咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第3話 2日目 咲夜が見た夢

 

 ―― side 咲夜 ――

 

 

 けたたましく鳴る目覚まし時計を止めて起き上がった私は、周囲を見回しながら、自分の体をペタペタと触ってみる。普段通りの私の部屋に、水色のパジャマを着た私。寝る前と何も変わらない。

 今日は奇妙な夢を見た。魔法使いっぽいローブを着た私と瓜二つの少女が、海の見える小部屋で本を読む夢。私ではない“私”の日常を切り取ったような情景だった。

 

(あれは夢だったのかしら……?)

 

 心にしこりが残るような感覚を覚えつつ、私はいつものように身支度を整えていき、お嬢様の寝室に向かっていった。

 

 

 

「お嬢様、朝ですよ」

 

 扉をノックしても、返事は無いわね。

 

「失礼いたします」

 

 私は扉を開けて部屋の中に入り、天蓋付きのベッドで幸せそうに眠るお嬢様の肩を揺すりながら声を掛ける。

 

「お嬢様、もう朝ですよ。お起きいただけますでしょうか」

「ん~後5分……」

「それはよくありません。さあ、起きてください」

 

 お嬢様は寝惚け眼をこすりながら起きだす。その間に私はお嬢様の着替えを用意していた。

 

「早起きは三文の徳と言います。規則正しい生活をしないと、体調を崩しますよ?」

「よりにもよって吸血鬼にそれを言うのか」

「人間も吸血鬼も関係ありません」

「はいはい、咲夜は相変わらず真面目ねえ」

 

 そんな話をしながら、お嬢様の朝支度を手伝う。今日もお嬢様はお美しいですわね。

 

「それでは、これから朝食を作ってまいりますので、失礼いたします」

 

 私はお嬢様に一礼して、時間を止めて厨房に向かって行った。

 

 

 

 いつものようにお嬢様方の朝食を作り、給仕をしていると、スクランブルエッグを召し上がったお嬢様が口を開いた。

 

「今日はこの後博麗神社に出かけるわ」

「かしこまりました。すぐに準備させていただきます」

「お姉さま、霊夢の所に行くの? 私も行きたいわ」

「駄目よ。あんたはお留守番していなさい」

「ちぇっ、つまらないの」

 

 姉妹の会話に参加することなく、パチュリー様は黙々と朝食を摂っている。

 私は時を止めて、お嬢様の外出の準備に取り掛かった。

 

 

 

 支度が終わり、エントランスホールで待っていると、お嬢様が現れた。

 

「準備ができました」

 

 私が差し出した手提げ鞄には、昼食のサンドイッチ、貴重品、コスメグッズ、そして霊夢への手土産が入っているわ。お嬢様は過度な装飾は必要ないと仰るので、簡素な物に留めているのよ。

 受け取ったお嬢様は頷き。

 

「ご苦労様。今日は一人で行くから、咲夜はここに残りなさい」

「かしこまりました」

 

 私は紅色の日傘を手渡し「気をつけて行っていらっしゃいませ」と、お嬢様の姿が見えなくなるまでお辞儀をしてお見送りをした。

 

(さて、仕事に戻りましょうか)

 

 私は今日の段取りを考えながら歩き出した。

 

 

 

 お昼下がりの午後、私が廊下を歩いていると背後からとても聞き覚えのある声がした。

 

「邪魔するぜ~」

 

 振り返ると、箒に乗った魔理沙が得意げに私を見下ろしていて、思わず溜息を吐く。

 

「また来たの?」

「おう、ここにはたくさんの本があるからな」

 

 笑顔で私の横を通り過ぎようとしたが、私は時間を止めてメイド服に仕込んである愛用のナイフを構えて立ち塞がり、時間停止を解除する。

 

「ここは通さないわよ。さっさと帰りなさい」

「やっぱりそう簡単には通してくれないか~、ならやることは分かってるな?」と不敵にニヤリと笑った後、彼女は懐からスペルカードを取り出した。私もそれに合わせてスペルカードを準備する。

 

「さあ、弾幕ごっこのはじまりだぜ!」

 

 魔理沙がそう宣言すると同時に、弾幕ごっこが始まった。

 

 

 

 

「ううっ……」

 

 結果から言うと、私は魔理沙との弾幕ごっこに負けて地面に倒れ伏せていた。私はなんとか起き上がり、廊下の壁に寄りかかる。

 

「また魔理沙に通されちゃった、あの子会うたびに強くなってる気がするわね……」

 

 なんだかとても疲れてしまったわね。壁に頭をつけて天井を見つめていると、いつの間にか目を閉じていた。

 

 

 

 

「咲夜。咲夜!」

 

 誰かが私を呼ぶ声がする。

 

「ん……」

 

 目を開けると、しゃがみこんだお嬢様が私の顔を見ていた。

 

「こんなところで寝ていると風邪ひくわよ?」

「え……?」

 

 私は慌てて立ち上がって窓の外に視線を送ると、空に鮮やかな夕焼けが広がっていた。どうやら私はいつのまにか眠ってしまっていたらしい。

 

「も、申し訳ございません、どうやら眠ってしまっていたようです。お嬢様はいつお帰りになったのでしょうか?」

 

 私が頭を下げると、お嬢様は立ちあがり「ついさっき帰ってきたばかりよ。何回呼んでも来ないから探していたのだけれど、まさか廊下で眠っていたなんてね。驚いたわ」

「申し訳ございません、その……魔理沙との弾幕ごっこに負けた後、壁に寄りかかっていたらいつのまにか眠ってしまっていたみたいで……」

「あら、そうなの。怪我はない?」

「問題ありません」

「良かったわ。咲夜、今日はもう部屋に戻って休みなさい」

「お言葉ですがお嬢様、私はまだ働けます」

「駄目よ。そんな事を言っても空元気なのが目に見えて分かるわよ。きっちり休んで明日から最高のパフォーマンスをして頂戴」

「……承知いたしました」

 

 私の返事に満足したのか、お嬢様は廊下の奥へと立ち去って行った。

 1人残された私はその場で溜息を吐いた。

 

「はぁ……」

 

(お嬢様に心配をかけてしまった。私は従者失格ね……)

 

「……………」

 

 私はしばらくお嬢様が居なくなった廊下の奥を見ながら佇んでいたけれど。

 

(……いつまでもここで悩んでても仕方ないわ。お嬢様の仰る通り、休むことにしましょう)

 

 私は自分の部屋へ向かって足を動かした。

 

 

 

「ふう……」

 

 夜になり、私は今寝る仕度をしながら、今日何度目かの溜息を吐く。

 

(今日は失敗してしまったわ……。明日こそ頑張らないといけないわね。でなければお嬢様に申し訳が立たないわ)

 

 寝巻に着替えた私は、決意を新たにベッドに入って眠りに就いた。

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