この素晴らしいRTAに祝福を! 作:あるえぇ?
それはそれとして、今回はスティールにまつわる恒例行事のお話です。
「にしても、まさか思いつきの初級魔法のコンボがあんなに刺さるなんてな。」
「だね。初級魔法のコンボが結構強力な搦め手に化けるなんて正直あたしも驚いたよ。」
リーン達とのクエストを終えた俺とクリスは、ギルドで休憩することにした。最初はクエストのことについて話していたが、しばらくするとスキルの話に話題が変わっていった。
「そういえばクリスは『潜伏』や『バインド』とかの盗賊スキルを使ってるが、他にもそういう職業専用スキルとかってあるのか?」
「もちろん。例えばカズマくんがこの前教えてもらった『狙撃』や『千里眼』は職業アーチャーの専用スキルだし、戦士やクルセイダーとかの前衛かつ防御系の職業なら敵を引きつける『デコイ』ってスキルを習得出来るよ。」
「やっぱスキルって色々あるんだな。…しかしなぁ、冒険者職の強みを活かすにはそういうスキルを覚えるのがいいんだろうが、必要なポイントも多いのが辛いな。」
「だったら盗賊スキルがオススメだよ。必要なポイントも冒険者職でも1とか2で済むし、何よりカズマくんの戦い方に合ってると思うよ。」
「なるほど。盗賊スキルか。確かにバインドや潜伏はあると便利だよな。それに俺はステータス的にも正々堂々なんか出来っこないし、丁度いいかもしれないな。…よし決めた!クリス、俺に盗賊スキルを教えてくれ!」
「わかった。あたしに任せてよ!」
◇
盗賊スキルの性質上、ギルドでやると迷惑になるかもしれないということで人通りの少ない路地裏でやることになった。
「それじゃあ早速始めようか。とは言っても今までクエストで見てきたんだし『潜伏』と『バインド』はもう習得出来るようになっているんじゃない?」
冒険者カードを見てみると、クリスの言う通り習得可能スキルの項目に『潜伏』と『バインド』が追加されていた。
「どっちも1ポイントで習得出来るんだな。必要ポイントに対して性能がなかなか優秀だし早速習得するか。…よし、習得完了だな。それで…スキルポイントは3ポイント余ったか。」
「だったらあたしのオススメの3ポイントで覚えられる盗賊スキルを教えてあげるよ!」
「オススメの盗賊スキル?」
他にもまだ盗賊専用スキルがあったのか。
「相手の持ち物をランダムで奪える『スティール』ってスキルだよ。」
「いやランダムって…。確かに相手の持ち物を奪えるのはすごいと思うが、運任せってのが欠陥すぎやしないか?」
「その運任せってのがこのスキルの肝なんだよ。実はスティールは使用者の幸運値が高ければ高いほどスティールが成功しやすいし、それどころか狙ったものを奪いやすくなるんだ。カズマくんは幸運値がとっても高いから、覚えて絶対損はないはずだよ。」
「めちゃくちゃ俺向きのスキルじゃないか!」
「でしょ? じゃあ今からやり方を見せるからよく見ててね!いくよ、『スティール』!」
俺に向けて突き出した手をクリスが掛け声とともに握りこむ。次の瞬間、手が輝き、俺の所有物から何かがクリスの手に握りこまれる。光が収まると、クリスの手には俺の財布が握られていた。
「どう?これがスティールさ。まあいくら幸運値が高くても相手のレベル差がありすぎたりすると成功しないし、運次第なのは変わらないから確実に狙ったものが奪えるわけじゃないけどね。あっこれは返すね。」
冒険者カードを取り出して確認すると、ちゃんとスティールが習得可能になっていた。覚えない理由がないのですぐに習得する。
「これで習得出来たはずだよな。…でもちゃんと使えるかちょっと不安だな。」
「ならスティールの練習がてらちょっとしたゲームでもしない?あたしが投げたコインが地面に着いた瞬間に互いにスティールを使って、より価値が高いものを奪えた方が勝ちってルールで。」
「なるほど、それは面白そうだな。だが俺は真の男女平等主義者。女の子相手でもドロップキックを喰らわせられる男だからな。勝負というのなら手加減は一切しないぞ?」
「それは男女平等主義とはちょっと違う気がするけど…。でも望むところだよ!あたしだって盗賊職として絶対に負けないんだから!」
◇
「それじゃあ…始めるよ?」
「おう、いつでも来い。」
「……いくよっ!」
クリスがコインを指で弾く。コインはクルクルと回転しながら地面に落ちていき…
「『スティール』!」「『スティール』!」
コイン地面に着いた瞬間、俺達は同時にスティールを発動させた。
「よしっ。とりあえずは成功…って、うわあああああああ!?」
クリスは悲鳴をあげながら反射的に俺から奪ったものを放り投げた。その正体は…
「な、ななな、なんでカズマくんのパ、パパ、パンツを…!?」
そう。俺が履いていたグレーの男性用パンツである。まさかのものを盗ってしまったことでクリスの顔が赤くなっている。
だが、クリスの災難はここで終わらなかった。
「…あの、クリスさん? 俺のパンツに気を取られているみたいだが、自分が何取られたかわかってます?」
「へ…?」
俺はクリスから奪ったものを両手で広げて見せた。それを視認した瞬間、クリスの顔はさらに真っ赤に染まり、目が俗にいうぐるぐる目かつ涙目になった。
「しょ、しょれって、あ、あ、あたしの…!?パ、パパパ…!? …い、いやいやいや!こ、これはきっと夢だよ!うん!きっとすぐに目が覚めて何もなかったことになるはず…」
「クリス、残念だがこれは現実だ。お前は俺のパンツを奪い、そして俺にパンツを奪われたんだ。」
あまりの動揺にクリスが変なことを言い始めたので、俺はビシッと事実を突きつける。
「あ、あっあっ、あっ…。」
それがトドメになったのか、クリスはヘナヘナと力なく地面に座り込んでしまった。
その後どうにかクリスを慰めることに成功した。が、この珍事件は瞬く間にアクセル中に広まってしまい、俺とクリスにパンツスティーラーズの称号が付いてしまった。その結果クリスの精神が羞恥で埋め尽くされてしまい、それをどうにかするために数日間奔走することになったのであった…。
ノルマ達成 伝統芸能 恒例行事 いつもの
このカズマはトラブルメイカー3人娘共によるストレスがないので、クリスからパンツを奪ってもクズマさんにはなりません。
そもそもカズマは迷惑をかけられたわけではない女性が可哀想なことになっているのを見て喜ぶ性格ではないと思いますし。