咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第40話 8日目 sideサクヤ 朝

 side――サクヤ――8日目

 

 

 

「……ふぅ」

 

 朝日に照らされて、私は目を覚ます。

 

「ん~よく寝たー!」

 

 私はシャキっと起き上がり、体を軽く動かして調子を確かめる。

 

「うん、痛みもほぼないし、大丈夫そうね。今日から仕事に戻ることにしましょう」

 

 私は包帯を解いてメイド服に着替え、棚に飾られているナイフを仕込んで、レミリアを起こすために部屋へ向かった。

 

 

 

 レミリアの部屋の前に着いた私は扉をノックする。

 

「失礼します、咲夜です。入ってもよろしいでしょうか?」

「いいわよ」

 

 許可をもらった私が部屋に入ると、既にいつものドレスに着替えたレミリアの姿があった。

 

「申し訳ありません。どうやら来るのが遅かったようですね」

「ああ、別に気にしなくていいわよ。貴女が休んでいる間、メイド妖精にやらせたんだけど、てんでダメだったからね。だから自分でやるようにしたのよ。それよりも貴女、怪我は大丈夫なの?」

「はい。痛みも殆ど無くなったので、今日からメイド業に復帰させていただきます」

「それは良かったわ。メイド妖精だけでは、この館は回らないからね、昨日だって午後はてんやわんやで大変だったのよ」

「そうですか……。では休んでいた分まで頑張らさせていただきます。ではこれから朝食を作って参りますね」

 

 私はお辞儀をして、部屋を出て行った。

 

 

 

 

「今日は博麗神社に行くわ。サクヤ、貴女も一緒に来なさい」

 

 レミリアの発言は、彼女達の食事を手早く作って提供し、集まって来た彼女達と共に食事を摂っていた時の事だった。

 

「博麗神社とは?」

「幻想郷の東端にある神社よ。そこにいる巫女に貴女を診てもらうわ」

「なるほど……」

 

 神の社の巫女、つまりこの世界の神様に仕えるシスターに会いに行くのかしらね?

 

「何か準備するものはありますか?」

「日傘を忘れないようにしてね、それ以外は貴女に任せるわ。食後に玄関集合ね」

「かしこまりました」

 

 私は食事を終えて後片付けをした後、お嬢様に言われた通りに準備を始めた。

 

 

 

 自分の部屋に戻った私は色々考えた結果、日傘、貴重品、お土産を持って行くことにした。

 トートバッグ片手に玄関へ行くと、既にレミリアが待ち構えていた。

 

「申し訳ございません。待たせてしまいましたか?」

「気にしなくていいわ。それでは行きましょうか?」

「はい」

「一応言っておくけれど、私は吸血鬼で太陽が弱点なのよ。だから私にとってその日傘が生命線なの。しっかりお願いね?」

「任せてください」

 

 私は胸を張って答え、レミリアと歩調を合わせながら玄関の扉を開けて軒下に出る。まだ朝の時間帯だが、外は太陽が照りつけて気温もそれなりに温かかった。

 

「今日もいい天気ですねえ」

「吸血鬼にとっては最悪の天気だけどね」

 

 私の呟きにお嬢様は苦笑しながら答えた。

 

「博麗神社が行き先との事ですが、ここからどうやって向かうおつもりですか?」

「いつもなら飛んでいくところなんだけど、貴女は飛べるの? 咲夜は飛べたんだけど」

「すみません、無理です」

 

 私は即答した。

 元の体なら自身の体内の魔力や周囲の魔力を使って飛ぶことができるが、今の私にはそんなことは到底できそうになかった。咲夜が飛ぶ理屈が分かれば、今の私にも再現できそうだけど、そのイメージが全然思い浮かばないのよね。

 

「そう……なら歩いていくことにしましょうか。行きましょう」

「はい」

 

 私は日傘を差して、レミリアが日に当たらないように気を付けながら歩き出す。

 

「いってらっしゃいませ」

 

 門を出るときに、門番の美鈴は仰々しくお辞儀をしている。お辞儀の後に彼女と目が合ったが、以前のような敵意は感じられない。

 霧がかかった大きな湖の湖畔に沿って、遠くに見える山に向かって歩いていく。

 

