今より俺はゴッドフレイ、戦士よ!   作:飴玉鉛

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お待たせしました…難産回です。 感想、評価、宜しく頼み申す。 



戦争の季節

 

 

 

 

 

 絢爛の都ローデイル。居並ぶ文武百官と、荘厳なる神の騎士達。

 

 激動の時ゆえに棚上げにされてきた、王の為の戴冠式。

 王冠を改めて担った女王が、伴侶たる王へ獣と共に授ける。

 

 豪傑は神から贈られた獣を見て、失笑を漏らすのを必死に堪えた。

 

 黄金の鬣と白い体皮を持った獣だ。獣人でもないのに鎧を纏い、銀の手甲で前肢を固め、後肢にも脚甲を嵌めている。瞳の中にある光は穏やかで、およそ獰猛な獅子らしくない。

 獅子の銘は、獣王セローシュ。

 正体は本来神人にだけ遣わされる影従であり、マリカは特別に影をゴッドフレイに賜わした。無感情に女王は諌めたのだ、戦地になき時は常にこの獣を宰相として背負い、貴方の荒ぶる闘争本能を抑制するべきだ、と。それでこそ黄金樹に於ける、最初のエルデの王に相応しい威厳が顕れよう。

 ゴッドフレイの鎧と王冠、マントは宰相の獣が取り込んで一体化した。獣を降ろした時、いつでも本領を発揮できるようにという配慮らしい。ここにだけ便利さを見い出したが、ゴッドフレイとしてはマリカの背後にいる二本指の思惑が透けて見えて、なんとも笑えてきてしまうのである。

 

 二本指はゴッドフレイを飼いならしたいのだ。有事に備えて強き王を手駒にしたい。

 

 だからこんな獅子をゴッドフレイに寄越した。

 本人も自覚している、己は闘争本能を抑え込まれてしまえば木偶の棒に成り下がるのだ。知恵の巡りも闘争でのみ早く、牙を抜かれては平時だと退屈さを持て余し、無気力に時を過ごすだけになるだろう、と。そしてマリカの命で戦場に出た時だけ宰相を降ろせば、抑圧された分だけ激しく戦うか、赴いた戦地でも獣を降ろさぬ腑抜けになるかもしれない。

 もしゴッドフレイが二本指、黄金樹を敵だと見做していなければ、二つに一つの惨めな境遇に身を窶していたかもしれなかった。だが、指や大樹をいずれは屠る敵だと見定めている今、ゴッドフレイはたとえ闘争本能を抑制されても腑抜けにはならない。今は忍従の時だ、臥薪嘗胆という奴である。

 

 謂わば宰相の獣を受け入れるのは、エルデの王たる誓いの証だ。

 

 霊体化した獣が両肩を掴んでいる。背負った獣に血の滾りが抑え込まれ、内なる闘志が小康状態になるのを感じた。例えるなら冷たい液体が、なみなみと頭蓋の内に注がれている感覚だ。

 不快だった。だが戦火を望む暴虐の心を鎮められてしまうと、なるべく考えないようにしていた事が脳裏にチラついてくる。己は何故こんなものを受け入れてまでマリカに肩入れする? 狭間の地にわざわざ乗り込んできたのは、得難い好敵手を求めていたからに過ぎなかったはずだ。

 

 指やら黄金樹やらは興味の対象外で、マリカという女はあくまで神輿でしかなかったはずで、知り得た好敵手と相対する事だけが目的だったはず。なのに今は、自らの頭に王冠を乗せる女の為に耐えようとしている。なぜだ。

 

「私の王。これからも……導きに従い、戦ってくれ。エルデを黄金律の下、平定する為に」

「………」

 

 愛してしまった。

 ただ、それだけなのだろう。答えは存外にちっぽけで、ありふれていて、あほらしく安っぽい陳腐さに塗れている。だが悪くない、愛してしまったのなら仕方ないなと若さを手放した。

 ゴッドフレイに自覚はなかったが、宰相の獣を受け入れたこの時が、彼を独立独歩の戦士でなく、愛する伴侶と子供を持つ父親にしたのだろう。明確に、弱体化した瞬間だ。

 自分が弱くなった事を、ゴッドフレイは穏やかな気持ちで認める――だが、決して腑抜けに成り下がりはしない。戦士であるままに父となり、王となり、そして貪欲に勝利へ手を伸ばす。

