咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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この話は『第56話 9日目 sideサクヤ 吉報』の続きとなります


第64話 9日目 sideサクヤ 召喚魔法

 ――side サクヤ ――

 

 

 

『それは本当ですか!?』

 

 アルカディア様のお言葉に私は驚きを隠せなかった。今の今まで殆ど手掛かりが掴めなかったのに、流石としか言いようが無いわ。

 

『ええ。貴女のお仲間達の協力があり、全貌が掴めました』

『!! アルカディア様。その話を、是非私の協力者の方々にもお聞かせ願えますでしょうか?』

『協力者とは、今貴女の周りにいる少女達ですか?』

『はい。彼女達は信用できる人間ですし、此方の世界に飛ばされてから私は多く助けられてきました』

『分かりました』

 

 私の願いが聞き入れられた直後、皆に語り掛けるように脳内に声が響く。

 

『こんばんは、私の声が聞こえますか?』

 

「な、なんだ?」

 

 帰ろうとしていた魔理沙は足を止めて辺りを見回し。

 

「え、誰?」

「私じゃないわよ?」

 

 霊夢とアリスは互いに顔を見合わせて。

 

「この声……テレパシーね」

 

 パチュリーは空を睨みつける。

 

『驚かせてしまったようですね。私はサクヤが住まう世界の神、アルカディアです』

「神様ですって!?」

「急にビッグな存在がやってきたな」

『今日は二人のイザヨイサクヤの異常と原因、そして解決策をお伝えしに来ました――』

 

 皆が驚く中、アルカディア様はアルカディア世界の今日に起きた出来事を語られていった。

 

『そんなことがあったのですね……!』

 

 まさかあの男が生きていたなんてね……! 私の精神防壁の弱点をそんな方法で突かれるとは思わなかったわ。……思い返してみれば、咲夜の夢を見るようになったのも、精神交換魔法の前兆だったのね。そこに気付けなかったのは迂闊だったわ。

 ちなみにリィンとユウの推理は当たっている。100年前、彼と戦う為に無意識下においても機能する精神防壁魔法を構築したのよね。おかげで彼の精神操作魔法の影響を受けずに、倒すことができたのよ。

 今回はギリギリ無意識下の反撃魔法が働いたから良かったけれど、帰ったら再構築の必要性がありそうね。まだまだ未熟だわ。

 

『二人のイザヨイサクヤを正常に戻すには、幻想郷側の協力が不可欠です』

『博麗大結界の一部に通り道を作るってことか?』

『そんなことできるの?』

 

 魔理沙とアリスの疑問に答えたのは、霊夢だった。

 

『残念だけど、それは無理な話ね。個人的な事情の為に、幻想郷全体が危機に晒される事になるのは八雲紫が許さないし、私も博麗の巫女としての立場上、賛成できないわ』

『そうですか……。では別の方法を考える必要が――』

『だけどね、幻想郷の外にサクヤを案内することは出来るわ。その召喚魔法とやらは、幻想郷の中でなければ駄目なのかしら?』

『不可能ではありません。しかし幻想郷の外の世界はマナが薄いので、幻想郷側の魔法使いの皆さんにも、協力してもらう必要があります。よろしいですか?』

『私はやるぜ! なんだかおもしろそうだしな!』

『私も賛成よ』

『私も協力するのはやぶさかではないわ。異世界の魔法を見るいい機会になりそうね』

 

 魔理沙、アリス、パチュリーさんが二つ返事で協力を申し出てくれた。有難い話だわ。

 

『分かりました。では召喚魔法の実行日時についでですが――』

『今すぐやろうぜ!』

『今すぐって、あんたねぇ。あっちの都合も考えなさいよ?』

『その事なら問題ありません。たった今、こちら側の準備は終わりました。後は、サクヤが幻想郷の外に出れば完了します』

『それなら、すぐにでも行きましょう。皆さん、どうか私に少しだけ時間をいただけませんか?』

 

 私が頭を下げると、霊夢は『しょうがないわね。いいわよ、付き合ってあげる』といい、魔理沙、アリス、パチュリーさんからも反対意見は出なかった。

 

『幻想郷の外ってどうやって出るの?』

『博麗神社の森に出入り口があるのよ。だからまずは博麗神社に来て頂戴』

『分かったわ』

 

 テレパシーが繋がったまま私達は大図書館を出て、1階の廊下に上がっていくとレミリアが待ち構えていた。

 

「あら、レミィじゃない? どうしたの?」

「顔を見に来ただけだよパチェ。――サクヤ、もう行くんだろ?」

 

 まるで全てを見通しているかのように、私を射抜くレミリアに「はい。レミリア様。短い間ですが、お世話になりました」と頭を下げる。

 

