俺の強化外骨格は完璧で究極なんだよォッ! 作:漢の子
……ここは、ミレニアム郊外にあるとある廃倉庫。
赤石リョウが買い取って自分だけのラボにしている……人はめったに来ないし、いつも静かに過ごせる安らぎの場所だ。
「〜♪」
この日、リョウは実に気分が良かった。鼻歌を歌いながら自身の纏う強化外骨格――レッド・フューチャーの整備をしている所からも伝わってくるだろう。
様々な機能を持ち、大きさも2m以上あるその愛機は、整備にも一苦労だ。
しかし、静かな空間で一人気分良く愛機と向き合う……なかなかに幸福な時間だ。
「うわぁぁぁぁん!リョウえも〜ん!私のゲームダイスが壊れちゃったよぉう〜!」
……否、静かではない。
リョウは、レッド・フューチャーの整備から手を離して、駆け寄ってくる少女――才羽モモイを細目で見つめる。
「また壊したのか。」
……リョウの元に壊したゲーム機を持ってモモイがやってくるのは、数えるのも億劫になるほどだ。
もう少しゲーム機器を丁寧に扱えと思わなくもない。
「もぉ、駄目だよお姉ちゃん。リョウに無理させちゃ。」
そして、遅れて入ってくるのは才羽モモイの妹、才羽ミドリだ。ミドリの言葉に、リョウは目を軽く肩を窄めて声を上げる。
「良いってことよ。丁度俺のレッドフューチャーの整備も一段落ついたし、箸休めとするぜ。」
……この三人は、言わば幼少期からの付き合い、幼馴染と言う奴だ。故に、リョウもモモイにどんなワガママを言われようとももう慣れっこだ。
「ほら、見せてみろ。」
「うん!ありがとう!これなんだけど……」
リョウはそう言って手を差し出すと、モモイは紙袋に入ったゲーム機を手渡してくる。四角いゲーム機だ、それなりに古い型の様だが。
リョウは工具とジャンクパーツの入った箱を引きずって持ってくると、モモイの持ってきたゲームダイスを分解して、修理を始めた。
その間、モモイとミドリは三人を見守るように佇むレッドフューチャーを見上げていた。
「おぉ……いつ見てもすごい迫力!」
「良く作ったよね……一人で。」
「んっ?まぁな……」
ゲームダイスを修理しながら、リョウは言葉をあげる。
「俺の夢でロマンだからな!俺の手で作り上げたかったんだ。俺だけの鎧――格好いいだろう?」
そう言ってリョウはニッコリと笑ってモモイとミドリを見る。二人はその視線を横目に、レッドフューチャーを見上げた……リョウは再びゲームダイスに視線を落とすと、また言葉を紡ぐ。
「まぁ、これで俺も戦える様になるんだ。ちったぁ怪我の頻度も減るだろう。」
「……うん、でも無理しちゃ駄目だよ。リョウはヘイロー持ってないんだから。」
ミドリは心配そうにリョウを見つめる……ミドリとしては、リョウは姉以上に危なっかしい人物だ。
初めてであった時も、見ず知らずの自分達の為にも血みどろになるまで戦ってくれた。お人好しっぷりはその頃から変わっていない。
……そんなリョウだからこそ、いざという時にポロッと命を落としてしまわないか心配になってしまうのだ。
リョウはそんな風に心配するミドリにグッと親指を立てて声を上げる。
「あたぼうよ!命賭けても命捨てる真似はしねぇ!それが
「……うぅん、なんかズレてる。」
モモイはそう言って目を細める。ミドリが言っているのは、もっと自分の身体を大切にして、怪我しなきようにということなのだが……
二人は溜息をついて肩をすぼめる。こう言う所は昔っから変わらないのだ。……向こう見ずで馬鹿な所は特に。
そうこうしている内に、修理を終えたリョウはゲームダイスをモモイへと手渡す。
「ほれ、これで使えるはずだ。」
「早っ!?」
「何か調子良いみたいだね……何かあったの?」
ミドリはそう言って問いかける。この赤石リョウト言う少年は、かなり自分のメンタルが作業効率に影響を与えやすい。
