やはり俺のアルドノア・ドライブはまちがっている。 作:ユウ・ストラトス
アセイラム姫のターンが始まりますw
第10話
火星カタフラクト ニロケラスを撃退した俺たちは救援隊との合流ポイントへ向かう。
手にはお姫様を乗せている関係でスラスターを使えないし、振動の激しい走行も出来ないのでカタフラクトを歩かせる。
先を歩く網文とクラフトマンはそろそろ合流ポイントに着く頃だろう。
後を追う俺たちもこの調子なら20分くらいで到着する。
その前に、界塚弟に言い忘れがあったな。
「接触回線オープン、界塚弟聞こえるな」
接触回線なら他の人間に聞かれる心配は無いしちょうど良いだろう。
『何の用ですか、ゾンビ谷先輩』
お前、火星人殺すの止めたのまだ怒ってんのかよ。
「合流前に言い忘れていた事があったんだよ」
『一体なんです?』
「あぁ、お姫様の正体に関しては昨日言った通り誰にも言うな」
『そんな事は分かっています。先輩こそ隠し通せるんですか?』
「うちの氷の女王様を相手にするわけじゃないからな」
うちの部長様を相手に隠し事とか物理的にも精神的にも骨が折れるからな。
「それとだ。アリアーシュには気を付けろ」
『ライエさん?何でですか?』
「作戦前に面倒は嫌だったから黙っていたが、名前以外の素性が分かっていない上に、何かを隠している節がある。本当はアリアーシュには知られたくなかった・・・っていうか、お姫様が正体明かすのは想定外なんだが今更言っても仕方ない・・・・・まぁ警戒しといて損は無いだろう」
内容まではよく分からないが、あれほど火星人が固執するにはそれなりの理由がある。
本当なら信用のおける軍人・・・例えば、界塚准尉や鞠戸大尉に話して最低でも監視対象にするくらいは当たり前なんだけど、一昨日の暗殺事件の使われたモノの規模からいっても軍内部に内通者の可能性は否めない・・・・と言うより確実にいると思って良い。
そして、暗殺事件が単独犯の可能性も低い以上、避難民の中に仲間がいる可能性も否定できない。
これに関しては万が一すらも警戒しないといけない。
可能性が完全に0でない限りは全て疑ってかかるくらいの警戒心が必要だと思う。
お姫様の正体を知っているのは、俺以外では界塚弟とアリアーシュ、そして侍女のちびっこだけだ。
俺の機体の様にミミルを搭載しているのなら話は別だが通常機の長距離カメラだってあの狙撃ポイントから人物までは特定できないだろうし、トレーラーが陰になってくれている。
一応、警戒はしておくか・・・・特にクラフトマンは思考回路緩そうだし
そして、現状で確実にシロだと言えるのは界塚准尉と鞠戸大尉、界塚弟と網文とクラフトマンくらいなものだ。
網文に言うかどうかは俺よりも界塚弟が判断すべきだし、准尉はあのズボラ加減で漏れそうだし、大尉は面識がないからお姫様サイドが警戒して多分駄目、クラフトマンは口軽そうだから論外。
それに変にアクションを起こそうものなら、居るかもしれない仲間が動き出してお姫様だけじゃなく全員の命が危険に晒される。
「とにかくお姫様の事を他の人間に喋らせない事と2人っきりにさせない事だ。それ以外もあるが・・・・・一応、あとで説明する」
『・・・・わかりました。』
無事、揚陸艇と合流することができた俺たちはさっき一撃入れたコウモリが仕返しに来ないとも限らないので機体の収容の間、周囲の哨戒をしていた。
先にクラフトマンと網文が揚陸艇のクレーンを使って甲板に積み込まれるていく。
『オーラーイ、オーラーイ』
この声の感じは軍人じゃないな・・・・避難学生とかから志願者を募ったって事か?
