明けまして、おめでとうございます。みなさま本年もよろしくお願い致します。
10年ぶりに最愛の姉、カトレアを見つめたルイズは瞳に涙を溜めながら感極まり、声も出せずに佇んでいた。
そんなルイズを見つめ返していたカトレアは物凄い満面の笑顔をしてうれしそうに愛しい妹のルイズをやさしく包み込むように抱きしめていた。
いきなり姉のカトレアに抱きしめられたルイズは………。
「あ、あの、ちい姉さま………そ、その………」
ようやくフリーズが解けだして、ルイズは言葉を発し始めていたけども、つっかえて上手く喋れない状態に陥っていた。
「ルイズ、ルイズ、ルイズ! あぁ、私の可愛い、小さなルイズ、ルイズ……あぁ、良く無事に還って来てくれたわ……私の愛しい小さなルイズ、ルイズ………」
うれし涙を流して何度もルイズの名前を呼び続けながら、10年ぶりに妹をやさしく抱きしめるカトレアであった。
「……その、ねぇ、ちい姉さま……私が還ってきた事を喜んで下さるのはとても嬉しいんですけど……もう、お身体の具合は良くなったのですか? それとも無理をされているんじゃないのですか……私、心配なんです。ちい姉さまのことが………」
「私の身体の事を気遣ってくれて、ありがとうルイズ。でもね心配する必要はいらないの……今日はとても気分が良いのよ、あなたと逢えたからかしら? ……………」
とても穏やかな笑顔をして、ルイズが心配する事は無いと言い切るカトレアでした。
「……その落ち着いたご様子ぶりをみていると、本当にご気分は良いよう何ですね。それでは改めてご挨拶させて頂きます………………私こと“ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール”本日とある異世界地球は日本国より10年ぶりに、このトリステイン王国はヴァリエール公爵家に還って来ましたわ……ただ今、ちい姉さま……」
ルイズは今日1番気持ちをこめた綺麗で鮮やかな挨拶を、姉カトレアに披露していた。
「見事なあいさつだったわね、ルイズ……本当に良く還って来てくれたわ……お帰りなさいルイズ……」
愛しい姉カトレアがルイズが帰還のあいさつを述べた事に対して、それを笑顔で褒めると瞳に涙をうかべ半ば泣きだしながら姉の豊かな胸に飛び込むルイズであった。
「ちい姉様あぁぁぁぁ、私、私、ちい姉さまに再び逢えて、本当に心から、う、ううう、うれしいのぉぉぉお! 一時は、もう二度と逢えないのかなと……思っていたから、ぅぅう、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
カトレアに再び逢えて心のリミッターが外れたのか、ルイズは今まで心の中に溜め込んでいたモノを全部吐きだしてしまい、端整な顔を涙でクシャクシャにして大声をあげて大好きな姉カトレアに抱きついて泣いていた。
そんな状態になっているルイズのウェーブかかったしなやかな髪を撫でてその小さい華奢な身体をやさしく包み込むように抱きしめていたカトレアお嬢様である。
溜まっていたものを全て吐き出し、スーとした気持ちになったのか清々しい表情で姉カトレアと両親のヴァリエール公爵夫妻とすこしの時間だけ談笑すると、晩餐用の服装に着替えるためにルイズは自室にもどっていく。
(ふぅ、ちい姉さまには何時までたっても敵わないわ~私のこと、全て解ってるみたいだし……隠し事なんて、ちい姉さま相手にできる訳がないのよねえ……元から…………)
ルイズはいま地球に居ると思っている愛しい恋人平賀 才人の存在が尋常じゃない程の勘の鋭い姉カトレアにバレていると考えて悩んでいる最中だった。
(…………サイトのこと、ちい姉さまに隠しきれないかも、知れない………でもクヨクヨするのも私らしくないしね……ばれたらその時は、その時よ? うん、そうしよう……)
そう、ルイズが懸念している様にカトレアにはウソや隠し事がまったく通じなかった。初めて会った人物でも、人目見たその瞬間には相手の本質が殆んど解ってしまう、それどんなチートですかと言うくらい。勘の良さということでは済まされないほどの物凄い能力でした。