「湖畔に建つ洋館とは、中々洒落ていますね」

「あら、分かる? でもこの場所にする時パチェは何故だか猛反対したのよねえ、この良さが分からないのかしら」

「私の推測ですが、湖の傍は湿気が多く、本の劣化が進む事を危惧して反対したのではないでしょうか」

「あ~! それはあるかもしれないわね! だけど何回か日にちを跨いで説得し続けたら、折れてくれたわ」

「恐らく対策を考えて実行に移したので、了承したのだと思います」

「なるほどねえ。パチェも一言話してくれればいいのに」

「そうですねぇ」

 

 私は内心では、このお嬢様の強引さに折れて仕方なく対策を講じたのだと思ったけれど、敢えてそれを言う必要はないでしょう。

 やがて湖を抜けて森に入り、あまり人通りが無い一本道を歩いていく。

 

(ん~空気が気持ちいいわねぇ、たまには森林浴も悪くないわね)

 

 私は普段外には出ずに魔法の研究ばっかしてる生活だから、中々こんな機会が無いわね。

 

「ねえ、貴女」

「はい、なんでしょう?」

「黙っていないで何か話しなさい。退屈だわ」

「畏まりました。う~ん、そうですねえ……」

 

 とは言っても、話のネタは急に思い浮かばない。彼女は魔法使いでは無いし、魔法の話をしても意味が無いでしょう。そうなると……。

 

「それではお嬢様に三つ質問しても宜しいでしょうか?」

 

 私の世界では吸血鬼は殲滅したし、友好的に話せる機会も無かった。吸血鬼という種族を知るのに、良い機会となるでしょう。

 

「いいわ。申しなさい」

 

 幸いなことに彼女は乗り気なので、私は遠慮なく質問をぶつける。

 

「吸血鬼は何故血を吸うんですか?」

「愚問ね。人間が空腹を満たす為に食事を摂るのと同じよ」

「でも、お嬢様は普通の人間と同じ食事を摂っているような?」

「幻想郷のルールで、吸血鬼がむやみに人間を襲う事を禁じられているからよ。その代わりに、八雲紫が定期的に血を供給する約束を結んでいるわ」

「なるほど……」

 

 そんな協定があったのね。道理で、眷属らしき人間がいないわけだわ。

  

「二つ目の質問ですが、吸血鬼にとって血はどんな味なんですか?」 

「そうねぇ、吸血鬼にとっては水みたいなものね。血の質によっても変わるし、一概にどんな味とは言えないわ。不健康な人間の血は不味いし、健康な人間の血は美味しいわね。言えるのはこのくらいかしら」

「最後の質問なのですが、妙齢の女性の処女の血を好むという通説は本当なんですか?」

「事実よ。処女の血は風味とコクが全然違うのよね、あれを味わってしまうと他の血が不味く感じてしまうわ。例えるなら絶品スイーツのような感じよ」

「はあ~そうなんですか」

「ふふ、想像したら飲みたくなってしまったわ」

 

 そう言って期待を込めた目で私をチラリと見たレミリア。

 

「えっ!? 私ですか!?」

「他に誰がいるのよ?」

「えっと…………、帰ってからでお願いします」

 

 私の返事にレミリアは一瞬驚きを見せるものの、すぐに笑顔になった。

 

「ふふん、期待してるわ♪ 帰ってからの楽しみが増えたわね」

 

 レミリアがご機嫌な様子で歩調を速める一方、私は吸血の恐怖に足取りが重くなる。流石に眷属にされたりしないわよね……?

 

「見えてきたわよ」

 

 レミリアが指を指すと、道の先に石段が見える。

 

「ここよ、ここ。この上が博麗神社なのよ」

 

 石段に到着した私は、その先を見上げる。

 ざっと見る限り100段以上の石段があって、その上に鳥居があるのが見えた。

 

「これは登るのが大変そうですねぇ」

「私は飛んでいくから、さっさと昇って来なさい」

 

 レミリアは私から素早く傘を奪い取り、さっさと上へ飛んで行ってしまった。

 

「はぁ……、地道に上るしかないわね」

 

 幸いなことに、肉体の基礎体力は咲夜の方が多いので、それほど苦にはならないでしょう。

 私は一段一段ゆっくりと昇って行った。




次回、霊夢登場。
東方の小説でここまで主人公が出ないのはあまり無いかもしれない
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