『げっ!』
『緊張した~祭陽先輩踏むかと思った・・・・・』
網文って射撃能力高いのに通常稼働は苦手なのか?作戦の時も何か踏んでたよな。
今後、カタフラクトに乗った網文には近づかない様にしよう・・・・うちの女王様が俺を踏む踏まないってレベルじゃすまない。
『踏んだら減点じゃ済まねぇぞ・・・・っと』
ってか、何とか血が流れずに済んだってのにここでスプラッタはやめてくれ。
次は俺と界塚弟の収容作業に入る
クレーンから延びるワイヤーを掴み、先端に足をかける。
クレーンで持ち上げられて甲板の上に降ろされると、少し先に収容された界塚弟がアリアーシュをスレイプニールの手から降ろしていた。
俺もそれに倣って機体をしゃがませて左手に乗っているお姫様に声をかける。
「降りられるか?」
『はい、お気遣いありがとうございます』
そういってメインカメラを見る目は少し涙目になっていた・・・・・舌、まだ痛いんですか?
お姫様が降りたのを確認して、機体の甲板への固定の確認と火星カタフラクトのデータを処理しているとミミルのシステムウインドウに幾つもの異常を知らせる表示が現れる。
「高高度に熱源?この熱量と速度は・・・・」
高高度から高速で巨大な何かが落ちてきている?
それも、一つや二つじゃない・・・・・マズイ!
「・・・・っ!物陰に隠れろ!」
ゴオオオオオオオオ!
カタフラクトのコックピット内でもハッキリと感じる振動
その余波は甲板上の人間に吹きつける。
「うわぁ!」
俺はミミルで状況を確認する。
メインカメラには巨大なキノコ雲が映っていた・・・・
それは新芦原のあった場所だが今はその姿を窺うことが出来ない。
高感度カメラに切り替えたが望遠が効いても爆発の際の煙が邪魔になる。ところどころで見えるのは立ち上る炎くらいだ。
「くそ・・・・・高感度カメラじゃ見えないか」
赤外線カメラは日中は使えないし長距離向きじゃない。レーザーカメラはレンジ外で無理だし、音響可視化システムもあの轟音で使えない。
「・・・・・・いったい何が起きた?」
いや、分かっている。
隕石だ。それも何十個という隕石群だ。
こんなタイミングよく地表にまで届く隕石群なんて落ちない。これは明らかに人為的なモノだ。
隕石爆撃だっけか・・・・火星の奴らそこまでやるか・・・・・・・
サブモニターには甲板上の様子が映っている。
誰も彼もが茫然自失といった表情だった。
あのカタフラクトの機密処理か?いや、それにしては早すぎる。
表向きは皇女暗殺の悲劇の地を焦土にするなんて、ちょっと腑に落ちない。
地球陣営がそんな自陣を焼くなんてやる訳が無い事くらい火星人も考えればすぐ分かる筈だ。
暗殺の真実を知らない火星人の士気にかかわりかねない。
駄目だ、材料が少ない以上は下手の考え休むに似たりって奴だな。
「・・・コントロール、こちら比企谷、一応今の取得データをそちらに送ります」
帰る場所すら・・・・無くなっちまったな・・・・
「っ!ご無事で!」
「えぇ、ありがとう。エデルリッゾ、こちらの様子は?」
後処理を終えて揚陸艇の中に入っていくと、感動の再会って奴の最中だった。
「はい、変わりありません」
「そう・・・・・良かった・・・・・」
前からは界塚准尉が歩いてくるが、俺をスルーして後ろに居た愛しの弟様の方に向かう。
「お疲れ様、ナオ君」
「・・・・ユキ姉」
ちょっと、准尉
俺も居るんだけど・・・・ですよね~ブラコンですもんね。
「ホントに良くやったわ。これもひとえに優秀で気立ての良い美人教官の指導の賜物かしらね。・・・・頑張りました」
「ユキ姉も・・・」
通路狭いんで姉弟でイチャつくなら他行ってやってね?通行の妨げだから。
そんな会話を後ろに聞きながらブリッジに入ると
「あは!ニーナ!」
「韻子!」
網文が友人と思われる女子と抱き合っていた。
こちらでも感動の再会中でしたか・・・・俺?小町以外にそんな相手居ないね!
