色々なケミーに憑依される久堂りんね   作:青冬夏

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※この作品は台詞形式での小説となります。苦手な方はブラウザバッグをすることを推奨します。


ひたすらズキュンさせていく久堂りんね

○キッチンいちのせ食堂

一ノ瀬宝太郎、銀杏蓮華、鶴原錆丸の三人が横に並んで正座。

ドアから現れる、頭に王冠を被った久堂りんね。三人の前に立ち、橙色の双眸を向けた。

りんね「(右手を三人の前に差し出して)さあ……私の前に恋しなさい」

宝太郎たち「ズキューン!」

 

りんねの心の声「なぜ今の状況になったかと言えば……それは数時間前の出来事にまで振り返る。あれは……宝太郎がズキュンパイアを無事に捕獲した時のことだった」

 

(スラッシュ)

テロップ「数時間前」

(スラッシュ)

 

○街中

道を歩く宝太郎、りんね、蓮華、錆丸。四人で歩いている中、宝太郎はズキュンパイアのケミーカードを手にしながら、何やら微笑んでいた。その隣を歩いていたりんねが「何してるの?」と話しかける。

宝太郎「(ニヤニヤしながら)いや~……また新しいケミーとお友達になれることが出来るなんて」

りんね「ああ、なんだ。そういうこと」

宝太郎「(りんねの前に出て)しかもさ、今度のケミーは女性をズキュンさせることが出来るんだよ!? 何だか俺らにないことで……」

りんね「(宝太郎の言葉に被せて)でも、そのケミーは人をズキュンさせてエネルギーを吸収して自分のパワーに変えるんだよ? そのことわか……」

宝太郎「大丈夫。分かってるよ」

りんね「(小声で)大丈夫かな……」

暫く歩く一同。すると、宝太郎が持っているズキュンパイアのケミーカードに異変が生じる。

宝太郎「え?」

りんね「どうかした?」

宝太郎が手に持っているケミーカードをりんねに見せる。そのケミーカードは今にも飛び出しきそうだった。

錆丸が手に持っているタブレットをかざして、

アイザック「それはヤバいぞ!」

宝太郎・りんね「ヤバい?」

と言った途端、ケミーカードからズキュンパイアが飛び出し、宝太郎たちの前に現れる。

ゆっくりと一同に振り返るズキュンパイア。口角を上げて、

ズキュンパイア「僕を呼んだかい?」

 

×××

 

アイザック「なんでだ……なんでお前がケミーカードの中から出てくるんだよ」

ズキュンパイア「決まってるじゃん……」

ズキュンパイアは宝太郎に近づく。

ズキュンパイア「(額を近づけさせて)君がそう言ったじゃないか」

宝太郎「え?」

ズキュンパイア「(大袈裟に)君が僕のように! 女性たちをこの掌の上で転がして……転がして、ズキュンさせたいって……言ったじゃないか」

宝太郎「えっと……それは……」

ズキュンパイア、溜息をつく。

ズキュンパイア「(額を押さえて)ったく……。それじゃ行くよ」

そう言い、ズキュンパイアは王冠に姿を変え、宝太郎の頭に乗っかろうとする。

アイザック「宝太郎危ない!」

蓮華と錆丸が宝太郎を後ろに退ける。が、王冠はりんねの頭上に移動する。

蓮華「りんね!」

りんね「(王冠を見て)え?」

王冠はりんねの頭上に乗る。

りんね「(その場に座り込んで)うわぁ……うぅ……」

と言ったつかの間、りんねはすぐにその場を立ち、後ろに居る宝太郎、蓮華、錆丸に視線を向けた。

橙色の双眸を。

 

○キッチンいちのせ食堂

りんねを前にして宝太郎、蓮華、錆丸の三人は正座をする。その様子を橙色の双眸で見ていたりんねは少しばかり口元を緩ませていた。そして、りんねの頭から王冠が外れ、ズキュンパイアは人間態へと戻る。

正気を取り戻したりんね、そしてその他の三人はズキュンパイアへ顔を向けた。

ズキュンパイア「なんだ……? なんだその珍しいものを見つけたような目つきは……?」

りんね「なんだじゃない! なんで私に憑依したの!」

ズキュンパイア、頬を緩ませてりんねに近づく。

ズキュンパイア「それは……そこに居る青い少年に訊いてくれ」

宝太郎「お、俺?」

ズキュンパイア「そこに居る君が突然、この僕に拒絶を示したからさ。あの状態……王冠の状態から再び元の状態に戻るのは難しいんでね。だから、君の身体を利用させてもらったんだ」

りんね「だからって……。でも、なんでケミーカードから出てきたの」

ズキュンパイア「それはだな……勿論、青い少年が言っていたこともその理由の一つになるのだが、一番の目的は……」

宝太郎「一番の……目的?」

ズキュンパイア「ああ。僕の中に温存していた体力が殆ど無くなりそうなんだ。だからこうして、君たちの前に現れて……」

蓮華「それで、エネルギーを吸収しようとしたわけ……と?」

ズキュンパイア「その通りだ。フィアンセくん」

蓮華「ズッキュン」

ズキュンパイアの王冠に蓮華のエネルギーが少し吸収する。

錆丸「(小声で)確かに……」

と言い、タブレットを自身の前にかざした。

アイザック「確かに、ズキュンパイアから感じ取れるケミーの力が少し弱まっている。このままだと……ズキュンパイアは亡くなってしまうかも知れない」

宝太郎「え、亡くなる!?」

アイザック「ああそうだ。ケミーカードは通常、保存しているケミーの体力が損なわれない為に特殊なものが施されているのだが……ズキュンパイアも含め、一部のケミーではそれが無効となるケースが幾ばくかあるんだ」

