咲夜とサクヤの入れ替わり物語 作:RtYB9S
「たっだいまー!」
「ミーシャの家じゃないでしょ」
転移魔法陣で屋敷の地下室に着いて早々、的外れな事を言うミーシャにツッコミを入れつつ、私達は階段を登っていく。
洋服屋で買い物をした後、喫茶店でコーヒーとパンケーキを楽しみながらお喋りしているうちに、あっという間に夕暮れ時になり、自宅に帰って来たわ。いいリフレッシュになったわね。
「ユウいないね?」
ミーシャの言うとおり、ロビーには誰もいなかった。
「もしかして出かけているのかな? ちょっと部屋を見て来るね!」
「私も行くわよ」
階段を駆け登るミーシャに続いて私もユウの部屋に向かっていく。
「ユウいるー?」
ミーシャが扉をノックすると、「いるよ~……」と弱弱しい声がドア越しに届く。
異変を察したミーシャが「ちょっと入るね」と言って扉を開くと、青ざめた顔でベッドに仰向けになるユウの姿があった。
「二人とも、お帰り。いつ、帰って来たの?」
「ついさっきだよ。もしかして、まだ体調が悪いの?」
「うん……。今日はずっと寝てたわ……」
「そんなに酷かったなんて……! 私、リィンを呼んでくるね!」
ミーシャが収納魔法から出した一粒の種を、ユウのベッドの隣の床に投げると、即席の魔法陣が出現。ミーシャは魔法陣の中に飛び込むと、閃光と共に瞬時に姿が消えてしまった。地下の魔法陣と同じ模様だし、恐らく携帯型の転移魔法陣ね。
残った私はユウを楽な体勢にして、洋服を着崩して呼吸をしやすいようにする。応急処置だけでもした方がいいわよね。
「貴女がそこまで苦しんでいたなんて……遊びに行っている場合では無かったわね。ごめんなさい」
「謝らなくて、いいよ。気にしてないからさ」
ユウは弱弱しい笑みを浮かべているけれど、私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。せめてはっきり恨み言をぶつけてくれればいいのに、かなり気を遣ってもらっているわね。
そんなことを思っていると、魔法陣が再び閃光を放ち、光が収まる頃にはリィンとミーシャがそこに立っていた。
「ユウが危険な状態だと聞いて来ました! とりあえず診せてください!」
リィンは息も絶え絶えで、髪も乱れており、急いで来たという感じをたっぷり出している。私は彼女の邪魔にならないように、ベッドから少し離れていく。そしてリィンは、診察した後結論づける。
「お酒を飲み過ぎたせいでこんな状態になってしまっているんですね。あまりお酒が強くないのにこんな状態になるなんて、ユウらしくありません」
「うう、面目ないです」
「とにかく、今から治療を始めます」
リィンがユウのお腹に手をかざすと、彼女の体の下に魔法陣が出現。リィンが呪文を唱えると、ユウの顔色はみるみるうちに良くなっていく。やがて呪文の詠唱が終わると同時に魔法陣は消滅し、私たちの方を振り向いてこう言った。
「もう大丈夫ですよ。体内に残っていたアルコールは全部分解しました」
「良かったぁ~」
「私もホッとしましたわ」
「ところで、どうしてこんな状態になったのですか? お二人は何か原因を知っているのでしょうか?」
リィンが私達に訊ねると、先ほどまで安堵の表情を浮かべていたミーシャが、とても申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめんなさい! 私が悪いの! 昨日の夜から今朝にかけてユウと飲み明かしていたんだ……」
「ミーシャ、貴女の飲酒量は尋常じゃないんですよ? 自分と同じペースを相手に要求してはいけません。今日みたいな事がもう起きないように、しっかりと反省してくださいね?」
「うう、そうします。ごめんなさい」
青筋を立てながら説教を行うリィンは、丁寧な口調とは裏腹に凄みを感じ、当事者でない私でさえも、恐ろしさを感じるわね。
「謝る相手が違いますよ?」
「ユウ~~! ごめんねぇ~~!!」
ミーシャはユウに飛びつき、泣きながら謝った。
「うん、いいよ。だけど、もう2度と潰れるまで呑ませないでね?」
「うん、うん……! 本当に、ごめんねぇぇ!」
泣き ながら必死に謝っているミーシャに、ユウは優しい声でこう答えていた。
「ユウは優しいですね。一歩間違えたら死ぬ所だったのですから、もっと怒ってもいいと思いますが?」
「ミーシャは深く反省しているし、リィンのおかげで元気になったから、気にしてないわ」
そう答えるユウは、晴れやかな表情だった。
「全く貴女という人は……、まあユウがそう言うのなら、私もこれ以上は言いません」
「ほらほら、ミーシャもいい加減に泣き止んで。もう怒ってないよ」
「……うん」
ユウから離れたミーシャは目を真っ赤にしていて、とても反省しているようだった。
「さて、ユウが元気になった所で、今日私に下った神託をお伝えします」