この素晴らしいRTAに祝福を! 作:あるえぇ?
「うーん…ここは…。」
目が覚めると俺はいつもの宿の部屋にいた。さっきまで俺はバニルとかいう奴と話していた気がするんだが…夢だったのだろうか?
「んにゅ…」
「え!?」
今横から寝言が聞こえなかったか!?
俺がバサっと布団を捲ると…
「ク、クククリス!?」
何故かクリスが気持ちよさそうな寝顔で寝息をたてていた。…とりあえず寝ているクリスを観察してみよう。服が乱れているとかじゃないからうっかりお持ち帰りしたとかじゃなさそうだな。となると本当になんでいるんだ…?
「かじゅまくん…。」
「うぇ!?」
今寝言で俺の名前言わなかったか!?クリスの顔をまじまじと見てみる。どう見ても寝ているからマジで寝言で言ったらしい。…しかしあれだな。普段は先輩とか仲間として見ているからあまり意識していなかったが、改めて見るとクリスって相当美人だよな。悪魔やアンデッドに容赦がないところ以外は性格も良いし。正直異世界に来てから知り合った人の中では1番好印象だ。
俺がクリスをガン見しながらそんなことを考えていると…
「んん……んえ?」
目を覚ましたクリスとガッツリ目が合ってしまった。
「か、カカカカカズマくん!?ななんでここにいるの!?」
「そ、それはこっちのセリフだ!なんでお前が俺が泊まっている宿の部屋にいるんだよ!」
「え…えええええええ!?」
そう言われたクリスは周囲をキョロキョロと見回した。
「ま、まさかカズマくん…あ、あたしに…!?」
「何もしてねーよ(寝顔ガン見はしたけど)!俺だって目が覚めたらダンジョンじゃなくて混乱してるんだよ!」
「そ、そうなの?」
俺達が謎の状況に混乱して騒いでいると、突然部屋のドアをノックする音が聞こえた。ドアの覗き穴を覗いてみると、軽装のダクネスが立っていた。
「ダクネス!」
「おはようカズマ。よく眠れたか?」
「いやぐっすりではあったけどさぁ…起きたら何故かクリスが横で寝てたんだが…。」
「私がここまで運んだからな。」
「え?それってどういう…?」
「とりあえず中に入れてくれ。クリスにも説明したいからな。」
◇
部屋に入れてもらった私は、初めにクリスと共にカズマにダンジョンでの出来事を説明することにした。
「…意図的ではなくてもお前らに迷惑かけちゃったんだな。なんかごめんな。」
「カズマが謝る必要はない。」
「そうだよ!全員無事だったんだからそれで良いじゃん!」
「…そうだな!」
そう言ってカズマが笑う。クリスの方を見ると、彼女も嬉しそうに笑っている。
「でここからが本題だ。なんで俺とクリスが同じ部屋で寝てたんだ?」
「私の目が覚めた時、クリスとカズマはダンジョンで気持ちよさそうに寝ていたのだ。だがバニルがダンジョン内のモンスターを粗方駆除したとはいえ、あそこで寝かせておくわけにはいかないからな。私が背負ってここまで運んだというわけだ。」
別にクリスをカズマと一緒の部屋に寝かせたのはもしかしたらのハプニングを期待していたわけでは絶対にない。断じてない。
「そういうことだったのか。ありがとうな。」
「気にするな。私達は仲間だからな。」
そう言いながら私は2人に笑いかけた。
◇
「ところで今日はどうする?」
「流石に今日は冒険にいく気にはならないな…。」
俺達は少し遅めの朝食を食べながらそんな会話をしていると、ルナさんがこっちにやってきた。
「おはようございます!昨日は本当にお疲れ様でした!」
「おはようルナさん。あたし達に何か用?」
「今朝ウィズさんから時間がある時でいいのでお店に来て欲しいと伝言を頼まれたんです。」
「ウィズが?珍しいこともあるのだな。」
「それじゃあ朝食を食べ終えたら行ってみるか。伝言ありがとうなルナさん。」
というわけで、本日は冒険をお休みしてウィズ魔道具店に行くことになった。
…この後まさかアイツと再開することになるとは、この時の俺達は知る由もなかった。
◇
「へいらっしゃい!」
「あ!皆さんいらっしゃいませー!バニルさんから聞きましたよー!」
ウィズの店に何故かバニルがいた。それを視認した瞬間クリスがナイフで斬りかかろうとしたので、以前ダクネスから助言された通りにバックハグ+なでなでで沈静化する。
「…なんでお前無事なんだよ。クリスに倒されたはずじゃなかったのか?」
「流石に何度も悪魔特効の攻撃を喰らえば無事で済むはずがなかろう。ほれ!」
そう言ってバニルは仮面を指し示す。その部分にはⅡという文字が刻まれていた。
「この通り残機が一人減って、今は二代目バニル様だ!」
「「は?」」
この世界の悪魔って残機制なの?初耳なんだが。
「蘇ったバニルさんは、魔王軍の幹部ではないのでとっても無害なんですよ!」
「いやそんなはずはないね!どうせ油断させてまたカズマくんをふみゃあ…。」
またクリスが暴走しかけたのでさらに優しく撫でてやる。
「へっぽこ店主の言う通りだ。我々悪魔は人々の悪感情を糧とするが、我輩の好みは人をおちょくったりした時に生じる悪感情。故に、我輩は人間には危害を加えることはないので安心するが良い。」
「待て。そう言うのならば何故カズマを乗っ取ったのだ?」
「我輩、資金稼ぎのために商売をしたかったのであるが、それには魔王軍幹部という肩書きがどうしても邪魔になる。そこで偶然鉢合わせた汝らに倒してもらおうと考えたのだ。小僧を乗っ取ったのは何が何でも我輩を倒そうとしてくれるように誘導するためである。目論見通り目的が達成された今、これ以上汝らと敵対することはない。」
「そんな理由でカズマくんを乗っ取るにゃあ…。」
「はいはい落ち着こうな。要するにバニルはもう魔王軍幹部じゃないし、人間に危害を加えるつもりもないからこれからは友好的にしようってことでいいのか?」
「そういうことである!」
…まあバニルが敵対する気がないのならこっちも敵対する必要は無いか。
「という訳だそうだクリス。敵意がないのにわざわざ敵対する必要は無いし、トラブルの元になるからこれ以上敵意を剥き出しにするのはやめてくれ。取り憑かれたとはいえ俺も無事だった訳だしな。」
「……わかったよ。でも勘違いしないで。カズマくんがそういうからしばらくは見逃してあげるだけで、何か問題を起こしたらすぐにとっちめるからね?」
クリスは不服の意を剥き出しにしてバニルを睨みつけているものの、今回も渋々引き下がってくれた。