P3 in IS   作:ティターニア

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連日投稿です!

あの子とのコミュの種を蒔きつつ、物語が進みます。


18:禁句と予感

「………まずいな。」

 

掲示板に貼られた紙を見ながら僕は呟いた。

昨日の一悶着から一夜明け、貼り出されたリーグマッチの

対戦表を見に来ていた。

そこに書かれていたのは、

 

第1試合

1組代表 織斑一夏

vs

2組代表 凰鈴音

 

という文字だった。

 

「…フフフ、ちょうどいいわ。」

 

突然横から聞こえてきた低い声に驚き、慌ててそちらを見ると、鈴が不敵な笑みを浮かべながらそこにいた。

 

「えっと…、鈴?」

「謝られただけじゃ気が済まないと思っていたところだったのよ…。

これは一夏をメタメタに…、いやギッタギタにできるいい理由が出来たわ…。」

 

何処かのガキ大将が使いそうな不穏な言葉を口にしながら、彼女は歩いていってしまった。

 

「……………。」

 

骨は拾ってあげるよ、一夏。

 

………

……

 

そこから数日間、僕は箒達と共に一夏の特訓に付き合っていたが、一夏はまだ鈴に謝っていないらしい。

というより、彼は未だに約束の真実が分かっていないらしく、自分の記憶が正しいと思っているので謝る理由がないと意地をはっていた。

鈴も鈴で一夏とは全く口を聞かないようにしており、偶々出会ったとしても威嚇して近寄らせないようにしているらしい。

こうしてお互いが意地を張ったまま、なんの進展もなく時間だけが過ぎていった。

 

そんな感じでリーグマッチまで残すところあと3日に迫っていた。

しかも、リーグマッチの前日は会場の準備が入るため、アリーナを使用することはできない。

なので実質、今日と明日しか特訓できる時間がないのだ。

その少ない時間を有効に使うべく、今日も一夏達のいる第3アリーナへ向かうはずだったが…。

 

「………迷った。」

 

見覚えのない廊下の真ん中で僕は突っ立っていた。

 

「おかしいな…。

確かこっちだったはずなんだけど…。」

 

どこで道を間違えたんだろう。

入学してから一ヶ月ほど経っているが、未だに道に迷うことがある。

この学園広い上に複雑なんだよな…。

…とりあえず、適当に人見つけて道聞いたほうが早いか。

そう考えて、僕はとりあえず目についたドアに近づいた。

スライドドアが開き、部屋の中を確認するがどうやら誰も…、いや、奥に1人だけいた。

背中の向けている少女の前には打鉄のようなISの胴体があり、少女は地面に座り込みながらパソコンをうっていた。

その子もドアの音に気づき、こちらを振り返った。

首元のリボンを見るに、僕と同じ1年のようだ。

青みがかった髪に眼鏡をかけており、その目には少し怯えの色が浮かんでいた。

 

「…だ、誰?」

 

なにやらものすごく警戒されてる。

 

「えっと…、神名理です。」

「神名…、2人目のほうか…。」

 

僕の名前を聞き、彼女は少しホッとしたような顔をする。

 

「…何の用?」

「い、いや、道を聞きたくて。

第3アリーナってここからどう行けばいいかな?」

「…あなた、教室棟の方から来たの?」

「うん。」

 

僕が頷くと、彼女は怪訝な顔を浮かべて、

 

「アリーナは逆の方向だけど。」

「……………。」

 

最初から間違っていた。

 

「…そうだったんだ。

…ありがとう。」

「…別に。」

 

彼女はそう言うと、パソコンの方に再び向き直った。

僕は来た道を戻ろうと部屋を出ようとするが、その前に彼女に声をかける。

 

「えっと、君の名前は?」

「…え?」

「いや、また今度お礼したいからさ。

名前を教えておいてくれたら助かるんだけど。」

 

彼女は訝しむような視線を送ってきたが、やがて口を開いた。

 

「…更識、簪。」

「簪か、教えてくれてありがとう。

じゃあまた今度何処かで。」

 

そう言って、僕は部屋を出て行った。

その後僕には知る由もないが、部屋に残っていた簪は1人顔を赤くしていた。

 

「い、いきなり名前呼び…!?」

 

………

……

 

「あら、理じゃない。

どこにいくの?」

 

ようやく教室棟まで戻ってくると、階段の方から鈴が降りてきた。

 

「うん、今から一夏達のいるアリーナの方に。」

「…アンタ今整備棟の方から来たわよね?

