俺の強化外骨格は完璧で究極なんだよォッ! 作:漢の子
あれは、まだまだ私――才羽ミドリと姉、才羽モモイが小さく幼かった頃のお話。
私達は、いつものようにゲームセンターで格闘ゲームに勤しんでいると、私に派手に負かされた相手の不良が、怒りに身を任せて私たちを襲ってきたのだ。
路地裏……銃を私とお姉ちゃんから取り上げて、私を不良は十人がかりで私を殴りつけた。私はされるがままに殴られて、体をぶつける。お姉ちゃんは私をかばおうと立ち塞いでくる。
「うぅっ!」
「まって!ミドリをいじめないで!」
「イジメだぁ?そんなんじゃねぇよ、ただちょっと小生意気な嬢ちゃんを教育してやってるだけだ……よっ!」
「きゃっ!」
お姉ちゃんも不良に殴られて大きくふっとばされる。不良は下衆な笑みを浮かべながら私達にジリジリと歩み寄ってくる。
「へへへっ……」
……私は、恐怖のあまり目をつむんでしまう……すると、高笑いと共にひとつの声が飛び交った。
「待て待て待てぇい!!」
その声と共に、代表面をして立っていた不良の頭に激しい飛び蹴りが食らわせられる。
「ぐぇっ!?」
不良は蹴飛ばされて大きく吹っ飛ぶ。周りにいた子達は一目散に蹴飛ばされたリーダーへと駆け寄る。
「リーダー!」
「てめぇ!よくもリーダーをっ!」
「なんだテメェは!?」
語気を荒げて蹴飛ばした子を見る不良達……私も恐る恐るその子の方を見上げる。そこにいたのは、赤髪が特徴的な一人の
「おうおうおう!!十人がかりでリンチたぁ流石に見逃せねぇ!俺が相手になってやらァ!」
その男の子は、キヴォトスの人間では珍しく……頭にヘイローは無かった。キヴォトスでは珍しい人間だ。
祭りで買ったような特撮ヒーローのお面を頭につけて、その手には大きめの木の棒が握られていた……本人的には武器のつもりらしい。
その子は、木の棒を振り上げて言葉を上げた。
「俺サマは
……暫くの静寂が続いた。何も言えなかったのだ……そのあまりの滑稽さに。
次の瞬間不良達は吹き出して彼を笑い始めた。
「ギャハハハ!なんだそりゃ!」
「おっ、おっかねぇ!無敵のヒーロー様だってよ!」
「ヘイロー無しのくせに何粋がってんだ……よっ!!」
そう言って不良の一人は、手に持った銃を振り上げて彼――リョウを殴りつけた。
何故普通に銃弾を当てないのか?ヘイローの無い人間に銃弾を当てては下手をすれば犯罪になる。相手を殺しかねないからだ。それを考えるくらいには余裕があるということだ。
それに、普通に殴ったほうが痛みや恐怖と言う意味では相手に与えられるダメージは大きい。
……しかし、彼は恐怖に目をつぶることも無く、振り下ろされた銃を腕を盾にして体をかばう。
「っ……効かねぇッッッぞ!!」
そう言って、不良の顔面にカウンターのストレートパンチをお見舞いした。彼はヘイローが無いにしては、なかなかのパワーで、殴られた不良大きく怯む。
「がっ!てっ……テメェ!」
「やっちまぇぇぇ!!!」
不良達は大きな声を上げて、たった一人の少年にムキになって襲いかかってくる。少年はファイティングポーズをとって、不良達を迎え撃った。
「来やがれ!クサレ野郎どもォォォッッ!!」
それから……彼は何度も何度も不良達に殴られ、蹴られ、全身から血を出しながらも、不良と闘い続けた。
全身から血を吹き出しながら血みどろになろうとも、不良達へ食らいついた。その光景に、私とお姉ちゃんは唖然として、その痛々しさに目をそらすことしかできなかった。
「こっ!このぉ!」
不良はもう一度殴りつけるが、彼はそれを受け止めて不良へつかみかかる。
「へへっ……まだぁ……まだぁ!」
「ひっひぃぃ!お前ら!帰るぞ!」」
不良は喰らいついてくる少年のあまりの恐ろしさに、彼を一度突き飛ばすと、仲間を連れて帰っていった。
逃げ去る不良達の後姿を、倒れた彼は立ち上がって見送ると、胸に拳を当てて声を張り上げる。
「へへっ……恐れ……いった……か……!!」
そう言って、その子はパタリと地面に倒れる。腰が抜けて立てなかった私の代わりに、お姉ちゃんが慌てて駆け寄る。
「あ、あなた!大丈夫?」
「だ、大丈夫大丈夫……男の子はこの程度じゃ泣かねぇ逃げねぇ傷つかねぇ!何があろうと笑って生きる!女の子の前なら尚の事!」
そう言って、彼は涙をぬぐって血みどろの体で笑顔を向ける。
