咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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前話のタイトルの咲夜とサクヤを間違えてました
申し訳ありません。


第45話 8日目 side咲夜 ミーシャとの行動①

 side 咲夜 ――8日目――

 

 

 

 朝日と共に目が覚めた私は、目をこすりながら時刻を確かめる。

 

(うん、今日もこの時間に起きれたわね。掃除でもしましょう)

 

 私は着替えて、ロビーに出た後、一昨日ユウに教えてもらったお掃除魔法を使って、埃を取っていく。元々あまり汚れていなかった事も相まって、あっというまにロビーの清掃が終わったわ。

 

(本当に魔法って便利ねえ。今までは全く興味なかったけど、帰ったら魔法の習得を目指してみようかしら)

 

 そんな事を思いながら私はロビーを出て、庭に向かっていく。

 

(ユウは何をしているのかしら? 昨日は確か素振りをしていたわよね。ちょっと様子を覗いてみましょう)

 

 しかしユウの姿は何処にもなく、優しい海の風が吹き抜けるばかり。

 

(いないようね)

 

 ついでに私は庭の様子をじっくりと観察することにした。この館の庭は殺風景だけど、かといって全く手入れがされてないというほどでもなく、まるで公園のような状態だった。

 

(庭の面では紅魔館の勝ちね。こうしてみると美鈴のありがたみがよく分かるわ)

 

 ひとしきり眺めた私は、館の内部に戻ることにした。

 

 

 

 館の中に戻った私は、ユウの部屋をノックしたけれど、返事は無かった。もしかして不在なのかしら?

 

(こんな朝から何処へ行ったのかしら?)

 

 思いを巡らしていると、彼女が昨日ミーシャに会いに行くと話していた事を思い出す。

 

(もしかしてまだ帰ってきてないの? 外泊するならせめて一言伝えてくれればいいのに) 

 

 仕方なく一人で朝食を食べて、後片付けを済ませた頃、ロビーの方から物音が聞こえてきた。やっと帰って来たのね。お出迎えにいくと、笑顔のミーシャにおぶられたユウの姿があった。

 

「あ、サクヤだ! おっはよー!」

「おはよう。ユウの元気がないみたいだけど何があったの?」

 

 彼女の顔には明らかに生気が無いし、なんだかお酒臭いわ。

 

「昨晩ユウが私の家に訪ねてきたんだけどさ、その時ちょうどお酒飲んでた所だったからユウも誘って朝まで一緒に飲み明かしたんだよね! 楽しかったよ!」

「ミーシャに捕まったのが運の尽きだった……。行くんじゃなかったわ……」

 

 元気溌剌なミーシャに対し、ユウは今にも死にそうな表情だった。

 

「ちょっとユウ、元気なさすぎ! 日付が変わるくらいの時間に酔いつぶれてたくせに、まだ回復しないの?」

「ミーシャがおかしいよ……。普通の人は一升瓶を一気飲みなんて出来ないって……」

 

 どうやらミーシャは、見た目にそぐわずかなりの酒豪のようね。萃香を思い出すわ。

 

「ねえ、ユウが辛そうだから寝かせてあげたほうがいいのでは?」

「そうだった! ユウ、部屋に入るわよ?」

「うん……」

 

 ミーシャは階段を上ってユウの部屋に向かっていく。私は厨房に向かい、コップ一杯の水を持ってユウに手渡す。彼女は感謝しながら水を飲んだ後、ベッドに横になり、寝息を立て始めたので、すぐに部屋を退散する。この様子だと今日は動けなさそうね。

 

「ねえ、咲夜は何してたの?」

「ユウが帰ってこないから心配してたところだったのよ。そこに貴女達が帰って来たわ」

「へえ、今日暇なんだ? それならせっかくだし、私とどっか行かない? ちょうど私も仕事が休みなんだ」

「うん、いいわよ。私もちょうど暇してたところだったしね」

「よーし決定! それじゃさっそく行きましょ! 目的地は王都だよ!」

「分かったわ。準備してくるわね」

 