「助けに来てくれたんだ。」
「うん!フェリーの乗客名簿に名前無かったから」
その光景を見ながら、さっきまでカタフラクト収容作業をしていたメガネ君が呟いた。
「ホッとしますね」
「ええ!」
まぁ、二人ともルックス良いもんな・・・・美少女ゆるい百合は和むというが
「・・・大好物です・・・・・・」
「えっ!?」
えー何この救援隊、まともなの居ないの?
「比企谷、ご苦労だったな」
「・・・・っす。」
鞠戸大尉、ご苦労ってレベルじゃないですよ。
ほんと、あいつがクソヘタレだから良かったものの、普通なら俺らに勝ち目無いから。
「街、無くなっちゃったね・・・」
「・・・うん」
操舵席で網文はニーナって金髪ゆるふわ系としんみりムードを展開し始めていけど・・・・
「私たち・・・いつか」
「まさか!生き残るわよ、絶対」
つーか・・・・・前の瓦礫見えてる?
「なら取り敢えず、こいつは避けた方が良いんじゃねーか?」
鞠戸大尉にセリフ取られた・・・・
なるほど、こんな心境なのか・・・・昨日はごめんねエデルリッゾ(笑)
「み右左右み右左右左」
金髪ゆるふわ系はちょっと落ち着こうか・・・・ちょっと小動物っぽい。
「・・・・急速排気」
艦長席に座っている女性の指示で正操舵手がホバーから空気を抜き、瓦礫の下を揚陸艇は通過する。
まったく、せっかく戦闘で生き残ったのに、こんなので事故って死んだら馬鹿馬鹿しすぎだろ・・・・
「それで比企谷・・・・今回の作戦の経緯を聞こうか・・・・」
鞠戸大尉・・・そういうならお酒をしまってください。
「そうですね・・・私もそれには興味があります。」
「えっと・・・・」
「ダルザナ・マグバレッジ、第四護衛艦隊所属 強襲揚陸艦わだつみの艦長です。」
艦長職って事は大佐以上か?
それよりも大佐クラスがたかが避難民の救援隊って可笑しくね?
階級がインフレ気味だぞ。
「あっ、はい・・・比企谷です・・・・・・・」
「比企谷・・・・・そう、あなたが大尉の言ってた・・・・」
何それ?
大尉が俺の事言う時なんて弄り倒すネタしか思い浮かばないんだけど・・・・・
「そんな大したもんじゃぁない・・・・・暇つぶしに補習で仕込んだだけだ。」
「ちょっと待て・・・・あれは補習じゃないのか?」
「学校の授業の補習程度で某軍の特殊部隊がやる訓練内容をか?訓練量で気が付け」
どおりで出席時数が足りないだけにしちゃ訓練時間と内容がやけにハードだと思ったよ!
高校生にスナイパーライフルで1.5㎞先のリンゴ撃てとか言われた時は殺意覚えたよ?
「嘘だろ・・・・あの苦労は何だったんだ・・・・・」
あれが・・・・大尉の暇つぶし?