「ルイズお嬢様。晩餐のご用意が調いましたので、大食堂へお出でくださいと、カリーヌ奥様からのご伝言でございます」
「解ったわ、すぐに食堂へ向かうわ」
と、晩餐の用意が出来たからと伝えに来たメイドに了解したことを述べるとルイズは直ぐにベッドから立ち上がると、大きな姿見の鏡前で自身の身嗜みを入念にチェックをしていた。
「……う~ん、やっぱり地味かなぁ~シンプルな白のブラウスに紺色のスカートなんて………」
晩餐の席に着ていく服の事で、独り言を口にだして色々考えているルイズである。
「……これなら、何とか見映えが良さそうだから、これに決めたわ」
クローゼットを眺めながら、散々迷った末にルイズが晩餐に着ていくと決めた服は割と普通な感じがするパーティ用のピンクを基調とした日本から持ってかえってきた洋服の中にある1つのドレスだった(ルイズが日本から持ち込んだ素晴らしい生地とデザインで出来ていた完成度の高い洋服の殆んどが敷島博士が買い与えた品々だと解ると、それに嫉妬を覚えたヴァリエール公爵ピエールも負けてなるものかと、対抗していま大至急で王都トリスタニアとガリア王国の都リュティスにある王族や貴族専用の仕立屋にルイズに似合った各種の高級洋服を何百着も発注している最中であった。ちなみにその事が後日、奥方様のカリーヌにバレて酷い折檻を喰らったのはまた別の話である)。
「最後の仕上げに、サイトがくれたこのピンクダイヤモンドのペンダントをつけたら早く食堂へ行かないと……母さまたちを待たせる訳にはいかないわ」
そう言ってルイズは部屋を出て家族がいる食堂へ才人からプレゼントされた、大切なペンダントを身に付け足早に向かう。
ルイズが大食堂の前まで来ると待機していたメイドが恭しく頭を下げて扉を開ける。
メイドが扉を開けたので、中に入っていくルイズが10年ぶりにヴァリエール公爵家の大食堂全体を見渡して、とある感想を小さく呟いた。
「久々に大食堂に来たけど……考えてみるとうちって、とんでもない処だったのよね~……ここのヴァリエール公爵家大食堂に大きさはともかく質的に匹敵するのって、日本じゃ赤坂迎賓館と超一流ホテルくらいしか無いわよ!! 」
ルイズが小声で呟いていたように、ヴァリエール公爵邸の大食堂は長方形の長いレースのクロス上に壮麗な燭台を配したテーブルに約100名分の華麗な装飾を誇るイスを配していた物であった。
此処は普段は使用されず今日みたいな特別の理由で開かれる晩餐会の席の時だけに使われるところなので、ルイズが10年ぶりにヴァリエール公爵家に還ってきた記念の日の晩餐会に用いるには1番相応しい場所である。
最後にようやく到着したルイズがメイドの案内で着席して直ぐに始祖ブリミルへの食前のお祈りを済ませると、久しぶりの明るい晩餐会が始まるのだった。
「ルイズ、久しぶりの我が家で食べる晩餐の料理の味はどうかな」
ヴァリエール公爵ピエールが自信満々の表情で溺愛する娘ルイズに公爵家自慢のシェフの料理には満足しただろうと問い掛けていた。
その問い掛けに対してルイズはこう述べるのだった。
「………え~と、どれも料理長の素晴らしい腕で作られた料理はとても美味しいのだけど………日本の料理に慣れた私からすると、かなり量が多いのよね……それにこの時間帯に脂っこい肉料理は、肥るといけないから普段は殆んど食べないようにしていたから、ちょっと私にはキツいかなと思えるの………」
ルイズが晩餐の席で父親のヴァリエール公爵ピエールに語ったように、日本では基本的に朝、昼、晩の3回の食事は敷島博士が(敷島博士は調理師免許と栄養士の資格を持っていた)ルイズの身体の健康を考えて和食を中心にしたメニューを作っていた関係でルイズにとっては、10年ぶりに食べるヴァリエール公爵家の料理は肉料理が中心で日本の味に慣れた今のルイズからすれば、ちょっと口にするにはキツいモノであった。
「わははは、ルイズ。ここはお前が今朝までいた異世界では無いのだ……何も遠慮する事は無い、今日からは好きな物を好きなだけ食べれるのだからな………」
