咲夜とサクヤの入れ替わり物語   作:RtYB9S

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第65話 9日目 sideサクヤ エピローグ 帰還

「サクヤ、怪我はない? 紅魔館での生活は大丈夫だった?」

 

 私を不安げに見上げるミーシャに、「紅魔館の方達が優しくしてくれたから何も問題は無かったわ」と答える。幻想郷での日々は悪い物ではなかったわね。

 

「ユウも心配かけてごめんね」

「もう会えないかと思ってたよ~。本当に良かった……!」

 

 泣きそうな声のユウを私は正面から抱きしめる。彼女には本当に苦労をさせてしまったわね。

 

「サクヤ。お元気そうで何よりです。良く無事に帰ってきましたね」

「リィンこそ、忙しい中咲夜の為に協力してくれてありがとう」

「ふふ、私達の間に遠慮する必要はないでしょう?」

 

 私に近付いてきたリィンは優しく微笑んでいる。彼女には大きな借りが出来てしまったわ。

  

「ようサクヤ。異世界の旅はどうだったんだ?」

「アレス。貴方にも迷惑を掛けてしまったわね」

「なあに、気にするな。俺としても私情で動いたわけじゃない。お前程の魔法使いを失うのは、ロンガディア王国にとって大きな損失だからな」

 

 久々に顔を合わせたけど、アレスは相変わらず素直じゃないわね。

 さて、やっとアルカディアに帰ってこれたけど、まだ全てが終わった訳では無いのよね。パチュリーさんとアリスと魔理沙が作ってくれた場が消えてしまう前に、早く咲夜を幻想郷に帰さないといけないわ。

 再会を喜び合うのも程ほどにユウとミーシャから離れた私は、召喚魔法の魔導書片手に、私達の再会をじっと見ていた咲夜に向かい合う。

 

「こんばんは。貴女が紅魔館のメイド長、十六夜咲夜ね?」

「ええ。そう言う貴女は、魔法使いのイザヨイサクヤね?」

「そうよ」

 

 私と同じ姿をした人間が目の前に立っているなんて、何とも奇妙な感覚ね。だけどドッペルゲンガーや、魔法で化けた偽物に遭遇した時のような嫌悪感は無く、不思議と彼女を受け入れていた。

 きっと、彼女が異世界の私なのを魂で理解しているのでしょうね。

 

「こうして並んでみると本当に鏡写しだわ」

「今は辛うじて見分けがついているけど、全く同じ服装だったら全然分からないねぇ」

 

 ユウとミーシャの声を聴きながら、私は話を続ける。

 

「今回は私の因縁に貴女を巻き込んでしまったみたいね。まさかあの男が生きていたとは思わなかったのよ。改めて謝罪するわ」

「謝罪は要らないわ。貴女も被害者なんでしょ?」

「それでも貴女には迷惑を掛けてしまったわ。本当にごめんなさい」

 

 頭を下げる私を、咲夜は困ったような表情で受け入れていた。

 

「紅魔館では、レミリアお嬢様やパチュリーさんにお世話になったわ。皆、貴女を大切に思っていました。貴女、良い人間関係を築いているわね」

「ありがとう。貴女もいい友人に恵まれているのね。皆、貴女を心配していたわ」

「ええ。皆かけがえのない仲間だわ」

 

 きっと彼女は、もしも私がアルカディアではなくて地球に産まれて、魔法使いではない道を選んだらどうなっていたのかを体現しているのでしょう。私にとっては魔法が人生の全てだったけれど、彼女のようにフレンドリーな職場で敬愛すべき主君に仕える人生も幸せなのかもしれないわね。

 あるいは私の知らない別の異世界で、更に違った生き方をしている“私”もいるかもしれないけれど、確認する術がない以上、気にしても仕方が無いわね。

 

「女神様も、私の為にご協力ありがとうございました」

「この世界を守る為ですから」 

 

 私が女神様にも頭を下げると、女神様は優しい笑みを浮かべていた。本当に慈悲深い神様だわ。

 

「さあ、パチュリーさん達の魔力が切れてしまう前に早く戻っちゃいましょう。リィン。魔法の準備は出来ている?」

「そう言うと思ってました。準備万端ですよ」

 

 リィンは私と咲夜が話している間に下準備を済ませていたようで、女神様の像の前に二つの魔法陣が現れている。私と咲夜は互いに顔を見合わせて頷くと、魔法陣の上に歩いていき、向かい合うように立つ。いよいよね。

 

「それでは、いきますよ!」

 

 リィンが宣言すると同時に精神交換魔法が発動し、私の中から力が抜けていくような感覚と共に、意識が薄れていく。少しの恐怖心はあるけれど、私はリィンを信じているわ。

 やがて私の意識が満たされていくような奇妙な感覚を覚え、祈るような思いで目を開ける。そこには、メイド服姿の私が立っていた。

 

「戻ったわ!」

「本当に、戻ってきたのね……!」

 

 先程まで私が入っていた身体に戻った咲夜は、自分の手を握ったりしながら感触を確かめている。そして私は、身体の奥底から湧いてくるマナが五臓六腑に染み渡るのを感じていた。うふふ、これよこれ! この感覚だわ!

 

「サクヤ! 魔力を出し過ぎ! 抑えて、抑えて!」

 

 いけないわ。あまりにテンションが上がり過ぎて、魔力を過剰に放出してしまったみたいね。皆若干引いた顔をしているわ。冷静になりましょう。

 初心者のようなミスを反省しつつ身体から漏れ出る魔力を引っ込めつつ、咲夜に代わって召喚魔法陣の維持を開始する。

 

「咲夜。私が通って来た魔法陣に乗れば、幻想郷の境目にある博麗神社に帰れるわ。早く顔を見せてあげなさい。パチュリーさん達が待っているわ」

「分かったわ」

 

 咲夜は召喚魔法陣の前に歩いていき、手前で立ち止まってから振り返る。

 

「皆さま、お世話になりました。この日までの事は忘れません」

「元気でね~咲夜」

「もうこっちの世界に迷い込むんじゃないぜ」

「貴女の延命息災を祈っています」

「頑張ってね!」

 

 綺麗な姿勢で深々とお辞儀をする咲夜に、皆が一言ずつ別れの言葉を告げていった。最後に残った私は。

 

「サヨナラ咲夜。元の世界でも頑張りなさい」

「貴女もね」

 

 咲夜は微笑みを見せながら魔法陣の中に足を踏み入れ、眩い光と共に転移していった。




これでsideサクヤの話は終了です。
次話のside咲夜側の話が最終回となります
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