 私は一度部屋に戻り、机の中に入っていた財布を収納魔法の中に入れる。部屋の掃除をしてた時に偶然見つけたもので、今までは手付かずだったけれど、お出かけするのなら使う可能性がありますし、持っていきましょう。後で何かしらの方法で返すわ。

 部屋の外で待っていたミーシャと共に地下へ向かい、転移魔法陣を介して王都まで飛んで行った。

 

 

 

「それでどこへ行くの?」

 

 現在、私は王都の大通りを歩いている。今日も王都は活気に満ちていて、大勢の人々でごった返している。

 

「今日は咲夜の希望に合わせるよ。何処か行きたい場所はある?」

「それは、この町の中でって事?」

「そうだね。町の外にはモンスターがうろついてるし、私の実力なら大抵の敵は蹴散らせるけど、万が一の事があったら大変だからね。できれば安全圏にいて欲しいな?」

「そうねぇ……。強いて言うなら、武器屋とお茶屋に興味があるわ」

 

 前者については、丸腰で歩くのが慣れないという理由が大きい。この体がいくら魔法を使えると言っても、使い慣れた得物の方がいいわ。後者は単純に私の趣味ね。本当は釣りもやってみたいところだけど、この世界ってアウトドアをするにも武装しないといけない雰囲気みたいですし、今の私にそんな心の余裕が無いのよね。

 

「武器屋って、なんか女の子っぽくないね」

「うるさいわね、余計なお世話よ」

「ごめんごめん、言い過ぎたよ。ちゃんと責任もって案内するから機嫌を直してよ。ね?」

「……案内お願いね」

「任せて! それじゃまずは武器屋に行こうか! 咲夜が使ってる武器って何?」

「ナイフよ」

「なんか意外だね? てっきり杖とか棒だと思ったんだけど」

「私はナイフ使いだからね、魔法は元の体では使えなかったのよ」

「そうだったね。了解、こっちについてきて!」

 

 私は先を歩くミーシャの後をついていった。

 

 

 

「まず武器屋はここね。私もここをよく利用してるんだ!」

「へえ~そうなの」

 

 私が案内されたのは、大通りから一本外れた路地の途中にある一軒家。剣が描かれた看板が無ければ、普通の民家にしか見えないわね。

 私はミーシャの後に続くように扉を開けて店の中に入って行く。手狭な店内には、短剣や片手剣が木製の棚にズラリと並び、壁には金属製の盾が飾られている。客は私達だけしかいないのね。

 奥のカウンターの奥には、口髭を蓄えた作業着姿の中年男性が鍛冶を行っていて、金属を打ち付ける音が響く。この店の店主なのかしらね? 

 

「この店はね、主に短剣やショートソードを取り扱っている店なのよ。きっと咲夜にも合う武器があるんじゃないかな」

「早速見てみるわ」

 

 私は短剣が飾ってある棚に行き、そこに飾ってある短剣を1つ1つ持って感触を確かめた。

 真っ直ぐ伸びた刀身のスタンダードなタイプの物や、三日月状にまがっている物、ジグザグな形の物等、個性的な形の短剣が多いわね。

 私はジグザグの形の短剣を手に取り、隣で一緒に見ているミーシャに訊ねる。

 

「このジグザグの形には何か意味があるのかしら?」

「なんかねー、魔法の伝導率が上がって魔法の威力が上がるってサクヤが話していたよ。他にもね、杖よりは威力が下がるけど短剣だから持ち運びがしやすいのが利点とも言ってたよ」 

「あら、そうなの。なら1本購入しましょう」

「はい、これ。買い物籠だよ」

「ありがとう」

 