意味もない贅沢する事を肯定した父親の言葉を聴いてルイズはすこし反感を持った。
「……父様、私が言いたいのはそんな贅沢をしたいのじゃ無くて、今まで過ごしてきた日本の家庭料理に慣れた自分のお腹じゃ、この脂ギトギトでしつこい肉ばかりのトリステイン料理は完食するにはキツすぎて駄目なのよ……」
ルイズは父親と母、姉カトレアに対して自分が10年もの間暮らしてきた。日本と言う国の健康に良い昔からの基本的家庭料理を今まで食してきた自分からすれば、トリステイン貴族に出されているような高級料理は味は香辛料をかなり使用していて美味しいけども、しつこく脂っこい料理を完食する事は胃袋的に無理だからと述べていた。
日本でも照り焼きチキンや牛丼等をだいたい週1くらいで食べていたから、たまにならしつこいトリステイン料理も食べれるけど、これが毎日続くのは正直勘弁してほしいと言うのが今のルイズが心の底から願う心境であった。
カトレアは妹が何を言いたいのか、殆んど解っていたので黙っており。溺愛する娘から言われたヴァリエール公爵ピエールはショックをうけてただ茫然となっていた。母カリーヌは意味が解らず納得できなくてルイズに問い掛けていた。
「ルイズは私たちが普段から食しているトリステイン料理をしつこい味付けだからいけなくて、今まであなたが食べていた異世界料理のほうが身体のために良いと言いますが、何処がどういうふうに良いのか、この母に具体的に説明してほしいのです」
何か思うところが有るのか、期待にみちた瞳で娘のルイズに言ったカリーヌである。
「……そ、それほど母さまが望むのでしたら、私はイヤと言えないから……具体例を言えば納得してくれますか? 母さま………」
ルイズからしたら、母親の質問に対してどう具体例を述べたら良いのか頭を悩ませながらも、心内でいろいろ思案している最中だった。
(……まさか、母さまがここまで日本のヘルシーな家庭料理に興味を示すなんて思わなかったわ……“烈風のカリン”の名はやっぱり恐ろしいわね……でも、どう説明したら母さまが納得してくれるのか、全然解らないわよ! ……………ここは気をとり直して、あの事を言えば良いかなぁ……あまり自信は無いけど……今はこれしかないわけだしねぇ……)
ようやく考えが纏まったルイズは母カリーヌに対して、とある事を具体例にあげて説明し出す。
「異世界地球の家庭的な日本食を食べ続けてどの様な結果をもたらすのか、それを知りたい母さまには私の今のスリーサイズを述べるから聴いてください………上からB76W55H79になります。ちなみに胸は日本女性の平均より少し小振りだけど……ちい姉さまの胸に劣らないくらいの張りと弾力性があって将来も殆んど垂れたりしない美乳なんですよ、私の胸は……」
ルイズ自身が美乳である事を告白したら、カリーヌが悔しさを滲ませる表情になっているのを見たルイズはある言葉を母親に問い掛けた。
「ちなみに母さまのスリーサイズは今どの様になっているのですか? 」
「………………………」
カリーヌはルイズの質問に対して無言を貫いた。
「あれ、母さま。無言という事はスリーサイズは娘に話せない程、無惨なんですか? それとも私みたいに美乳じゃ無いのが恥ずかしいからですか? 」
調子づいたルイズには天罰なのか、直ぐに恐ろしいプレッシャーが襲いかかろうとしていた。
「………ルイズ……あなたも異世界での暮らしが長かったから、むやみに人の心を踏みにじる行為をした者がどの様な末路を辿るか、異世界地球は日本国で色々な経験を積んだルイズなら解ると思うのですよ………ウフフフフフフフフフフ……………」
「……わ、解りました………母さまのスリーサイズは永遠に謎にしておきますから、安心してください………だから、その強烈なプレッシャー私に放つの止めて、母さま……お、お願い………もう二度と母さまのトップシークレットには、触れないから………」
末娘からの嘆願により、先程からルイズにむけて放っていた凶悪極まりない程のプレッシャーと言う名の強烈な殺気を打ち放つ事をようやく止めたカリーヌは微笑みうかべた優しそうな笑顔(その瞳は全然笑ってはいないけども)でルイズにとあるセリフを吐き出し始めた。
