この素晴らしいRTAに祝福を!   作:あるえぇ?

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今回は少しシリアスな回です。あと5000字超えてるのでちょっと長いです。


第七話 この仮面の悪魔と遭遇を! 前編

 「…確かにルナさんが言ってた通り、変なモンスターが湧き出ているね。」

 

 ウィズを見逃してから数日後のこと。俺はクリスとダクネスと一緒にキールダンジョンを訪れていた。昨日から謎のモンスターがキールダンジョンから溢れ出ているので、最後に入ったクリスに調査してほしいとギルドに依頼されたからだ。

 

 「あれは…デフォルメされた人形か?動きまわっているのが気になるが…。」

 

 「…少し近づいてみる?」

 

 「いや危ねぇって。迂闊に近づいたらアイツらがとんでもないバケモンになる可能性だってあるんだぞ。」

 

 「では私が近づいてみる。私であれば並の攻撃であれば受け切れるからな。」

 

 「本音は?」

 

 「未知のモンスターの重い一撃を喰らってみたい…!」

 

 「興奮すんな。」

 

 「してないっ!」

 

 「はぁ…。まあいい。とりあえず慎重にアイツらに近づいてみてくれ。」

 

 「行ってくりゅ!」

 

 「っておい慎重に行けって言ったろ!?」

 

 ダクネスが人形達に突っ込んでいく。それに気づいた人形達はダクネスに飛び掛かると…次々と自爆した。

 

 「うむ。この衝撃、なかなか悪くない。…ただ一体一体の爆発はそこまで強くないな。」

 

 …まあ案の定というか予定調和というか、うちのドMの耐久お化けクルセイダーには擦り傷一つ付くことはなかった。

 

 「お前バカか!?今回は大したことなかったがもしアイツらがとんでもない奴だったらどうするつもりだったんだ!」

 

 「くぅ…!身を挺したにも関わらずこの罵倒…!やはり私の目に狂いはなかった!」

 

 「興奮してんじゃねぇ!頼むからちょっとは反省しろ!『フリーズ』!」

 

 「にゅふぅぅぅ!」

 

 

 ◇

 

 

 ある程度ダクネスにお仕置き(逆に全部ご褒美になってしまったが…)したところで俺達は本題に入った。

 

 「とりあえずあの人形自体は大したこと無さそうだし、一度ダンジョンに潜って原因を確かめてみる?」

 

 「まあそうだな。大したことないって言ってもダクネス基準だし、爆発物が無限に溢れ出ているのは危険だからな。」

 

 「では私が先頭に立とう。先程と変わらなければ十分受け切れるからな。とはいえ攻撃が当たらないからもう1人来てほしいのだが。」

 

 「じゃあ俺がいくか。盗賊スキルはクリスに一通り教えてもらったし、アーチャースキルの『千里眼』も覚えているしな。」

 

 「あたしも行くよ。あたしはダンジョン慣れしてるし、元々あたしに依頼されたことだし。」

 

 「いや、クリスはここで待機していてくれ。」

 

 「ど、どうしてさ!?」

 

 「確かにクリスはダンジョン慣れしているとは思うが、もし奥にいる奴がとんでもないやつだった場合全滅しかねないからな。そういう万が一があった時にギルドに報告するなりできるようにしておきたいんだ。」

 

 「……30分以上経っても出てこなかったらあたしもダンジョンに入るからね?」

 

 クリスはしばらく考え込んでいたが、不安そうな表情ではあるものの渋々了承してくれた。

 

 

 ◇

 

 

 ダクネスを盾にダンジョンを進むこと十数分。俺達は仮面をつけている怪しい男を発見した。

 

 「あの仮面の男、土を捏ねて人形を作っているのか?』」

 

 「みたいだな。となるとダンジョンから溢れ出ている人形の主おそらくアイツだろうな。なんか強そうだし、ここは慎重に…」

 

 「おいそこのお前、貴様が溢れ出る人形の元凶か?」

 

 「っておーい!?馬鹿正直に正面から話しかけてんじゃねぇ!」

 

 「おっと。これはこれは…よく来たな冒険者よ。我輩のダンジョンへようこそ。」

 

 「…何者だ?」

 

 「我輩は魔王軍の幹部にして、数多の悪魔を率いる地獄の公爵…この世の全てを見通す大悪魔──バニルである。」

 

 「魔王軍幹部!?おいダクネス逃げるぞ!今の俺達じゃ勝てるわけがない!」

 

 「カズマ。私は女神エリスに仕える者として、悪魔を前にして引き下がるわけにはいかない!バニルといったな?改めて聞くが、ダンジョンから溢れているモンスター…もとい人形は貴様の仕業だな?」

 

 「溢れた…なるほど。こいつらを使ったダンジョン内のモンスターの駆除が粗方済んだということだな。であればこれ以上人形を出しておく必要はあるまい。」

 

 そう言ってバニルが指を鳴らすと、周囲の人形達はあっという間に土塊に戻った。

 

