やはり俺のアルドノア・ドライブはまちがっている。   作:ユウ・ストラトス

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第5話

走り出して数分でまた止まった。他にも逃げ遅れがいたようだったが、まさか耶賀頼先生とはね。

 

「助かったよ。こんな時に車がエンストするなんて」

 

「感謝してくださいよ、先生」

 

いや、お前の手柄じゃないだろ網文

 

 

 

一緒に乗った界塚弟はクラスメイトと一緒に双眼鏡で逃げ遅れを探していた。

 

「お前もだぜ、伊奈帆」

 

「ん」

 

「お前も堂々とサボってんなよ」

 

おい後輩、それじゃ俺と変われよ。何で俺まで双眼鏡片手に仕事しなきゃならないんだよ。

 

「それにしても」

「ロシア・・・いや北欧系?新芦原では珍しいよな」

 

「どっちでも良いじゃん。美人は大歓迎!お手柄伊奈帆君10ポイント」

 

まぁ、確かにあの子は美人だよな。でも、珍しいのはお前もだぞ、金髪欧米系

つーか、サボってる奴いるのか。一応、聞いてみようかな。

 

「網文、俺もサボっていい?」

 

「・・・男子ぃ」

 

結果、網文がおこになりましたとさ・・・解せぬ。

良いじゃん、俺だってサボりたいし、仕事したくないし、何なら有事じゃなければ帰りたい。

 

「そんなに帰りたければ比企谷先輩は、土に還ってくれませんか?」

 

「上手くねーからな、それ。」

 

まったく俺が腐っているみたいに言うんじゃありません。腐っているのは眼と精神だけだからね。

 

その時、前方に特徴ある影と音

このままのスピードじゃぶつかる。

 

「止まれ!」

 

「えっ」

 

とっさに出た声で、運転していた軍曹が急ブレーキを踏む。

 

 

キキィィィィ

 

 

影の正体は

 

「KG-7 アレイオン!?」

 

現在の主力量産カタフラクトの小隊だった。

その中の一機が止まりこっちに機体を向ける。

 

『あなた達、ここは避難完了しているはずでしょ!』

 

これ、界塚准尉だよな。待機任務から出撃になったのかよ。って事は、ここに敵が火星のカタフラクトが来るんだろう。

 

『その声、ユキさんですか?』

 

「韻子ちゃん?じゃ、もしかしてナオ君も?」

 

『あぁもう、どーして・・・』

 

「カタフラクトが出てるって事はここに敵が来るんですか?」

 

『そう、東京から高熱源体がこの新芦原に向かってきているの。このエリアも交戦想定区域よ。引き返して』

 

おいおい、引き返せってここ以外にフェリーへの道は無いぞ。

それを知っている。網文も反論する。

 

「でも、ここを通らなきゃフェリー埠頭に・・・」

 

『とにかく、引き返して安全な場所まで逃げて、私たちもここで食い止めるから』

 

そこまで接近してきているって事かよ。これは敵がどの程度のものかによっては新芦原そのものがやばいな。

 

ここで、押し問答しても、選択肢を無駄に減らすだけだ。

 

「とりあえず、引き返そう。民間人も多いのにそこまでのリスクは負えない。」

 

「あぁ、交戦想定区域が設定されてカタフラクト隊まで出ていているんだから、ものの数分で敵機が来るはずだ。」

 

急いで、戦闘に巻き込まれる訳にいかない。

今は戦う方法が無いんだから・・・・

 

 

 

 

 

Uターンして5分足らずでカタフラクト兵装の発砲音が聞こえてきた。

 

「どうやら、戦闘が始まった様だな。」

 

界塚准尉が居たって事は鞠戸大尉もあの部隊には居るはずだ。

 

「先輩」

 

「なんだ、界塚弟」

 

いつの間にか界塚弟が隣に座っていた。

 

「先輩は昨日の件、どう思っていますか?」

 

「昨日の何だよ」

 

主語をちゃんと言え、尤も暗殺事件以外ないか・・・・

 

「いえ、韻子から昨日、先輩も現場にいた。って言ってたんで、先輩なら僕らの見た以外の事も知っていると思って」

 

「お前らと知っている事は変わらないよ。お前は俺の事をなんだと思っているんだ?」

 

「ベェルフェ」

 

「あぁ、もういいそっから先は言わなくていい」

 

この野郎、誰が怠惰の化身だ。むしろ怠惰の化身はお前の姉だろ?

