咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第59話 9日目 side咲夜 勇者アレスへの謁見

 急いで朝食を済ませた後、手早く身支度を済ませて地下室に向かい、転移魔法陣を利用して王都のサクヤの別宅に移動。そこから外に出て、王城に向かって大通りを真っすぐ歩いていく。

 活気に満ちた大通りも、王城に近付くにつれて静かになっていく。城に繋がる橋を渡っていった先には、柵で閉じられた城門があった。高さは目算でおよそ5m程、幅は20mくらいはあるわね。

 

「どうやって入るの?」

「私に任せて」

 

 ユウが城門の脇に立っている門兵に近付いていく。

 

「こんにちはシラーフさん。今日も精が出ますね」

「おお、サクラギさんではないですか! 王から話は伺っております。どうぞお通りください」

 

 シラーフと呼ばれた門兵が城壁に設置されたレバーを引くと、ゆっくりと柵が上がっていった。

 

「ありがとうね」

「いえいえ、これも仕事ですから」

 

 ユウはお礼を伝えて戻って来た。

 

「さあ、行こっか」

 

 ユウの後に続いて私達も奥に入っていく。城門を抜けた先には石畳の十字路があり、その脇には風光明媚な庭園が広がっていた。

 

「わあ、綺麗――」

 

 庭園の美しさに私は思わず感嘆の言葉が零れた。

 

「本当、いつ見ても綺麗だよねえ。咲夜の気持ち分かるよ」

「見惚れるのもいいけど、まずはアレスに会いに行きましょう」

「……そうね」

 

 名残惜しさを感じつつ、私は再び歩を進めていく。 

 王城の中に入り、巨人が入りそうな大広間を直進し、美術品が飾られた廊下を直進していくと、城門より1回りほど小さい扉がある1つの部屋だった。

 扉には煌びやかな装飾がされており、部屋の中からは強烈な威圧感を放つ何者かがいるようで、全身に緊張が走る。

 

「この先に玉座の間があるんだよ」

「咲夜、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。アレスは優しい王様だからね」

「そ、そう?」

「私も初めてここに来たときはガチガチに緊張してたわよ……」

「アハハ。あの時はユウはかなり噛みまくってたね」

「うぅ、恥ずかしい……」

 

 和気藹々とする二人を見て、自然と緊張が解けていく。

 

「――ふう。よし! 準備出来たわよ」

 

 私はなんとか心の準備を済ませ、二人にアピールをする。ユウは頷き、扉の取っ手を掴み、ゆっくりと開いていった。

 

 

 

「……!」

 

 玉座の間は、壁や天井に掛けて至る所に煌びやかな装飾が施されて、床にはレッドカーペットが敷かれている。その先の壇上には、豪華な装飾が施されている椅子にふんぞり返るように座っている青年がいた。

 

(紅魔館よりも宝石の装飾がすごいわね……)

 

 私達は、武装した騎士達が見守る中、レッドカーペットの真ん中を歩いて、青年の元に向かっていく。青年の隣には穏やかな笑みを浮かべたリィンが立っていて、背後には重武装をした壮年の男が険しい目付きで腕組みをして立っている。武装した騎士達は、何があってもすぐに動けるような体勢を取っているように私は思えた。

 

「ユウ・サクラギ、ミーシャ・キャレッツ、サクヤ・イザヨイ、参上しました」

 

 ユウとミーシャが青年の前で頭を下げたのを見て、私も彼女達に倣って頭を下げる。今まで無言を貫いていた青年は重い口を開く。

 

「ご苦労だったな。頭を上げてもいいぞ」

「「「はい」」」

 

 私達は頭を上げた後、私は改めてその青年を観察する。

 年齢は私と同年代くらいかしら。黄金色の髪に、蒼色の瞳、髪型はウルカットで、顔立ちは眉目秀麗と言っていいでしょう。頭に王冠を被り、衣装は首に巻つけて腰まで伸びる赤色のマントを着け、その下に青を基調にした白のラインが入った貴族服を着用。腰にベルトを巻き、その下に青色のズボンを履き、白い靴を履いていた。