もしかして、逆の方に行ってたの?」

 

…言わないでくれ。

 

「アンタ意外と方向音痴なのね。」

「…どうでもいい。」

「アハハ!…で、アリーナに一夏がいるのね?

じゃああたしも付いて行くわ。」

「えっ、一体どうして?」

「決まってるじゃない!

アイツずっと待ってるのに全然謝りに来ないのよ!

こうなったらあたしから行ってやろうと思ったのよ。」

 

どうやら鈴は謝りに来ない一夏にいい加減しびれを切らしたらしい。

これはちょうどいい。

僕もそろそろ直接会わせて、試合前に2人のわだかまりを解こうと考えていたのだ。

 

「じゃあ一緒に行こうか。」

「もちろんよ!

一夏、首を洗って待ってなさいよ!」

 

物騒な言葉を口にしながら、鈴は僕に付いてきた。

 

 

 

アリーナに着くと、3人はISを装着した状態で何やら話しているところだった。

 

「ん?おお、理…と鈴!?」

 

僕達に気づいた一夏が驚いた顔をする。

箒達も鈴に対し、警戒度をMAXにあげる。

 

「貴様!何故ここに…。」

「そうですわ!ここは関係者以外立ち入り禁止でしてよ!」

 

2人共威嚇するかのような目で鈴を見る。

 

「はんっ!」

 

それに対し鈴は挑発的な笑いを取る。

 

「あたしは関係者よ。

一夏関係者、だから問題なしね。」

「ほほう、ではどういう関係なのかじっくり聞きたいものだな?」

「盗っ人猛々しいとはまさにこのことですわね!」

 

箒とセシリアはなおも鈴に噛み付く。

 

「はいはい、今はあたしが主役なの。

脇役は引っ込んでてくれる?」

 

が、鈴は全く相手にしていない物言いをする。

 

「わ、脇役……!?」

「何ですって…!?」

「鈴、あんまり挑発的な言葉を

「理ももういいわよ。

ここからはあたしと一夏の問題なんだから。」

 

そう言って僕の言葉を遮り、一夏の方へ向かう。

反対に箒達が詰め寄ってくる。

 

「理!一体どういうつもりだ!」

「そうですわ理さん!どうして凰さんを連れてきたのですか!?」

「いや、いい加減2人のわだかまりを解くべきだと思って。

あんな感情的になったまま試合を迎えたら、どちらかが大怪我するかもしれないしね。」

「そ、それはそうだが…。」

 

2人共一夏が怪我をするのを想像して、冷静さを取り戻し始めた。

そうしている間に、鈴は一夏と話を始める。

 

「さて一夏、反省した?」

「へ?何が?」

「だからっ!あたしを怒らせて、申し訳なかったなー、とか!仲直りしたいなー、とか!

なんかあるでしょうが!」

「そんな事言われたって、鈴がずっと避けてきたじゃねぇか。」

「…じゃあ何?女の子が放っておいてって言ったら放っておくわけ!?」

「おう、何か変か?」

「変かって……、謝りなさいよ!」

 

鈴は焦れたように声を荒げて、頭を掻いている。

話し合いは上手くいっていないようだ。

 

「だからなんでだよ!

約束覚えてただろうが!」

「あっきれた、まだそんな事言ってんの!?

約束の意味が違うのよ、意味が!」

「じゃあ意味ってなんなんだよ!

説明してくれたら謝るっつーの!」

「せ、説明したくないからこうして来てるんでしょうが!」

 

鈴が顔を赤くして怒鳴る。

良くない方向へ向かっている気がする。

 

「じゃあこうしましょう、一夏!

