イナズマイレブン1・2・3!! 雷電真太郎伝説   作:睾丸Jリーグ

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雷電十太郎 夢への発進!相撲部との別れ!

 

 

 

「みんな、聞いてくれ。───オレは、相撲部を離れることにした」

 

「「「ッ!?」」」

 

 相撲場に、雷電の野太い声が朗々と響く。

 

 サッカー部の存続が決まった以上、そのために動いていた雷電が相撲部を離れることは必定だった。

 

 

「ら、ら"い"でん"せ"ん"ぱぁ"ぁ"ぁ"い"!!!!」

 

 フェイスペイントをドロドロにして号泣する大江戸に若干引きながら、雷電は相撲部の面々に向き直って口を開く。

 

「サッカーを始める前、俺の相撲は壁にぶち当たっていた。……行き詰まっていたんだ。

だから、それを越えるためにサッカー部の門を叩いた。

───あくまで相撲が第一だという芯の部分だけは、ブレていないつもりだ」

 

「!?!?!?」

 

 じゃあ自分の頑張り(壁山誘拐)はなんだったのかと目を見開く大江戸の様子に首を傾げつつ、雷電は更に言葉を続ける。

 

 

「サッカー部での戦いが終わった時、オレは必ずまた相撲部に戻ってくる。

───それまで、どうか待っていてくれないか?」

 

「───ッ!! はいッ! 待つ、待ちます!!!」

 

 表情をパッと明るくして何度も頷く大江戸を筆頭に、皆が口々に声を上げて同意を示してくれる様子を見て。

 雷電は涙で視界がぼやけるのを感じた。

 

 

「それじゃあ、みんな。───行ってくるッ!!!」

 

「「「「「「応ッ!!!!!」」」」」」

 

(……この声も、当分聞けなくなるんだな)

 

 いつもの勇ましい掛け声で見送ってくれる相撲部に、胸を熱くしながらも。

 

 

 土俵に背を向けた雷電は、入学以来足を運び続けた、雷門中相撲部の部室を後にしたのだった。

 

 

§§§

 

 

「こないだの帝国戦で見つかった問題点をもとに、新しいフォーメーションを組んだんだ!」

 

 背番号を書き連ねたホワイトボードをバンと叩き、円堂が宣言する。

 

「……問題点もなにも、みんな体力なさすぎ。後半なんて全然走れてなかったし」

 

「「「……」」」

 

 頭の後ろで手を組んだまま、痛烈なひと言を放ったマックスに、雷門イレブンは黙ってうなだれることしかできなかった。

 

「……とにかく!自分のポジションを確認してくれ!」

 

 一気に沈んだ空気を切り替えるように放たれた円堂の言葉を受け、部員たちがそれぞれホワイトボードを覗き込む。

 

 

「えーっ! ボクがFWじゃないんですかぁ!?」

 

「……よく言うよ。試合から逃げ出したくせに」

 

 なんの戦力にもならなかったにしては、あまりにも厚かましい目金の発言に。

 

 パーツこそ整っているものの、どこか没個性的な印象を受ける半端なイケメン、半田が呆れたように言った。

 

 

「戦略的撤退と言ってほしいですね!」

 

 フチなしのメガネを光らせて胸を張る目金に、雷門イレブンはひとり残らず無視を決め込むことを選んだ。

 

 

「……それで。今後はこういうフォーメーションで───」

 

「あの、」

 

「ん? どうした、宍戸」

 

「この間の豪炎寺さん、呼べないんですかね?」

 

 円堂の説明を遮って放たれた宍戸の言葉を受け、染岡のこめかみに青筋が浮かぶ。

 

「そうだよねぇ、結局のところ、あの1点も豪炎寺クンのシュートだったんだもんねぇ…」

 

「オレたちじゃ、あんな風にはいかないっスよ……」

 

 自信なさげに呟く雷門イレブンの面々を見て、激情に肩を震わせていた染岡は、

 我慢ならないといった様子で勢いよく立ち上がった。

 

「……あんなもん、紛い物だ。───俺が、本当のサッカーってモンを見せてやる!」

 

 

 

「染岡……」

 

 仮にも帝国学園相手に鮮烈なゴールを奪った豪炎寺と、

 為す術なく倒れていた自身を同列に扱うかのような染岡の言葉に、なんとも言えない空気が流れた。

 

「豪炎寺はもうやらないんだろ?」

 

「…それは。まだ、分からないけど……」

 

「だいたい、円堂もお前らもアイツを頼りすぎだ!」

 

「そんなことはッ───「みんなー!」」

 

 言い募ろうとした円堂のもとに、部室の扉を開く音が届く。

 

 朗らかな微笑みを浮かべて部室に入ってきた秋は、険悪なムードを漂わせる部員たちに表情を曇らせた。

 

「サッカー部にお客さんが……って、なにか揉め事?」

 

「ッ……ああ、いや。───それで、お客さんって?」

 