俺の時間返してよぉ・・・・・・
そんな中、界塚准尉が耶賀頼先生を連れてブリッジに入ってくる。
「先生、界塚の腕はどうなんだ?」
「鞠戸大尉のお酒好きよりは軽症ですよ。」
「むぅ・・・・」
耶賀頼先生、相変わらず大尉の扱い方を分かっていらっしゃる。
「このままじゃ何も出来ないのでアーマチュアを使います」
アーマチュアってあれだろ・・・・・ロボットアームみたいなもので強制的に四肢を動かすやつ。
准尉は怪我の状態を明かさないから分からないが痛み止め必須の非常手段じゃないか。
ブリッジの備品からアーマチュアを取り出して装着する准尉とその隣で注射器と調整器具を用意する耶賀頼先生。
「医者としては腕に負担があるから反対なんですけどね・・・・・」
カチャカチャと調整している音を聞きながら、マグバレッジ艦長はこちらを見て
「話を戻しましょう。それで・・・正規軍でも敗走を続けている相手にあなた方の取った作戦とはどういったモノですか?」
やっぱり、報告せずに帰らしてはくれないか。
「作戦って程のものじゃないです。相手が人間的に未熟だったんで成立しただけですよ。向こうが普通の軍人ならとっくに死んでいます」
下手な事を言って、お姫様の正体に気づかれる訳にはいかない。
適当な感じで濁しておくか。
「それでもです。火星の超技術であるアルドノア・ドライブ搭載機を攻略したのは現状で私が知る限り貴方たちが初めてです。些細な事でも反撃の糸口になるのであれば・・・」
「・・・・まぁ、そこまで言うのなら・・・・・・・」
ライエ・アリアーシュとお姫様の件は伏せるとしてどう説明するか・・・・
「ま、まず、あの火星カタフラクトのパイロットは軍人として未熟です。それは戦闘技術とかではなく精神面で、です。
昨日は俺達を追いまわして遊んでいた・・・・これだけでもプロの軍人のやる事じゃない。だから学校から観測用ラジコンで夜通しおちょくって苛つかせて弱点を探って、カタフラクトでそこを撃った・・・・要約するとそれだけですよ。」
「それだけ聞くと本当に大した事はしていないですね・・・・・」
実際、大した事なんてしていない。
手札のカードを効率良く切っていっただけ・・・・・まぁ少し想定外はあったが・・・
「比企谷・・・・・後でレポートにして提出しろ。」
「おい、酒飲み大尉」
まったく、学校でもないのにレポートなんて絶対嫌だからな。はぁ、働きたくない。」
「本音が漏れてるぞ、比企谷・・・・地獄の補習やりたいのか?」
「然る後、提出いたします・・・・・」
ビシッって効果音が出そうな位に敬礼をする。
だって、あんな補習もう二度とやりたくない・・・・ましてや暇つぶしに付き合う気はない。
「耶賀頼先生がいてくれて助かりました。」
そこにはさっきまで吊っていた左腕を上げている界塚准尉がいた。
「アーマチュアの処理なんて久しぶりです。くれぐれも無茶は控えてくださいね・・・・あくまでも臨時ですから」
「ん~充分充分♪」
どうやら、アーマチュアのセッティングも終わったらしい。
「痛みが無いからと言って負担が無い訳じゃない。麻酔が切れたとき辛いですよ。」
痛み止めは切れた時にそれまでの痛みが一気に来て地獄だと聞かされたことがある。使わずに治せるならそれに越したことは無いと依存性もあるしな。
つーか、痛み止めまで打って無茶し過ぎだ。どこぞのシスコンさんが後で五月蠅いぞ。
「細かい調整は後でお願いしますね」
ガン!