 そうだ、勝利だ。好敵手との死闘という過程ではなく、勝ったという事実を希求する。得難い好敵手との戦いで敗れたなら、道半ばで死んでもいいとは最早思わない。

 

 思えば名を改めていても、今まで彼は『ホーラ・ルー』のままだった。

 今漸く『ゴッドフレイ』に成り果せたのだ。

 彼は最早戦士ではない。『マリカの王、ゴッドフレイ』である。

 

 王の器が深まった事を、大いなるモノは見落とすだろう。

 所詮は小さな蟻。その一噛みで崩れるとは、夢にも思わない。

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 本物の神が統治する夢のような国に対し、頗る聞こえが悪く俗な例えをするようであるが、ローデイルは世界征服を掲げる独裁者による侵略国家だ。付け加えて宗教国家であり、世界最強の軍事力と支配力を有してもいる。これらの要素を列挙してしまえば、考え得る限り最悪の国のように感じるだろう。

 

 だが、特筆するほど強固な信念や信仰がない者は、表立っては警戒して対抗の姿勢を見せても、神の支配する国の実態を知ればローデイルの侵略を待ち望むようになるだろう。

 黄金の別名に偽りはない。豊穣と神の法が守られた国では個々人の間に諍いが生じても、生き死にに関わる大事件など起こらず、人々の形成した社会規範に於ける『正義』が履行されるのだ。

 人々に成長はあれど老いはなく、疫病知らずの健康体でいられ、餓えとは無縁で暮らせる上に、外的要因としての死の恐怖から遠ざけられて守られる。神の恵みを信じ、神聖な黄金樹を崇め、信徒として敬虔に生きる事を強要もしない。強いるまでもなく大いなる存在を人々は畏敬するから。

 老いがなく死がないという事は、嘗て荒廃していた世界を知っている人間が健在で在り続けるという事である。極限の貧困や自然災害、あるいはそれに類する強大な何者かによる抑圧、そうしたものを実体験として思い知っている者ほど、神が斃れ嘗ての日々に逆戻りする事を恐れた。

 

 黄金樹、その短くとも輝かしい全盛の時代である。

 

 過去を知る者ほど熱心に働き、黄金律の加護が当たり前に存在する世代より高位の存在となる。後進はそうした先達の教えを受け、或いは情操教育として信仰心を刷り込まれ疑いを持たない。

 稀に黄金樹を不審に思い疑った者が出てローデイルから出奔しても、黄金律の加護がない地の実態を知れば這う這うの体でとんぼ返りしてきた。先達はそれ見たことかと呆れ、彼らを信じる後進も信仰を深める。まさに珍事だ。それでも逃げ帰ってきた者を嘲笑い、虐げたりはせず暖かく迎え入れて、そうした優しさに触れたなら帰還者も敬虔になるのだ。

 

 いわゆる世界征服を目論む独裁者、永遠の女王は巨人戦争を制したゴッドフレイの戴冠式より、十年もの間こうした循環を見守り、国の統治と整備に心血を注いでいた。

 生死の境が意味を成さず、死がない時間の経過は酷く緩やかだ。なのに瞬きのように一瞬だったと感じる十年間だった。狭間の地全土に黄金律を布き、遍く全てに黄金の人生を齎さんとするマリカであるが、急ぎ過ぎて足元を疎かにするつもりはなく、まず自身の民を癒やすのを先決としたのである。

 まるで狭間の外で生じた異分子により、早まった王の到来から本来の時間軸に合わせようとしているかのような静寂と沈黙であった。無論マリカはこの十年を無為に浪費する事はなく、自らの心の整理を行い、黄金律の理想と黄金樹の歪みを直視して、想いと計画を新たにする決意を固めていた。

 

 黄金律は今見つめ直しても完璧で、完全な理想そのものだ。だが……完全だからこそ不完全で、完璧だからこそ破綻している。全能の神マリカは理想の果てを見切ってしまえたのだ。

 

 ケイリッドに建てられたマリカ教会に三人はいた。

 

