咲夜とサクヤの入れ替わり物語 作:RtYB9S
やがて文は他の場所へ取材しに飛び立って行き、昼食の時間になったので、私がお昼を作ることになった。
冷蔵庫に合ったあり合わせの食材で焼き魚定食を提供した所、レミリアは勿論、霊夢にも好評だった。
「へえ~意外だわ。イメージ的に、全然料理できないものだと思ってたわ」
褒めているのか貶しているのか分からない霊夢の評価を聞きつつ食事を摂り、後片付けも済ませた私達は、神社の居間でくつろいでいた。
「ふ~食べた食べた。私の家にも、家事をやってくれるメイドが欲しいわ~」
「何言ってるのよ霊夢。貴女なら後継者の育成とか理由を付ければ、すぐに八雲紫が用意してくれるでしょうに」
「……あ~、やっぱいいや。後継者の育成とか面倒くさいし」
「お~い! 霊夢いるかー?」
レミリアと霊夢の会話を聞きながらダラダラしていると、外から大きな声が聞こえる。箒を片手に持った魔理沙が縁側の前に立っていた。
「なんだ、レミリアとサクヤもいたのか」
「何よ、いちゃ悪い?」
「そんなことは言ってないぜ。それよりも霊夢! 今から遊ぼうぜ!」
「遊ぶ――って何をするつもりよ?」
「もちろん弾幕ごっこだ! さっき新たなスペルカードが完成したんだぜ。付き合ってくれよ!」
「えー、面倒くさいわ。代わりにあんたがやってよ」
霊夢はレミリアに押し付けようとするが。
「私だってイヤよ。今は一番日が高い時間じゃないの。無理よ無理」
「なんだよ、二人共ノリが悪いなあ」
口を尖らせた魔理沙は私に視線を送るけれど。
「私も無理よ? 魔法が使えないのに、弾幕ごっこなんて出来ないわ」
「だよなあ。ハァ……」
魔理沙はガッカリした様子だった。
「……仕方ない、こうなったら私もダラダラすることにしようかな。霊夢、入るぞー」
「んー、好きにしていいわよ」
「おう」
箒を壁に立てかけ、靴を脱いで上がり込む魔理沙に、霊夢は気だるそうに返事をする。一見すると霊夢の態度が悪いように思えるけど、彼女からは負の感情を感じない。この二人はとても気安い関係性なのね。
それから霊夢、魔理沙、レミリアは雑談をしていたようだったが、私は会話に混ざる気になれず、壁に寄りかかりながらぼんやりとしていた。
(あ……)
先ほどの激闘の影響か、はたまたご飯を食べた後のせいか、急激な睡魔が私を襲い、意識が無くなっていった。
―― sideレミリア ――
私が霊夢と魔理沙と雑談をしていた時、何か大きな物が落ちる音が聞こえたわ。何事かと思って音がした方を見たら、サクヤが倒れているじゃない。
慌てて彼女の傍に近寄って確かめてみたけれど、どうやら眠っているだけみたいね。全く、人騒がせな子だわ。
「サクヤ寝ちゃったの?」
「どうやらそのようね」
「こんなワガママお嬢様の相手を毎日してるんじゃ、倒れても仕方がないんじゃないか?」
私は無言で魔理沙を睨みつけるけれど、生意気な態度は崩れないわね。本当に肝が据わった人間だわ。
「お~怖い怖い。それにしても、咲夜が眠っている所なんて初めて見たぜ。いつ行ってもバリバリ働いていたからなあ。これも人格が違うからか?」
「いや、普通は自分の寝てる姿なんて他の人に曝け出さないでしょ」
霊夢は呆れ気味に魔理沙に突っ込みつつ、押入れから毛布を出して、サクヤの身体に被せている。
「感謝するわ、霊夢」
「このくらい、大したことないわよ。慣れない世界に来て色々と疲れているのでしょうし、休ませてあげましょう」
霊夢はサクヤの前に座り込んで、穏やかな表情で眠るサクヤをじっと見つめている。なんだか妬けちゃうわね。
「こういう時って、顔に落書きをするのが定番なんだよなあ」
