咲夜とサクヤの入れ替わり物語 作:RtYB9S
side ――サクヤ――
魔理沙がレミリアに連行された後、私達は散らばった洋服を片付け、読書スペースに座って雑談を楽しんでいた。
特に霊夢の話が興味深いもので、過去に起きた数々の異変と呼ばれる事件や、そこで出会った人々について聞き、不思議だけど平和な世界だなと私は思った。
ここの人達は気が良く、私に優しくしてくれて、いかに元の咲夜が恵まれた環境にいるかを実感するわ。なんとしてでも結界を抜ける手段を見つけないといけないわね。
どれくらいの時間が経った頃か、大図書館の扉がゆっくりと開き、魔理沙が入って来た。メイド服は汚れ、疲労困憊のようで、足取りもおぼつかない状態でゆっくりと近づいてくる。
「あら魔理沙。ずいぶんとお疲れのようね?」
「ひたすら雑用をやらされたよ……。特に廊下の掃除は大変だった……。いつも咲夜はあんな広い廊下を一人でやってるんだろ? 少し咲夜に尊敬の念が沸いたぜ」
魔理沙は死んだ目で答えながら霊夢の隣に座った。
「確かにそうね。咲夜は時間を止められるからいいのかもしれないけど、あの広さを1人でやるのは大変よね」
「おお、そうだな――ってなんだその服!? どこからそんなものを出したんだ!?」
魔理沙は初めて私の恰好に気付いた様で、先程までの疲れはどこへ行ったのやら、とても驚いていた。
「これは私特製の渾身の一作よ。どうよ、似合うでしょ?」
「なんで本人の許可なく着させてるんだよ!」
魔理沙はアリスに文句をつけるも、彼女はにこやかに「あら、ちゃんと本人に許可を取ったわよ? ね、サクヤ?」
「ええ、そうね。可愛いし、とても似合ってるわよ?」
「お前らなあ……」
私達の言い分に魔理沙は呆れながらも、机をバンと叩く。
「と、とにかくだ! サクヤは今すぐその服を脱げ! 私のイメージが壊れるだろ!」
「なんでよ? 女の子らしい可愛さでいいじゃない?」
「か、可愛いってお前な……その姿は似合わないんだよ!」
魔理沙は顔を真っ赤にしながら反論したが、霊夢やアリスは私の発言を援護射撃する。
「なんでそんなに怒ってるのよ? こんな魔理沙も新鮮でいいのに」
「サクヤは似合うって言ってるじゃない。何が気に入らないのよ?」
「そういえば昔は魔理沙もっと凄い衣装着てたわよ。7歳くらいの頃なんか――」
「わー! あの時のことは言うな!」
昔話を始めようとした霊夢の口を素早く塞いだが、アリスは聞き逃さない。
「ねえねえ、何があったのよ!? 気になるわ!」
「――ぷはあ。実はね」
「勘弁してくれ~!」
昔話をして欲しくないようで、魔理沙は必死になって霊夢にお願いしていた。
「――さすがに魔理沙が可哀想だから、弄るのはここまでにするわ。残念だけど昔話はまたいつか」
「あら、残念ね」
その言葉を聞いて魔理沙はほっとした様子だった。
「――とにかくだ! レミリアという邪魔が入ったが、もうサクヤの目的は果たされたんだ。そろそろ戻してくれないか、パチュリー?」
その言葉に、読書をしながら今まで黙って私たちのやりとりを聞いていたパチュリーが顔をあげる。
「ええ、分かったわ。サクヤもそれでいいわよね?」
私は頷く。
「それじゃさっきの場所に立ってちょうだい」
私達は先ほど入れ替わった場所に移動した。
「それじゃいくわよ!」
パチュリーが魔法を発動し、また私の中から何かが抜け出していくような感覚が私を襲った。
「終わったわよ~体の調子はどう?」
私はパチュリーの言葉で目を開き、体の調子を確かめる。疲労感が強いけれど、手足は自由に動かせるわね。
「ばっちりですね。ちゃんと自由に動きますよ」
「私もだぜ。やっと元の体に戻れたぜー」
隣の魔理沙は安堵した表情で胸を撫でおろしていた。
「……パチュリーの魔法って初めて見たけど、本当にこんな形で精神の入れ替えができるのね。私もやってみたいわ」
「霊夢、貴女が入れ替わるのはダメよ。貴女はこの幻想郷の要なんだから、きっと八雲紫が許さないと思うわよ?」
「ただの冗談よ、冗談。そんなの分かってるわ」
いつものように飄々とした様子でパチュリーに返事をする霊夢だったが、私の目には少し残念がっているように見えた。
「なあ、ところで私の元々の服はどこにあるんだ? いい加減着替えたいんだが」
「ここにあるわよ」
「よし、それじゃ着替えて来るぜ。パチュリー、部屋を借りるぜ!」
私が差し出した服を受け取った魔理沙は奥へ引っ込んでいった。
「待って。私もついていくわ。本を盗られたりしたらかなわないし」
パチュリーは魔理沙を追いかけていき、霊夢、アリス、私の3人が残った。
「なんだが今日は色々あったわねえ」
「こんなの幻想郷では日常茶飯事よ? むしろ今日の出来事は割とおとなしい方だと思うわ?」
「アリスの言う通りよ。サクヤ」
「幻想郷って毎日楽しそうねえ、元の体に戻ったら、幻想郷をゆっくりと観光してみたいわ」
「ふふ、その時は私が案内してあげてもいいわよ?」
「それいいわね! 貴女の元の姿も見てみたいし、もし来れたら私にも教えてよ」
「ええ、その時が来たらぜひお願いするわね」
私も霊夢達の言葉に笑顔で返した。
「ふう、今日は疲れたぜ。私はそろそろ帰るわ。アリス、この服返すぜ」
いつもの服に着替えてきた魔理沙が、アリスに脱いだ服を手渡した。
「返すなんて言わないで、もらっていってよ。そしてまた着て見せてほしいわ」
「ごめんな、アリス。私がその服を着るのにはかなり勇気がいるんだ……」
「何よそれ?」
二人がそんな話をしていた時、私にテレパシーが届く。その事実に驚きながらも、私は意識を内側に向ける。
『ユウ?』
『――久しぶりですねサクヤ』
脳内にユウではない穏やかな女性の声が響く。全てを遍く包み込むような、安らぎを与えるようなこの声を私は知っていた。
『!! まさか貴女は、アルカディア様ですか?』
『はい。今日はサクヤに吉報を届けに来ました』
『吉報……ですか?』
『貴女と、十六夜咲夜の異常について、原因と解決策をお伝えしましょう――』