 彼女と過ごした時間は短かったけれど、この身体の本来の持ち主をとても大切に思っていることが伝わって来たし、人間を含む他の種族にも友好的だった。

そして何よりも、彼女には上に立つ者としてのカリスマがあった。咲夜が彼女に心酔している理由が分かったわ。

 

「ふふっ、次は真っ当な方法で紅魔館に来なさい。歓迎してあげるわ」

 

 微笑を浮かべたレミリアは振り返ることなく廊下の奥へと去って行った。

 それから私達が博麗神社に向かうと、月明かりの下に八雲紫が立っていた。

 

「紫!? どうしてここに?」

「サクヤが帰るのでしょう? 私も見届けさせてもらうわ」

「何処で話を聞いていたのかしら? とんだ地獄耳ね」

『貴女が幻想郷の管理者ですね? 私はアルカディア。アルカディア世界の創造神です』

『八雲紫よ。勝手に人の精神に入り込んでくるなんて、失礼では無くて?』

『私の支配下に無い世界においては、テレパシーを送るのが精いっぱいなのです』

『……ふぅん、そう。咲夜が帰ったらもう二度と干渉しないでもらえるかしら?』

『勿論です。貴女方の世界は、私達にとっても刺激が大きすぎますから』

 

 かくして八雲紫も加わり、霊夢を先頭に森の中へと入っていく。月明かりを頼りに先へ進んでいくと、何かが私達を通り抜けたような感覚――多分博麗大結界なのでしょう――の後、森を抜けて開けた場所に出る。

 今にも崩れ落ちそうな神社に、雑草が生え放題の境内は、変わり果ててはいるものの、間違いなく博麗神社だった。そして風化しつつある鳥居の奥には、天まで届きそうなくらいに高い建物が無数に立ち並んでいて、多くの窓からは昼間のように灯が漏れていた。以前ユウが話していた『東京』という街に似ているような気がするわね。

 幻想郷の神秘的な空気は無くなり、魔力の欠片も無いからからに乾いた空気は、私にとっては居心地の悪いものだった。

 

『到着しました。アルカディア様、これからどうすればいいのでしょうか?』

『魔力が殆ど存在しない場所に、魔法を使用するのは困難です。そこで魔法使いの皆さんには、自身の魔力を外に放出して、此方の召喚魔法を受け入れる土地を作ってもらいたいのです。一度でも成功すれば、此方から魔力を供給し続ける事で、少しの間維持することができますから』

『要は私達に魔力タンクになれってことかしら?』

『乱暴な言い方になりますが、そういう事になります。無理しない程度で構いませんので、お願いできますか?』

『まあ構わないわよ。それで咲夜が帰れるのならね』

『よおっし、やるぜぇ!』

 

 やる気を出した魔理沙が魔力を放出すると同時に、アリスとパチュリーさんからも魔力が漏れ出していく。それは俄かにも、この地の雰囲気を変えつつあった。

 

『くっ、やっぱり外の世界だと厳しいわね……!』

『まだまだ、私の魔力はこんなもんじゃないぜ!』

『ちょっとだけ、本気を出してあげるわ!』

 

 彼女達の魔力の放出量が更に大きくなると、この場に薄い魔力の霧が発生する。魔力の密度が強くなっている証拠ね……!

 

『充分です。さあ、召喚魔法を使いなさい!』

『はい!』

 

 私では無い“私”の声が響いた直後、霧の中から魔力の光が発生し、地面に模様が書き出されていく。あれは召喚魔法陣……! 魔力の光と共に霧が晴れた場所には、六芒星と三日月模様の魔法陣が現れていた。

 

「成功ですね」

「そう、良かったわ」

 

 私は召喚魔法陣の前に立ち、皆を見回してから頭を下げた。

 

「皆さん、今までご協力ありがとうございました。貴女達の事は生涯忘れません」

「もうこっちの世界に来るんじゃないわよ?」

「じゃあなサクヤ。お前の魔法は面白かったぜ」

「向こうでも頑張りなさい」

「さようなら、また会えたら嬉しいけれど、もう会うことはないでしょうね」

 

 霊夢、魔理沙、パチュリーさん、アリスから惜別の言葉を受け、紫が手を振る姿を視界に入れつつ、私は魔法陣に足を踏み入れる。召喚魔法の光に包まれた次の瞬間には、王都の大聖堂に移動していた。

 

「おおっ、成功したぞ!」

「おかえりサクヤ!」

「良かったぁ……! また失敗するかと思っちゃったよ」

「サクヤ。おかえりなさい!」

「みんな、ただいま!」

 

 飛び込んできたユウとミーシャを抱きかかえながら、私を出迎えてくれたかけがえのない仲間達に、とびっきりの笑顔で答えた――

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