俺の強化外骨格は完璧で究極なんだよォッ! 作:漢の子
「さて、と。じゃあ頼むぜ
『リョーカイ!リョーカイ!』
……廃倉庫の外、ワイヤーを出してレッドフューチャーを吊り下げて持ち運ぶ真っ赤なドローン――リョウはドローンくんと呼んでいる――をリョウは腕を組んで見守る。
リョウの装備する強化外骨格、レッドフューチャーは持ち運びの面でかなり不便をする。だから、こうして専用のドローン達にお願いして目的地まで運んでもらうのだ。
因みに、このドローンはエンジニア部との共同開発で作った代物だ、そのおかげで一機だけでも普通のPMC兵士と渡り合えるくらいには強い。
また、レッドフューチャーの強化装備としての役割も担っているのだが……それはまた別の話だ。
「さて、ぼちぼち俺も行くかッ!」
連邦生徒会長が直々にどんな話なのか……わからないが、兎に角心を躍らせていってみる価値はあるだろう。リョウはルンルン気分で、連邦生徒会長の待つ、サンクトゥムタワーへ急ぐのだ。
しかし、サンクトゥムタワーで見た初めての光景は、なんと数人の生徒が入口まで押し寄せてイライラとした様子で待っている姿だった。
……その中には、見知った顔が居る。
「あれ、ユウカ?」
「……んげっ!?赤石リョウ!?」
――見知った顔というのは、ミレニアムサイエンススクールの生徒会の役割持つ組織、セミナーの早瀬ユウカだ。他にもゲヘナやトリニティからの人が来ているようだ。
トリニティの正義実現委員会の制服を着た少女――羽川ハスミが問いかけてくる。
「お知り合いですか?」
「ウチの生徒よ……」
すると、トリニティ自警団の灰色の制服を着た少女。守月スズミが納得したように言葉を紡ぐ。
「……なるほど。ミレニアムの。」
すると、ユウカが肩を窄めてリョウに対して呆れ気味に問いかける。
「と言うか、なんであんたがここに居るの?」
ユウカ的には、リョウは様々な自治区の問題に首を突っ込む生粋の問題児……あまり関わりたくないのが本音だ。リョウは何しに来たのかと問われれば、胸を張って自慢げに声を上げる。
「実はな……連邦生徒会長に呼び出しを食らってな!」
「連邦生徒会長に!?」
「応!」
「私達も、その連邦生徒会長に会いに来たのです。」
すると、ゲヘナの風紀委員の制服を添えった火宮チナツが声を上げる。リョウが首を傾げる問いかけようとすると、建物の奥から人影が二つ現れた……
一つは、連邦生徒会の行政官――七神リン。もう一人は……リョウと同じくヘイローを持たない
「!行政官!見つけた!見つけたわよ!連邦生徒会長を呼んでいて……あれ?隣の大人の方は?」
「首席行政官、お待ちしておりました。」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求しています。」
怒涛の連邦生徒会長への要求。……仕方があるまい。ここのところ、キヴォトスの治安は悪化の一途を辿っている。
PMCから武装は流出し、スケバンは増えに増え、ミレニアムに風力発電はシャットダウンし、各学園も治安の維持が困難になっているのだ。
すると、リンは静かに溜息をつく――リンとしてはかなり面倒な人たちに捕まった感覚だ――後ろには、連邦生徒会長がアポイントを取られていた赤石リョウも居る。
それぞれが各々の事情をぶちまける中、リンは頭が痛くなってくるのを感じた。確かに、彼女たちの語る事象はすべて、連邦生徒会が対応するべき案件だ。
……だが、今連邦生徒会にはそれらすべての問題を解決できるほどの力はない。なぜならば……その治安を維持する大黒柱が不在だからだ。これは、何処にも漏れていないトップシークレット。
……しかし、これ以上隠し通すこともできなと、事の真実を言葉にした。
「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」
「えぇっ!?」
その言葉に、その場にいた一同は目を見開いて驚く。何よりも一番驚くのはリョウだ。
つまり、彼はアポイントを取られたのにもかかわらずその約束を反故にされたということになる。普通ならば到底納得できるものではない。リンも、リョウに対しては深く頭を下げる。
「大変申し訳ございません。なんとお詫びをすればよいのか……」
「私達と対応違いすぎない!?」
「リョウ様は正式なゲストですので」
「……まあ居ねえんならしょうがねぇな。」
リョウはそう言ってうんうんと頷く。しかし、それでハイ終わりとなるような状況ではないのだ。ユウカが言葉を荒げる。
「あんたはバッサリ割り切り過ぎなのよ!連邦生徒会長が居ないなんて……しょうがないじゃ済まされないわ!」
「えぇ、事実サンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなった為、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。」
淡々と事の次第を告げるリン……先程まで解決策がなかったのは事実。だが、今は違う。
「しかし、この先生こそがフィクサーになってくださるはずです。」
そう言って、リンは隣の大人を指す。生徒達は動揺を浮かべる……
''私が?''
