ガンダムSEED DESTINY 飛び立つ翼   作:izuki

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第七話 レジスタンス

ユーラシア西部・ガルナハン山岳地帯

 

 その日の夜、一台のジープが追ってくる連合のダガーLから逃走していた。

 

「ちくしょう、どこまで追って来るんだよ!?」

 

 ジープの運転手の少女はレジスタンスの、コニール・アルメタ。

 彼女はジープを走らせ、追ってくる連合のダガーLから逃走していた。

 反連合のレジスタンスに所属しているコニールは現在、連合によって虐げられているガルナハンの街を解放するために活動している。

 そして今夜、ガルナハンを解放するに当たっての最大の鬼門である場所に単独で偵察に出た際、不運にも連合軍に見つかってしまい今の状況に至っている。

 

(どうする!?一体どうしたら!?)

 

 モビルスーツから逃走を開始してから既に30分以上が経過していた。

 今まで逃げ通せてきたのは地の利があってこそであったからだ。

 しかし、このままではいずれ追い付かれてしまう。

 さらに敵はこちらの事など御構い無しに攻撃を仕掛けて来る。

 

「うわっ!!」

 

 敵の攻撃の余波でジープが横転し、コニールも外へ投げ出されてしまう。

 

「痛てて―――っ!」

 

 打ったところを抑えながら体を起こすと敵機が自身の目の前に現れる。

 少女へと向けられる銃口。

 コニールは恐怖のあまり悲鳴さえ上げられない。

 間近に迫った死の恐怖に耐え切れず、目を瞑り、腕で顔を覆う。

 

(もう……駄目…)

 

 そう思った次の瞬間。

 何かを切り裂く音が響いた。

 

(…………、……?)

 

 しかし、自分はまだ生きている。

 何が起きたのかと思い、恐る恐る目を開ける。

 

「っ、……何、これ?」

 

 開いた少女の瞳に映ったのは、天使の様な白き翼を持つモビルスーツの姿だった。

 

 

 シキは次の目的地であるダーダネルス海峡付近に移動中にたまたま連合のモビルスーツであるダガ―Lに襲われているジープを発見。

 ダガ―Lをビームサーベルで斬り伏せ、助けたところなんとその少女はコニール・アルメタだった。

 

(まさかこんなところにいるなんて……)

 

 でもなぜこんなところにいるのかが分からない。

 原作ではこんなシーンはなかったため本当に分からん。

 

(まあいい、取り合えずここを離れよう。味方がやられたとなれば援軍が来るかもしれない)

 

 私はビームサーベルを格納し、機体を反転させてここから飛び立とうとする。

 

『ま、待って!』

 

 しかし、呼び止める声が聞こえたため反射的に動きを止め、頭部を彼女の方へと向ける。

 

『え、えっと………く、車が……そう、車が倒れてて動けないんだ!』

 

 まさか自分の言葉に反応してくれるとは思っていなかったんだろう。

 彼女は指をさしながら咄嗟に現状を理由に言葉を紡いでいく。

 確かに彼女だけでは横転したジープを起こすのは難しいだろう。

 私は機体の右手の人差し指と親指の部分でジープを軽く挟み、起こした。

 

『あ、ありがとう……』

 

 そう言ってジープに乗り込んでエンジンを掛け直す。

 しかし。

 

『あ、あれ?』

 

 どうやら、エンジンが掛からないらしい。

 何度も掛け直しているが一向にかかる気配がしない。

 

「はぁ…」

 

 見かねた私はコックピットハッチを開けて機体から降りてジープの方へ向かう。

 一方コニールは、私が降りてくるとは思わなかったのだろうこちらを見て驚いている。

 

「え、えっと……」

「車、動かないんだろ。見てやるからちょっと退け」

 

 コニールは私の対応に少しムッとした顔をするがすぐに降りる。

 降りたことを確認した私はエンジンがかからない事を確認した後、ボンネットを開けて点検を始める。

 これでも一応大学は工業科で車の分解や整備なんかは習っているため、ある程度の確認は出来るはずだ。

 それに、この世界に来てからMSなどの知識は何故か分かるためそれらを応用すれば確認くらいできる。

 壊れてた場合、工具はないから直すことは出来ないがな。

 

(横転した時の衝撃でエンジンがやられたか?それとも……)

「……あ、あのさ……」

 

 沈黙に耐えきれなかったのか、コニールが話しかけてきた。

 

「…なんだ?」

「その………そ、そうだ、アンタ、名前は?」

「シキ・クレナイ」

「わ、私はコニール……えっと、シキはさ、こんなとこで何してたの?」

「……」

 