「……ゴッドフレイ、私の願いが定まった。聞いてくれ、私は――」

「――よかろう。だが、よいのか? ゴッドウィン、我が倅よ。その計画は、お前を――」

「――これは我からの発案だ。母は最後まで望まぬろうが、我の――は必須。案ずる事はない、覚悟はできている……そして、我は――することはない」

 

 時が経てば忘れ去られよう。しかし黄金樹最優の英雄はゴッドフレイではない。後に頭角を表し台頭するデミゴッド達でもない。真の英雄はこの『黄金』のゴッドウィンだ。

 

 政務の一部を熟すようになり、別人のように穏やかになった事で、成熟した王者の威厳を醸し出すようになったゴッドフレイは、しかし、巌のような相貌に僅かな憐憫を見せた。

 たったの十二歳で、何者も並べぬ英雄の素質を開花させ、純粋な人の子には有り得ぬ叡智で遠大な計略を練った王子。母は悲愴な貌で愛息を見詰め、父は憐憫の後に覚悟を汲んで祝いだ。

 

「……流石は私の子だ。父はお前を誇りに思う」

「――その言葉だけで我の全ては報われている。だから母よ……どうか嘆く事のなきよう」

「……可愛げのない子に育ってしまった。甘えさせてやりたかった。甘やかしたかった。不甲斐ない母ですまない、私の愛するゴッドウィン」

 

 陰謀の密議は何時の頃に行われ、密約は如何にして交わされたのか。以来、三者は二度と密議の場を設ける事はなく、マリカはゴッドフレイに言った。

 

「我が王ゴッドフレイ、黄金樹は貴方を手放す事はないだろう……故に来たる統一の時、黄金樹ではなく私が貴方から祝福を奪う。そしてその瞳が色褪せる時、狭間の地を追放しよう。外に戦を求め、生き、そして――そして……!」

 

 声を震えさせ、血を吐くように。

 

「――()()()()()()()。生きて、帰ってきてほしい。その時に、私が奪ったものを返そう。狭間の地に戻り、私に辿り着いてくれ。死と共に強く在る長子の為。我が王よ、約束を」

 

 黄金の一族の始祖は太々しく笑い、請け負った。

 

「女の我儘を聞いてやるのも男の甲斐性だ。任せておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 この十年の歳月は瞬きのように過ぎ去ったが、記録的な出来事がなかった訳ではない。

 

 マリカが急き立てられるように子を求めはじめたのだ。ゴッドフレイはそれに応じ交わるも、生まれたのは忌み角と呪われた血を持つ双子であった。

 もともと子と夫を愛する情の深い女であったが、マリカは新たに生まれた双王子を見て全身に鳥肌を立たせ、絹を裂いたような悲鳴を上げる。所以は近しい者しか知らないが、人としても神としても、そして女王としても成熟したマリカの中にある憎悪は衰えていない。影に落とした忌まわしき地、その民の系譜は情け容赦無く弾圧しており、粛清を免れた者も奴隷に落とすか、生まれた時にすぐ間引く措置を取っていた。神を信奉する民達も呪われた民というレッテルを信じ、疑うことをせず女王に倣っている。

 

 故に自らから生まれた呪いの子に、マリカは嫌悪も露わに叫んだのだ。

 消えろ! 私の視界に穢れた呪いを映すな! と。

 

 憎み、根絶やしにせんと誓った存在が、よりにもよって自らの胎から産まれ落ちたという事実は、確実にマリカへ精神的な衝撃を与えただろう。だが仮にも愛する王との間に設けた子であり、自身の身内には情深い女である。マリカは殺してしまいたいという衝動より、我が子を殺す事への躊躇が勝って……更に双子にとって幸運な事に彼らは男児だった。

 地下深くに幽閉し存在を秘してしまおうかと思ったマリカだったが、この事が知られたら叱られてしまうと考え直し、やむなくこの双子をゴッドフレイへ預ける事にした。そしてマリケスに、頼むからこの忌み子たちを私に近づけるなと、ゴッドフレイへの言伝を頼んだ。

 

「ゴッドフレイ王、暫し時を頂きたい。別れの挨拶に参りました」

 