こんな考えてる奴そうそう居ないぞ。

実際は、動かないけど・・・

 

「まぁこの事態は予測してはいたが・・・・」

 

もう一段下の事態の想定はしてるけどな

 

「充分じゃないですか。それでいいん「あとで暇だったらな。」

 

どうせ、教えろって言うんだろうがこの状況では他の人間には聞かれかねん。

 

「指令本部、応答願います!指令本部!」

 

どうにも戦闘開始から、電波状況が悪い。国家間の通信が効かないと言っていたし、これも火星人の戦術なんだろう。情報を遮断して、分断してから攻撃を始める。

戦術としては基本中の基本だ。だがそこから先は馬鹿なんだろうか?

37の別々の軍隊?武勲の取り合い?地球を盤上陣取り合戦ってか?鞠戸大尉からの情報で聞いてると脳筋集団だな。難点はアルドノアの超技術だがそれさえなんとかすれば、地球軍としてはその方が各個撃破しやすいと思うんだがな。

 

 

「さっきから同じ所回ってませんか?」

 

「どうしろってんだ」

 

そりゃそうだ。反対方向ではこの街を出られても避難の目途が立たない。グルグル回りながら隙を見て、強行突破がこの後の展開としてはありそうだ。

 

『こちら界塚ユキ准尉、聞こえる』

 

カタフラクト隊からの通信、その声は緊迫した状況であることを示していた。

 

「ユキさん!?」

 

網文が無線で応答する。

こっちの位置を確認していたのだろう、目の前にアレイオンが姿を現す。

その手には赤い髪の同い年の女の子が乗っていた。

 

『その子を連れて急いで走って!』

 

女の子を車内に乗せてハッチを閉める。

この娘もこの国の人間じゃなさそうだな。なんかこの輸送車の他国籍率高くない?

 

「いったい何が」

 

『急いで!!』

 

言うや否や、ライフルを構えるアレイオン

おいおい、まさか敵機に追われてるのかよ。ってか援護が無いって事はよもや界塚准尉以外はやられたって事か?

 

建物の間から姿を現す火星のカタフラクト

紫色の機体、特徴的なのは左右の腕部が長いく大きい事

 

ガガガガガガッ!

 

襲いかかるカタフラクトにライフルを撃つアレイオン

しかし、敵カタフラクトは気にする素振りもない。

効いていない。それは敵が重装甲が理由って訳でもなさそうだ。着弾した音がしない。弾いている訳でも、避けている訳でも無い。何なんだよあれ・・・反則だろ。

これが噂のアルドノアの超技術ってやつか。こんなことが出来るとはな。

アレイオンが機体位置を入れ替え、左脚部が動いたと思ったら

 

ガン!

 

「くっ!」

 

急な衝撃に顔を歪める。輸送車蹴りやがったよ。

あのグウタラ准尉、質量差を考えろよ。軍用の兵員輸送車だから頑丈に出来てる。まだ動くだろうが、中の人間は一般人だぞ。

 

「軍曹!」

 

網文が運転をしていたこの車両唯一の軍人に指示を仰ごうとするが

 

「ちょ、大人ぁ!!」

 

恐怖のあまりに任務放棄して逃げやがった。

おい、俺らどうすんだよ。

 

ゴッ

 

カタフラクト同士の戦闘で飛んできた瓦礫に軍曹は命を絶たれた。

逃げなきゃ生き残れたのにな。死は恐怖を抱くものを好むって何かに書いてあったな。

 

ガァーン!

 

再び、輸送車に衝撃と共に屋根が大きく内側に凹んだ。

窓から見てみると、アレイオンが車両に乗る形で倒れたみたいだ

 

敵カタフラクトが止めを刺そうと右腕を振り上げる。

このままじゃ、アレイオンと界塚准尉ごと輸送車は破壊される。

でも、この状態ならアレイオンを落とさずに走り出せるはず

問題はこの輸送車のエンジン出力だ。これは賭けだが、出来なきゃどの道、あのカタフラクトに殺される。

 

 

「網文!運転しろ!」

 

助手席にいる。網文に指示を出す。他の人間よりも運転席に近い。刹那の無駄も許されない。

そして、事前に打っていた手札を使うことになるとはな。

 

「はっ、はい!」

 

普段の俺なら絶対に出さない大声に反射的に返答し、運転席に座る網文

車両は動きだし、寸でのところで振り下ろされる腕を回避する。賭けは勝ちだ。

この状況下でマニュアルの車体をエンストさせず発進させる技量には改めて驚く。

こいつら、優秀すぎじゃね?