先生もまた、動揺していた。思わず転けそうになる一同はなんとかそれを耐えると、ユウカが声を上げる。
「この方はこの先生はどなた?」
「キヴォトスの外からいらっしゃったようですが……?」
「こちらの先生こそ、これからキヴォトスで働く先生であり、連邦生徒会長が直々に指名した人物です。」
「失踪した連邦生徒会長が指名?ますますこんがらがってきたじゃない!」
……確かにそのとおりだ。リン曰く、この先生はキヴォトスのあらゆる問題に介入できる部活、連邦調査部シャーレの顧問先生として呼ばれたそう。部活としては、かはり異常な活動範囲を持った部活だ。
……そのシャーレの地下に保管された「とある物」を使用することで、サンクトゥムタワーの制御権を再び連邦生徒会に移すことが可能になるというのだ。それができれば、少しは事がマシになるというもの。
リンもそのつもりでヘリを要請するのだが……
……しかし、そのシャーレのビルのある外郭地区が、なんとキヴォトスの矯正局から脱走した生徒の手により、そこは今大騒ぎの戦場になっているそうな。
次から次へと舞い込んでくる問題。リンはメガネを白くして青筋を浮かべるが、なんとか耐えるとユウカ達を見る。すると、良案を思いついたように告げる。
「ちょうど今ここに、書く学園を代表する立派で暇そうな方々が居るので、私は心強いです。」
「……まさか……」
……リンはそのまさかと言わんばかりの表情でリョウを除く皆を見る。どうやら、戦力として数えているらしい。
こう目をつけられては逃げられないなと、各学園を代表するような形となった彼女らは肩を窄めて溜息をつく。逃げようとすればその後は……考えたくもない。
そこに、リョウが気まずそうにゆっくりと手を挙げる。
「なぁ、俺は――」
「赤石リョウさん、ですよね。アポイントの確認は取ってあります。……との事ですので、大変申し訳ありませんが、本日はお引き取りを――」
「いや、先生をそのシャーレって所まで運ぶの?俺も手伝うよ。」
そう言ってリョウは腕を組んで。笑みを浮かべる。だが、事情を知らないトリニティとゲヘナの面々は驚愕し、止めようとする。
「待ってください。貴方にはヘイローが……」
「危険すぎます!」
「大丈夫だっつーの!」
ヘイローがないことに危惧をする彼女たちの気持ちもわかる。だが、それでもリョウは大丈夫だと言い放つ。リンは事情を知っているからかすこし考えると頷いて頭を深く下げる。
「それでは……お願いしてもよろしいでしょうか?」
「ちょっと!?私達と対応違いすぎない!?」
「リョウ様は正式なゲストですので。」
同じ言葉を繰り返したリン。ユウカとリンが言い合いになるのを止めるように、リョウは自身の胸を拳で叩いて自慢げに声を上げる。
「任せな!これも人助けよォッ!」
「……納得いきません。」
ハスミは、正義実現委員会として危険に巻き込みたくないのかそう告げる……そうやって心配してくれる事自体はありがたい。しかし、リョウはそんなハスミに腕を突き出して収める。
「心配ご無用!俺には心強い相棒達がいるからな!」
「相棒……?」
スズミは相棒の言葉に首を傾げる。リョウは外に出てすこし離れた所に立ちはだかると、太陽を掴むように握りこぶしを握る。
そして、声を張り上げた。
「……来い!俺の
その声と共に、ドローンくん達がレッドフューチャーを吊り下げた状態でリョウの元によってくると、その強化外骨格を地面へ置き去る。
現れるのは2m代の真っ赤なパワードスーツ――強化外骨格だ。全体的な印象はゴテゴテとした装飾の割に、比較的スマートになっている。
頭部はうさぎ耳のように後方に飛び立つ2本と額から鬼のように伸びる一本角、計三本の角が特徴的だ。
所謂スーパーロボットの系譜に見える姿。黒いアンダーカラーには血管のように青い光が伸びていく。瞳には瞼のようにシャッターが下ろされている。
……先生は、その見るからなスーパーロボットに目を輝かせて言葉をつぶやく。
''かっこ……いい!''
「これが俺の掴んだ物!
そう言ってレッドフューチャーを背景に腕を組み上げるリョウ……ユウカは頭を抱え、ハスミとリンは冷ややかな目を向けて、チナツは唖然とし、スズミは溜息つく。
「へへっ!」
静かに流れる時の中で、自慢げに息をつくリョウの息が木霊するのだった。