「ルイズも異世界地球は日本国で良い師匠に巡りあえて、私から視ても余程厳しい鍛練を積んできたのか中々の気概とその身体に身につけたオーラから流れている気配を察するに物凄い身体能力と業の数々を備えてはいますが……惜しいですが、場数を殆んど踏んでいないのが悔やまれますね……その証拠にあの程度の殺気に堪えかねて身体を硬直したくらいなのですから、明日から私直々に鍛練診てあげますから、楽しみにしていなさい。ルイズ」
カリーヌからの死刑宣告を本人直々に告げられたルイズは真っ青な顔つきで、いま心の中で必死になって明日からの鍛練という名の地獄のシゴキを回避するプランを考えている最中であった。
「……あ、あの母さま、私、別に一緒に鍛練するの……嫌じゃないんだけど……私が日本で習っていた剣術はすこし特殊な訓練方法だから、母さまと私のどちらかが、相手に併せる必要があるから……明日すぐ急に二人一緒に鍛練するの難しいと思うから……最初は簡単なところから始めてみない、母さま……」
(うふふ……私と母さまじゃ、訓練方法が違うから……この点を強調したら、いくら母さまがバトルマニア、げふん、ゲフン……これは無しね、バレたら殺されるわ……だからお互いのやり方が違うところの盲点をついたこの提案なら母さまも認めて、初日から無茶な鍛練を私に求められないハズになるからね……私ってなんて頭が良いんでしょうね……あははは……)
ルイズは何とか死亡フラグを回避しようと考えて、ある1つのプランを頭の中で思い付き。自分では中々良い考えだと自信満々だったが………そんな浅知恵が、こと戦いに関する事で妥協するのをしらない戦闘狂のカリーヌ・デジレ・ド・マイヤールに通用するハズもなく、哀れにも
「ルイズ……別に私に気をつかう必要性は有りませんから、ルイズが日本で学んだスキルを遠慮なく私に見せてほしいの……明日を楽しみにしていますからね」
カリーヌが死刑宣告に等しい言葉を末娘に言い渡すと、言われた当の本人のルイズが顔を真っ青にして、華奢な身体全体を恐怖心から震えさせていた。
「……か、母さま……ご、ごめんなさい……わ、私、地球から還ってきたばかりで、そ、その……あまり、た、体調具合がよくないから、暫くは母さまの鍛練についていく事が、出来ないから……はっきり言って、無理だから赦して、母さま」
心の底からルイズは自分の母親カリーヌに訓練につき合うのを免除してほしいと、必死の表情で嘆願するのでしたが………。
「そうね……ルイズもハルケギニアに還ってきて直ぐには、環境も変わって日本国に居たように力を発揮できないでしょうから……最初は軽く、ヴァリエール城の周囲を20、いえ、10周程度から始めますから……体調が戻ってきたら、20から30周に増やしていこうと思っていますからね。ルイズ」
ニコニコとした笑顔で言い切る鬼教官のカリーヌである。
その言葉を母親から告げられたルイズは顔つきが見る間にわるくなっていた。
(……母さまったら、まるで簡単みたいに言ってくれるけど……家の城周り1周がだいたい、最低でも10リーグ以上ある事は知っていて言ってるのよねえ……あの口ぶりは……アハハハ、これじゃあ母さまと平八郎先生の扱きは一緒じゃないのよ! せっかくトリステインに還ってきて、すこしは気楽に訓練しようと思ってたのに! すべてパァだわ……本当にバトルマニアは迷惑で度しがたいわ……)
ルイズが内心カリーヌの事を迷惑みたいに感じていると、不意にその本人から思わぬ言葉が自分にむけて発せられ、その内容により恐怖に縮む事になるルイズであった。
「……ルイズ………あまりこの私自身に手を下させるような失礼な事は考えないで欲しいわ……せっかく10年ぶりに還ってきた愛しいあなたを長期間もの間ベッドに寝かせる状態にしたくはないですから……うふふふ……」
微笑みうかべたままで、述べるカリーヌの身体からは深淵のような黒いオーラが漂い始める。
「……ワ、ワカリマシタ、カアサマ……イゴ、キヲツケマス、ユルシテ、クダサイ……マイ、マム……」
