咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第50話 9日目 sideサクヤ 魔理沙の来訪

「――だから、弾幕ごっこってとても面白そうだと思うのよね」

「異世界から来た人にもそう見えるのね。確かに私も初めて知った時はいい案だと思ったもの」

 

 アリスとの雑談中、話題は弾幕ごっこに変わっていた。

 

「私もやってみたいわ~。最近魔法を使ってないから、欲求不満なのよ」

「なんだか相当不満がたまっているみたいね?」

「それはそうよ。私は魔法の研究と開発が生き甲斐だったのに、今はそれができなくなっちゃったんだもの。少し堪えるわ」

「私も魔法を覚えたての頃はそんな感じだったわねえ。簡単な魔法が使えただけで大はしゃぎしてた記憶があるわ。懐かしいわねえ。イタズラとかしてよくお母様に怒られてたわ」

「アリスはきっとやんちゃな子供時代だったんでしょうね」

 

 私はアリスの姿をじっくりと観察する。

 

「な、何よ?」

「アリスの子供時代を想像してたのよ。きっとお人形さんみたいで可愛かったんでしょうね」

 

 とその時、突然テーブルの上に1枚の写真が落ちてきた。

 

「何かしらこれ?」

 

 私はそれを拾い上げる。

 

「あっ! それは!」

 

 アリスが私の手にある写真をひったくろうとしたが、私はその直前に体の向きを変え、手が届かない位置まで持ってきてその写真を見た。

 その写真には、満面の笑みを浮かべた小さいアリスの姿が映っていた。

 

「これ、アリスの子供時代の写真? すんごく可愛い~! この愛らしさは反則よ」

「うう、お母さまの馬鹿」

 

 アリスは顔を真っ赤にしてぼそっと呟いた。

 私はじっくりと写真を見ていたかったが、後ろから飛んできた人形に写真をひったくられてしまった。

 

「も、もういいでしょ!? これは返してもらうわよ!」 

「もっと見ていたかったのになあ。――それにしてもこの写真どこから出てきたのかしら? なんだか突然現れたよね?」

「気にしなくていいわよ。うん。気にしないでね?」

 

 真剣な表情で念押しするアリスに、私はそれ以上追及するのはやめた。

 

 

 

 話題はアリスの目標の話に転換する。

 

「私はね、完全な自立人形の完成を目指して研究してるのよ。私がこうやって操らなくても、全自動で色々こなせる完全な人形をね」

 

 アリスは人形をフラフラ動かしながら言った。

 

「魔法式を人形に組み込めば自動で動いてくれそうなものだけど」

「それだと一定の動きしかできないでしょ? 私が目指すのは、まるで人間のように自分で考えて行動する人形なのよ」

「なるほどね~完成までどのくらいかかりそう?」

「まだまだ終わりが見えないけど、10年――いえ、100年掛けてでも成し遂げるつもりよ!」

 

 アリスは自信満々に誇らしげに言った。

 

「完成した時は、私も絶対に見に行くわ。頑張ってね!」

「ええ!」

「邪魔するぜー!」

 

 その時、扉をバンと思い切り開けて現れたのは、箒を片手に持った魔理沙だった。

 彼女はキョロキョロと辺りを見渡して私たちの存在に気付くと、此方に向かって歩いてきて、そのまま私達に声を掛けた。

 

「おお、アリスとサクヤじゃないか。何やってるんだ?」

「相変わらず騒がしいわねえ……サクヤとお喋りしてたところよ」

「なんだか魔理沙とは毎日会っている気がするわ。暇なの?」

「うるせー。本を借りに来たついでに、お前の様子を見に来てるだけだ。パチュリーはいないのか?」

「パチュリー様は、午後まで自室に籠っているみたいよ」

「ほ~そうかそうか。なら今がチャンスだな。ちゃっちゃとやっちゃおう」

「待ちなさい」

 

 奥へ行こうとする魔理沙を私は呼び止める。

 

「一応確認だけど、返却期限を守って返してくれるんでしょうね?」

「死ぬまで借りていくだけだぜ。私が死んでから勝手に取り立ててくれ」

「それなら悪いけど利用はお断りよ。お引き取り願うわ」

「なんでサクヤがそんな必死になってるんだ? お前はここのメイドじゃないだろ?」

「パチュリーさんから頼まれていますし、私の気持ちとしても、死んでから返すというような人には貸したくないので」

「へぇ。でも今のサクヤが私を止められるかな?」

 

 私を見下すようにニヤニヤしている魔理沙に、ナイフの切っ先を向ける。

 

「確かに今の私は魔法が使えないけれど、戦いの経験なら誰にも負けないつもりよ」

 

 私の言葉を聞いた魔理沙は、不敵な笑みを浮かべて言った。

 

「面白い! なら勝負だ!」

「ちょ、ちょっと待って! サクヤ、大丈夫なの? だって今のあなたは魔法が使えないんでしょ?」

 