 双子を預かったゴッドフレイだったが、彼にきめ細かなケアを要する子育ての心得はない。故に彼は双子達の世話を宰相に丸投げした。

 獣王の鬣に埋もれ、寝息を立てる双子――モーゴットとモーグ。そんな彼らの世話を、セローシュと共に請け負ったのはゴッドウィンの分け身メスメルである。

 王者となっても獣と長子の半身に子育てを委託する彼の本質は、やはりどれだけ穏やかになっても変わりがないのだろう。たとえ直接背負っておらずとも近くにいる限り抑制の役割を果たせる宰相の獣を尻目に、ゴッドフレイは今日も今日とて厄介な輩に絡まれていた。

 

 赤髪の英雄ラダゴンである。

 

 マリカは統治に専念しているがゴッドフレイは戦争の英雄である。狭間の地の各地を征服し、反抗勢力を叩き潰して回った彼は、ケイリッドとリムグレイブを攻略すると世界征服は完了する。

 ゴッドフレイ軍には多くの英雄が集い、彼の下で多くの戦場を渡り歩く事で英雄たちの勲歌が生じている。中でもラダゴンは覇王ゴッドフレイの右腕と称される活躍をしていた。

 婦女子の羨望を集める美丈夫の彼は、戦士としてのゴッドフレイを敬愛していると公言しており、リスペクトの証と称して鍛錬の時と、戦場に出る時は上裸を晒していた。平時ではほとんど日常的にゴッドフレイの許へ赴いて指南を頼み、積極的に交流を持とうともしてくるのである。

 

 ゴッドフレイは王として政務を熟すようになったが、残念ながらその手の能力は低い。はっきり言うと無能だ。平和な国の統治なんて経験がなく、適性もなく、ついでにやる気もない。

 戦争以外に能がないのだ、だから戦場に出ていなければ基本的に騎士や兵、自身に仕える戦士達を鍛えてばかりいる。ゴッドフレイは一兵卒にすら自身の地鳴らしの技を教え、強靭な精兵に仕立て上げており、軍からの支持は絶大なものになってはいるが、こうしてラダゴンから絡まれる日々は、中々に複雑な心境を王に齎していた。

 

 ゴッドウィンからの密使によると、ラダゴンこそが二本指により分かたれたマリカの半身らしい。

 

 要するに大敵の走狗だ。一度は殺してしまおうかと思ったものだが、分け身は文字通りの半身。ラダゴンを殺せばマリカにどんな影響が出るか解らず、安易な殺害には踏み出せなかった。

 それに、どうにもラダゴンの様子がおかしい。二本指の傀儡には見えず、自由意志で行動しているようにしか見えないのだ。マリカの半身らしく彼女の面影を感じさせるから、ゴッドフレイも彼を邪険にあしらう気になれない。これで性悪だったら良かったのだが、ラダゴンは好漢だった。

 彼は忌み子や呪いへの忌避感を持っていないのだろう。メスメルやモーゴット、モーグにも温厚に接して可愛がり、子育てを手伝ってくれる。特に同じ赤髪のメスメルがまだ幼かった頃は、同情にも似た愛情を示しており、メスメルもラダゴンの事は敬愛しているようで……本当に厄介だ。

 

「別れの挨拶だと?」

 

 そんなラダゴンが最後の挨拶を求めてきた。しつこく絡んできていた男だったが、不愉快だったわけではない。離別の挨拶をしたいと言われると僅かに寂寥を感じてしまう。

 長槍を持つメスメルに稽古をつけてやっていたゴッドフレイが、長子の半身を殴り倒して反駁すると、赤髪の英雄はメスメルを憐れむように一瞥して言った。

 

「は。私にも黄金樹の導きが下ったのです」

「導きか」

「先日の女王マリカの布告をゴッドフレイ王も御存知でしょう。私は女王の御言葉に感銘を受けました。黄金律の探求の為、私にも出来る事があるのではないか……そう考えていたからか、私にレアルカリアへ行けばよいという啓示がありました」

 