とあまりの恐怖に機械的な堅い口調で母カリーヌに謝罪するルイズだった。
「お母さま、もうその辺りでルイズに厳しく接することはお止めにして下さい……あまりの緊張感にルイズが硬直して身体に良くないですから」
そう言ってカトレアはルイズを母カリーヌから庇う言葉を述べていた。
「……あ、ありがとうございます。ちい姉さま……まだ未熟な私ですけど、これからもよろしくお願いします。ちい姉さま……」
「別にお母さまの言われた事を気にする必要はないのよ、ルイズ……言いすぎはよく無いのだけど、あなたのハルケギニアにはないその日本での感性をこれからも大事にしなさい」
カトレアの妹を大切に想っている言葉を聴いてルイズは感激のあまり、瞳を潤ませていた。
少し気まずくなった雰囲気を変えるためにルイズが何事かを話始める。
「あの、父様、母さま、それにちい姉さまのお三方に対して、私が異世界地球から持ってきた素敵なプレゼントをいまから渡します」
そう言うとルイズはカリーヌ、公爵、カトレア、3人にのために用意していたプレゼントを取りに自分の寝室へ行くために家族に一言述べてから向かった。
ルイズとしては本当はもうひとりの姉エレオノールが還ってきてから渡そうと思っていたけども、雰囲気的に早めに渡す事になったのは仕方ないのであった。
しばらく時間が経った頃にハルケギニアでは珍しいどころか、今まで誰ひとり見たこともないデザインをした鞄を抱き抱えるように持ってきたルイズが開けて中から綺麗な紙に丁寧に包装された、カラフルなリボンまでかけられた上品な箱を出して両親と姉に手渡していた。
「ルイズ、この2つの箱には何が入っているのだね? 」
手渡された2つの箱に関してルイズに訊ねていた公爵だったが…………。
「あなた、中を開けて見れば解ることですわ」
横からカリーヌがそう言ってきたので、それもそうだと思いヴァリエール公爵が箱を開けて中身を確認すると…………。
「何のだコレはぁぁぁぁぁあ! 小さな針が有るところをみると、一応時計みたいなのだが……」
「あなた、こちらの方は見掛けはペンみたいな物なのですが……いつも使用しています羽根ペンと違って、とても色鮮やかな青をベースにしたゴシック模様の装飾を施して、拵えられた……一見すると六角の形をしている金属製の棒みたいなのですわ……」
カリーヌはルイズから手渡されたプレンゼントの2つある片方の箱をあけて中の品物を手に取り、その精巧な造りに驚愕していた。
「この品々はルイズが今まで住んでいた異世界のペンと時計ね」
ルイズが何1つ説明してもいないのに、2つの品物の正体を瞬時に理解して言い当てたカトレア嬢はいまのハルケギニアで1番の勘と洞察能力を持っているチートぶりを遺憾なく発揮していた。
「えぇ、ちい姉さまの仰る通りです。この時計はハルケギニアの置き時計や懐中時計と違って、地球製の腕時計はこうやって左腕に巻き付けるようにして嵌めます」
そう言ってルイズは実際自身の腕時計を使って家族に説明する。
「……日本とハルケギニアじゃ場所と時間が違うから、後で私がみんなの腕時計をトリステインの標準時間に調整しておくから」
「……儂には何の事かさっぱり解らんが、まぁ必要なことだろうから、それは任せるが………それよりこの異世界地球の腕時計についてどう使用するのか詳しく教えてほしいのだがな? 」
ヴァリエール公爵ピエールが地球製腕時計についての質問をルイズに問い掛けると、姉カトレアも興味津々な表情で妹に質問の言葉を発していた。
「ルイズこの腕時計はどうやって動いているのかしら? ハルケギニアの時計みたいに音がしないのだけど」
カトレアが腕時計の仕組みについて、妹のルイズに説明を求める。
「ちい姉さま、この腕時計の動力部分にはソーラ電波が使われていて、地球と違って電波は受信できないけど。この時計の中身にはソーラ電池という物が入っていて、ハルケギニアの大地を照す太陽の光りをこの時計に浴びせて電気とよぶ現象を発生させて、それを充電して時刻を刻みつけて用いるのです。それから固定化の魔法を掛ければ、後は半永久的に動きます……」
