ガンダムSEED DESTINY 飛び立つ翼   作:izuki

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第十二話 偽りの歌姫

 あの後アスランは格納庫にいたシン達を集めてこの後のミネルバがディオキアの基地で補給を受けた後、ジブラルタルへ向かうこと話した。

 そしてディオキアの基地まで私がミネルバに同乗することも話した。

 

「シキ、すまないが君にミネルバを自由に歩かせる訳にはいかない。艦内での行動範囲を制限させてもらう、加えてディオキアに着くまで監視も付けることになる……心苦しくはあるが、理解してもらえると助かる」

 

 正しい判断だ。

 ザフト側としては部外者である私を無条件で新造艦であるミネルバに乗せるのは避けたいはず。

 軍という立場であれば当然と言える。

 

「監視役としては………シン、お前に任せるが、いいな?」

「えっ!俺!?」

 

 いきなり指名されたシンは戸惑い、面倒くさそうにする。

 

「そうだ、戦うだけが軍人の役目じゃない。君は優秀なんだから出来るだろう?それとも、お前の着ている軍服の色は飾りか?」

「っ、わかりました。やればいいんでしょう、やれば!」

 

 上手くシンを挑発してその気にさせたな。

 シンは殆ど勢いで了承してしまったようだ。

 

「シキもそれで構わないか?」

「ああ、問題ない」

「そうか…なら、話は――」

「だが、一つだけ言っておくことがある」

 私はそこでアスランの言葉を遮り、この場にいる全員を見渡して言う。

「私のモビルスーツには触るな」

「……それだけ?」

 

 私の言ったことにルナマリアが思わず疑問を投げ掛ける。

 声こそ上げないが他の者たちも同じ考えを持っているのか、どこか拍子抜けという顔をしている。

 この場にいるミネルバクルーにとっては傭兵が自らの商売道具に触れるなという捉え方しかできないだろう。

 しかし、この忠告の本質は違う。

 前から言っている様にウイングゼロについての情報を彼らに与えないためと、ZEROシステムによる暴走を起こさせないためだ。

 

「……どう思おうと構わないが、忠告は確かにしたぞ」

 

 これを最後にして話は終わり、各自が持ち場に戻っていく。

 私もウイングゼロの元へ行き、中断していた作業を再開する。

 それに伴ってシンは機体の近くで私を監視している。

 

「なあ……お前」

「……なんだ」

 

 私は機体の整備をしながら答える。

 

「お前、何で作戦のときにこのモビルスーツを使わなかったんだ?最初から使ってればあんな戦いすぐに終わったんじゃないのか?あれじゃ、俺たちが何の為に命かけて戦ったのか……それに、お前がその気になれば街の人たちだって助けられたんじゃないのか!?お前言ったよな、この作戦はあいつらにとって最後の希望だって、希望を消させるわけにはいかないって、お前は本当に命を賭けて戦ってたのかよ!?」

 

 …………耳が痛いな、確かにその通りだ。

 最初からウイングゼロで戦闘をすればザフト側に犠牲者を出さずに済んだだろうし、シンがあんな坑道を命がけで通る必要はなかった。

 その気になれば作戦前に単独で基地を攻略することだって可能だった。

 

「……確かにそう思われても仕方がないな…だが、誤解しないでほしい。先の戦いで私は命を賭けていなかったわけじゃない…………確かに、あの戦いで最初からウイングゼロを使わなかったのは確かに私のミスだ」

「え?」

「私のことは許さなくても構わない。許してもらおうなどと思ってもいない」

 

 ザフトに対して自らの存在を知られない為に行った事が裏目となってしまったことは事実だ。

 最終的に戦いを終わらせる事ができ、コニールを含むガルナハンの人々を救う事が出たが、一歩遅ければ全てを失わせることになっていただろう。

 それについて許してもらおうなんて思わない。

 コニールが聞いたという噂を軽く見て、最初からウイングゼロを使わなかったのは私のミスなのだから。

 

「……悪い、本当は分かってる。本当はお前に感謝すれど、責めるのは間違ってるんだ……ただ、あの時何も出来なかった自分を俺は何よりも許せない!!」

 

 シンは私に謝ると次は自分が何もできなかったことに対する怒りを露にする。

 

「自分が弱い所為で何も守れないのは……もう嫌なんだ」

「…………」

 

 シン自身のポケットの中に手を入れて何かを握りしめている。

 恐らくだがシンの妹であるマユの携帯だろう。

 シンは2年前にオーブのオノゴロで自身の家族を失っている。

 そのことから力を欲し、ザフトに入った。

 それなのに、何もできなかったことに苛立ちを感じているんだろう。

 

「……人間が戦う力を得ても強くは成れない」

「え?」

「銃でもモビルスーツでも同じだ。武力を行使することなど、弱い者たちによる方法論でしかない……力を誇示して意見を述べる限り、それは強くなったとは言えない。それは俺やお前だけじゃない、戦う者全てが強者という仮面を付けた弱者なんだ」

 

 この言葉のほとんどは受け売りだが、それでも私はこれは正しいと思っている。

 

