この素晴らしいRTAに祝福を! 作:あるえぇ?
「ようこそ死後の世界へ。佐藤和真さん、あなたはつい先程、不幸にも亡くなりました。短い人生でしたね。」
此処は何処だろうか?ふと気付いたら俺はその部屋に設けられた木製の椅子に座っていて、
そんな事をなんの前触れもなく告げられた。
「そして私は、貴方に新たな道を案内する女神です。」
そう言い、女神は微笑む。目の前にいる美少女は眼を見張る程、美しかった。
「あの、質問いいですか?」
「……どうぞ?」
「……俺…死んだんですね?…そのトラックに轢かれそうになっていた女の子はどうなりましたか?助けられましたか?」
意識がはっきりしていく中、最後の記憶を頼りに質問してみる。
「生きてはいますよ? しかし残念ながら、左足を骨折するという大怪我を負いましたが」
そっか、怪我をさせてしまったか。完全には守りきれなかったな。
でも、俺のような引き篭もりのゲームオタクでも、最後に善行を積めたと思えば悪くはないか。
と、そんな感傷に浸っている俺をおかしく思ったのか、美少女が可愛らしく小首を傾ける。
「まぁでも、貴方が何もしなければ、そんな大怪我を負う事もなかったんですけどね」
「…え?」
あれ?なんて言った?この子!?
「あのトラクターは、本来ならあの子の手前で止まったんですよ。当たり前ですよね。だってトラクターですもん。そんなにスピードも出てなかったし…つまり、あなたは余計なことをしただけって事です。……プークスクス」
なんだ?こい、この子…いや…相手は女神だ。ここでキレたら絶対碌なことにならない!!
ここは我慢に徹しよう。
「…!……というか、俺はトラクターに轢かれて死んだんですか!?」
「いいえ、違うわよ!貴方の死因はショック死よ!貴方はトラックに轢かれたと勘違いしてそのショックで死んだのよ!!私、案内人役を長くしているのだけど、こんな変な死に方した人は初めて見たわ!!」
目の前の女神らしき存在がひとしきり笑うと自分の椅子に戻り―――。
「…さて、仕事のストレス解消も出来たことだし、名乗りましょう!―――改めまして、佐藤和真さん。私の名前はアクア。日本において、若くして死んだ若者たちに新たな道を導く女神よ!」
こい、このアクアという子が女神だというのは間違いはないだろう。尤も敬意を払うつもりなど全くないが……。
「さて、貴方には二つの選択肢があります。一つ目は、このまま天国に行くこと。もう一つは、再び地球に赤ちゃんとして生まれ変わるか。どちらにしますか?」
「天国なんて本当にあるもんなんですね」
「天国っていっても貴方が想像しているような素晴らしい所ではないわよ。肉体がないから食事も睡眠も必要ない。早い話、三大欲求は何も満たせない。できることといえばそこで暮らしている人とまったりお喋りすることくらいね。」
「……成程。魂の墓場だなソレ。」
「まぁ、そうね。ちなみにそのまま地球で生まれ変わる場合は今の貴方の記憶は失われるわよ。」
「どっちも詰んでるじゃねーか・・・」
俺が絶望の声を上げると、当のアクアはニコニコと笑顔を浮かべた。
「うんうん、そうよねー天国なんて行きたくないわよね?かと言って、すべてがゼロになる輪廻転生もいやよね!そこで!!ちょっといい話があるのよー!」
なんだ?物凄く胡散臭く感じるんだが…。
アクアは警戒する俺にニコニコしながら、話し始める。
「あなたゲームは好きよね?というかかなりのオタクよね!そんな貴方に、今の記憶と肉体を引き継いでの異世界行きを提供できるといったらどう?剣と魔法の世界よ?」
アクアの態度や言動が相変わらず胡散臭いが
「確かに魅力的な話ではあるんだけど。何かあるんじゃないのか?」
「…実はね?その世界、俗に言う魔王軍ってのがいてね。連中相手にその世界の人族が随分と数を減らされちゃってピンチなのよね。魔王軍に殺された人たちは、その世界での輪廻転生を嫌がって他の世界に逃げちゃうのよ。このままではその世界が滅びちゃうから、それなら他の世界で死んじゃった人たちを、そこに送り込んでしまえって話になってね?」
移民政策みたいなもんか…
「それでね、どうせ送るなら若くして死んだ人達を、肉体と記憶を継がせて送ってあげようって事になったの。」
「いや、そんな世界に送られても、また死ぬだけじゃねーか。」
俺がそう言うと、アクアはフフンとドヤ顔をしながら―――
「そう、だから特典をつけてあげることになったのよ。
それは強力な固有スキルだったり、とんでもない才能だったり。
神器級の装備だったりね!……如何?これならお互いにメリットがある話でしょ?
貴方達転生者は特典と共に第二の人生を送ることが出来る。
その世界の人達は即戦力になる人がやってくると。悪くない話だと思わない?」
成程。チート貰って第二の人生か、確かに悪い話ではないな。しかしどうしたもんか。
「いくつか、聞きたいんですけど、言語とかどうなるんですか?喋れない読み書きできないでは…」
「その辺は問題ないわよ。神様の超パワーって奴で都合よく解決できるわ。勿論読み書きもできるし、向こうの貨幣も日本円で脳内換算されるわ、だから後は特典を選ぶだけよ!」
そう言ってアクアはカタログのようなものを渡してくる。
それに目を通すと、成程。どれも強力なチートばかりだな。
それにスキルに職業か。剣とか扱ってみたいが正直前に出れる度胸はないんだよな。
やはり魔法系がいいか…。
……待てよ?そもそも俺はあっちの通貨を持ってないよな?
……よし。
「ねぇ、早くしてくれない?どうせ何選んでも……。」
「転生特典よりも転生先のお金ください。」
「はいはいお金ね………え?」
俺の言葉でアクアが固まった。
「どうかしたんですか?」
「いや……どうもこうも…なんでお金なのよ? 」
「チート貰ってあっちに行ってもお金が無ければ宿に泊まれないどころか食事も出来ないじゃないですか。」
「そんなの貰ったチートを使って稼げばいいじゃない!」
「じゃあ仮に装備を貰ったとして、武器はどうするんです? まさか装備一つで戦えなんて言わないですよね?」
「そりゃあそうだけど…。」
「それに対してお金なら、それを元手に資金を増やして装備と武器を揃えられるとは思いませんか? というかそもそもですけど、お金がないと魔王軍と戦う前に飢え死にしますよ?」
「うーん…。」
アクアは困った様な顔で考え込み始めた。
体感で2分くらい経った時、アクアがため息を吐きながらこっちに向き直った。
「……本当にお金でいいのね?」
「はい。」
「……はぁ。わかったわよ。ちょっと上に確認とってくるからこれ読んで待ってなさい。」
アクアは俺に本を一冊手渡すと何処かに行ってしまった。
本の内容は異世界についてのあれやこれやがまとめられたガイドブックの様なものだった。
特にやることもないのでしばらく読んでいると、アクアが紙幣をいくつか持って戻ってきた。
「かなり驚かれたけど許可は出たわよ。紙幣で10万円相当渡すから、大事に使いなさいね。」
「ありがとうございます。」
お前は俺の母親かとツッコミそうになったが面倒なことになりそうなのでグッと飲み込む。
「…さて、ではいよいよあなたを異世界に転生させます。あなたが魔王を討伐した暁にはお礼に一つだけ願いを叶えてあげましょう。」
アクアがそう宣言すると俺の体が浮き上がり、上空に光が現れ……すぐに白い光に包まれた。