 マリカの布告。女王は、確かに言っていた。『黄金律の探究をここに宣言する。あるべき正しさを知る事が、我らの信仰を、祝福を強くするのだ。幸せな幼き日々、盲信の時代は終わる。同志たちよ、なんの躊躇が必要だろうか!』……だったか。なかなかに苛烈な演技であり、演説だった。ラダゴンはどうやら、自らにマリカの分け身である自覚がないようで、マリカにも忠誠を誓っており女王の言葉を真摯に受け止めたらしい。そんな彼に、導きがあったと。

 

 彼はレアルカリアに行くらしい。

 レアルカリアはリエーニエを統べる魔術学院だ。二本指はラダゴンに魔法を修めさせたいと? 今のレアルカリアは政体が変わり相応に綻びがある……果たして魔法だけが目的なのだろうか。

 あの学院は今、レナラの月の魔術に魅了され、カーリアを王家としている。しかし依然として黄金樹との盟約を保持し、敵対はしてきていない。故にゴッドフレイは放置を決め込んでいるが、ともするとラダゴンを利用して戦争の火種を作り、ゴッドフレイに討たせるつもりだとすれば……。

 考え過ぎか? 馬鹿の考え休むに似たりとは……さて、誰の言葉だったか。ゴッドウィンやマリカが対応を決めればよいか、と深く考えるのをやめる前にラダゴンへ釘をさした。

 

「いいがな……今のレアルカリアを統べるのは、マリカのお気に入りだ。下手な真似はするなよ」

「無論、礼を失した振る舞いは致しません」

「ならばよい。壮健でな、ラダゴンよ」

「は……また、いずれ」

 

 一礼し、踵を返して去っていくラダゴンの背中を見送ったゴッドフレイは、セローシュが僅かに唸るのを聞いて嘆息する。

 

「分かっておる……次は、リムグレイブだ」

 

 ゴッドフレイはセローシュに、戦争の準備をしろと急かされたのだ。

 ストームヴィル城を攻略し、ケイリッドを平らげる。そうしてエルデの王になれ、と。

 

 既に、彼は祝福を奪われていた。役目を果たした後、ゴッドフレイの瞳は褪せるだろう。

 

 戦争と平和の混在した、刹那の微睡みに近かった十年。その終わりに、ゴッドフレイは()の前の静けさを感じていた。

 

 死闘の機運を肌に受けている。

 内なる暴虐の鼓動が強まってきている。

 恐らく、最後の好敵手との対峙が迫っているのだろう。

 ゴッドフレイは嘆息し、地面へ仰向けに倒れ、薄い胸板を荒く上下させる少年を見下ろした。

 足の爪先で我が子の腹を小突き、呻く声を聞き流して声を落とす。

 

「メスメルよ、次の戦にお前も連れて行く。休んでいる暇はないぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 




『ゴッドフレイ』
 原作でも本作でも、なんやかんやでマリカに惚れている。
 エルデの王たるを誓うのに、蛮地の勇者へ信仰や忠誠は似合わない。
 純な愛がよく似合う。
 この十年で、狭間の地の制覇に王手をかけている。


『ラダゴン』
 本人の意志なく勝手に生み出された分け身。黄金律を絶対視する男性だが、マリカの分け身であるだけに、ゴッドフレイには極めて好意的で協力的。強さの象徴として憧れ、戦い方を真似る。
 今はまだ一介の英雄であり、大いなる意志や二本指の傀儡にされておらず、自由意志で行動しているのでかなり温厚な人格者であり、伴侶を持ち子供が出来れば家族思いになる好漢。
 本作だとリエーニエ戦役は起こらない。代わりにゴッドフレイ軍の戦争に従事し活躍。レアルカリアには学徒として赴き、カーリアを王家にしたばかりのレナラと出会い、統治を助けたり、レナラに魔術を学んだりするラブ・ストーリーを展開する模様。

 もし彼が傀儡にされてレナラを捨てたとするなら、娘のラニが黄金樹、黄金律、二本指を嫌悪する事になるのも大いに納得できる。慕っていた父が別人のようになり、母を捨てたのであれば嫌悪して当然だ。ラダゴンの変貌が、ラニに「神の真実」を悟らせたのだろう。ライカードも思う所はあったはず。
 あるいは彼は最初から、カーリアの血統を神の一族に加える為、導かれていたのかもしれない。出生や思想からして導きに忠実であっただろうし、かなり有り得るように思える。


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