左腕が金属製の手すりにめり込んだ。あれで殴られたら痛いじゃ済まなそうだ。
「・・・・・・・・・・もう少し調整してもらおうかな・・・・・」
是非ともそうして頂きたい。
レーダー担当している同級生が怯えて震えてるから・・・・
そりゃ、すぐ隣で事故によって金属が拳で叩き曲げられたら俺だったら土下座しながらチビってる。
「レポートは避難先に到着してからで構いません・・・・・今はとにかくお疲れ様です。ゆっくり休んでください。」
そりゃ良かった。これ以上の初対面の年上の女性との会話は俺の対人スキルじゃ既にキャパオーバーだ。
「そういう事だな・・・・・まぁ合流まではこっちに任せておけ。」
って、大尉は戦車とかKATの乗り手なんだから、揚陸艇の運用でやる事なんて何もないでしょ・・・・
「・・・・・了解」
まぁ良いや・・・・・やっと休息をとれる。
ブリッジから出た所でアリアーシュに捕まる。
ホント、俺休みたいんだけど・・・・・せめて横にならせてよ。
夜通しの慣れないラジコン操作にカタフラクトでの初めての実戦
いくら鞠戸大尉に仕込まれてるとは言っても肉体的にも精神的にも限界だ。
わだつみ本隊との合流までは時間があるし、避難民の居る船室で休息を取ってもバチは当たらないだろう・・・・・・
「さっきの話、どうするの?」
「さっきの話って何だよ?」
「あの子の事よ。あなたも知っていると聞いたわ。」
はぁ・・・・界塚弟か・・・・
あまり情報を漏らすなよ。
「黙ってるつもり?」
「こんな極限状態で、人間の性善説なんて信用できない。理性的であろうとなかろうと知られれば、無事で済むはずがない」
「ゾンビのくせにお優しいのね。敵の心配?」
「ゾンビ以外の語彙も用意しておけよ・・・・・うちの部長なんかもっとバリエーション豊富に罵倒するぞ。それにあの子の話を信じれば敵はヴァースの暗殺派だ・・・・」
それに関しては疑いようがないだろう。姫さんにとって嘘をついてもメリットがないし、平然とこの手の嘘がつけるタイプの人間でもないだろう。
そうなるとあの子、セラムの存在は両陣営にとって扱いにくい。正直、連合政府の人間ですらおいそれと信用出来ない。それだけ、あのお姫様の存在は厄介なカードだ。
「それに隠し事の多いあんたに比べれば、嘘も隠し事も無く話しているあの子の方が信用できる」
「っ!・・・・・・・・保障はしないわ・・・・危ないと思ったら・・・・・・・火星人はみんな敵よ!」
その時は正体を言いふらすって事か・・・・・
もお、マジで面倒くさいなぁこいつ・・・・
どっちの転んでも面倒な時限爆弾を抱えちまった様なものか・・・・・
こうなればこっちも釘を刺しておく必要があるか
「好きにすればいいさ・・・・勝手やったその時はお前を殺すだけだ・・・・・」
俺は眼を細めて殺意を込めて低い声を出す。
「・・・・くっ!」
これだけ言っておけば、軽はずみな行動は控えるだろう。
むしろ、俺を殺しそうな眼光なんだけど・・・・・
火星人はみんな敵か・・・・・その言葉だけは嘘偽りない気がした。
船室はまるでお通夜の様な雰囲気だった。
自分たちが住んでいた街が地図上から消滅したんだから無理もないか。
「先輩、少しいいですか?」
体を休めようと寝転がれる場所を探していると界塚弟に呼ばれた。
「少しは休ませろよ。」
「僕だって流石に休みたいですよ。」
界塚弟に連れて行かれた船室に居たのは火星のお姫様とチビ侍女
ここは機関室か?
エンジン関係と思われるメーターが動いているのを見てそう判断付けた。
「お待たせしました。セラムさん。」
「いえ、ありがとうございます。伊奈帆さん。」
君らいつからそんなに話すようになったの?
「それと・・・・・大丈夫ですか?八幡さん?」
あぁ・・・そういや疲れきってボロボロだな。
「大丈夫だ、問題ない?」
「何故疑問形なのですか?」
意味?そんなものは無い。
っていうか、いつの間にかお姫様モードだけど大丈夫なの?この変身系皇女様は?
「そういや、お姫様は舌、大丈夫なのか?」
「やっぱり、先輩が原因ですか」
やっぱりって何だよ?舌噛むのなんて自己責任でしょ?
チビ侍女が過剰反応するんだから変な地雷を敷設しないでよ。
「やはりこのゾンビは危険です、姫様」
「あ?」
「ひっ!」
チビ侍女を見ると睨まれたと勘違いしてお姫様の後ろに隠れてしまった・・・・・おい侍女、仕事しろよ。
「エデルリッゾ?」
「・・・・・・怖くない怖くない怖い怖くない怖い怖い怖くない怖くない」
少し睨んだだけでお姫様の後ろでガタガタ震えてるけど・・・・・俺ってそんな怖いの?・・・・・・大丈夫?