気分や機嫌が悪ければ簡単な修理もなかなか進まないし、逆に機嫌が良ければそれまでのスランプも嘘のように修理を進めることができる。
どうやら今日は後者の様子のようで……リョウは何かあったのか聞かれれば、胸を張り上げてドヤ顔で告げる。
「実はな……かの連邦生徒会長に来週、俺のレッドフューチャーを見せてほしいって頼まれてな!」
「えっ!?」
連邦生徒会長……それは、この学園都市キヴォトスを統治する連邦生徒会、そのトップだ。
そんな人に呼び出されるなんてことは滅多にない。そんな偉業を、リョウは成し遂げたのだ。
流石にそれにはモモイとミドリを目を見開いて声を上げる。
「す、すごいね!連邦生徒会に技術が認められたってことでしょ!?」
「いやぁ!流石リョウ!私も鼻が高いよ!」
「何でお姉ちゃんが鼻が高くするのさ。」
何故か胸を張り自慢げなモモイにツッコミを入れるミドリ。リョウはその様子を笑いながら見て、言葉をかける。
「まぁ、俺が
「手伝ったって……そんな大層な事はしてないよ。」
ミドリはそうつぶやく。確かに、ミドリとモモイがやったのはほんの雑用だ。
「んな事ねぇってよ……マジでなを」
しかしその雑用がリョウにとってどれだけ支えになったのか、2人は知らない。
周りから無茶だ無謀だ無理だと言われる中、モモイとミドリだけは応援して色々手伝ってくれた。
ヒーローへ、漢の子へ近づく手助けをしてくれた。
それがどれだけ心の支えとなったかは言うまでもない。
すると、モモイは胸を張り上げてミドリと顔を合わせて気合を入れる。
「これは……私達も気合を入れてゲームを作らないとね!」
「うん!がんばろう!」
そう……二人はゲーム開発部と言う部活を立ち上げて、もうひとりの部員と共に日夜ゲームを開発しているのだ。
出来はなかなか酷かったが……少なくともゲームへの愛は感じられた。きっと良い作品を作れることだろう。リョウも同じく胸に手を当てて言葉をあげる。
「何か手伝えることがあったらなんでも俺にも言ってくれよな!すっ飛んで駆けつけるからよ!」
……とは言っても、リョウにもゲーム開発のノウハウは流石にないのだが。まぁ、雑用程度には使えるだろう。
「っ!なん……でも……」
すると、ミドリが目元を暗くしてズケズケと足音を鳴らしてリョウの前へと駆け寄る。ミドリトモモイは肩を窄めてハテナマークを浮かべる。
「……それじゃ、早速手伝ってほしい。」
「んあ……?応!なんだ?」
リョウがそう問いかければ、ミドリはリョウの手を掴んで自身の頭の上に乗せる。
「……?」
リョウは何が何やらわからないといった感じで、目を点にしていた。しかし、その間もミドリは何も言わない。
「……うん。大丈夫。ありがとう。」
しばらくすると、ミドリがそうつぶやいてリョウから離れる……モモイも何が起こったのか良くわかっていないようで、目を点にしていた。
「お姉ちゃん!行こう!リョウ、ありがとう!」
「う、うん!わかった!またねリョウ!」
「またなぁ!」
去りゆくミドリを追いかけて、モモイも足を進める。そんな2人の後ろ姿を見ながら、リョウは手を振る……そんな最中、ミドリの心の内は……
(撫でられた!リョウに撫でられちゃった!)
そんな気持ちでいっぱいだった。
……あれを撫でられたと言うのかは分からないが、少なくともミドリにとっては大きな一歩だ。
リョウはミドリ達を見送ると、再びレッドフューチャーを見上げる。
「さて、整備ももうちょいで済むし!さっさと終わらせるかぁ!」
リョウはそう言って工具を持ってレッドフューチャーへ近づく。……自身の作ったものがお偉いさん達の目に止まるのは、悪い気分ではない。
しかし、連邦生徒会長……会見でしか見たことないが、一体どんな人物なのか……リョウは、まだ見ぬ大物に心を躍らせながら整備を始める。
リョウは知らない。約束を取り付けてきた連邦生徒会長が……