咲夜とサクヤの入れ替わり物語 作:RtYB9S
紫が消えて、レミリアと共に昼食を食べた後、再び大図書館に戻って来た私は今後の事を考えていた。
(さて、これからどうしましょうか。さっき私の力の殆どを封印したから私自身が魔法を使うのは絶望的よね……)
だけど私は生粋の魔法使いなので、魔法以外の方法での解決策を知らない。
(う~ん、なんとか生活魔法でもいいから使えないかしら? ちょっと試してみましょう)
生活魔法とは、文字通り生活を便利にする魔法で、代表的な魔法はミニファイアという弱火を出す魔法だ。唱えると人差し指の先に、微弱な炎が発生する効果で、料理する時に非常に便利。両親や家族から教わる人も多く、私も幼い頃にお母さまから教わったわね。
私はミニファイアの魔法を唱えてみたけれど、何も起こらなかった。
(どうして不発に終わってしまったのかしら……。この魔法は魔力が無い人間でも、空気中のマナを利用して行使できるはず。パチュリーの居城たる大図書館に、マナが無いとは思えないわ)
「……クヤ! サクヤ!」
魔理沙に肩を叩かれて、私は初めて名前を呼ばれていることに気付く。
「おっやっと気づいたか。さっきから呼んでいたのに気付かなかったのか?」
「少し考え事してたのよ。それで、何?」
「喉が渇いたからお茶菓子を用意してくれよ」
私はパチュリーに視線を送ると、彼女は頷いていた。
「分かったわ。何か希望はある?」
「なんでもいいぜ」
「パチュリーさんはどうします?」
「お任せするわ」
「かしこまりました」
私は厨房へと向かっていった。
厨房でお茶菓子の用意をして大図書館に戻った私は、席に着いてパチュリーと魔理沙と共に楽しんでいた。
ちなみに私が入れた紅茶について、魔理沙は「咲夜には劣るけど中々うまいぜ」、パチュリーは「まあ悪くないわ。もう少し精進しなさい」と微妙な評価だった。なんか悔しいわ。
「パチュリーさん、質問いいですか?」
「なに?」
「私、この体で魔法を使えるようになってみたいのですが、何かいい手立てはないですか?」
私の質問に彼女は目を見開いた。
「何を言ってるのよ。貴女さっき私に封印をかけられて、能力をほとんど使えない状態なんでしょ?」
「それは分かっているのですが、やっぱり諦められなくて。せめて簡単な魔法だけでも使えたら、私も何か力になれそうなのですが」
「う~ん、でもねぇ」
パチュリーは私の提案を渋っていた。
「何か問題でもあるのですか?」
「今の貴女は魂の体積がぴったり体に収まるように、ポテンシャルを封印した状態でしょ? その状態だともう伸びしろがないから無理だと思うわよ?」
「確かに……。では、パチュリーさんの魔力を私に分けてもらえないでしょうか?」
「……私の魔力を使って魔法を使ってみるって事? でも他人の魔力で魔法を使用するのは結構難しいわよ?」
「一度試させてもらえないでしょうか?」
「おいおい、何の話だ? 私にも分かるように説明してくれ」
話に着いていけてない魔理沙が、不機嫌そうに説明を求めたので、私は魔理沙が来る前に起きた事を要約して話した。
「なるほどなあ、サクヤにそんな秘密があったとはな」
「パチュリーさん、お願いします。一度だけでも構わないので、私に機会をください」
私は改めて彼女に頼み込むと彼女は快く了承した。
「いいわよ。さっき魔理沙に事情を説明してる間、調整しておいたから。それじゃ行くわね」
「はい!」
パチュリーが呪文を唱えると、彼女の頭上に透明なマナの塊がどんどんと膨れ上がっていく。やがてビーチバレー程の大きさになった塊が、私に向かって発射され、私にぶつかった後分散し、全身を覆うように広がっていた。
「とりあえず少な目の魔力でやってみたわ」
「ありがとうございます。ではさっそく使ってみますね。まず小さな炎を出す魔法を使ってみます」
私は先ほど失敗したミニファイアの魔法を改めて使用するために詠唱する。今度は見事に成功し、人差し指の先から、ロウソクのような小さな炎が生まれた。
「成功しました! やはり魔力があれば私の魔法が使えるようですね」
「随分初歩的な魔法ね」
「ほ~、私も昔魔法を覚えたての時によくやってたなあ。懐かしいぜ」
「続いて、今度はテレパスを使ってみます」
「テレパスって、一昨日言ってたあの?」
「はい、そうです。魔力を纏ってる今ならもしかしたら使えるかもしれないので」
私はユウと会話をすべく、自身オリジナルとなるテレパス魔法を使用する。
この魔法は発動すると、どんなに距離が離れていても相手の脳内に声が響いて会話ができる非常に便利な魔法なのだけれど、果たして世界の壁を超える事は出来るのかしら?
私はこめかみに伸ばした人差し指と中指を当てて、少し目線を上に向けながら心の中で呼びかける。
『もしもし、ユウ、聞こえる?』
……返事がないわね。やっぱり駄目なのかしら?
『ユウ、私の声が聞こえる?』
お願い、届いて……! 必死に願い続けたその時だった。
『――もしかして、サクヤなの?』