「先輩の目は芦原高校でも恐怖の対象ですから・・・・・バロールの魔眼じゃないかって噂がある位には・・・・・」
「何それ?初耳なんだけど?そんな衝撃の事実いらないからな?」
視線だけで相手を腐らせるってか?
視線感染とか強力すぎるだろ比企谷菌。
文化祭の件か?それとも・・・・・ダメだ。心当たりが多すぎる。
「セラムさんは大丈夫なんですね」
「えぇ、八幡さんは優しい人ですから、怖くは無いです」
さすが、皇女様・・・・この歳で政治活動するだけある・・・・
それよりもその認識は間違っているから早々に改めてくれる?色々と面倒な事になりかねないからさぁ。
「はぁ・・・・それで俺を連れてきた用事は?」
「はい、ライエさんの件です。一応、さっきセラムさんから話はしました」
「あ~そういえば・・・・・・お姫様の件、アリアーシュには気を付けろと言ったはずだぞ」
よもや最初っから本人同伴で説明は迂闊だろうが
「その場には僕もそこの侍女さんも居ましたから大丈夫ですよ」
「馬鹿か・・・・自爆とかされたらどうするんだよ・・・・」
「用意する時間も機会もありませんよ」
「そうじゃない・・・・想定が甘いんだ」
正体見てからは確かに時間も機会も無いだろうけど、その前から用意している可能性を念頭に入れておくべきだ。
「そうでしょうか?」
「想定外は死人が出る可能性が高いんだ・・・・・とにかく気を付けろ・・・・・」
「・・・・分かりました」
お姫様一人が死んでこの火星との戦いが終わるなら、それでも良いがそうはならない。
そしてその際には俺たちの命の危険もあるんだ。
「それで、何か言ってたのか?」
「一応、黙ってくれるそうです」
「・・・・・・さっきの言葉の通りか・・・・」
まぁ、あっちからしたらそう言うしかないだろうな・・・・・話すと言えば何かしらの方法で拘束されるだろうし、俺がしている。
「いったい何が?」
「界塚弟には少し話したがあのアリアーシュは何か重大な事を隠している節がある。一応、さっき絡まれたときに、勝手なことすると殺すって釘を刺しておいたから滅多な事はしないと思うが、気を付けるに越したことは無い」
ほんと、周囲に気にしなきゃならない事が多すぎて、ぼっちの俺にはしんどい。
由比ヶ浜とかって常にこんな風に空気呼んでるの?アホの子すげぇ・・・・
「先輩の殺意向けられたら、恐怖で石化して動けないですね」
おい、バロールの魔眼にゴーゴンの威光が混じってないか?
どこの箱庭ですか?黒ウサギでも居るの?