「っ!……だったら、だったら、どうすれば―――」

「無理に強く在ろうとする必要などない。人間は弱い生き物なんだ……シン・アスカ、お前が本当に手に入れたいと願ったものは力なのか?……それは本当にお前が欲したものなのか?」

「―――っ!」

 

 私の言った言葉にシンは考え込み、何かを決意したような確固たる意志を感じる。

 その後、私はウイングゼロの整備を終えてシンの案内でミネルバの来客用の空室へと案内された。

 来客用といえば聞こえはいいが、部屋にはベッドが一つと扉の横に通信機が取り付けられただけの簡素な部屋で、まさに部外者を隔離するには打って付けの部屋だ。

 まあ、どうせディオキアまでの数日程度だ、ウイングゼロも触れないようにプロテクトは掛けてきたし、この部屋でおとなしくするとしよう。

 

 

黒海沿岸都市ディオキア

 

 ガルナハンを発ってから数日後。

 ミネルバはディオキアのザフト軍基地に入港を果たしていた。

 タリアとアーサーが艦から降りると騒がしい声が聞こえて来る。

 何事かとタリアが喧騒の聞こえる方に目を向けるとディオキアのザフト軍兵士たちによる人だかりが出来ている。

 また、基地の周りに建てられている塀の外側にはディオキアで暮らす人々だろうか老若男女を問わずに集まっているのが分かる。

 そこに二機のディンに支えられ上空より現れたピンクのザクウォーリア、その掌の上には……

 

「みなさーーん! ラクス・クラインでーす!!」

 

 彼女の登場に観客たちからは声援が飛び、それに合わせて彼女がその歌声を響かせ始める。

 

「っ♪~~~♪~~♪」

 

 突如始まった『ラクス・クライン』のライブにミネルバクルーの面々は大喜びといった様子で、今もアスラン・ザラの横を整備兵のヴィーノとヨウランが駆け抜けていき、一瞬にして観客の一部に溶け込んで行った。

 

(ミーア!?)

 

 アスランはミーア・キャンベルの扮する『ラクス』が唐突に現れたことで戸惑いの感情が渦巻き続けている。

 そんなアスランに妹のメイリンと一緒に近づいてきたルナマリアが話しかけて来る。

 

「隊長は知らなかったんですか?ラクスさんが御出でになる事」

「あ、ああまぁ、いゃ……」

「まあ、お互い連絡を取っていられる状況じゃ無かったですからね」

「ぁぁいゃ…まぁうん……」

 

 ルナマリアの言葉に対しアスランは曖昧な返事しか出来ない。

 既にアスランとラクスの婚約関係は二人の間では無かったものと為っているが公にした訳ではない。

 世間ではアスランとラクスとの婚約関係は未だに続いているという見方となっている。

 

「~~~♪~~~♪~~~~♪」

 

 そんなアスランの心情とは裏腹にミーアは観衆の前で実に楽しそうな表情で歌っており、

 観客たちもそれに呼応するかのような盛り上がりを見せている。

 

「~~~♪~~♪~~~♪~~~♪」

 

 やがて、彼女が歌い終えるとディオキアの基地は大歓声に包まれる。

 

「勇敢なるザフト軍兵士の皆さ~ん!平和のために本当にありがとう!そして、ディオキアの街の皆さ~ん!一日も早く戦争が終わるよう、わたくしも切に願って止みません!その日のためにみんなでこれからも頑張っていきましょう!」

 

 基地内の兵士たちとディオキアの住民達はそれに応えるように歓声を上げる。

 

「やっぱり、少し変わられましたよね?ラクスさん」

 

 そんな光景を見ていたメイリンがポツリとアスランに尋ねて来るが、別人だからとは口が裂けても言えず、曖昧に言いよどむ事しか出来ないのであった。

 

 

 アスランが言い淀む様子を遠目で見た後、私は再びラクス・クラインへ視線を戻した。

 

(やはり、アスランの反応からしてあれはミーア・キャンベルか。そこは変わっていないようで安心した…しかし、こうして実物を見ることになるとは……やはり本物のラクスとは全然違うな)

 

 ミネルバがディオキアに入港した後、私もシンの監視の元アスラン達と共に艦を降りてラクス・クラインのライブ会場に来ていた。

 確かに見た目は私がオーブで出会ったラクスと同じなのだが、笑い方や動きの所作が違う。

 

「……お前もラクス様のファンなのか?」

 

 ふと、シンがそんなことを聞いてくる。

 

「いや、私は『ラクス・クライン』に興味はない」

 

「?でも、熱心に見てたじゃんか?」

「……『ラクス・クライン』は有名だからなこの目で本人を見ることが出来るとは思わなかっただけだ」

「?そういうもんか?」

「そういうものさ」

「シン、行くぞ」

 

 私たちがそんな会話をしていると、アスランから声がかかる。

 

「え?いいんですか?見なくて?」

「え?ああ…まぁうん」

 

 シンの問いにアスランはまたも曖昧な返事をする。

 まあ、仕方がないか。

 アスランからすれば複雑なことこの上ないだろうしな。

 

「ほら、行くぞ」

「ああ」

 

 アスランの先導の元、シンと共にデュランダルがいるホテルへと向かうのだった。

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