「やめなさい、サクヤが可哀想でしょ」
「なんだよ、随分サクヤに優しいじゃないか。霊夢は」
「気のせいよ、気のせい。私は誰にだって優しいわよ?」
魔理沙は疑いの目線を向けているけれど、今回ばかりは同意するわね。
「優しいって言うんだったら、私の弾幕ごっこをしたいという願望を叶えてくれよ」
「いいわよ? そろそろ私も運動をしたいなって思ってたところだから。レミリアはどうする?」
「んー私はパスするわ」
他の有象無象ならともかく、日傘で片手が塞がった状態でこの人間達と戦っても、結果は見えているものね。
「分かったわ。それじゃあ魔理沙、始めましょう?」
「おう!」
魔理沙は意気揚々と、霊夢は欠伸をしながら外に出て弾幕ごっこを開始するのだけれど、まあ結果から言ってしまうと、魔理沙はあっさり霊夢に負けてしまったわね。すぐにリベンジマッチを申し込んだけれど、一戦目よりも早く負けてしまったわ。
「クソー! なんで勝てないんだ……」
弾幕ごっこが終わり、縁側に座る魔理沙は頭を悩ませているわね。果たして自分の欠点に気付くのかしら?
見守っていると、霊夢は魔理沙の隣に座って、口を開いたわ。
「魔理沙の新しいスペルカードは素直すぎるのよ。弾道が読みやすいから避けるのも簡単ね。まだ一昨日使ってきたスペルカードの方が難しかったわよ? 現にあの時、あんたの分身にやられたし」
「私も霊夢と同意見ね。以前に私と対戦した時のような華やかさが足りなかったわね」
「一昨日使ったスペルカードは、そこに寝てるサクヤが考案したものだからなあ……。できれば自作のスペルカードで勝ちたいと思ったんだが、中々難しいな」
魔理沙は不貞腐れながらも、目に強い意志が籠っているわね。ふふ、こういう人間は嫌いじゃないわ。霊夢も感心しているみたいだしね。
「へえ~、あれってサクヤが作ったものだったのね。魔理沙らしくないスペルカードだと思っていたけど、合点がいったわ」
「私らしくないって、どういう意味だよ?」
「ん~そうねぇ、魔理沙のスペルが魅せるような弾幕だとしたら、サクヤ考案のスペルカードは無駄が無く効率的な印象を受けたわ。相手の動きを封じて、徹底的に追い詰めるような感じ」
「なるほどな。言われてみればそうかもしれん」
「この弾幕は紫やさとりの系譜ね。こんなスペルカードを作れるのなら、いつかサクヤと弾幕ごっこをしてみたいものね」
「――霊夢! 今度は私も負けないからな! 覚えてろよ!」
霊夢の言葉を聞いた魔理沙は、悔しそうに空を飛んで帰ってしまったわね。
「あれでよかったの?」
「いいのよ。私が欠点を指摘すれば、次はそこを修正して挑んでくる。そのくらい魔理沙は向上心が高いわ」
「ふ~ん」
そうは言うけど、貴女も笑みを隠しきれてないわよ? なんだかんだいいつつも、魔理沙との弾幕ごっこを楽しみにしてるのね。
「さて、レミリアはこれからどうするの? 私は食材がないから、そろそろ買い物に行こうと思っているのよ」
「私はここにいるわ。気兼ねなく行ってきなさい」
「そう? それじゃ留守番よろしくね」
私にそう言い残し、霊夢は買い物袋と財布を持って人里の方へ飛んで行った。
私は部屋の中に入って、サクヤの隣に座り込み顔を覗きこむ。先程の弾幕ごっこで激しい音と光が発生していたのだけれど、相変わらず静かな寝息を立てているわね。
(こうして見ると私の可愛いメイドなのにね。何の因果で入れ替わってしまったのやら……)
「レミリア? 何してるのよ?」
「!」
感傷に浸っていた時、背後から突然声がかけられて、不覚にも一瞬驚きつつも振り返る。なんだ、人形遣いじゃないか。驚かせないで欲しいわ。