 勝負が始まろうかと言うところでアリスが私達のところに割って入った。

 

「それでもやらなきゃならない事があるのよ。大丈夫。弾幕ごっこなら多分死にはしないわ」

「なんだ、アリスもサクヤの事情を知っていたのか。でも私はやめないぜ。パチュリーがいない今がチャンスなんだ」

「……それなら私がサクヤの代わりに弾幕ごっこをするわ。だからサクヤは引っ込んでてちょうだい!」

 

 アリスの思いもよらない言葉に、私は思わず「いいの?」と聞き返すと、彼女は堅くうなずいた。

 

「それならお願いするわ。……正直どうしようかなって思っていたから」

 

 ミーシャなら暗器の扱いに慣れているでしょうけど、私にはナイフは扱いきれないからね。

 私は後ろに下がり、アリスに頭を下げる。

 

「へぇ、アリスがそんなことするなんて珍しいな? どういう風の吹き回しだ?」

「さっき話してて色々と思う事があったのよ。――さあ、構えなさい! 私が勝ったら、私の言う事を聞いてもらうわよ!」

「よし! 望むところだ!」

 

 こうしてアリスと魔理沙の弾幕ごっこが始まった。

 

 

 

「私の勝ちね」

 

 アリスは弾幕を魔理沙にぶつけ、静かに勝利宣言をした。

 

「あ~悔しいーー! あの時の魔符「スターダストレヴァリエ」が決まってれば勝ってたのにー!」

 

 撃ち落とされた魔理沙は、起き上がって悔しそうに言葉を発した。

 

「残念だったわね。さ、私が勝ったんだからいう事を聞いてもらうわよ?」

「うう。こうなったらなんでも来い! 受け入れてやる!」

 

 アリスの言葉に自棄気味に叫んだ魔理沙だけど。

 

「そんな自暴自棄にならないでよ。私からのお願いはただひとつ、今日は本を盗んだりしないでおとなしくしてなさい」

「……分かったよ」

 

 魔理沙はしぶしぶといった様子でアリスに従った。

 

「助かったわアリス。私の代わりに戦ってくれてありがとう」

 

 私は頭を下げて感謝の気持ちをアリスに伝えた。

 

「別に構わないわよ。私たちは友達、でしょ?」

「――うん!」

 

 アリスの友達発言に私は嬉しくなった。

 

「いつのまにお前達そんな仲良くなったんだ?」

 

 そんなやり取りを見ていた魔理沙は困惑気味に私達を見ていた。

 

「ちょっと~何の騒ぎー? さっきからうるさいわよー?」

 

 図書館の奥から、不機嫌そうな声で頭を掻きながらパチュリーが登場する。彼女は辺りを見渡すと、やれやれと言った感じでぼやいた。

 

「あーあもう、こんなに散らかしちゃって。サクヤ、片づけお願いね」

「了解しました」

 

 私は先程の魔理沙とアリスの弾幕ごっこで散らかってしまった図書館の片付け作業に入った。

 

 

 

「ふう、終わったわ」

 

 時間にして30分。急ピッチで始めた作業がようやく終わり、私は安堵の息をついた。片付けを終えたことを奥のテーブルに座っているパチュリーに報告する。

 

「パチュリーさん、終わりましたよ」

「ご苦労様」

 

 彼女は私にねぎらいの言葉をかけてくれた。更にその斜め向かい側に座っている魔理沙が、私の仕事ぶりについて言及してきた。

 

「サクヤが働いてるところ初めて見たぜ。時間を止めないと今みたいな感じでやってるんだな」

「確かにそうね。咲夜はいつもタイミングよく消えるから、新鮮かも」

 

 魔理沙の言葉にパチュリーの向かい側に座っていたアリスも同意の言葉を発した。

 

「いえいえ、私は本職のメイドじゃないから、咲夜に比べるとだいぶ劣ると思うわよ」

「確かにそうね。ちょっと気が利かないところもあるし、メイドとしての腕は咲夜の方が上ね」

「……そんなはっきり言わなくても」

 

 パチュリーの辛辣な言葉に私はぼそりと呟いた。

 

「そんなことよりサクヤ、ここに座りなさい」

「はあ」

 

 パチュリーに隣の座席に座るように促され、私はそれに従う。

 

「今から話す話はここだけの話にしてもらえるかしら」

「何々? 何の話よ?」

「実はね、咲夜が入れ替わってしまったと聞いてから、とある魔法を今日までずっと開発していたのよ。それがついさっき完成したわ」

「へえ~どんな魔法を開発したの?」

「気になるぜ」

「そうね」

 

 パチュリーの新魔法に私も含め皆が興味津々と言った感じで言葉の続きを待った。

 

「結論から言うわ。私が開発した魔法は《精神交換》よ」

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