「うむ、光りで動くとは……これではマジック・アイテムみたいではないのか? 」
ヴァリエール公爵の腕時計の事を何1つ理解していない言葉を聞いて父親にこれ以上詳しく教えるのをルイズは諦めた。
ルイズが精密機械に対して父親のトンチカンぶりに黄昏ていた時、姉カトレアがプレンゼントに貰った地球製の万年筆を箱から出して珍しそうに手にして眺めながら、妹に声をかけてくる。
「ねえルイズ、この地球製のペンの外側の装飾がキラキラしていて、とてもきれいね」
ルイズにそう言ったカトレアが手に持っていた物はスイスの某1流メーカのブランド品万年筆でした。
「そのペンの名前はラグーンと言って、その外装装飾に使用しているのは、真珠母貝と呼ばれている貝をすり潰して塗り込めて加工したペンだからきれいなんですよ。ちい姉さま」
ルイズがカトレアの万年筆についてうんちくを述べていると、カリーヌも自分たちの品物も精巧に造られたモノなのか訊ねていた。
「ルイズ、私たちのペンも凝った造りなのですか? 」
「はい、そうですわ。母さま」
そう言って両親と姉に異世界の優れた技術で製作されたこれらの品々は今のハルケギニアのメイジも含めたすべての職人たちでは、絶対に造ることは出来ないと宣うルイズである。
「ルイズがそれほどまでに言う凄い品物ならば、さぞかし高い値段がしただろう? 」
父親のヴァリエール公爵に万年筆の値段を訊ねられて、どう応えて良いのか返事に困りルイズは頭の中ですこしの時間、思案していた。
(……あぁ、父様にどう説明したら良いのか解らないわよ! 地球の進んだ科学知識が無いと、どれ程腕時計と万年筆の事を説明しても中々理解出来ないわね……幼い頃から魔法中心に勉強してきた父様と母さまに今更新しい知識おぼえてほしいと言っても無理が有るわね……こればかりは……やっぱり魔法史上主義で今まで過ごしてきた弊害なのかしらねぇ………だから、そんな父様に地球の発達した文明製品説明したって解るハズ無いのよねぇ……それに日本円とハルケギニアのエキューとじゃあ、一応1万円とエキュー金貨1枚と等価交換だと考えても……実際の価値がどれ程になるのか、私だってそんな事解らないのにどうやって父様に説明すれば良いのか、頭が痛くなるわよ! ………1エキュー1万円と考えた値段どおりに言うしかないわね)
ルイズは酷く疲れたみたいな顔つきで父親ヴァリエール公爵にペンの値段を述べ始めた。
「……いえ、それが、父様の物がだいたい25エキューで、母さまのは50エキューに、ちい姉さまのは20エキューだと思います」
ルイズから教えられた値段(一応ルイズが決めたのが1エキューが1万円)を聴いた3人は物凄く驚愕した表情になっていた。
「……………こ、これ程の精巧な品物がたったの25エキューの値段で買えるとは……異世界地球はなんて恐ろしい所なのだ、こんな事とても信じられんぞ……」
ヴァリエール公爵は信じられないと言った顔つきでいたけども、ルイズからすれば低品質の物でも職人が1つずつ、手作りで製作して値段が高くなるハルケギニアの品物と、一度に何千何万も大量生産で造られていても高品質の異世界地球の品物とでは比べる事、じたいが出来ないと説明するルイズでしたが、何となく生まれつき勘の鋭さで解るカトレアと違い、まったく理解していない両親にはこれからヴァリエール公爵家の領地改革を進言しようと考えているルイズとしては、頭が痛くなる事であった。
あれから、家族でお互い10年間積もっていた事柄を色々話しているうちに晩餐も終ろうとしていたところ、 執事長ジェロームがヴァリエール公爵家長女エレオノールが今この館に到着したことを報告しに来たのだった。
ジェロームの報告を聴くとルイズは
「エレオノール姉さまが帰って来ているの? 嬉しい。ちい姉さま、父様、母さま、私エレオノール姉さまに逢いに行ってきます」
そう言うが早いか、ルイズは両親とカトレアに姉エレオノールに逢いに行くと言って大食堂を飛び出すと、勢いよく正面玄関へ走っていく。