 「では、計画を次の段階に移行させるとしよう。」

 

 「計画?一体何を企んでいるんだ?」

 

 「よくぞ聞いてくれた!この我輩、実は強い破滅願望を持っているのだ。それを叶えるために、まずはダンジョンを手に入れ修繕及び改修を行う。次にダンジョンの各部屋に部下の悪魔を配置し、ダンジョンのあらゆる場所にトラップも設置する。そして完成したダンジョンに挑むは歴戦の凄腕冒険者達!数々の悪魔とトラップを潜り抜けやがてダンジョンの最奥へ辿り着く。最奥で待ち構えるのはもちろん我輩!激闘の末、ついに打ち倒された我輩の背後に宝箱が1つ現れる。冒険者達がそれを開けると…中には『スカ』とだけ書かれた一枚の紙切れが。それを見て呆然とする冒険者達の悪感情を食しながら……我輩は滅びたい…!」

 

 「この悪魔性格悪い!」

 

 「フハハハハハ!汝の悪感情、実に美味である。…ところで小僧と小娘よ。我輩、探している者がいるのだが…ウィズという名の魔道具店店主は知っているか?」

 

 「えっ、ウィズ?いやまあ知ってるが…。」

 

 あの商才のないリッチーとこいつになんの繋がりがあるというのか。

 

 「ほう。ポンコツ店主の正体についても知っているのか。であれば今が好機やもしれぬな。」

 

 「貴様。先程から何をブツブツ言っている。それになぜ突然そんなことを───」

 

 突然ダクネスが焦ったようにこっちに振り向いた。その光景を最後に、俺の意識は途切れた。

 

 

 ◇

 

 

 私はバニルが投げた物をはたき落とそうと手を伸ばす。だがそのときには既に奴が投げた仮面はカズマの顔に張り付いてしまっていた。

 

 「カズマ!」

 

 「フハハハハ!聞くがいい小娘!この男の体は我輩が乗っ取った!!」

 

 「なんだと!?貴様、カズマをどうするつもりだ!」

 

 「別になんてことはない。我輩の目的のために利用するだけである。まあ、いつそれが終わるかは我輩にもわからぬがな。」

 

 「ふざけるな!力ずくでもカズマは返してもらうぞ!」

 

 「威勢がいいのは結構だが、攻撃が当たらぬ汝がどうやって我輩を倒せるというのだ?」

 

 「なっ、なぜ貴様がそのことを知っている!?」

 

 「先程我輩は見通す大悪魔であると言ったであろう?汝の考えているあーんなことやこーんなことも全てお見通しである。それはさておき、わざわざ汝を相手にする必要はあるまい。というわけでさらば!」

 

 「おい待て!」

 

 突然走り去り始めたバニルを急いで追いかける。だがカズマではあり得ないほど俊敏な身のこなしで奴はダンジョンを駆け抜けていく。その上私は重い鎧を着ているのもあり奴との距離がどんどん開いていく。このままでは見失ってしまう…!そう思ったときだった。

 

 「『ワイヤートラップ』!!」

 

 数多の縄がバニルの行手を阻むように展開された。この声でこの手のスキルを使える者といえば…

 

 「クリス!」

 

 どうやら既に30分経過していたらしく、約束通りクリスはダンジョンに潜ってきていたようだ。…だが明らかに冷静さを欠いている。

 

 「ダ、ダクネス!こ、これは一体どういう…。」

 

 真実を伝えるのは心苦しいが、ここを乗り切る為にバニルに会ってからのことを簡潔に話した。

 

 「そんな…。」

 

 話を聞いたクリスの表情は怒りと悲しみと絶望が入り混じった、今にも泣いてしまいそうなものになってしまった。

 

 「想い人を奪われたことで悪感情がダダ漏れになっている盗賊娘よ。言っておくが、目的を達成した暁には傷一つ付けずにちゃんと返して─」

 

 「死に晒せぇぇぇぇぇえ!!!」

 

 「どわぁっ!?」

 

 クリスは顔をぐしゃぐしゃにしながら不意打ち気味にバニルに斬りかかった。だが大悪魔だけあってバニルはギリギリのところで攻撃を回避した。

 

 「き、貴様!人が話している最中に攻撃するとは礼儀も知らんのか!?」

 

 「例え礼儀がなっていないとしても、悪魔やアンデッド相手ならエリス様なら超許すよ。」

 

 「ぐぬぅ…。だが、我輩を斬りつければこの男の体に傷をつけることになるぞ?」

 

 「っ…卑怯者…!」

 

 クリスは悔しそうにバニルを睨みつけながらナイフを強く握りしめる。

 

 「…落ち着けクリス。悔しいのはわかるが実際奴の言う通りだ。カズマを傷つけたくなければ怒りに任せて攻撃するな。」

 

 「じゃあ他にどうしろっていうのさ!?」

 

 「奴の本体はおそらくあの仮面だ。仮面を引き剥がすことができれば、カズマを傷つけずに助けることができるかもしれん。だからここは奴を倒すことではなく、カズマから奴を引き剥がす方向で戦おう。」

