咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第37話 7日目 side 咲夜 リィンの診察

 地下の魔法陣を使って、王都にあるサクヤの別宅から外に出た私は、前を歩くユウの後ろにピッタリとくっつくように歩いていく。

 大勢の人々が行き交う大通りは、老若男女大勢の人々で賑わっている。しかし何だか視線を感じるのは気のせいかしらね?

 

「目的地は何処なの?」

「小高い丘の上にロンガディア城が見えるでしょ? そのお膝元にアルカディア大聖堂があるわ。もうすぐ着くよ」

 

 大通りをまっすぐ進んでいき、階段を登ると広場になっていた。奥にはゴシック建築様式に似た大きな建物が見えて、多くの人々が中に入っていく。

 

「あれがアルカディア教の総本山、アルカディア大聖堂よ。リィンはあの中にいるから、着いてきて」

 

(なんだか少し緊張するわね)

 

 私達も彼らに続いて中に入ると礼拝堂に繋がっていて、荘厳な空気の中、人々は巨大な女神像に熱心に祈りを捧げていた。

 ユウは入口近くにいた年老いたシスターに声を掛けると、「ユウ様とサクヤ様ですね。お話は伺っております。どうぞ此方へ」と、礼拝堂の奥の扉に案内される。

 その扉の先には一本の廊下と六つの扉があって、ブラザーとシスター達が出入りしていた。彼らの視線を感じつつ奥に進んでいき、突き当りの扉を開ける。

 消毒液の匂いがする部屋の中は、白で統一された内装で、ベッドや多くの薬が保管される棚が置かれている。永遠亭の診察室みたいね。奥にはデスクと椅子があって、一人の女性が座っていた。

 

「いらっしゃい、本当は午前中に診る予定だったのに遅れてごめんなさいね」

「別に気にしてないからいいわよ。リィン」

 

 リィンと呼ばれた彼女は青髪青目の年若い少女で、修道服を身に纏っている。彼女も100年前の仲間なのね。

 

「それで、そこの彼女が例の……?」

「ええ、そうよ。前に話した通りの状態になってるのよ」

「初めまして咲夜です」

「へえ……!」

 

 興味深そうな目で私を見た彼女は「私はリィン・ロンガディア。リィンと呼んでくれて構わないわ。よろしくね」

 

「よろしくお願いします」

 

 お互いに自己紹介を済ませた後、彼女はカーテンを全て閉めた後にとんでもないことを言い出した。

 

「それでは始めますね。まず体の状態を見たいから、服を全部脱いでちょうだい。勿論下着もよ」

「えっ!? いや、でも……」

 

 私が躊躇していると、彼女はさらに言葉を続けた。

 

「これは診察です。この部屋は密室ですし、恥ずかしがる必要はありませんよ」

「うっ……、分かったわよ」

 

 私は観念して服を脱ぎ始める。

 

「あ~……私は外で待ってるね」

 

 ユウは私から目を背け、何処か気恥ずかしそうに部屋を出ていった。

 

「脱ぎ終わりましたよ。――うう、恥ずかしい」

 

 そんなやり取りをしてる間に私は服を脱ぎ終わり、隣の籠に畳んで置く。

 

「それでは触診を開始します。じっとしててくださいね」

 

 私の前に立った彼女は、真剣な表情で両手を伸ばし、私の頭から順に頬、肩、背中、お腹、右腕、左腕、尻、太ももと全身をくまなく触っていき、私を隣のベッドに座らせ、足の裏まで揉んでいく。

 彼女の手は暖かく、触れられた部分がジワジワと温かくなっていた。

 

「うんうん、なるほど。もう一回立ってください」

 

 彼女の指示通りに私は立ち上がる。

 

「次は胸を触るわね」

 

 宣言通り彼女は私の胸に手を当てて、優しく揉みだす。私は恥ずかしさを堪えながらその行為が終わるのをじっと待った。

 

(ううっ、それにしても彼女は揉むのがうまいわね……。なんだか変な気持ちになってきたわ……)

 

 やがて彼女は胸を揉むのを止めて手を放した。

 

「お疲れ様でした。もう服を着てもいいですよ」

 

 リィンはデスクの前に座り、カルテを手早く書いていく。

 

「ふう、やっと終わったのね……」

 

 私は洋服を着てから、丸椅子に座り「それで、今の触診に何の意味があったのよ? 特にむ、胸をしつこく触っていたし……」と訊ねる。

 

「貴女の肉体の状態を確かめていました。精神の交錯が起きた場合、肉体との齟齬が発生する場合があり、その兆候は心臓部に現れやすくなります。ですが特に異常は見当たりませんでした。貴女の精神は完全に馴染んでいるみたいですね」

「なるほどね」

「咲夜。ユウを呼んできてください」

 

 言われた通りに外の廊下で待っていたユウを呼んでくると、リィンの前の床に、小さな魔法陣が出現していた。

 

「咲夜、この魔法陣の上に立ってもらえる?」

 

 私はリィンの指示通りに移動する。

 

「それでは続いて、私の魔法を使って貴女の魂の状態を調べます。魔法抵抗力が高いサクヤの身体に対して、私の魔法の成功率を上げる為にも、なるべく自然体でいてください」

「分かったわ」

 

 一度深呼吸をして、気持ちを落ち着かせていく。

 

「それでは始めますよ」

 

 リィンが詠唱を始めると、足元の魔法陣から透明な粒子が吹き上がり、部屋全体に満ちていく。

 

「綺麗ね……」

 

 ユウはうっとりするように呟き、リィンの詠唱が更に高速になっていく。すると今度は私の真横と頭上に魔法陣が浮かび、そこから光の縄が現れて私の体を縛っていく。

 私は抗議しようとするも、声も出せず。更には自分の体が動かないことに気付く。そんな私の内心に気付いたのか、リィンは一旦詠唱を止めて優しい声で言った。

 

「貴女を傷つけるつもりはありませんよ。窮屈かもしれませんが、もう少し我慢してください」

 

 リィンが再び詠唱を開始すると、魔法陣から出現する縄がさらに増えて、最終的に全身を覆いつくしていった。彼女の言葉を信じて終わるのをひたすら待ち続けていると、やがて私にくっついた縄が離れていき、完全に自由になる頃には魔法陣も消えてた。

 

「これで終了しました。お疲れ様です、咲夜。結果が出るまで時間が掛かりますので、また後で来てもらえますか?」

「どのくらいかかるの?」

「5時間で終わらせます。それまで自由に行動してくれて構いません。外に出る魔法陣は後ろにあるわ」

 

 見ると、確かに部屋の隅のベッドの後ろ側に、サクヤの屋敷と同じ模様の魔法陣が設置されていた。

 

「どうしよっか?」

 

 ユウの問いに私は答える。

 

「折角ですし、王都を観光してみたいわ」

「そうだね。リィン、また後で来るね」

「楽しんでいらっしゃい」

 

 私達は魔法陣に移動して、ワープしていった。

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