俺の強化外骨格は完璧で究極なんだよォッ! 作:漢の子
……少し薄暗い廊下、セミナーの会長室へと繋がる廊下を赤髪の少年――赤石リョウが静かに歩く。
「……。」
彼がこの道を歩く理由は唯一つ、かのセミナーの会長……つまりは、ミレニアムサイエンススクールのトップに呼ばれたのだ。
一体何用か……リョウは全く見当がつかない。
トリニティでレッドフューチャーを使って子供達と遊んでたのがバレたか?
それともゲヘナで温泉開発部と真正面からやりあった事か?
百鬼夜行学院で刀を作ってもらった件か?
……リョウとしては、思いたるふしが多すぎる。
しかし、四の五の考えていてもしょうがない。兎に角進んで、その会長殿に直接話を聞かねばどうにもならない。
リョウはひたすらにその道進んでいると、やがてひとつの大きな扉が目にはいる……リョウは一度深呼吸をしてノックをしてから、ゆっくりと扉を開けて中へ入るを
そこには、巨大な机が置かれ様々な精密機械が並びに並んだ空間だ……見ているだけで威圧感を感じる。
……一番威圧感を感じる理由は、その椅子に座っているその人のせいだろうが。
……調月リオ。ミレニアムサイエンススクールの生徒会長、学園のトップ。リョウは相変わらず綺麗な人だなと彼女に軽く見惚れるが、直ぐ様態度を切り替えて。
「……座って頂戴。」
「はい。」
リョウは一声上げると、来客用のソファへと腰掛ける……一体何の言われるのやら、リョウが身構えていると、不意にリオが言葉を紡ぐ。
「単刀直入に言わせてもらうわ、貴方の強化外骨格――レッドフューチャーの設計データを渡してほしいの。」
「レッドフューチャーの?」
リョウとしては、意外な所から責められた気分だ。まさかあのリオ会長室がレッドフューチャーの設計データを欲しがるとは。
確かに、リョウはあのデータを他所へ公開したことはない。……そんな機会がなかったという方が正しいのかも知れはい。
あんな物の設計図を欲しがる企業は過去にいくつかあったが……邪なことを考えているのは流石のリョウでもわかる。
だからこそ、リョウはデータは誰一人にも渡さずに来たのだが……ここに来てリオ会長に渡してほしいとせがまれるとは。
……どうしたものかとリョウは考える。考えに考えて……数拍おいて応える。
「……いいですよ。レッドフューチャーの設計データ。渡しましょう。」
「っ!本当にいいの……?」
リオとして、予想外の好感触だ。いきなりこんな事を言われて怪しまない人間はいない。
リオとしても、それ相応の対価は支払うつもりではいる、しかしもし断られたら、
過去誰にも公開されたことないレッドフューチャーのデータをこうも簡単に入手できるとは……しかし、リョウはただしと言葉を追加する。
「……データはコピーを手渡しで、それが一番安全なので。」
「えぇ、構わないわ。」
「それでいいなら、良いですよ。お渡しします。」
そんな事か、とリオは若干呆気にとられる。コピーで手渡し、たしかに安全だ。それほど他の人間には見せたくないデータなのだろう。
しかし、リョウはなぜそんのデータを自身に見せようとしたのか?リオにはそれが気がかりだった。思わずリオは、冷たく問いかける。
「……そこまでして人に見せたくないデータを、なぜそう簡単に渡してくれるの?」
リオの問いかけに、リョウはすんなりと答える。
「俺がレッドフューチャーのデータを他人に見せないのは、兵器転用されるのを防ぐ為です。あれは、俺がヒーローになるために作った……言わば俺の魂を形にした物なんです。それを兵器にされちゃあ、溜まったもんじゃない。
「……なら尚更、なぜ私に渡したの?」
そうリオが問いかければ、リョウは何処か悩んで……すこし頭をかくと、静かに言葉を紡ぐ。
「強いて言うなら……感です。」
「感?」
これはまた曖昧で不確かなものがでてきたなとリオは思うと、リョウはその思考を読んだように答える。
「……すげぇ大雑把で不確か物なんですけど、俺に取っちゃそれが大事なんです。」
リョウはそう言って一息つくと、また言葉を続ける。
「会長なら、きっと正しく使ってくれる。たとえ俺の中で正しさと相いれなくても、ちゃんと正しく使ってくれる。そんな気がするんです。」
……それは、技術者としてのリョウの感だ。お人好しで何も考えずに手伝う赤石リョウのではなく、技術者として、レッドフューチャーの生みの親としてのリョウの考えだ。