「あらあら、ルイズは10年経っても相変わらず元気いっぱいなのは良いことだわ」
とカトレアがそうルイズの事で微笑むと
「………まったくあの子は何時まで経っても落ちつきがないのだから、これでは余程しっかり教育していかないと立派なヴァリエール公爵家令嬢には成れないから困ったものだわ」
カリーヌはトリステインで一番の名門貴族ヴァリエール公爵家の娘としての振舞いではないと、嘆いていた。
「………カリーヌ。そうあまり怒るな、まだ我が家に帰ってきて間もない事なのだから、ルイズに対してはもう少し長い眼でみてやれば良いではないか? 」
そうヴァリエール公爵はルイズに対しては甘く接しても良いじゃないかと奥さんに意見を述べていた。
一方その頃、エレオノールは竜籠から降り立ちヴァリエール公爵家邸宅正面玄関で出迎えていた使用人たちの前でとある事で腹がたち、憤慨しながら佇んでいた。
「………お父様が大事なお話があるからっていうから、アカデミーに休暇届けだして急いで帰ってきたのに、出迎えているのはジェロームと使用人だけじゃ無いのよ!! ……そのジェロームも父様へ報告しに今は居ないし、どうなってるのよ? 本当にもう! 」
両親の出迎えが無かったので、生来の気性の激しさもありエレオノールは少し癇癪をおこしていた。
玄関でいつまでも怒っていてもしょうがないと思ったエレオノール
はこの時間帯なら父親と母のふたりは小食堂で晩餐の食事中だと考え、そこへ向かうためエレオノールが廊下を歩き出そうとした瞬間、廊下の奥のほうからまるで弾丸のような速さでエレオノールに向かって、人らしき物体がやって来るのを瞳を凝らして見ていたら、その正体はとても懐かしくそれに尤も逢いたかった愛しい者であった。
「エレオノール姉さまあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
廊下奥から、嬉しさのあまり今にも泣きだしそうな顔でエレオノールに向かって大きな声で大好きな姉の名前を呼びながら、ルイズは駆けよって来ていた。
「………あ、あああ、あなた、もももも、もしかして、ちびルイズなのぉ? 」
そう言って、10年ぶりに成長した姿で逢えた妹を見てもまだ半信半疑のエレオノールは思わず叫び声を上げるほどの問い掛けをルイズにしていたところを、後からやって来たカリーヌが今朝ヴァリエール公爵家に起きた奇蹟の出来事を簡単に説明し始めると眉が吊り上がるくらい表情が険しくなって、最後は怒りだした。
「なんで! ルイズが還ってきた重要な事を手紙に書いて、私に報せてくれなかったのよ! 私がこの10年、どれだけルイズの事を想ってハルケギニア中を探しまわっていたのか、お母さまは知っていたくせに! よくも私の気持ちを踏みにじるこんな酷い事が出来るわねえ!! 」
エレオノールがカリーヌに対して真剣に怒るのも、無理もないことだった。
もともと彼女、エレオノールが王立魔法研究所(所謂アカデミー)に入った理由が妹カトレアの病気を治す事もあったが、なによりも忽然と消えた末の妹ルイズを捜すためでした。
「……違うの、エレオノール姉さま。母さまたちを責めないであげて、私が姉さまには家に帰って来るまで報せないように頼んだの、だから怒るのなら私に……………」
こうなった事の真相を話すルイズに対してエレオノールは何かを問いかける。
「ねえ、どうしてそんな事をお母さまたちに頼んだのルイズ………」
「………だって、エレオノール姉さまは私のことを今までずっと捜してくれていたんでしょう。そのためにアカデミーにも入った姉さまが、私がヴァリエール公爵家に還ってきたことを手紙に書いて報せたら、急いで還ろうとしてもしかしたら、ケガでもするかもしれないと嫌だから、それで母さまたちに私が還ってきたのを報せないように頼んだの、だから全て悪いのは私なの……ごめんなさい、エレオノール姉さま………」
10年ぶりにようやく逢えた妹ルイズが自分の事を心配してやってくれたのを、怒れる訳がなかったエレオノールであった。
