咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第46話 8日目 side咲夜 ミーシャとの行動②

「いや~結構買い物したねえ」

 

 私とミーシャは今、王都の東通りを北に向かって歩いている。

 ミーシャに連れられて向かった店は、大通り沿いにあるこじんまりとした店で、ズラリと並ぶガラス瓶の中に、茶葉が山盛りに入っていた。

 私がよく淹れている品種の茶葉もあれば、聞いたこともない品種もあり、とても種類が豊富でついつい買い過ぎてしまったわ。お昼のステーキも美味しかったし、申し分無いわね。

 

「それに咲夜があんなにお茶に詳しいなんてびっくりだよ! さっすが現役のメイドさんだね! 今度私にもお茶淹れてほしいなぁ?」

「ええ、いいわよ」

「やった! 楽しみだな~♪」

 

 何を買えばいいか迷っているミーシャに、私がお店で色々オススメを教えたのが良かったのかしらね。とてもご機嫌だわ。

 

「午後はどうするの?」

「私のオススメのお店があるんだけど、行かない?」

「……お酒は飲まないわよ?」

 

 念のために釘を刺したけど、彼女はけらけらと笑うばかりね。

 

「いやいや、2日連続で大量には飲まないよー、あのね、洋服屋を見た後、スイーツショップに行って、その後は――まだ考えてないや」

「構わないわ」

 

 午後の行動が決まり、王都の東通りを北に向かっていくと、壁に覆われた一画が見えてくる。入口には武装した強面の番兵が立ち、道行く人々を睨みつけているように思える。

 ミーシャは番兵の前までスタスタ歩いていくと、一枚の証書を見せる。強面の番兵は驚愕の表情を浮かべながら道を開け、私とミーシャに深々とお辞儀をした。

 

「何を見せたの?」

「私の身分証だよ! ここは貴族街と呼ばれる一画だからね、ある程度身分の保証が無いと入れないんだ」

 

 確かに周りを見てみると、広い庭付きの華美な住宅があちこちに建っていて、壁の外とは明らかに質が違うわ。道を歩くまばらな人々や、馬車に乗る人々も、上質なタキシードやドレスを着ているし、高級そうな雰囲気を感じるわね。軽装の私達がこのエリアでは浮いてしまっているわね。

 

「じゃじゃーん、私のおすすめはここです!」

 

 しばらく道沿いに歩いていき、ミーシャが指さした先には、外装がオシャレで、他の建物に比べるとかなり異彩を放っている店だった。入口にはタキシードを着た男性が立っているし、明らかに普通の店では無さそうね。

 

(これ本当に洋服屋なの?)

 

 そんな疑念を抱くものの、ミーシャが扉のそばで手招きをして呼んでいたので、私もそれに続くように入って行った。

 店内はシャンデリアに照らされ、まるでパーティー会場のように赤いカーテンで覆われている。上等な生地のワンピースや、チュニックドレス等、フォーマルな場所に着ていくような服が飾られている。

 他にも色々な種類の服がハンガーラックに掛けられているようだけれど、店内にはお客が全く居なくて、見渡す限り店員の姿も見当たらなかった。

 

「咲夜はどんな服が好みなの?」

「そう言われてもねえ、私は小さいころからずっとメイドをやってるから、メイド服くらいしか着る機会が無いわ」

 

 私の答えに彼女は残念そうな表情を浮かべた。

 

「え~? もったいないよ! ユウの話だと、元の世界の咲夜は、今のサクヤそっくりなんでしょ? とっても綺麗なんだから、お洒落を楽しまなきゃ損だよ」

「同じ事をユウに言われたわ。そんなにもったいないのかしら?」

「そうだよ! ちなみに咲夜の着ているメイド服ってどんな感じのデザインなの?」

 

 私は詳細を伝えると、彼女は何度か頷いた後、「よ~し、分かった! 私が咲夜に似合いそうな服を探してきてあげる! ちょっとそこで待ってて!」と、店の奥に駆けていった。

 一人取り残されてしまった私は、とりあえず近くに展示されているドレスから見ていくことにした。

 

(この黒いドレスはお嬢様に似合いそうだわ。サイズは……ダメね。これだとブカブカになっちゃう)

 

 お嬢様が着た場合を考えながら観ていると、遠くから声がした。

 

「咲夜ーー!! ちょっとこっち来て~! 似合いそうなのが見つかった~!」

 

(……いくら周りに客がいないとはいえ、こういうフォーマルな店で叫んだりして大丈夫なのかしら?)