明明後日のリーグマッチで勝った方が負けた方に何でも一つ言うことを聞かせられるってことで!

あたしが勝ったら謝ってもらうから!」

「おう、いいぜ!

俺が勝ったら説明してもらうからな。」

「せ、説明はちょっと…。」

「何でだよ!」

「う、うるさいわね!

この朴念仁!間抜け!アホ!」

 

ついに罵倒になってしまった。

頼むから一夏はそれに応じるなよ___

 

「うるさい、貧乳。」

 

 

ドゴォォン!!!

 

 

 

大きな音とともにアリーナが揺れる。

震源は、右手をISに部分展開して地面に打ち付けている鈴。

一夏もしまったという顔をしている。

 

「…言ったわね。

言ってはならない事を言ったわね!」

 

部分展開した鈴の右腕に紫電が走っている。

一夏のやつ、とんでもない地雷を踏んだらしい。

鈴のやつ、本気でキレている。

 

「い、いや悪い!今のは俺が悪かった!すまん!」

 

一夏も慌てて謝るが、一夏の弁解に鈴はピクンと反応する。

 

「『今のは』?『今のも』でしょうが!

いつだってアンタが悪いのよ!」

 

鈴は火山の如く怒り散らす。

もう誰の手にも負えないだろう。

 

「ちょっとは手加減してあげようかと思ってたけど、どうやら死にたいらしいわね……。

いいわよ、希望通りにしてあげる。

___全力で叩きのめしてあげる。」

 

そう言って、鈴は荒々しくアリーナを去って行った。

残された僕達は何も喋れないでいたが、やがてセシリアが口を開く。

 

「…パワータイプ、ですわね。

それも一夏さんと同じ、近接格闘型…。」

「…うん、そうみたいだね。」

 

鈴の殴りつけた後を見ながら口にする。

そこには、直径1mほどのクレーターが出来ていた。

 

「どうしよ…。完全に怒らせちまった…。」

 

一夏は顔を青くして、頭を抱えている。

 

「こうなったら、もうしょうがない。

とりあえず今日と明日で()()を完成させよう。

それしか今の一夏には勝機がない。」

 

僕の言葉に3人が頷き、特訓にとりかかる。

…はぁ、平和な日々が遠い。

 

………

……

 

その夜、眠りにつくとイデアの部屋にいた。

 

「ようこそ…。

あなたの周りには騒動の種がはびこっているようね。」

 

イデアは愉快そうに笑っている。

 

「…何の用?」

 

ムスッとしながら尋ねると、彼女は真剣な表情になる。

 

「今日来て頂いたのは、ある予感を感じたからです。」

「………予感?」

「ええ、もうじき行われるクラス対抗戦(リーグマッチ)…。

そこで何らかの試練が待ち受けているかと。」

「……っ!?試練って…!」

 

試練という言葉を聞き、前の世界の事を思い出す。

毎月満月の夜にやってきた大型シャドウ、あれと同じようなものが!?

 

「いえ、貴方が思われているとは異なります。

それは人為的、何者かの手によるものだと思われます。

シャドウとは関係はありません。

しかし、万が一のこともあるので貴方にお知らせしておこうかと。」

「…その試練って。」

「ええ、貴方がこの世界に来て初めての困難となるでしょう。

今のままの貴方達では太刀打ち出来ないほど。」

「……………。」

「しかし、貴方にはそれを打ち砕く力が宿っています。」

 

彼女は微笑みながらそう言う。

 

「現在、貴方には“魔術師”、“恋愛”のアルカナの力が宿っています。

その力は、窮地に直面した時、必ず貴方の助けとなるでしょう。」

「…分かった。

教えてくれてありがとう。」

「ふふ…、ではまたお会いしましょう。」

 

その笑顔に僕は懐かしさを覚えながら、目が醒めるのを待った。

 

「……………。」

「……………。」

「…ああ、これからは後ろのドアから出て行って下さい。

一々私が送り返すのは面倒なので。」

 

……………。

僕は無言のまま、背後にあったドアを開けた。

 




いよいよ次回、一夏対鈴!
そして、謎の敵が………!?
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