咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第28話 7日目 side サクヤ 紫の診断

「……何か分かったの?」

 

 紫の言葉にパチュリーは反応し、鋭い口調で問い詰める。

 

「さっきの提案を受けるのなら、話してもよくてよ?」

 

 紫は私を冷たい目で見下ろしながら言い放つ。パチュリーも、レミリアも、表情から察するに私に判断を委ねているように思えるわね。 

 

(う~ん、こういう怪しい雰囲気の人? とは取引しないのが鉄板なんだけど、彼女は幻想郷の管理者らしいし、何か私の知らないことを知っているかもしれないわね。今はとにかく情報が必要だわ)

 

 私は心の中で考えを纏めて、立ち上がる。

 

「八雲さん。私は先ほどの提案を受けることにします」

「いいの? 正直言ってそこの妖怪かなり胡散臭いわよ?」

「パチュリーさん。私の気持ちとしては、藁にもすがりたい気分なので、対価が情報なら別に構いません」

「そう。サクヤがそう決めたのならそれでいいわ」

「話はまとまったみたいね。なら早速聞かせてもらいましょうか」

「ええと、まずは何から話せばいいですか?」

「貴女について教えて頂戴」

「分かりました。では――」

 

 私は一昨日レミリア達へ伝えた話を紫にも話す。一度喋った内容だからか、一昨日よりは効率よく伝えることができた気がする。

 

「ふ~ん、そう。面白いわね」

「さあ、サクヤは話したわ。1人で納得してないで私達にも話しなさい」

「そんなに急かさなくても、約束は守るわ。まず私の能力が《境界を操る程度の能力》なのは皆さんご存知の通り。その能力でサクヤを見た限り、彼女の魂と肉体の《境界》が綺麗に分断されているのよねえ」

「どういう事なのかしら?」

 

 パチュリーの質問に、彼女は境界の中から1本の毛糸を取り出して説明していく

 

「この世のあらゆる生き物はね、この毛糸のように肉体と魂は緻密に織り交じりあっているの。だからちょっとやそっとのことでは解れたりしないのよ」

 

 そして彼女は絡み合っていた糸を能力を使って1本の細い糸に分解した。

 

「サクヤはこの解けた糸のように肉体と魂がバラバラでね、通常ならこの状態になってしまった生き物は肉体か魂のどちらか、あるいは両方が死んでしまうのだけれど、彼女は奇跡的に生存と崩壊のギリギリのラインにいるのよねえ。不思議だわあ」

 

 分かりやすく解説をしてくれたおかげか、彼女の解説はすんなりと頭に入ったけれど、同時に深刻な事態に陥っていることを悟ってしまった。

 

「私の体がそんな事になっているなんて……ど、どうすればいいのよ……」

「おい、それは本当なのか!?」

「ええ。私の名に誓ってもいいわ」

「厄介だな……!」

 

 レミリアには明らかな苛立ちが見える。紫の事は気に入らないが、実力は認めているといった所かしらね? 

 

「八雲紫、貴女の能力で治せないの?」

「治せないこともないわよ。だけど、今回のケースでは肉体と魂が一致していないでしょう? それを私の力で繋ぎ止めたら、彼女にどんな影響が出るか分からないわよ? 本当になんで生きていられるのかしら?」

「サクヤは後どれくらい持ちそうなんだ?」

 

 震える声でレミリアが訊ねると、紫は 「そうね……。私の見立てではこのまま何もしなければ長くて2、3日といったところかしらね。でも何か大きなきっかけがあれば均衡が崩れて、肉体と魂がくっつくかもしれないわ。もちろん死亡してしまう可能性もあるけれどね。……さあ、貴女はどうするのサクヤ? 今なら特別サービスで私が治してあげてもよろしくてよ?」

 

 究極の選択を突き付けられて、心臓が早鐘を鳴らす。

 

(落ち着け……、落ち着くのよ私……!)

 

 私は深呼吸を何度かして、気持ちを宥めさせながら考える。

 

(現状では彼女に頼んだほうがいい気もする。だけど、本当に彼女に頼むのが正解なのかしら? 私が、“私そっくりの人間に憑依していた”事に何か意味がある気がするのよね……。幾つか質問してみましょう)

 

「ええと、八雲さん。私の肉体と魂がバラバラだとおっしゃってましたが、肉体や魂自身をあなたの能力で視て他に何か気づいたこととかありませんか?」

「そうねぇ……」

 

 彼女は私に向かって手をかざして、目を閉じる。手を通じて体内を探っているのかしら? 答えが出たのは10分後だった。

 

「う~ん……、どうやら貴女の魂は“強い”みたいね? その影響で肉体に入りきらずに零れてしまっている印象を受けるわ」

「え?」

 

 思わぬ答えに間抜けな声が出てしまう。

 

「あなたの今の状態は、カップケーキのように、肉体という器からスポンジが外に向かって溢れ出してしまってるのよ。この魂の輝きと強さからして、あなたの魂は人間の器では収まる大きさではないわね。サクヤ、あなたの正体がますます気になるわ」

 

 その言葉を聞いた途端、鋭い目がパチュリーとレミリアから向けられる。

 

「初耳ね、私そんなこと聞いてないんだけど?」

「そ、それはですね……。言い訳させてもらいますと、話すと長くなるので省いていたというかなんといいますか……」

 

 彼女に気圧されて、しどろもどろになってしまったわ。やっぱり吸血鬼は恐ろしい……。

 

「え、ええと。今の話を聞くに、もし八雲さんに今の状態を治してもらう事になると、もしかして魂を削られてしまうのですか?」

 

 レミリアの追求から逃れるように、紫に訊ねると、感心したような声で答えた。

 

「あら、物分かりがいいのね。もしお願いされたらそのつもりだったわよ? ああ、でも安心してね。人格と記憶を最優先で保護するつもりでやるわよ?」

 

 その言葉を聞いて、冷や汗をかく。

 

「記憶と人格を残すって……、それだけ残っても私じゃない別の人間になってるじゃない! そういう大事なことは先に言ってよ!」

「私に怒鳴られても困るわ。そもそも原因不明の理由で入れ替わってしまったのが悪いんじゃないの。命が助かるだけでも有難いと思いなさい?」

 

 悠然と言い放つ紫の言葉に、私は少し頭が冷えて。

 

「あ……ごめんなさい」

「別にいいわよ。それでどうするの?」

「最後にもう1つ質問いいですか? 私の肉体と魂の比率はどのくらいですか?」

「ん~、ちょっと待って頂戴」

 

 彼女は再び手を伸ばし、今度は私の頭に手を乗せて考え込んでいた。私の体の中で何かサワサワとした感覚が生じるけれど、不思議と不快感は無かった。

 

(恐らく、私の事を直接彼女が探っているのね)

 

 5分程たっただろうか、彼女は頭から手を放した

 

「肉体を100だとしたら、あなたの魂は大体1000の強さね。人間でこのレベルまで行った人は見たことないわ」

 

 今とんでもない言葉が聞こえたが、とりあえず置いておくとして、私は聞きたかったことが聞けたので私は心の中でガッツポーズをした。

 

(よし、まさかこの数値が分かるとは思わなかったわ。これなら、あの魔法が使えるかもしれない……! だけどこれにはパチュリーの協力が必須ね、なんとか説得してみないと……!)

 

「八雲さん、私の質問に色々答えてくれてありがとうございました。おかげで1つの可能性が見えてきました」

「可能性? それは興味深いわね。どんなことをするのかしら?」

「魂の圧縮ですよ。この体に自分の魂が収まらないというならそれに合うように縮めれば無問題でしょう?」

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