「………そういう事だったの、私のために心配してくれて……あ、ありがとう………ルイズ……で、でも、よく無事に………かぁ……えって………ぅう……………きて……ひっく………ぐす…………ぅう、うあぁぁぁぁぁ……………………………………」
エレオノールは10年ぶりにルイズの成長した無事な姿をみて感極まったのか、今まで心の中に抑えていた色々なモノが堰を切り、流れ出ていくかの様に泣き出していた。
「エレオノールお姉さま。これからは無理をすることは無いのですよ……気を楽にして良いのですから」
そう言ってカトレアはエレオノールを優しく抱きしめて、慰めるのでした。
「そうです。エレオノール、あなたは小さな頃から何事も思いつめて、無理をしすぎなのですから」
カリーヌが軽く小言を言うのですが、言われた当の本人エレオノールは
「……うぅ、そんな事を仰るお母さまの方こそ、ルイズを心配して一時期痩せすぎて身体の具合が悪くなっていたじゃないですか! あの時私がどれ程心配したと思っているのですかぁ! 」
長女に図星を指摘されたカリーヌは
「……あ、あれは………その……なんと言うの……ですか……………」
顔を朱にしてモジモジと狼狽えるする姿がとても可愛い、カリン様である。
「それにお父様や、カトレア、あなただって……」
先程から家族たちがルイズが行方不明になった為に心配のあまり一時期体調不良に陥った事柄を述べていたエレオノールの言葉をカトレアが鋭い声で遮る。
「お姉さま! ルイズの前では……」
エレオノールにそう言って、人差し指を口に当てそれ以上言うのはダメだとジェスチャーで示すカトレアである。
「……母さま………今のエレオノール姉さまが仰った言葉は、本当の事なのですか? 」
エレオノールのその言葉を聴いてルイズはカリーヌに真偽を訊ねる。
「ち、違うのですよ、これは………」
何とか誤魔化そうとするカリーヌだったが………。
「カリーヌの言うとおりなのだよ。ルイズ」
言い訳のレベルにもなっていないヴァリエール公爵ピエールのセリフであった。
「ルイズが気にする事は全然ないのよ……」
そう語るカトレアの表情は何処か痛々しかった。
先程からの家族たちの言葉を聴いてルイズは心内で何かを考えていた。
(………良く見てみると母さまは、10年の歳月が経ったとはいっても……前は凄いほど肌のはりと艶が有ったのに、今は見る影も無くなっているわ………それに、父様も昔は見事な金髪だったのに、いまじゃ所々白いモノが混じっているし………それから、ちい姉さまは先程はお身体の具合は大丈夫だと言っていたけども……よく見ると青白いお顔をしているわ………そして、エレオノール姉さまだって、10年前は決して人前処か家族にも弱味をみせる様な事は絶対にしない人だったハズなのに…………)
ルイズが心内でいろいろ思い描いていた様に、ヴァリエール公爵ピエール、カリーヌ、エレオノール、カトレア。それぞれがルイズの事で心の傷を負って密かに心労を重ねていたのでした。
(……私がいなくなっていたのが、これ程みんなを苦しめていたなんて、これからはあまり心配掛けない様にしないと………思ってはいるけど、でも心配かける心当たりが有るから……先に謝っておくわねえ。母さま、父様、エレオノール姉さま、ちい姉さま。ごめんなさい……ルイズは悪い子ですから、これで良いのよね~)
心の中でいくら謝っても何の意味もない事に気付かないルイズである。
しんみりした雰囲気を変えるためにヴァリエール公爵はあることを言い出した。
「その、だな、何時までもみんなで此処にこうしている訳にもいくまいし、積もる話もあるからな、応接室へ移りみんなでお茶を飲みながら、ゆっくり気を楽にして過ごそうではないか」
ヴァリエール公爵ピエールの提案に家族みんなが賛成して頷き、この日は夜遅くまで10年ぶりにヴァリエール公爵家の家族全員が揃って、家族みんなが10年分も有ったいろいろな出来事を楽しく語らいあっていたのでした。
良いことは何時までも続いてほしい事である。
続く。
今回で一区切りついたので、次回から2回才人が主人公の外伝を執筆する予定ですから、よろしくお願いしますね。