜はどんな人だったの?」

「ん~そうだなぁ……」魔理沙は少し考えてから「一言で言うと、戦闘力がとても高くておっかないメイドだな。いきなり目の前にナイフが出現するのは勘弁だぜ」

「それって貴女が本を泥棒してるからじゃないの? 彼女の立場を考えたら、仕方のないことだと思うわ」

 

 思ったことをはっきり言うと、魔理沙は帽子に手を当て、苦笑する。

 

「ははっ、酷い物言いだな。それでお前は、え~と、イザヨイサクヤだったか?」

「サクヤで構わないわ」

「じゃあお前の事はサクヤと呼ぶことにするぜ。私の事は魔理沙と呼んでくれ」

「えぇ、よろしくね魔理沙」

「おう! ――で、話を戻すが、なんで私が本を盗っている事を知っているんだ?」

 

 私は夢を介してここ5日間の出来事を見ていた事を話した。

 

「へぇ、ってことは、あの弾幕ごっこを見ていたわけか。あの時咲夜が焦っていた理由が分かったぜ」

「ところで、弾幕ごっこってなんなの?」

「お前知らないのか? って、あーそうか別人になっているんだっけ? だとしたら知らないのにも納得がいくな。いいぜ! 弾幕ごっこのスペシャリストでもあるこの魔理沙様が教えてやるぜ!」

 

 そう言い放つ彼女は、得意げな表情で私に弾幕ごっこのルールとその魅力について語っていく。彼女の説明を聞いた私は素直に感心していた。

 

(命の取り合いではなく、技の美しさで決着を着ける決闘法があるなんて! この方法なら死傷者も出ずに気軽に戦闘できるわね。考案者は頭がいいわ)

 

「――ってわけだ」

「面白そうね!」

 

 元の世界に帰ったら、ユウに教えてあげましょう♪ 

 

「だろ? 怪我が治ったらサクヤもやらないか?」

「残念だけど、今の私は何も能力が無いのよ。だから弾幕ごっこはできないと思うわ」

「能力が無いってどういうことだ?」

「この体の十六夜咲夜の時間操作能力が今は何故か使えないのよ。それに元の世界の私は魔法使いだったのだけれど、この体になってから一つも魔法を使えなくなっちゃってね。今の私はただのメイドよ」

「なるほどなぁ。ってかサクヤ、お前魔法使いだったのか!? とてもじゃないが信じられないな……」

 

 疑惑の目を向ける魔理沙に、私はちょっとムッとする。

 

「信じられないって何よそれー! 私これでも、元の世界ではかなり名の知れた魔法使いだったのよ?」

「どんな魔法が使えるんだよ?」

「う~ん……、まあ実際に見せるのが早いわよね。魔理沙、今からこの呪文を詠唱してみて」

 

 私は魔理沙に向かって一つの炎属性魔法の呪文を伝えると、彼女は何とも言えない表情で訊ねてきた。

 

「どんな魔法なんだ?」

「手のひらに小さな炎が宿る魔法よ。ほらほらやってみて」

 

 半信半疑の彼女を急かすと、「まあ試すだけなら損は無いか」と詠唱を開始。やがて右手の平にロウソク程の小さな炎が宿り、魔理沙は炎を覗き込みながら驚きの声を上げる。

 

「おお、確かに火が出た! しかも不思議と熱くないし、どうなってるんだこれ?」

「それは手の平に熱がいかないように調整されてるからよ。さっきの詠唱のこの一節がね――」

 

 私が解説をすると、魔理沙は納得したように頷き。

 

「なるほどなぁ。咲夜は魔法に詳しくなかったし、今のサクヤが別人で魔法使いというのを信じることにするぜ」

 

 彼女は火を消すと目を輝かせながら「なあなあ、他にはどんな魔法が使えるんだ?」

 

「そうね、例えば――」

 

 一度撃った魔法弾が途中で分裂する魔法や、地面から魔法弾が湧き出てくる魔法、分身魔法等、弾幕ごっこに適していて尚且つ安全そうな魔法を重点的に私は彼女に教えていく。彼女の貪欲に知識を吸収しようとする姿勢は、私も教えていて楽しかったわ。

 結局、夜になるまで魔法談義で盛り上がってしまったわ。彼女は筋が良いし、将来凄腕の魔法使いになるでしょうね。

 

「いやぁ、いいものを教えてもらったぜ。きっと霊夢も驚くだろうなぁ。お礼と言っちゃなんだが、私もお前が元の世界に帰る手伝いをしてやるよ」

「それは嬉しいけど、今の所宛てが無いのよね」

「実はな、幻想郷には夢を管理しているドレミーって妖怪がいるんだ。早速今夜そいつを連れてくるぜ」

「……その人、信用できるの?」

 

 夢を管理するとは、即ち深層意識への干渉が行える事であり、私の世界では危険な精神魔法に該当する。普段の私なら精神系魔法に耐性があるのだけれど、今は全く無いから不安でしかないわ。

 

「ん~まあ少なくとも悪い奴じゃないぜ。それは私が保障する」

 

 魔理沙が太鼓判を押すのなら、ここは彼女を信じましょう。世界が違っても、同じ魔法を愛する人に、悪い人は居ないわ。

 

「ならお願いするわ。私の部屋に来てもらえるかしら?」

「おう、任せておけ! それじゃあな!」

 

 魔理沙は風のように去っていった。

 

 

 

 夕食後、美鈴に自分の部屋に戻る事を伝えて――彼女には反対されたが無理を言って押し切った――、ベッドに入った私は寝転がりながら今日の事について考えていた。

 

(明日は夢を見れるかしら? ユウと咲夜は何をしているのかな)

 

 夢を見なくなったことも気がかりだけど、元の世界にいる彼女達も心配だわ。

 

(少しでも魔法が使えるようになればいいのだけれど……。怪我が治ったらパチュリーさんに相談してみましょう)

 

 思いを巡らせていると、扉が勢いよく開き、「待たせたな、サクヤ! 連れて来たぜ!」と、魔理沙と青髪の少女が登場する。

 私が起き上がると、青髪の少女は私のベッドの隣に立ち、自己紹介を始めた。 

  

「お初にお目にかかります。私はドレミー・スイートです」

「イザヨイサクヤよ」

 

 まさかこんな可愛い女の子が夢の管理者だったなんて。幻想郷って、もしかして強い能力者の女性が多いのかしら?

 

「事情は魔理沙さんから聞きました。夢を介して精神が入れ替わる現象は実に興味深い話です。今夜、貴女が眠った後に夢の世界に入ってみようと思いますが、よろしいですね?」

「はい。お願いしますね」

「じゃあ私は帰るぜ。また明日来るから結果を聞かせてくれよな」

「魔理沙もありがとね」

 

 魔理沙が退室したのを見送った後、ドレミーは口を開く。

 

「さて、早速始めましょうか。寝る準備はいいですか?」

「準備は出来ているけど、何をするの?」

「私の能力で貴女を眠らせた後に、夢の中に侵入して調査したいと思っています」

「分かったわ」

 

 正直なところとても不安だけれど、ドレミーからは悪意を感じないですし、信じましょう。

 ベッドに仰向けに寝て目を閉じた瞬間、私の意識は一瞬の内に落ちていく。

 

 




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