ズキュンパイア「そう。そのコンピューターが言ったとおり、今僕の中にあるエネルギーは君たちに捕まえられる前より少なくなっている。だから……」

宝太郎「ということは、ズキュンパイアのエネルギーを取り戻すことが出来れば……」

ズキュンパイア「話が早いな、少年。では早速……」

りんね「待って」

ズキュンパイア「(りんねに向けて)どうした、子猫ちゃん」

りんね「一ノ瀬が言うとおり、ズキュンパイアのエネルギーを取り戻すことに基本的に賛成。だけど、一般の人のエネルギーを集めることは反対」

宝太郎「大丈夫だよ久堂。俺たち錬金アカデミーなら掟に反することなく、エネルギーを取り戻すことは出来るよ」

りんね「いやそういうことじゃなくて……」

宝太郎「そういうことじゃなくて?」

りんね「(ズキュンパイアに顔を向けて)……私に憑依して欲しいの」

宝太郎・アイザック「はぁ!?」

ズキュンパイア「どうしたどうした。一体どういう風の吹き回しだ?」

りんね「いやその……私に憑依した方が……エネルギーを早く取り戻すことが出来るのかなって……」

ズキュンパイア「あぁなるほど」

りんね「(唇に指を添えて)あと実際、私の顔が良いし……」

アイザック「メタいことやめろ!」

宝太郎「でもそんなことをしたら……久堂の身体が……」

りんね「大丈夫。私のことなら心配しなくて良いよ」

と言い、りんねは微笑む。その微笑みを見た宝太郎は微笑み返す。

りんね「(ズキュンパイアにもう一度顔を向けて)その代わりなんだけど……」

ズキュンパイア「なんだ?」

りんね「出来れば、私の意識が保たれた状態で憑依して欲しい」

ズキュンパイア「……なるほど、まあ難しくはない」

宝太郎が錆丸に視線を向けて、

宝太郎「え、ケミーってそんなことも出来るの」

アイザック「ああ。まだ報告数も少ないから分からないが、憑依される人間の意識を阻害することなく、ケミーは人間を乗っ取ることが出来ると言われているんだ」

宝太郎「なるほど……」

と言い、ズキュンパイアに目線を移す。

ズキュンパイア「それじゃ……」

と言って、ズキュンパイアは指を鳴らす。王冠へ姿を変えた後、静かにりんねの頭上に乗っかる。

 

宝太郎「久堂……」

その声に反応し、王冠をつけたりんねは後ろの宝太郎に顔を向ける。

 

アイザック「橙色の双眸……憑依したのか」

宝太郎「久堂……だよね?」

りんね「……そうだよ」

宝太郎「久堂の声だぁ~~!」

宝太郎の喜ぶ声が錬金アカデミーの中を響かせた。その姿を、りんねの橙色の双眸が捉えた。

 

×××

 

りんねの心の声「と言うわけで……今、私の身体にはズキュンパイアが憑依している。あくまで自分の意識が阻害されない形で」

りんね「(右手をゆっくり上げて)私の前に恋を」

宝太郎たち「ズキューン!」

りんねの頭上の王冠にエネルギーが集まる。

 

×××

 

りんね「いつしか私は先輩を超える……錬金術師でありたい。だが、その夢を阻害しているのは君だ」

宝太郎たち「ズキューン!」

 

×××

 

りんね「君と王国を作り上げることしか興味がないんだ……」

宝太郎たち「ズキューン!」

 

×××

 

テロップ「二時間後」

 

×××

 

疲れ切る宝太郎、蓮華、錆丸。

足元をもたつかせるりんね。

蓮華「もう流石に良いんじゃない……? エネルギーも十分溜まった頃だと思うし」

宝太郎「確かにそうだね。久堂、もう大丈夫だと思う」

りんね「(疲れ切った表情で)ええ……それじゃ……」

りんねが王冠を外そうとする。が、苦戦して王冠を外せなくなる。

アイザック「どうした?」

りんね「王冠が……外れない……」

宝太郎「えっ? ちょ……手伝うよ」

と言い、宝太郎はりんねの王冠を掴んで外そうとする。

 

──その時だった。

 

宝太郎が尻餅をついたとき、王冠が独りでにりんねの頭から離れ浮遊を始める。王冠の姿から戻ったズキュンパイアは人間態へと戻っていき、溜息をついた。

ズキュンパイア「人使いが荒い……。僕を何だと思ってるんだ」

一同「ごめんなさい!」

ズキュンパイア「……ったく」

蓮華「でも……これでエネルギーは溜まったよね?」

ズキュンパイア「ああ。これでもうカードの中に入れられても問題は無い」

宝太郎「良かった……」

と言い、ズキュンパイアの目の前にカードをかざす。が、カードに反応することなく、ズキュンパイアは宝太郎を横切ってりんねの目の前に移動する。

ズキュンパイアはりんねの掌に軽く振れた後、何か耳打ちをする。ズキュンパイアは何も言わず微笑んだ後、

ズキュンパイア「(大袈裟に)さあ、この僕をカードの中に閉じ込めたまえ!」

と言い、ズキュンパイアはケミーカードの中に入っていった。

 

──こうして、ズキュンパイアを巡ったもう一つ? の騒動はこれにて幕を閉じた。

 

 




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