 

 「…わかった。」

 

 話がまとまったので、私達はバニルに向き直る。

 

 「フハハハハハ!ノーコンクルセイダーと盗賊娘だけで我輩に立ち向かうとは!これはなかなかに見ものであるな!」

 

 「…すぐに軽口を叩けなくしてあげるから。」

 

 「その意気や良し!ではこの男を賭けて一勝負といくとしよう!」

 

 こうして、カズマを賭けた魔王軍幹部との戦いが…幕を上げた。

 

 

 ◇

 

 

 「はぁっ…はぁっ…」

 

 「どうした盗賊娘。この程度でへばっているようでは小僧を取り戻すことはできぬぞ?」

 

 戦闘が始まってから早1時間。あたし達の体力は限界に近づいていた。特にダクネスは攻撃の当たりどころが悪かったのか先程からダウンしてしまっている。

 

 万事休す 絶体絶命

 

 この状況を一言で言い表すならばこんな感じだろう。

 

「うる…さい…。」

 

 でも…あたしは諦めない。諦めたくない。奴が魔王軍幹部だからだとか大悪魔だからだとかは今はどうでもいい。ただ…こんなことでカズマくんを失いたくない!

 

 「? 盗賊娘に神力が…まさか!?」

 

 下界に降りるために封印しておいた神力を解き放つ。

 

 「…大悪魔バニル。女神エリスの名において、貴方の大罪を裁きます。」

 

 カズマさんを奪われた強い怒りを十分に込めた処刑宣告を、奴にただ冷酷に言い放つ。

 

 「よもや幸運の女神と鉢合わせることになるとは…。」

 

 「…報いを受けなさい。『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』。」

 

 こいつに情け容赦はいらない。私は最上位の対悪魔特効の魔法を最大出力で放った。

 

 「…小僧の体に少々負荷がかかるが仕方あるまい。『バニル式殺人光線』!」

 

 そう言ってバニルが構えを取ると極太の光線が私に向けて放たれた。互いの攻撃はぶつかり合い、せめぎ合い始める。だが私は既に体力ギリギリで放っているのもあり、少しずつ力が入らなくなっていく。…ダメだ。押し負ける。

 

 

 …そう思った時だった。バニルの光線の威力が僅かに弱まったのを感じた。

 

 「む…これは…小僧の意識か!ほんの僅かとはいえまだ残っていたとは…!」

 

 カズマさん…そういうのズルいです。意識が薄い中、魂が本能的に抵抗しているだけなのでしょうが、だとしてもここぞというタイミングで私を助けるなんて本当にズルいです。そんなことされたら…益々貴方のことが好きになっちゃうじゃないですか…!

 

 「…はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 残り僅かの気力と体力を振り絞り、私はさらに出力を上げる。バニルも負けじと出力を上げようとしたが、カズマさんの意識に気を取られて上手くいっていない。そうしているうちに白い炎がバニルの光線を押し込んでいき、ついにバニルを包み込んだ。

 

 「ぬわああああっ!」

 

 最大出力の特効魔法を受けたバニルは地面をのたうち回り始める。だがここまでやって逃げられるわけにはいかないので、私は魔法を放ち続けバニルを徹底的に焼き尽くしていく。

 

 「よりによって女神に倒されるとは…まあ目的は達成できる故、今回は大人しく散るとしよう。」

 

 そう呟いた直後、バニルは消滅した。それを確認すると、私は急いでカズマさんに駆け寄った。

 

 「カズマさん!大丈夫ですか!?」

 

 …返事はない。やはり意識はないようだ。私は次に彼の脈と呼吸の有無を確認する。

 

 ……脈はある。呼吸もある。

 

 それを理解した瞬間、私はカズマさんを抱き抱えて泣いてしまった。

 

 「よかった…よかった…!」

 

 きっと今の自分の顔は、誰かに見られたら引かれるくらいひどいことになっているのだろうが、それでも私は涙を止めることができなかった。

 

 「あぅ…?」

 

 すると突然、身体中から力が抜けていくような感覚に陥った。…いや、実際に抜けているのだ。先程の一騎打ちで自身の莫大な魔力と残り僅かだった体力を短時間のうちに殆ど使いきってしまった上、カズマさんが無事だとわかったことによって緊張が解けたことで力が入らなくなってしまったらしい。

 

 …………。

 

 「カズマさんの為に頑張ったんですし、ちょっとだけならいいですよね。」

 

 僅かに残っている魔力でモンスター除けの簡易結界を私達3人の周りに張って、私はクリスの姿に戻った。そして胸に顔を埋めるようにしてカズマくんを抱きしめる。最初の方は彼の匂いや温もりを堪能していたのだが、その後数分も経たないうちに、あたしは深い眠りに落ちていった。




☆補足
憑依状態のバニルが殺人光線とか使えるのかはわかんなかったので、この小説では使えるものの憑依先の体に負荷がかかるということにしました。
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