「だからよ……泣くな!二人共!」
「えっ……?」
……そう言われれば、私の目から、お姉ちゃんの目から熱い何かがこぼれ知ていることに気づく……涙だ。いつの間にか、怖くて泣いていたらしい。
……私は、溢れ出た涙を拭って、彼に問いかける。
「な……なんで、助けてくれたの?」
私達は彼とは一切面識がない。助けるメリットだってないはずだ。しかし、私がそう問いかければ……彼はその笑顔をより深いものにして、答えた。
「決まってんだろ!泣かされそうな奴が居りゃあ駆けつける!それがヒーロー、それが
……それが、私とお姉ちゃん――才羽ミドリと才羽モモイと、この大馬鹿者でお人好しな幼馴染の男の子――赤石リョウとの出会いだった。
▲▼▲
……赤石リョウ。
ヘイローは無し、ミレニアムサイエンススクールの一年生(一留)。彼を一言で表すのならば……
自らを
困っている人間がいれば誰これ構わず手を差し伸べる生粋のお人好しだ。そのお人好しぶりは、言い換えればエゴイストとも取られかねぬほどに。
彼はヘイローも無いくせに、荒事であろうと、いくら自分の身が傷つこうと、いくら自分の身が壊れようと気にせず手を差し伸べる。その性でなんど病院送りになったのかわからない。
人から言わせればただの馬鹿なその人……
しかし、彼は紛れもなく
彼は自身に戦闘能力がないことを憂いていた。戦う力を持たず、せっかく助けに入ってもボコボコにされるのが常。その意地と気合でいつも相手を敗走させているが、その後病院送りになるのでは色々な所に迷惑がかかる。
ならばどうするか?
……リョウのたどり着いた結論は、自分だけの纏う鎧を作る事だった。ヘイロー無しがヘイローを持つ生徒に勝てるようにする為の鎧。最高に格好いいヒーローとしての鎧。
それを彼は
炉心から動作部から外殻、何から何まで
なによりもその元手がジャンクパーツと言うのが凄まじい。確かに出来たアーマー自体は予算に物を言わせれば、時間がかかるだろうが完成する様な代物だ。
それこそ、ミレニアムのビッグシスターや、全知の称号を持つ超天才清楚系病弱美少女ハッカーならば簡単に模倣して製作が可能だ。
それを、リョウはジャンクパーツを駆使して……言わばゴミや残り物で作り上げてしまったのだ。しかも、動作をサポートするソフトウェアまで自作だ。
良くやった物だ。本人曰く――ノリと勢いで仕上げた。らしい。
もし彼が自身の予算を持ち、その気になって兵器を開発したのなら……考えたくもない。立派にミレニアムの……マイスターの称号を持てることだろう。
もっと、彼が様々な分野を専門的に学べば……ミレニアムで過去三人しか授与できなかった称号――全知の称号も夢ではないのかも知れない。
そんな彼は、今日もその強化外骨格を装着して――――
「お兄ちゃん!風船ありがと―!」
「どういたしまして!」
……木に引っかかった風船を、持ち主の少年のもとに届けていた。手を振り去る獣人の少年、それを見送るのはメタリックで真っ赤なボディを持つメカメカしいパワードスーツだ。
内部に様々な武器を内包し、何から何までリョウのセンスで完成させたスーパーパワードスーツだ。
すると、強化外骨格の瞳が閉じると上半身が花びらが開くように分解し、中から赤髪の少年――赤石リョウが排熱しながら現れる。
「ふぅ……いやぁ、風船割れてなくて良かったぜ。」
そう言って、リョウは安心したように呟く……万が一にも風船が割れてしまっては大変だ。
まさか偶々この強化外骨格の試運転に駆り出していたら、高い木に風船を引っ掛けてしまった少年がいるとは……リョウも予想外だった。まぁ、一つ人助けが出来たと思えば悪い気分なんかじゃない。
「……さて、動作テスも程々に、そろそろ帰るか。」
リョウはそう独り言を漏らすと、タイミング良くスマホにメールが届く。
「あっ……?何々〜?ミレニアムで戦車が多数暴動……ミレニアムも物騒になったなぁ!」
っし!と気合を入れると、リョウを包むように開いていた外骨格の上半身がリョウを包む。リョウは、一人なのにもかかわらず声を荒げる。
「さぁ!行くぜ!
少年は、愛機である強化外骨格――レッド・フューチャーの名を叫んで、地面を蹴り上げ飛びがると、何の原理かそのまま飛行を始め、戦車が大暴れしている地区へと向かうのだった。