 まあ、聞かれるかなとは思ってはいたが。

 普通見たことないモビルスーツに乗った奴なんて怪しいに決まってるし。

 

「別に、たまたま通りかかっただけだ」

「そ、そう…」

 

 会話が終わり沈黙が漂う。

 その間も私はジープの点検をしてどうにか動かないか試してみる。

 が、どうにも動きそうにない。

 

「…これ以上は無駄か」

「終わったの?」

「ああ、この車は動かない恐らく…」

「ちょ、ちょっとまって…噓でしょ…」

「悪いが事実だ。こいつは動かない」

「そんな……」

 

 コニールはジープがもう動かないことを知り絶望しているようだ。

 それもしょうがない、基地に帰るまでの足を失ったんだ。

 基地がどこにあるかは知らないがここから離れていることは確かだろう。

……しかたない。

 私はウイングゼロに乗り込み、声を掛ける。

 

「車に乗れ」

『……え?』

 

 突然何を言うのかと、間抜けな声を出すコニール。

 

「目的地まで道案内しろ連れて行ってやる」

『いいの?』

「別に構わない。それともここから一人で…」

『お、お願いします』

 

 コニールがジープに乗り込んだのを確認して、両手でジープを横から包むようにして持つ。

 

「どっちだ?」

『あ、あっち』

「了解」

 

 私はコニールの示した方向を確認すると出来るだけゆっくりと期待を上昇させてスピードを落として飛行する。

 普段のスピードで飛べば早く着くのだが、ウイングゼロは殺人的な速さで飛行するため、今回はものすごくスピードを落として飛行する。

 ただ……

 

(めっちゃ難しいんですけど……)

 

 

 目的地まで到着しコニールを降ろした後、ウイングゼロの片膝をつかせて私も降りる。

 そして帰ってきた彼女に待っていたのはリーダーらしき男性からの拳骨だった。

 

「いっ、たーい!」

「てめぇ、コニール!!こんな時間にどこほっつき歩いてやがった!」

 

 さらに周りに響くほどの声量でコニールを怒鳴りつける。

 

「子供がこんな夜遅くまで出歩いてんじゃねぇ!どこに行ってやがった!」

「…うるさいなぁ………」

「ああ!?」

「ご、ごめんなさいっ」

 

 コニールの呟きが聞こえていたらしく、もう一度拳を振り上げる。

 コニールは慌てて謝る。

 

「…ったく心配かけさせやがって」

「……ごめんなさい」

 

 再び拳を振り下ろそうとしていた男性だったが拳を降ろしコニールの安全に安堵する。

 コニールも心配を掛けたことを謝る。

 微笑ましい光景だ。

「ところでよ、お前さんは?」 

 

 コニールとのやり取りに一区切りがついたところでコニールの後ろに立っていた私に目を向ける。

 

「ええと、紹介するよ。こいつはシキ、私をここまで連れて来てくれたモビルスーツのパイロット」

「そんなことはさっき見てたから知ってる。俺が聞きてえのは何者かってことだよ」

「え、ええっと……」

 

 聞かれてコニールは言い淀む。

 仕方ないことだ彼女には私のことは名前以外何も言ってはいないし説明は出来ないだろう。

 さて、どうするか。

 モビルスーツを所有していると知られている以上一般人なんて言えないし。

 ジャンク屋か傭兵が良いか。

 けど、ジャンク屋って言ってなんか買い取ってとか言われても困るし……

 

「私は、傭兵みたいなものだ。今夜はたまたまここを通りすがっただけさ」

「傭兵か……まあ、あんなもんを持ってるんだ、そんなとこだろうと思ったよ。こんなご時世だ、おめえな生き方をしてる奴なんて五万といる、俺らみたいなよ………」

 

 男性はそう言って私の素性は詳しく聞こうとはしてこなかった。

 こちらにとっては好都合のため助かったが。

 

「……それにしても…」

 

 男性は何やら考えるそぶりを見せ始める。

 

「シキって言ったか、お前さん俺らに協力してくれねえか?」

「なっ!」

 

 男の発言に反応したのはシキではなくコニール。

 何か考えていたかと思えばいきなりそんなことを言ってくるんだ、その反応は正しい。

 私もこれには少し驚く。

 

「勿論タダじゃねえ…傭兵としてお前さんを雇う。どうだ?」

 

 聞かれて私は考える。

 いや、まず私の覚えている内容とこれから行われることが正しいか一応確認するか。

 