 私はミーシャからもらった籠を片手にぶら下げて、そこに短剣を入れて買い物を続ける。店内を歩き回りながら、自分が使っていたナイフと同じ形状で、しっくりとくる短剣を3本籠に入れて、会計を済ませようとする。私に合わせるようにミーシャも買い物を終えたようで、カウンターの前に歩いてきた。 

 

「私も選び終わったよ。すいませーん!! 会計お願いしまーす!!」

 

 大声で奥にいる店主に呼び掛けると、鍛冶をしていた店主が手を止め、此方にのそのそとやってきた。強面で威圧感がある店主は、ミーシャの顔を見るなり、破顔する。

 

「毎度あり! おや、ミーシャちゃんじゃないか? 今日は友達と一緒なのかい?」

「うん、オススメの店を聞かれたからここに連れてきたのよ」

「ほう、そうかそうか! それじゃおまけしちゃおうかな」

「本当に? ありがとー!」

「その代わりに、今後もご贔屓にしてくれよ?」

「もっちろん! ほら、咲夜も!」

「え、ええ。店主さん、ありがとうございます」

 

 ミーシャに急かされて頭を下げると、店主の男性は目を細めながら「おやおや、礼儀正しいお嬢ちゃんだね。こんな店やってると、荒っぽい性格の人が多いから君みたいなお嬢ちゃんは貴重だよ」と嬉しそうに語る。

「そ、そうですか」

 

 何と言えばいいのか思いつかなかったので、返事が曖昧になってしまった。

 店主は私達がカウンターの上に置いた籠から、選んだ武器を取り出して、勘定を始める。

 

「ふむふむ、合計で3000ゴールドだよ」

「そういえば咲夜、お金持ってきてるの?」

「大丈夫よ。これでいいのよね?」

 

 私は収納された異空間から財布を出し、中から金貨を3枚取り出してレジのカウンターに置く。店主は驚いた表情で言った。

 

「おお! 大金貨なんてかなり久々に見たぜ。しかも3枚とは、お嬢ちゃんは大貴族様だったのか! 参ったなあ、おまけしすぎちゃったかな?」

「あのねえ、咲夜。大金貨1枚で100万ゴールドの価値があるのよ? 3000ゴールドの買い物に300万ゴールド出してどうするのよ?」

 

 ミーシャにも呆れながらツッコまれてしまった。

 

「そうだったの!? ごめんなさい、知らなかったわ」

 

 この財布の中には、少なく見つもっても100枚以上あるのだけれど……。

 

「まあちゃんと教えなかった私も悪いから、気にしないで。おじさん、替わりにこれでお願いね?」

 

 ミーシャはカウンターに置かれた大金貨を私に渡して、銀貨を3枚出した。店主は豪快に笑いながら受け取った。

 

「毎度あり! 家の金庫をひっくり返しても御釣りが返せなかったから助かったぜ! はっはっはっ!」

 

 その後ミーシャの分の会計も済ませ、私達は商品を収納して武器屋を後にした。

 

 

 

 店を出た私は、ミーシャにレクチャーを受けていた。

 

「いい、咲夜? 今回のお店は大丈夫だったけど、他の大衆向けの店で大金貨なんか出したら、迷惑がられるし、最悪の場合襲われることだってあるんだから、絶対駄目だよ?」

「分かったわ」

「お金の価値を教えておくね」

 

 彼女は懐からサイフを出して、私に実物を見せながら語った。

 

「まずこの石で出来た硬貨、これは石貨と言われて一番価値が低いものね。1枚1Gの価値があるよ」

 

 滑らかな円形の石に長方形のような刻印が刻まれ、中心にはドーナツのように丸い穴が空いている。大勢の人の手に渡った影響なのか、結構損傷が激しいように思えるわ。

 

「次にこれ、名前は鉄貨。この国では最も一般的な通貨よ。1枚=10Gだね」

 

 鈍い銀色の光沢がある円形の鉄に、これまた同じく長方形の刻印が刻まれていて、此方も丸い穴が空いている。

 