 

それでも、加速は鈍い。

 

 

「韻子、もっとスピード!」

 

「やってる!」

 

「このままじゃ追いつかれる」

 

「重すぎるんだって!」

 

そりゃそうだ、カタフラクトが乗っているんだからな。

 

「ブレーキ」

 

界塚弟が後ろを見ながら言う

 

 

「ブレーキ踏んで」

 

「な何て?」

 

聞き違いじゃない、ここでブレーキしたら踏み潰されるぞ。

 

「はやく・・・ブレーキ!!」

 

さっきと違い大きい声で言う界塚弟

それに従いブレーキがかかる。

 

後ろを見てみるとアレイオンの足がどんどん消えていた。

削られてる?いや違うな・・・なんだあれ?

さっきの俺が運転席に気を取られてる間の戦闘を見て思いついたのか?

 

「アクセル!」

 

「はい!」

 

再度、界塚弟からの指示で加速する輸送車

腰の部分まで削られたことで重量は軽くなり、先ほどよりも加速は鋭い

敵カタフラクトから距離が出来た。

さすが、幼馴染だな。タイミングばっちり

 

「網文」

 

「比企谷先輩なんですか。今忙しいんです。あと、目が腐ってます。」

 

「あほか、いいから聞け。俺に考えがある。」

 

なんだかんだで、心臓強いなうちの後輩たちは

 

「・・・・はい!」

 

「次を左、その次を右だ」

 

「はい!」

 

俺の手札は今この場では使えない。この状況だけはとにかく奴を振り切るしか手は無い。

 

後ろじゃ、界塚弟のクラスメイトが上部ハッチを開けている。

 

「オコジョ!」

 

「ユキさん、助けないと」

 

「あぶねぇって」

 

その瞬間、半ドリフト状態での右折する車体

 

ウワァー

 

振り落とされたか?

 

「ごめん」

 

「大丈夫!」

 

振り落とされなかったか。悪運強いな。

サイドミラーを確認するが、あのカタフラクトが後ろに居ない。

諦めたか?

 

「このまま逃げ切りだ!」

 

バァン!

 

あいつ、建物の向こう側から正確にこっちを追っていやがった。

なにかこっちを見るX線カメラとか音響や動体振動みたいな特殊なセンサーでも使ているのか。

 

「起助」

 

「おい、界塚弟!」

 

後ろの同級生を助けに行く界塚弟を止めたかったが、こっちもルート指示で手一杯だ。

この辺だと、一か所しかないから道を間違うと面倒な事になる。

 

 

 

 

ドン!

 

地面全体が縦に揺れた。

 

「あの野郎、今わざと」

 

あいつの自己顕示なのか、威嚇なのか。

でも、もうすぐ目的の地点だ。

 

「トンネルに入ったら少しスピードを落とせ。」

 

「えっ?先輩?」

 

「そこで網文と界塚は降りて学校に向かえ。」

 

「えっ、ちょ、どういうことですか?」

 

トンネルに入りスピードを落とす。

その瞬間から何故かさっきまでしつこかった足音が途切れた。

 

「なぜ追ってこない?」

 

ここで追わない理由ななんだ?遮蔽物はあいつにとってどうとでもなるはずだ。あいつにはこっちを見れる目があるはずで、ここで止まる理由は無い。もっともこっちにとっては好都合だ。

ここで最悪は界塚弟と網文だけを降ろす予定だったが、想定プランよりはマシだな。

 

「網文、予定変更だ。車を止めろ。」

トンネルの中心部分で車両を止めさせた。

 

 

 

「はぁはぁはぁ」

 

「よくやった、網文」

 

ほんと大した運転技術だよ。兵員輸送車でこんなドリフト走行なんて俺にはできない。

 

後ろに向かった二人に話しかける欧米系後輩

 

「もう大丈夫だ。二人とも、あいつはもう追ってこない。」

 

追ってこないのか、追ってこれないのか・・・

 