リオは、そんなリョウの考えが上手く分からなかった。分かろうとしても……理性がそれを阻止する。わかってはいけないと、もっと合理的に、理屈的に考えるべきだと。リオは「そう……」と一言漏らすと、次の話へと移ろうとする。
「それじゃあ、次に報酬の話ね……」
「いやいや!?要らないですって!……そんな事より気になる事があるんですけど、いいですか?」
リョウが思わずそう言葉を漏らすと、リオは軽く首を傾げながら呟く。
「何かしら?」
何を聞かれようとも問題は無い……聞かれたとしても、
「リオ会長、最近寝てます?目の下に隈ができてるんで……」
「っ!?」
最近寝ているか……そんな風に
「あぁいや……すんません!」
「いえ、大丈夫よ。……そうね、最近はあまり寝れてないかしら?」
思わずリオも真正面から受け答えしてしまう。……すこし気まずい空気が流れると、リオがコホンと息をついて言葉を紡ぐ。
「……話は、終わりよ。」
「はぁ……それじゃあ、また後日にアポを取りますので、失礼します。」
そう言って、リョウは静かに扉へと移動して……会長室を後にする。リオは、不意に手鏡を取り出して、自身の顔を見る。
(……隈は隠しておいたのに。)
客人と会うからにはと、リオ会長は化粧で隈を隠していたがそれを見抜いてくるとは……それとも、再三リョウが言っていた感と言うやつなのか。
リオは、赤石リョウという少年に何か底知れぬ恐ろしさを感じながら、リオは手鏡を閉じるのだった……。
▲▼▲
……リョウはリオとの話が終われば、ミレニアムサイエンススクールの建物の中を歩く。
一体リオ会長が何をしようとしているのか、それはリョウにはわからない。
考えたってしょうがない、その時が来るまではただ待っていよう。いざとなれば……全力で自分が止めるだけだ。
……そんなことよりも気になるのは、リオ会長の体調だ。化粧で隠していたが……かなり隈が酷かった。ちゃんと休んでくれていればいいのだが……
そんな事を考えていると、突然自分を呼ぶ声がした。
「うわぁぁぁん!リョウえもぉぉぉん!」
そう言って泣き叫びながら駆け寄って抱きついてくるのは、幼馴染のモモイだ。わんわんと泣きながら要領の得ない言葉を永遠とつぶやいている。
「廃部がゲームで予算を作って廃墟がぁぁぁぁ!!」
「日本語でOK。落ち着け。」
リョウが焦った様子でモモイをなだめていると、後ろから何故か怖い笑顔でミドリがゆっくりと近づいてくる。
「もぉ、駄目だよお姉ちゃん。リョウに迷惑かけちゃ……離れて?」
「だってミドリィィ!」
「離れて。」
「はい。」
ミドリからでた知れぬ恐怖に押されて、モモイはおとなしくリョウから離れる。その威圧感に思わずリョウもピシッと体を伸ばしてしまった。
リョウは恐る恐る何があったのかを問いかける。
「あの……何があったん……だ?」
リョウがそう問いかければ、モモイはぴょんぴょんと跳ねながらリョウへ叫ぶ。
「大変だよ!ゲーム開発部廃部の危機だよぉ〜!」
「廃部の危機ィ?」
「……部員も足りないし、実績も足りないからミレニアムの部活から外されちゃいそうで……」
ミドリが事の次第を詳しく話す……ミレニアムで正式な部活として必要なのはおもに2つ、四人以上の部員か、もしくは十分な実績。
現在のゲーム開発部には、そのどれもが足りていない状態だ……正直、部費と部室がなくなるだけではあるので、非公認の部活としてならやっていけると思うのだが、どうやらそれでは良くないらしい。
「マジか。やべぇな……」
どうやら、またモモイ達がピンチになっているようだ。リョウは月並みな感想を送りながらどうしたものかと考える……しかし、リョウがゲーム開発部に入って部員を増やしたのでは、根本的な解決にはならない。
何よりも現在のゲーム開発部に足りないのは実績だ。それを補うにはどうしたらよいか……リョウが考えていると、モモイは不意にフフと笑いながら言葉を紡ぐ。
「……こうなったら決めたよミドリ、リョウ!」
「決めた?」
「……嫌な予感がする。」
二人は、こうなったモモイの考えがろくなものではないのは良く知っている。リョウとミドリはゴクリと息を呑むと、モモイは明後日の方向を指さして叫ぶ
「シャーレに手を貸してもらうんだよ!!」