「界塚弟、本隊との合流までは大丈夫だと思うが当分はこの船の全員を警戒してくれ。お姫様は絶対に一人にならないようにしてくれ。」
「全員ですか?」
「あぁ・・・・避難民にも暗殺者の仲間がいると想定しておく必要があるし、網文とかを巻き込みたくなければ正体がバレないように気をつけとけよ・・・・・・・・」
「・・・・・・分かりました」
「お姫様は可能な限り人の多い所にいる様にしてくれ」
「はい、それは八幡さんのご指示に従います」
可能性は考慮する必要はあるが、流石に5人も6人も暗殺者の仲間がこの船に居るってのは警戒はしておくが現実的じゃない。
ニロケラスのパイロットの言動からみてあいつも暗殺側だろう・・・・でなきゃあそこまで動揺しない。
そうなると暗殺実行をした派閥は今のところは成功していると思っている。
あいつが本隊に戻るとそれもバレるが・・・・元々、ジャミングで長距離通信は使えないし、軍用の揚陸艇の中だから外に出るのは制限されるとレーザー通信は難しいだろう。
それ以前に隕石爆撃の影響で電波も乱れっているし爆発によって巻き上がったモノで長距離における通信は一時的とはいえ全滅だろう。
そうすると、揚陸艦 わだつみとの合流地点までは、暗殺者の仲間がいても連絡が取れない。
それまではお姫様の生存は暗殺者には知られることは無い。それでも連絡が取れる技術があるなら通信そのものに警戒してもおそらく無駄だろう。
俺たちが一番警戒するべきなのは行動を起こされる事だが、船室から出ないように言われている以上、新たに武器などを用意できない環境下にある上に、ほかの避難民同士で互いを監視している状況に近い。
何かしらの指令が下り行動を起こすまで、どうしたって時間がかかる。
「一応、暗殺犯が見つかっていない以上、この船が本隊と合流の際に所持品検査が行われると思う。その際にはお姫様は船倉なりカタフラクトのコックピットなりで息を潜めてもらう。」
俺の言葉に一様に頷くのを確認する。
所持品検査でもって通信機が出れば御の字だし、出なくても牽制にはなる。
お姫様は俺か界塚弟がカタフラクトのチェックとか言って直前に連れ出して、船倉とかで所持品検査をパスしてしまえばいい・・・
目下、最大の問題はライエ・アリアーシュか・・・・・
話も終わりと部屋を出ようと思った時、お姫様から呼び止められた。
「八幡さん、昨日の件、お話しいただけますね?」
「何だったっけ?」
「むぅ・・・・八幡さん?」
上目使いで睨まないでくれます?・・・・それと頬を膨らますのもやめてね?
「お姫様がそんな目で睨むな。内容が内容だしこんなところじゃアレだしな。」
「そう言って有耶無耶にしようとしてませんか?」
なんで、そう俺のやり口を熟知なさっているのでせう?
「約束だしな・・・・・ちゃんと教えるよ・・・・・こんな小さな揚陸艇の中じゃなかったらな・・・・・」
「約束ですからね?」
そこまで、念押しされると次に有耶無耶にする時の罪悪感半端無さそう・・・・・いやほんと思い出したくないんだよね。
「それと、私からもう一つ・・・・八幡さん・・・・・」
「ん?」
「セラムとお呼びくださいと申しましたよね?」
あれ・・・笑顔なのに何か威圧感を感じるのは気のせいか・・・・・・
「あぁ・・・・そんなこと言ってたな?」
「何故先ほどからお姫様と?」
そりゃ、女の子を名前呼びとか無理だから極力呼ばないようにしてんだよ!
雪ノ下と由比ヶ浜ですら呼んだことねーんだから!
「ここには正体知ってる奴しかいないだろうが・・・・・」
「戦闘で正体を明かした時も八幡さんと伊奈帆さんしか聞いていないですがセラムと呼んで下さったじゃないですか?」
「うっ・・・・・それはだな・・・・・・・・」
いや、あの時は色々と必死だったし・・・・
「先輩、諦めた方が・・・・・」
なんで、お前が諦める方向に決めてるの?
いや、マジ無理だから・・・・おい、界塚弟!出口を塞ぐな!
「八幡さん?」
さっきより近づいてませんか?
この子、無意識に無防備に笑顔で近づくのやめてね・・・・
「うーん・・・・・・あー・・・・その・・・・・セ・・・セ・・・・」
ヤバい・・・・羞恥心で八幡死んじゃう・・・・
「はい?」
「セ、セラム・・・・・・」
意を決して何とか口にする・・・・・ハズい・・・・・マジハズい・・・・・
自分でも顔が熱いのが自覚できる程なんだけど。
リア充の方々はなんでこんな事を平然とやれるの?心の痛み止めとか服用してるの?
「・・・・・はい♪」
だから、何でそんなに笑ってられるのよ?
俺もう、しんどいんだけど・・・・
「先輩・・・・一回もげてください」
「何でだよ!」
界塚弟・・・・お前は俺のスタンス知っててそれ言う?