咲夜とサクヤの入れ替わり物語 作:RtYB9S
side ――魔理沙――
「ほーらいい加減自分の足で歩きなさい! まだまだ仕事はたくさん残ってるわよ!」
「分かったから耳元で怒鳴らないでくれよ……」
脱走も失敗に終わり、強制的に戻された私は今、紅魔館の2階廊下でレミリアに怒られていた。壁際にはモップが立てかけられ、床には汚水の溜まったバケツの他、少し汚れた雑巾が捨てられている。
適当に手を抜いて仕事をしていたのが悪かったようで、レミリアは先程様子を見に来た時よりも険しい表情で私を睨みつけている。
(クッソ~どうしてこんなことに……! こんな事なら入れ替わるんじゃなかったぜ)
好奇心は猫をも殺すとも言うが、精神交換魔法の失敗とか、元の身体に戻れなくなるとかでは無く、こんな展開になるとは想定外だった。まあ、これらに比べると大分マシではあるのが唯一の救いか。
「ほら、掃除の続きをしなさい! いい加減にやったりしたら承知しないからね!」
「へーい」
レミリアは別の場所に行く気配も無いし、私の仕事をずっと後ろで見張っているつもりみたいだな。逃げ出そうにも、そもそも今の私は咲夜の身体だし、パチュリーに戻してもらわないとどうにもならない。仕方ない、やるか。私は意を決して、モップを掴み、床の掃除を再開する。
(つーか、この館広すぎるんだよなぁ……。一人でやるにはあまりに仕事が多すぎる。メイド妖精に命令しても言う事聞かないし、咲夜って凄かったんだな)
あいつが帰って来た時に多少は労ってやろうと思いながら、私は真紅のカーペットを隅から隅までモップ掛けしていき、雑巾で半円窓のガラスも丁寧に磨いていった。
「ふう、終わった~」
体感時間で2時間程掛けて掃除を終えて、後片付けも済ませた私は、二階の廊下に座り込んでいた。
「お疲れ様、よくやったわ」
レミリアが拍手をしながら、声をかけてきた。こいつ本当に最後までずっと見てただけだったな。
「まさか本当に一人でやりきるなんて思ってなかったわ。やればできるじゃない」
その言い方に違和感を覚えた私は「やりきるとは思ってなかったって……どういう意味だよ?」と問い返すと、レミリアは薄笑いを浮かべながら「だって正直途中で投げだすと思ってたんだもの。ねえ、魔理沙?」などと言いやがった。
「お、お前……まさか……!?」
「パチェから精神交換魔法の事について聞いていたし、最初から貴女と咲夜が入れ替わっている事に気づいていたわよ? そもそも、咲夜が異世界のサクヤと入れ替わった時にだって初見で見抜いたんですもの。魔理沙を見破るのは容易い事だわ」
「って事は何か? 知ってて私に咲夜の仕事をやらせたのか!」
私は怒りの気持ちをぶつけるも、レミリアは余裕綽々な態度を崩さない。
「いっつも私の館を荒らして回ったり、パチェの本を盗んで迷惑を掛ける貴女への罰よ。少しは自分の行いを顧みなさい」
「……お前にだけは言われたくないぜ」
私はレミリアに聞こえないようにぼそっと小声で呟いた。
「それじゃ魔理沙、もう貴女は用済みだから戻ってもいいわよ? 私の気も晴れたしね」
レミリアは私に向かってしっしっと手を振る動作をしていて、かなりムカつく。
「お前に言われなくてもすぐに戻るよ! もう二度とごめんだぜ!」
捨て台詞を吐いて、図書館の方角に走って行った。