「なぁ、伊奈帆。オコジョは」

 

界塚弟は答えない。そこに居ないってことは[そういう事]なんだろう。少なくともどこかに置き去りにしてしまっている。無理もないか。

言葉にして認めるのは今は無理だ。

 

「嘘だろ?」

コイツも少しは空気を読めよ。

はぁ、仕方ない

 

「そこに居ないんだ。死んだって事だ。少なくとも軍部で言うところのMIAになるのか。」

 

Missing In Action作戦行動中行方不明

早い話が確認できないけど多分戦死を意味する軍隊用語

 

「そんな・・・・」

 

運転席の網文の顔は青白くなっていた。まぁ運転してたのは自分だから責任を感じているんだろう。

気にしすぎて今後に支障をきたすとアレだしフォローしておくか。

 

「あいつを殺したのは火星人だ。そして、死なせた責任は俺にある。」

 

運転席の網文だけに聞こえるように声をかける。

 

「先・・・ぱい・・・」

 

「お前は俺の指示に従っただけだ。その中での出来事は俺の責任だ。」

 

「・・・は・・・い」

 

女の涙は苦手だ。年下の女の子のは特にだ。

アクティブになっている兄スキルで掌で網文の頭をポンポンとすると思考を切り替える。

 

 

あれだけ執拗に追ってきたんだから何かある筈だ。ここからは避難など出来ないだろう。戦うしか生き残るすべはないだろう。何よりあのカタフラクトがフェリー埠頭を襲えば最悪の事態に陥る。

 

「切り替えろ、今は感情や感傷よりやる事がある」

 

「あんたにとってはその他大勢かもしれないけどなぁ!!」

 

そんなに凄まれても困るんだけど

 

「ちょっと、カーム」

 

俺とカーム?の間に割り込む網文

だけど、ここで引く訳にはいかない。

 

「今は事実を事実として正しく認識する事だ。まずは、やるべきことがあるだろう。俺はここで死ぬわけにいかないんだ。」

 

せめて小町やあいつらの安全を確保出来るまで死ぬ訳にいかないんだからな。

 

「カーム、比企谷先輩の言うとおりだよ。」

 

「・・・くっ」

 

まったく、こんなのはガラじゃないんだよ。

面倒くさい、働きたくないが俺の心情なんだけど、それで死ぬほど馬鹿じゃない。

 

そんなやり取りをしている中、界塚弟はアレイオンのハッチを開けると、界塚ユキ准尉がコックピットで気を失っていた。

マジで軍人が相手にならなかったって言うのに、これから俺の提案が受け入れられるか心配だな。

そんな時、アレイオンの無線から弱々しい回線状態ながらも、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

『こちら鞠戸、聞こえるか。界塚』

 

「鞠戸、教官」

 

そうか、生き残ったのか鞠戸大尉

 

『界塚!聞け、火星人はお前を追っている。フェリー埠頭への攻撃はまだ無い。出来るだけ奴を引きつけて・・・・でも無茶はするな。必ず生きて帰れ』

 

これって、応答しているのが界塚弟って認識していないな。

にしても、まだ追っている?じゃあ、なぜトンネルで追跡を諦めたんだ?

 

「さっきの奴、まだ僕らを追って来ているって」

 

「でも、その間に避難民を乗せたフェリーが出港できるかもって・・・」

 

そのフェリーには小町と由比ヶ浜が、そして雪ノ下が乗っている。だったら、もう選択肢は一つだ。覚悟を決めろ、俺

その為には・・・・・

 

 

 

 

「そう、俺らが囮になればな」

 

「比企谷先輩?」

 

悪いが、俺の提案に乗ってもらう。

 

「網文に輸送車をここに来させた理由は界塚弟、分かっているな?」

 

コイツは頭が良い。一から十まで言わなくても意図を理解できる。

 

「ここからなら共同溝を使って学校まで行ける。」

 

さすがだな。あとで自慢のペニビアにでも頭撫でてもらえ。

 

「そうだ。格納庫に行けば練習機があるし、火器演習の時の弾薬もな」

 

あの火星人がおふざけのおかげでこっちの手札は戦える形になった。

 

「カーム、韻子。戦おう・・・・ユキ姉たちの代わりに今度は僕らが・・・・あの火星カタフラクトと」

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