咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第25話 6日目 side 咲夜 ユウの本心

 夜になり、ユウと一緒に夕食を食べた後、後片付けを済ませ、私は浴場へと足を運ぶ。冷蔵庫の中の食材を使って肉じゃがと味噌汁を再現したら、彼女が泣いて喜んでいたのが印象的だったわね。

 1階の廊下に並ぶ『大浴場』の刻印が刻まれた扉を開けると、広々とした脱衣所に繋がっている。煌々と照らされる室内には、木枠の棚と籠、化粧台、ゆったりとした椅子が並ぶ。

 私は脱衣所で服を脱ぎ、カゴに畳んで置いてから大浴場に繋がる扉を開く。満天の星空と、月明かりに照らされた草原と海が360度広がっていた。

 勿論露天風呂という訳では無く、天井・壁・床を構成する大理石が魔法の力によって、室内から外を見る時だけ透明になる仕組みになっているらしいので、外から覗かれる事も、風雨に晒されることも無い。初めて見た時はかなり驚かされたわね。

 崖に近い位置には、10人は余裕で入れる大理石の浴槽が設置されていて、湯気が立ち上っている。大浴場の透明な壁には、シャワーホースとお湯が出る蛇口、石鹸が設置されている。紅魔館と同じ設備なので使い方に迷う事は無いのが幸いね。きっとユウの知識で、現代日本の浴室を再現したのね。

 今日は珍しく先客がいるようで、海を眺めながらお風呂で寛いでいたユウは、私と視線が合った途端に狼狽えだした。

 

「さ、咲夜? ま、まさか入浴時間が被るとは思わなかったよ。私、出たほうがいいよね?」

「別に女同士だし、気にすることはないわよ?」

 

 紅魔館でも、時間が被った時は美鈴やパチュリー様と一緒に入る事があったし。

 

「う、うん。分かった」

 

(なぜ彼女は動揺しているのかしら? 別に身体におかしなところは無いわよね?)

 

 彼女の態度に疑問を覚えながらも、私は身体を洗い流して、ゆっくりと湯船に入っていく。

 

「はあ~気持ちいいわね~」

 

 最初はこの開放感がありすぎる大浴場に落ち着かなかったけれど、慣れてしまえば絶景を楽しむ余裕が出てくるわ。

 砂浜に打ち付ける波をぼんやりと眺めながら、リラックスしていたけれど、さっきから私を見てくる彼女が気になるのよね。

 私は彼女の隣に移動すると、「どうしたの? 私の顔に何かついてる?」と訊ねる。彼女はしどろもどろになりながら、答えた。

 

「いや、その……。実は緊張しちゃってて……、サクヤとはたまに一緒に入るんだけど……」

 

 いつも快活な彼女にしては珍しく歯切れが悪い。

 

「私はサクヤでは無いんだから、緊張しなくてもいいのに。外の景色でも見て落ち着きなさいな」

「う、うん。そうね」

 

 彼女は気持ちを鎮めるように大きく深呼吸をしていた。

 

(それにしても――)

 

 私は自然と彼女の身体に視線が向いてしまう。程よい大きさの胸、スベスベな肌、女性的な魅力を失わず、それでいてしっかりと筋肉がついてる体。同性の私でも惚れ惚れしてしまう程の美人ね。

 

「ねえ咲夜」浮かない顔の彼女。「こっちの世界に来てからどう?」

「どうって言われてもねぇ」

 

 確かに現在の状況について、不安な気持ちはあるけれど、そこまで思い詰めている訳ではない。幻想郷ではサクヤやパチュリー様が解決に動いているでしょうし、此方の世界でもユウ達が私を帰すために力を貸している。

 今は彼女達を信じて、時が解決するのを期待するしかないでしょう。

 自身の考えをユウに伝えると、彼女は納得したように頷いた。 

 

「そっか……、咲夜は強いね。私はさ、こっちの世界に来た時に不安でいっぱいで、雑魚モンスターのゴブリンと戦うのでさえ怖かったわ。そんな臆病な私を仲間達は支えてくれて、魔王を倒すくらいに強くなれたの。咲夜もさ、今は大丈夫だとしても、辛くなったら遠慮なく私を頼ってね」

 

 ユウは優しい笑顔を浮かべている。彼女は彼女なりに私を励まそうとしてくれているのね。これもいい機会ですし、ずっと気になっていながらも、聞けなかった質問をしましょう。

 

「……貴女は、私がサクヤの身体に入った事について、何も思っていないの?」

 

 断片的な話しか聞けていないけれど、恐らくユウはサクヤをかなり大事な友達だと思っているはず。それなのに私に対する敵意や憎しみが無く、最初から私(十六夜咲夜)と友達だったかのような態度で接している。彼女の真意が非常に気になるところね。

 

「……本心を打ち明けると、思うところが無かったと言えば嘘になるわ。私の大好きなサクヤが私の知らない咲夜になってしまって、とても悲しかった。だけどね、突然右も左も分からない異世界に飛ばされる気持ちは痛い程分かるから、どうしても放っておけなかったの」

「ユウ……」

「私が仲間達に助けてもらったように、今度は私が貴女を助けたいわ。貴女からは悪意や害意は感じなかったし、話してて、この子は世界が違ってもサクヤなんだなって思えたの。だからね、私は普段と同じように接すると決めたのよ。貴女は十六夜咲夜(イザヨイサクヤ)なんだからね」

「……ありがとう。貴女と出会えて良かったわ。これからも頼りにしているわね」

 

 勇気を出して胸の内を告白してくれた彼女に、私も正直に感謝の意を伝えると、頬を赤らめて「あ、あー! そろそろのぼせちゃいそうだから私は出るね! 咲夜はごゆっくりどうぞ!」と、逃げるように脱衣所に走っていった。急にどうしたのかしら?

 首を傾げながらも、私は入浴を続けていった

 

 

 

 入浴後、パジャマに着替えた私は3階のユウの部屋の前に向かう。

 

「お休み。明日もよろしくね」

「うん、お休み!」

 

 扉越しに挨拶を交わした後、自室に戻ってベッドに横たわる私は、明日の事を考えていた。

 

(明日はリィンに私を診てもらうんだったわね。聖女が何なのか分からないけれど、どんな結果になるかしらね)

 

 期待と不安が入り混じりながら、私は眠りに就いた。




次の話から7日目のside サクヤ(幻想郷側)になります
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