「続いてこれは銅貨、かなり流通している硬貨ね。1枚=100Gだよ」

 

 黒みがかった光沢のある赤色の円形に、この土地の言語で銅貨と表面に刻まれていて、中心には正方形の穴が空いている。

 

「此方は銀貨。貴族にとってはありふれているけれど、平民にとっては高額な取引をする時に使う硬貨ね。1枚で1000Gの価値があるんだ」

 

 明るい銀色の光沢がある円形に、同じ言語で銀貨と表面に刻まれていて、穴が開いていない代わりに、硬貨の裏側には交差した剣の紋章が刻印されている。ミーシャに訊ねてみたところ、これはロンガディア王家の紋章とのことらしいわ。

 

「そして金貨。平民は滅多にお目にかかれない貴重な硬貨よ。主に貴族や商人が取引で使用するもので、1枚で1万Gの価値が保証されているよ」

 

 眩い金色の円形の表面には金貨、裏側には同じく交差した剣の紋章が刻印されている。サクヤの屋敷にはこれが部屋一杯にあったのよね。

 

「最後にこの大金貨。貴族でさえもめったに使用しない稀少な硬貨で、一般市民にとっては高嶺の華。これ1枚で50年は暮らせるわ。価値はなんと1枚で100万G!」

 

 金貨と比較すると、大金貨は一回りサイズが大きく、表面には大金貨と書かれた刻印、裏側には交差した剣の紋章と、六芒星の魔法陣が刻印されている。こうしてじっくり見ると、この国の造幣技術はかなりのものね。外の世界に引けを取らないわ。

 私はメモを取りながら彼女の話を聞いて、浮かんだ感想は。

 

「サクヤの財布には大金貨が100枚以上入ってたわよ?」

「あぁ~、まあサクヤの実家は大貴族だし、本人も魔王の討伐とか魔法の開発でかなりの報奨金を稼いでるからねぇ。不思議じゃないさ」

 

(やっぱりサクヤってお金持ちなのね)

 

「大金貨のままだと使えないから両替してあげるわ。1枚もらえる?」

 

 私がミーシャに1枚渡すと、背後の何もない空間に右手を突っ込み、大きな麻袋を出す。何をするのかと思いながら様子を見守っていると、彼女はもう片方の手で今度は空っぽの麻袋を出し、私に手渡した。

 

「その袋を開けて持っててくれる?」

 

 言われた通りにすると、彼女は大きい麻袋から溢れんばかりの硬貨を手づかみして、確認しながら私の麻袋に入れていく。しばらくその作業を見守っているとやがて手は止まり、袋を出すときと同じようにしまった。

 

「はい、これで両替終わり。中に金貨99枚、銀貨~鉄貨をそれぞれ9枚、石貨を10枚入れておいたわ。一応確認しておいて?」

 

 中身を確認すると、確かにその通りに入っていた。

 

「さっきの補足だけど、なるべく大きな硬貨で買い物しないほうがいいわよ? 目立つと厄介な輩に絡まれるからね」

「分かったわ。色々教えてくれてありがとう」

 

 私は麻袋と大金貨しか入っていない財布を収納魔法に仕舞う。

 

「……それにしても重いわね。私は魔法があるからいいけど、こんなにジャラジャラ硬貨があると持ち運びも大変そうだわ」

「ユウのいた世界では、紙で出来た通貨というものがあって、それで主に取引していたらしいね。まさか紙で商品の売買を行うなんて、初めて聞いたときは驚いたものよ。……って、そういえば咲夜も、日本から来たから知ってるんだっけ」

「ええ」

「きっと日本って国は相当高度な国なんだろうね。いずれ行ってみたいなぁ」

「その時が来たら案内するわよ」

「やった! 楽しみが増えたなぁ! よ~し、それじゃ次の店に行こっか!」

 

 私は頷き、意気揚々と歩くミーシャの後を追っていく。

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