「依頼内容は?」

「……実は今度、連合軍からガルナハンの街を解放する為にザフトと合同で大々的な作戦を行うことになっている。この近くにマハムールっていうザフト軍基地の奴らとザフトの新造艦の部隊が協力してくれる手筈になっている」

 

 よし、私が覚えていることと変わらない。

 

「だったら何故私に依頼する?」

「……協同作戦とはいっても俺らは敵の情報を渡して後方で見ているだけだ。俺らの街を取り戻そうっていうのに何だか忍び無え。まあ、傭兵雇うんじゃ一緒なんだけどよ……」

「…………」

 

 正直言って私がここで雇われて恐らく近日行われると思われるローエングリン攻略戦に参加する意味はない。

 何故ならそれはミネルバのメンバーだけで事足りるからだ。

 だが……

 

「…わかった。その依頼を受けよう」

「本当かっ!」

「受けると言った。二言は無い」

 

 私が今回協力しようと思ったのは自分たちの守りたいもの、取り戻したいもののために戦い抜こうとするその在り方が良いと思ったから。

 それに今後この世界で生きていくためには金もいるしちょうどいい。

 

「そうか、それじゃあ…」

「だけど、一つだけ条件⋯というが頼みがある」

「?」

「今回の作戦に俺のモビルスーツはできれば使いたくない。ザフト側に一機、何でもいいからモビルスーツを手配してもらうように伝えてほしい」

「なんで?」

「あの機体は非公式のモノだ、ザフトに見つかれば接収されるかもしれない。それは避けたい」

 

 そうなのだ作戦に協力するとは言ったもののウイングゼロは使えない。

 理由は言った通りだ。

 そして、ザフト側にモビルスーツの手配を頼んだが、正直言って無理だろう。

 協同作戦とは言っても、正規の軍隊がレジスタンスの様なものにモビルスーツを貸してくれるわけが無いだろう。

 

「いくら協同作戦とは言っても、正規の軍隊が俺らみたいな連中に快くモビルスーツを貸してくれるわけがねえ…十中八九、無理だな」

 案の定帰ってきた答えも考えていたことと同じだった。

 

「だが、おめえがどうしても自分のモビルスーツを使いたくねえなら手が無い事も無い……ちょっと付いてきてくれ……コニール、お前はもう寝とけ」

「え、けど…」

「作戦の詳細なら明日教えてやればいい。とにかく寝ろ、お前さんも構わないな?」

「ああ」

「………わかった。…じゃあシキ、また明日」

「ああ、おやすみ」

 

 コニールと別れた後、男性の先導で基地から少し離れた場所へと連れて来られていた。

 周りが断崖に囲まれており何かを隠すにはうってつけの場所だ。

 一つだけ入り口のように開いておりそこから中へ入る。

 中には一機のモビルスーツが野ざらしに置いてあった。

 四本足を持ち背部にウィングと二連装の砲門を付け、口ビームサーベルを装備した犬の様なモビルスーツ。

 

「バクゥか」

「ああ。これはな、万が一のためにジャンク屋から買ったモンだ。何でも前大戦のときに破壊された機体を回収して修理したものらしい」

「なるほど」

「武装は背部にレールガンが二つ、頭部に左右両サイドからビームサーベルが出る仕組みになっている」

「…何故こんなものを持っていて使わない?」

 

 私は純粋な疑問を投げかける。

 

「買ったはいいが、OSがコーディネイター用に組まれてて俺らには使いこなせなかった」

「OSを書き換えようとは思わなかったのか?」

「そんなこと出来る奴は居ねえよ」

 

 それもそうか。

 

「この機体、私が使ってもいいのか?」

「ああ、構わねえよ。さっきも言ったろ?俺らには使いこなせ無いからな」

「なら遠慮なく使わせてもらう」

 

 私はバクゥのコックピットハッチを開きコックピットの座席に座る。

 男性は覗き込む形でそれを見てくる。

 OSを立ち上げて確認する。

 本来であればコーディネイター用に組まれているため操縦は不可能だが、今の私には何故かは知らんがモビルスーツに関することは大抵分かるし操縦も出来る。

 そのためコーディネイター用のOSでも問題はない。

 後は自分好みに書き換えるだけだ。

 

「どうだ、使えそうか?」

「……少し調整さえすれば問題なく使える」

「そうか、それじゃあ短い間だけどよ。宜しく頼むぜ」

 その後は、ウイングゼロを隠し、使えそうな工具類などを受け取り、バクゥの調整と整備を少しした後眠りについた。

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