 

(彼がロンガディア国王、アレス・ロンガディア……! かなりのイケメンねぇ)

 

 まさに美男美女夫婦ね。とてもお似合いだわ。 

 そんな風に観察をしている間にも、会話は続いていく――。

 

「騎士団長および護衛隊の諸君、下がっていいぞ。これから彼女達と話す事は、内密だからな」

「はっ! かしこまりました! それでは外で待機しておりますので、何かあればいつでも呼んでください!」

「うむ」

「それでは失礼します!」

 

 アレスの命令に、騎士たちは敬礼をした後、隊列を組んで玉座の間から次々と出ていき、最後に私達が残された。

 それを確認したアレスは席を立ち、壇上から降りてきた。

 

「よっ! 久しぶりだな。ミーシャ、ユウ」

 

 彼は今までの威厳ある雰囲気から一転し、気安い態度で話しかけた。

 

「久しぶり!」

「久しぶりねアレス。それにしてもやっぱり慣れないわ。お城の人達の前と、私達の前で態度が変わりすぎでしょ」

 

 さながら旧友と話すような空気感に、ギャップの差を感じていると、彼はこう答えた。

 

「しょうがねーだろ? 威厳のある王様で通していかないと、部下に舐められちまうからな。王様ってのも中々大変なんだよ」

「そんなの自業自得でしょー? つまんないプライドで余計な苦労を背負い込んでどうすんのさ?」

「あのなぁミーシャ、冒険者ギルドはそれでいいかもしれないけど、国王ともなるとそうはいかねーんだよ」

 

 ミーシャとアレスの言い合いと同時に、ユウとリィンの会話も聞こえてきた。

 

「リィンも来てたのね」

「当然です。アルカディア様からの神託は、他の全てより優先される事項ですから」

「ふふ、なんだか嬉しそうね?」

「アルカディア様のお力になれる事は、至上の喜びですから」

 

 和気藹々とした雰囲気を見守っていると、アレスが私を見据える。

 

「お前が十六夜咲夜か。リィンから異世界のサクヤと入れ替わったと聞いている。ぜひ一度会ってみたいと思ってたんだ」

 

 彼は一旦ここで言葉を区切り、私の正面に体を向け、口を開いた。

 

「初めまして、俺はアレス・ロンガディアだ。この国――ロンガディアの王だ。だけど堅くならずに、気軽にアレスと呼んでくれて構わないぜ」

 

 そう言って彼は右手を差し出してきたので、私も右手を伸ばして握手を交わす。

 

「分かったわアレス。初めまして、十六夜咲夜です」

 

 私の自己紹介を終えた後、彼は少し感心した様子でこのように述べた。

 

「ほう、随分と落ち着いてるな。中身が別人なら普段見せないようなリアクションを見れると思ったんだがなあ」

「そんな事思ってたの? だからわざわざ玉座の間に呼び寄せたんだ。悪趣味すぎでしょ」

 

 アレスの発言に、ユウは呆れた様子だった。

 

「他の方はどうか知りませんが、私はこういう場に慣れてますので」

 

 本当は少し緊張していたけれど、敢えて言う必要は無いわね。

 

「なんだ、そうだったのか。残念だな」

「咲夜はさ、元の世界では吸血鬼のレミリアお嬢様お付きのメイドだったそうよ。だからじゃない?」

「ふむ、吸血鬼のメイドか……。これも世界の違いによる常識の差って奴か」

 

 アレスは感心したように頷いている。

 

「皆さん、世間話もいいですがそろそろ本題に入りましょう」

「そうだったな。ひとまず落ち着いて話せる場所に行くか。ついてこい」

 

 先導して歩くアレスと共に、私達は玉座の間を後にした。

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