咲夜とサクヤの入れ替わり物語 作:RtYB9S
「魂の圧縮?」
「何を言っているのかしらこの子は?」
「簡単にいうけど、どうやるつもりなのよ?」
私の提案に全員が懐疑的な声を上げている。
「私の知っている魔法に、霊魂の収縮ができる魔法がありまして。それを応用して自分を対象に使用する事で、この器に収まるように入れてしまえばいいのではないかと思いました」
「そんなこと本当にできるの?」
パチュリーの疑問に私は魔導書を見ながら「30分程時間を頂ければ、その魔法を紙に書き写して見せることができますが……」
「いいわよ。ぜひ見せて頂戴」
「いいのパチェ? こいつが適当な事を言っているだけかもしれないわよ?」
「単純に興味が湧いたのよ。彼女の魔法を見て判断するわ」
「ふぅん?」
許可を頂いたので、私は椅子に座り、パチュリーが用意した白紙を借りてそこにスラスラと書いていく。レミリア、パチュリー、紫の雑談を聞き過ごしつつ、宣言通りに魔法を書き写した。
「書けました! これなんですけれど……」
私は向かいの座席のパチュリーにメモを渡す。彼女は難しい顔でメモを黙読しており、レミリアと紫も覗き込んでいる。
「どう? サクヤの魔法は?」
レミリアの声に、彼女は戸惑いを隠せない表情で話した。
「読めないわ……」
「?」
「サクヤの書いた文字が全く読めないのよ……。これ何語なのかしら?」
「え!? それは本当ですか!? 私の世界では、魔法を勉強する人なら誰でも知っている言語なのですが……」
私の言葉にパチュリーは少し考えた後にこう言った。
「恐らく、これが文化――いえ、世界の違いなのかもしれないわね。貴女はこの本を読めるかしら?」
私は机の上に置かれていた一冊の本を受け取り、中を流し読みする。ところが……。
「全然読めませんね……」
「その文章は此方の世界で魔道書によく使われている言語よ」
「ということは、パチュリーさんの言う通り……」
「そういうことになるわね。でも言葉はちゃんと通じているのは不思議だわ」
私達の会話にレミリアが横やりを入れてきた。
「今はそれよりもサクヤの魔法だ。読めないのなら、サクヤの話が証明できないじゃない。どうするのかしら?」
「その事ですが、もしかしたらこの魔法で解決するかもしれません」
そう言って、私は別の紙を取って手早く書き、パチュリーに渡した。
「私が開発した翻訳魔法です。これで恐らく読めるようになるかと」
「翻訳魔法? なんか嘘くさいわね……」
「試しに唱えてみてください。詠唱は――」
私はその紙に書かれている文字を読み上げてパチュリーに伝えていく。彼女は半信半疑ながらも、一字一句間違えずに発していく。
「――こんなものかしら」
「上出来です!」
パチュリーは改めて最初のメモを手に取り、「どれどれ……? ――凄いわね! 文字がスラスラと頭の中に入っていくわ! どんな仕組みなのかしら?」と目を輝かせる。
「文章を言葉として理解するのではなくイメージとして理解する――と言ったほうが分かりやすいかも知れません」
「なるほどね、よく考え付いたわね」
パチュリーの様子を見たレミリアは、感心しながら「普段物静かなパチェがここまで興奮するなんて珍しい物が見れたわね。――それで、そこには何が書いてあるんだ?」
「要約すると、魂を圧縮して封印をする魔法の原理と手順が書いてあるわね。でもこれ、副作用で意識が飛んでしまうみたいだけれど、どうするつもりなのかしら?」
興味深げな表情の問いかけに、私はパチュリーの隣に近付きながら自信満々に答える。
「その点は問題はありません。私はここと――」
魔法式の改善点を指でなぞりながら、自分の考えを伝えていく。
「――とすればいいと思うのですが、どうでしょう?」
「なるほど、それはいい案ね。私も手伝うわ」
「ありがとうございます」
「なあパチェ。私には何を言ってるのかさっぱりなんだが、本当に大丈夫なのか?」
「ええ、この方法なら八雲紫の手を借りなくてもなんとかなりそうよ。不自然な点は見当たらないし、彼女が元の世界で魔法使いだったのは真実のようね」
「ふ~ん。パチェがそういうのなら私もこの案に賛成しようかしらね。ただし、後で詳しく事情を聞かせてもらうわよ? サクヤ」
「承知いたしました。その折にはしっかりとお話しさせていただきます」
「どうやら話はまとまったようね?」
話の流れを見守っていた八雲紫に、「ええ、私はこの方法を取ろうと思います。折角のご提案を断る形になってすみません」と頭を下げる。
「別に気にする必要は無いわ。――そうね、どうせなら魔法が発動するところまで見ていこうかしら」
彼女は、一人納得した様子で頷いていた。
「早速この魔法の改良に着手しますね。完成した後はパチュリーさんに魔法の発動をお願いしてもいいですか?」
「構わないわよ」
彼女の了承を得た私は、パチュリーと共に改良の作業に取り掛かる。
「なんだか時間が掛かりそうね。完成したら呼んで頂戴」
そう言い残して大図書館を後にするレミリア。八雲紫も「また後で来ますわ」と言って空間の裂け目に消えて行った。
「そういえば、今日はいつものメイド服じゃないのね。珍しいわ」
魔法の書き換え作業中、急に関係ない事を言い出したパチュリー。
「今頃気が付いたんですか」
私は苦笑しながらも、筆を進めていく。
「最初から気づいていたけど。言うタイミングが無かったのよ。……よく似合ってるわよ」
思わぬ人から褒められたので、私は筆を止めて彼女を見てお礼を言う。
「ありがとうございます。僭越ながら、パチュリーさんもいつもとは違う恰好をしてみたらいかがですか? 新鮮な気持ちで日常を過ごせると思いますよ?」
「私は着なれたこの服でいいのよ。一々コーディネートとか考えるの面倒くさいし」
「気持ちは分かりますけど、折角ルックスがいいのですからもっとお洒落したらいいのに、もったいないですね」
理由は分からないけど、咲夜の周りには美女が多い。彼女だって磨けば更に光りそうなものだけれど。
「わ、私の事はいいから、早く魔法を改良するわよ!」
「――それもそうですね。分かりました」
再び作業に没頭していき、約2時間後に完成した。
「できたわ――!」
(私の理論に自信はある。あるけれど、もし失敗してしまった時の事を考えると、他の手立てを考えたほうがいいのかしらね?)
そんな不安が頭をよぎったけど、最終チェックを行ったパチュリーが「……うん。魔法式に問題は無さそうね」とお墨付きを出したので、少しほっとしたわ。
「サクヤ、レミィを呼んできて」
「畏まりました!」
私はレミリアを呼びに大図書館の外に向かっていった。