「っあ、ど、どうぞ!」

 

「失礼するわ」

 

 引きつった笑みを浮かべた秋が、招き入れるように1歩横にズレると、1人の女子学生が入室してくる。

 

 

「……げ」

 

 その姿を見るや、げんなりした表情に変わった円堂は、思わずといった様子で声を漏らす。

 

 赤みがかってうねるような長い髪を品よくセンターで分け、丸く整った額を露出させた、やや鋭い目つきが特徴的な少女。

 

 私立雷門中学校の理事長である、雷門総一郎の一人娘。

 

 その立場から、一生徒としては破格の発言権を有している存在であり、

「帝国学園に負けたら即廃部」という無茶な条件を突きつけてきた張本人でもある、雷門夏未が。

 なにかを堪えるようにして手を前に組んだ状態で、サッカー部室の入口に立っていた。

 

 

「……くさいわ」

 

 部室に足を踏み入れると、彼女はその形のいい眉をひそめ、これみよがしに鼻のあたりへと手を当ててみせた。

 

「……む」

 

(また失礼なやつが出てきたな……)

 

 栗松に引き続き2人目となる礼儀を弁えない人間の登場に、雷電はその台形の顔を僅かに歪めた。

 

 

 室内を見回して不快げに表情を歪めていた彼女は、それでも部室から出ていく気はないのか、

 切り替えるように不敵な笑みを浮かべてみせる。

 

「帝国学園との練習試合、廃部だけは逃れたようね」

 

「お、おう! これからガンガン試合していくからな!」

 

「……ふ。次の対戦校を決めてあげたわ」

 

 そう言ってグッと拳を握った円堂を鼻で笑うと、夏未は一方的に話を進めていく。

 

「「「───え」」」

 

「つ、次の試合ィ!?」

 

 あまりに急なことに、円堂の口から素っ頓狂な声が飛び出した。

 

 実のところ、40年間も全国覇者として不動の地位を誇る帝国学園に、

 無名ながら1点をもぎ取ってみせた雷門イレブンには、周囲のサッカーチームから関心が集まっていた。

 

「スゴいでやんすねぇ! もう次の試合だなんて!!」

 

 練習すらままならず、廃部寸前だったところからのこの変化に、興奮した様子の栗松が声を張り上げる。

 

「やったな、円堂!」

 

「ああ、夢みたいだ……!」

 

 喜びを隠しきれない様子の雷門イレブンをよそに、不敵な笑みを崩さない夏未が口を開いた。

 

「話を聞くの? 聞かないの? どちらかにしてもらえないかしら」

 

「───あっ、ああ! ごめん! …それで、どこの学校なんだ!?」

 

 

 ぐっと身体を乗り出して、いかにも待ちきれないといった様子の円堂に、

 夏未はいやに愛想のいい微笑みを浮かべてみせる。

 

「尾刈斗中よ?」

 

「尾刈斗中、かぁ……」

 

「ただし! ───試合に敗北した場合、今回も直ちにサッカー部は廃部とします」

 

 噛み締めるようにして対戦相手の名前を呟く円堂に、夏未がぴしゃりと言った。

 

「ま、またかよ……」

 

 げんなりと肩を落とす雷門イレブンを一瞥し、満足気に微笑んだ夏未は、そのまま部室を出ていこうとする。

 

 その時、野太い声が鋭く彼女を呼び止めた。

 

 

「───待て」

 

「ッ!?」

 

「……オレたちを廃部にしたいと言うなら。練習試合の申し込みなど全て断って、これ以上なんの実践も積ませない方が早いはずだ」

 

「そ、それは……」

 

「わざわざこんな回りくどい手段をとるとは、なにか別の思惑があるに違いない」

 

「え───」

 

「貴様、なにが目的だ……?」

 

 あれだけ失礼な態度をとるような相手だ、何をしでかすか分からない。

 そういった思いから、雷電はこの理事長の娘を問い詰めることにしたのだった。

 

 

「〜〜〜〜〜!! この前の試合を見て、ちょっと感動しちゃったの!!

だから、また試合を見てみたくなって……こ、これでいい!?」

 

「……む」

 

 そう言ってきっと睨みつけてくる夏未に、もっと物騒な理由を想像していた雷電は、いかにも拍子抜けしたというような表情で声を漏らした。

 

 

「き、今日のところは失礼します!」

 

「……おう! 次の試合、ゼッタイ見に来てくれよな!」

 

「も、もう!」

 

 そのまま逃げるように部室を去ろうとする夏未の背中に、円堂は無邪気に声をかける。

 その言葉に、羞恥から耳まで真っ赤になった彼女の様子を見て。

 

「……」

 

 

(栗松もこうであったら……いや、それはクソ気持ち悪いか)

 

 少女の純情に土足で踏み入ってしまったことから目を逸らしつつ、全く関係ないことを考えていた。

 

 

 




ツンデレ粉砕デブことニブチン雷電
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