 

 そんなことを思いつつも、私は奥に歩いていく。

 

「どうよこれ!?」

 

 興奮気味のミーシャが見せるハンガーラックに掛けられた4着の衣装を冷静に観察する。

 まず1着目は、桃色のチェック柄のショートカーディガンと、深紅色のフリル付きのワンピース、黒色のレース付きニーソックスの組み合わせ。暖色系で固めてあるのね。

 他に見ると色合いが黒で統一されたゴスロリ服に、肩と胸の露出が多い白を基調にしたオフショルダー服とベージュ色のミニスカート、奇術師を思わせるような黒いタキシード。何より驚いたのが、紅魔館とほぼ同じメイド服がある事。違うのは、蝶ネクタイになっているところね。殆ど色物系の衣装なのは気のせいかしら?

 

「ねね、是非試着して見せてよ!」

「分かったわ」

 

 私は一番最初に目に付いた衣装を手に取って試着室に入り、着替えてからカーテンを開く。

 

「どうかしら?」

「わぁ、素敵! とっても似合っているよ咲夜!」

「選んでくれてありがとう。このコーディネートを購入するわ」

 

 すぐに購入が決定し、次はタキシードを手に取って試着室に戻り、手早く着替えてからカーテンを開ける。

 

「かっこいい! 似合ってるわよ、咲夜!」

「そういえば、私の部屋のロッカーにも、美鈴から貰ったタキシードがあったわね。結局着なかったけど」

「帰ったらその服を着てお披露目してみるべきよ! 絶対似合うから!」

「ふふっありがと」

 

 私はこの服も購入することにした。

 

「次はこれ! 着てみて!」

「これ……? うーん、分かったわ」

 

 衣装を受け取った私は再びカーテンを閉める。オフショルダー服は結構肌の露出が多くて、少し躊躇いがあったけれど、ミーシャの勢いに負けてこの服に着替えて、カーテンを開いた。

 

「ど、どうかしら……ちょっと恥ずかしいけど」

「セクシーでいいよ! これを着れば男達もメロメロになりそうだし、勝負服になっていいかも!?」

「私は今の所あまり興味がないわ。お嬢様に仕える日々がとても充実してるし」

「でもでも、もしかしたら必要になる時が来るかもだし、持っておいて損は無いんじゃないの?」

「いやいや! そんな機会絶対ないから! これは要らないわよ!」

「咲夜がそう言うのなら、仕方ないね? じゃあ、次はメイド服を着てみてよ! 咲夜の話を参考に選んでみたんだ」

 

 再びメイド服をミーシャから受け取ってカーテンを閉め、紅魔館とほぼ同じデザインのメイド服に着替えて見せると、ミーシャは目を丸くしていた。

 

「なんか、今までの服とはオーラが違うね。まるで長年着なれているかのような……」

「そうね。私にとっては毎日着ている仕事服だから」

「じゃあその服は要らないかな?」

「いえ、買う事にするわ。安心感があるし」

 

 三着目の購入も決定し、最後に残ったのはゴスロリ服だった。

 

「これを見るとさとりを思い出すわね……」

「さとり? 誰それ?」

「説明が難しいけど、これに似た服を着た小学生ぐらいの女の子が私の知り合いにいたのよ」

「ふーん」

「それじゃ着替えてくるわね」

 

 私は再度試着室に入ってこれを着たけれど……鏡に映った自分の姿を見て、私は恥ずかしい気持ちでいっぱいになっていた。

 

(これは予想以上ね……)

 

「まだー?」

 

 ミーシャに催促され、私は意を決してカーテンを開けて外に出た。

 

「ど、どうかしら?」

 

 私の言葉に、ミーシャは一瞬遅れてこう答えた。

 

「すっごくいいよ! 一瞬見惚れちゃったわ! とっても可愛い!」

「そ、そう? ありがと。ならこれも買うわ」

 

 なんだか照れ臭いわね。

 それから私は、一番最初に試着した衣装に着替え、タキシード、メイド服、ゴスロリ服を持って会計に向かう。直前にミーシャが『ちょっと待ってて』と言って奥に引っ込んでいき、10分後に両手いっぱいに服を抱えて持ってきたのには驚いたわ。

 会計が2人合わせて金貨20枚を超えてしまい、少し引け目を感じたけれど、ミーシャはそのくらい問題ないよと太鼓判を押すので、遠慮なく購入することにした。

 会計を済ませた後、私達は収納魔法を用いて、購入した服とここまで着ていた服をしまい、店の外に出ていった。

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